コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
日時: 2016/03/05 21:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)

臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。

泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。

怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。

憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。

——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?





 黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!





お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390

【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)



 はい、全然完結させてない八重です。
 …今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
 約束守れない人って、情けない…。



 注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!

 では、よろしくお願いします!!


この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430



目次

登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)

〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)

【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)



〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)

間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)

第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)

間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)

第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)

後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)

【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)




〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)

間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)

「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)

間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)

「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)



小話>>366(第三部の後日談)

後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)


〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327

【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362

「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411

『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419


【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)

〜第五部〜

序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497


【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)


口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529

第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)


口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554


第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594

終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604



番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)


履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122



Re: 臆病な人たちの幸福論【『第五部開幕です!』】 ( No.459 )
日時: 2013/08/20 16:39
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MuUNITQw)
参照: http://uranai.nosv.org/u.php/novel/hizen/

よっす! お久しぶり!

東北さま!


第四部最後らへんグダグダになってしまいましたが(それはいつものことか)、そう言われるとうれしいデス!w
あと、芙蓉が今でも好きですw 六花も拙いですが頑張って書いた奴ですので、昔の作品を知ってくださる方がいるのはうれしいですね…(しみじみ



さて。ここからが長くなります。できれば読んで欲しいです。









何時だって、大切なことはとっても簡単で単純なことなのに、そこを目指す過程がとても長くて複雑で。
相手に求めたいものだってハッキリしていて、自分がどうしたいかもわかっていて、それでも様々なことを考えなきゃいけないから、複雑になってしまう。
それはたぶん、無意識に大切なものをちゃんと拾っているからだと思う。大切なものがたくさんあって、こんなにあっても使いきれないのに、それでも捨ててはいけないものだと、どこかで分かっているから、人は他人から見たら滑稽な悩みでも、真剣に悩むんだと思います。


不登校がいい選択とか、無理に登校するのは悪とか、絶対な自信をもってはいわない。「無理してでも行けてよかった」と思う人もいるとおもうから。
だけど、負けたくない理由も動機も大切にしたいものも、みんなそれぞれだと思うから。


休んでは負けだ、と思った東北さまのように。
頑張って登校した東北さまのご友人のように。

そしてわたしは、絶対に理不尽に負けないために、闘う。


少し言葉遣いや態度とか、
人権を無視しているところとか、
不登校の気持ちをかけらも判ろうとしない人間や、
例え不登校じゃなくても、病んでいる人は沢山いて。

学校に行けば、そういうことは沢山あって。
「仕方がない」そういって、それに屈したことがわたしはあるから。
それで、沢山苦しんだり、それを人のせいにしたことがあるから。それが悪とは思わないし、悔いてもいないけれど。

それでも、まだ、私には猶予があって。
何度もその理不尽に挑む時間が、ちゃんとあるから。

昔は、知っている言葉がとても少なくて、今よりずっと弱くって。
でも、小説を書くということで、言葉を沢山知って。過去を何度も何度も振り返って、あの時どうすればよかったんだろう、って思いなおして、考えて。
昔よりも、ずっと私は強くなった。でも、理不尽に屈しないためには、きっとそれは私が「学校に行かなくちゃ」始まらないのだ。

弱いのなら、強くなればいい。
強くなるためには、泣いたっていい。みっともなくてもいい。休んだっていい。だってまだ、闘っていないんだもの。

不登校が「逃げ」だというのなら、私はこう言い返す準備ができている。


「逃げたいほどの理不尽を見逃しているアナタこと、逃げているんじゃないの?」


そんなことをいってのけるのなら、判っているはずだ。みんな、我慢してるんだって。
でも、我慢して、それがどう変わったっていうの!?

欠点があるなら、克服すればいいハズだ。その努力もせずに、「我慢」といういかにも素晴らしいそうな言葉に置き換えるな!!



自分を殺してまで行く価値は、私の学校にはない。
でも、きっと、私のように傷ついて、疲れた人たちはいるだろうし、これからもそういう人は増えるだろう。
自分と同じような目に遭っている人たちを「見ないふり」をすれば、それこそ私の負け。
そして、ただ理不尽を頭越しに否定するだけじゃ、私の意見も理不尽になってしまうでしょう。


私が大嫌いなのは、キツイ言葉、厳しい言葉、乾いた言葉。
もちろん、それぞれ大切なモノだけど。それでも、あの場所では耐えきれないほど溢れている。それそれ、外側だけ見れば「正論」で。

だけど私は、「正論」で傷つく人たちを知っている。
「正論」は、武器にしちゃいけない。教師は特に。間違っているとしても、せめて反論する猶予を与えなきゃ。それはただの「暴論」になってしまう。

否定する言葉を肯定するなら、許容する言葉も肯定しなければならない。
むしろ、否定する言葉は「感情」で、許容する言葉は「理性」からくるんじゃないだろうか。

なら、私は、「優しい人」で、「理性」の人であれるようにしたい。
それは本当に難しくて、大変で、へたすればいろんな人たちを巻き込んでしまうんだろうけど。
それでも、それが、私の譲れないものだし、闘う理由だから。

不登校にならなければ、こんな簡単なことにも気付けなかった。






……脱線及びとっても長くなりましたw
後、私は大丈夫です!w 体調も心も丈夫になりましたw 勉強もハイで頑張ってます! お気遣い感謝です!
ありがとございました! これからも頑張ります!

Re: 臆病な人たちの幸福論【『第五部開幕です!』】 ( No.460 )
日時: 2013/08/22 14:05
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MuUNITQw)

 どうもみなさん。お忘れではないでしょうか。主人公の、三也沢健治です。
 前回のフリから、突然話が変わりますが、皆さん驚かないでください。

 ただいま、俺は。



「ほら、ケンちゃーん!」
「止めろぉぉぉぉ! 手を引っ張るなああ!」



 ただいま、フウに、女子トイレに連行されかけています。
 ————しかも、女学生の姿をさせられて。


 現実でも社会的にも、俺、絶対絶命!




   第三章 文学少女と文学青年




 話は、あの日に戻る。
 あの後、千代と呼ばれた女の口元を見て呆然としている俺たちに、瀬戸はなんてことなく話し始めた。昨日、夜勤のバイトで出会ったこと。その時千代が倒れたこと。それを介抱したこと。目が覚めると、千代に記憶がなくなっていたこと。自分の名前すら憶えていないので、成り行きで一緒に住むことになったこと。


『……最後が明らかにおかしくねぇか?』
『そうじゃろうか?』


 年頃の男女が一緒に住んでたらだめだろ。……と思うが、コイツの性格だと、そんなやましい理由からじゃないと明らかに判るから、どうもいいにくい。


『……このこと、芙由子さんは?』


 芙由子さんというのは、瀬戸の後見人で、母親のような存在の人の名前だ。さすがにその人は反対したんじゃ……と思ったのだが。


『自分が思うようにやりなさい、って。お金はギリギリなんとかするけど、だからといって節約しないでいいわけじゃないからね、とも釘刺されたばい』
『……そうか』


 この前一度だけ会ったが……ホント、豪快な人だな。この子ありしてあの親あり、ですか。

















 ……というわけで、この件は一度置いといて、俺たちは家を出た。


『……ひょっとしてあの千代って女の子が、巷の通り魔なのかな』


 レオから聴いた、通り魔の犯人の噂。
 口裂け女。
 千代はまさしく、口裂け女だった。そのことについて忠告しようと思ったのに、千代の手前では良心が邪魔をしていえなかった。


『うん……そう思ったけど、あの子を見ている限り、そんなに悪い子ではなさそうですし、そもそもあの無邪気で優しいカナちゃんに告げるのは酷ですし……というか、本人が犯人と決まったわけでもないですし……』


 うーん、と悩むフウ。
 確かに。何の根拠も証拠もないのに人を疑うのもどうだが、このまま判らないことを放置していれば、瀬戸にどんな危害が加わるか判らない。
 しかし相手は記憶喪失といっているから本人に聞けるわけがない。もし千代が犯人で、記憶喪失という嘘をついていたとすると、直接聞いたら本当に瀬戸に危険が及ぶ可能性が限りなく高くなる。


『……こうなったら、あの人に聞いてみましょう。あの人に知らないことなんてありません』
『あの人?』
『トイレの花子さんです』


                ◆


「だからって何が悲しゅうて俺が女装して女子トイレに入らなきゃならんのだ!?」
「一緒に事情を聴いたほうがいいでしょー!?」


 グイグイ、グイグイ。


「大丈夫だよ、今のケンちゃんはどうみたって女の子にしか見えない! バレないって!」
「フォローのつもりなんだろうけどそれは男子にとって痛撃な一言だぞフウ!!」
「あーもー、もたもたしたら、逆にバレちゃうよー!?」


 その一言が、踏ん張る俺の脚の力をゆるませた。そしてその時には既に、女子トイレに踏み入れていたのだ。



「……」
「大丈夫大丈夫。この女子トイレ、もうほとんど使われてないんだから……っと」



 そういう意味じゃねぇだろ。そのツッコミはなんかもう、どうでもよくなった。

 フウが、左から三番目の個室のドアを三回叩く。



「トイレのはーなこさん。遊びましょ」



 一拍の間が空く。
 一瞬気が緩んだ隙に、ドンドン!! という乱暴な音が響いた。



「な、なんじゃこりゃあ!? とびら、が! 開かんぞ!?」


 ついでに、甲高い声も聞こえた。
 最初はビビったが、ずっと続くものなので、その音にも慣れてしまった。
 そしてまた、音が止む。



 ……飽きたのか?





「ほわちゃー!!」
「わ————ッ!?」



 ——と思ったら、甲高い音とともにバッターン! と豪快な音を立てて、扉が開いた。

Re: 臆病な人たちの幸福論【『第五部開幕です!』】 ( No.461 )
日時: 2013/08/23 20:12
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MuUNITQw)


                    ◆


 その少女は——いや、トイレの花子さん——。
背丈は、平均女子高生の中でも低いフウよりも小さい。肩に届くか届かないかぐらいの長さで、噂通りおかっぱ頭であった。

 んで、その噂の花子さんは、盛大に息切れをしながら、妙に古めかしい言葉遣いでフウに愚痴っていた。


「ハアハア……錆でドアが開かないとかふざけとるじゃろ……何でこのトイレはこんなにも寂れてしもうたんじゃ?」
「それは花子さんが昔ハッスルしすぎて女子高生を散々脅かしたからでしょ」
「それはおのこどもが勝手に女子トイレに入り、散々このトイレに悪戯したからであろう! 正当防衛じゃ!」
「それで女の子も脅かしちゃ意味ないじゃないですか……」



 ……この学校には、七つの怪談がある。生霊の頃のフウも、屋上から飛び降りた女学生の悪霊だとされていたが(実際の事実は全く違う)。それでもこの『左から三番目のトイレの花子さん』は全国的にも有名だ。
 噂では、さほど昔ではないが昔々、ある一時期にトイレットペーパーで人をグルグル巻きにしたり、上から下剤を降らせたり、水道管を破裂させたり、良く判らないがコーヒーを便器から噴き出したり(本当になぜ便器の中から?)と、悪質のようだがよくよく考えると命の別状はない出来事だらけが起こったらしい。
 ホントかよ、と聞いたときには思ったのだが……本当のことのようで、このトイレも一時期「花子さんの祟りか?」と恐れられ、一時封鎖されたとかされていないとか。


「そんなトイレの花子さんと仲が良かったのかよ、フウ……」
「うん。花子さん、わたしが幽霊だと意識した時には既に居たから」


 そういって、フウはちょっぴり儚げな顔で笑った。


「花子さん、こう見えて結構多忙の身だから、そんなにしょっちゅう会えたわけじゃないんだけど……それでも、花子さんと違ってわたしは人には干渉できなかったから、声をかけてくれたんです」
「フウ……」


 思わず俺が感動して名前を読んだ時、すぐにフウはころり、と表情を変えて、こういった。


「昔はよく麻雀してましたよねー」
「うむ。またしたいの」
「麻雀って四人だよな?」


 俺が突っ込むと、花子さんは、


「何じゃ? 一人二役やればよいではないか」
「一人相撲!?」
「一人でも相撲でもなくて、二人麻雀だよ」


 というか、なぜトイレの中で麻雀するんだよ? っていうか麻雀の道具揃えてるのかよ? ドコで手に入れたんだよ? というか二人なんだからチェスとか将棋とかオセロとか囲碁とか、そういうボードゲームやれよ。
 いろいろいいたいことはあったが……このツッコミにツッコミの価値があるか判らなかったので、口をつぐんだ。


「……して、これはフウのなんじゃ?」
「あ、これはわたしの……」
「ちょっと待ったぁ!」


 花子さんの尤もな質問に、フウは答えようとしたところを、慌てて止める。


「(絶ッッッッ対、俺が男だっていうこというなよ!?)」
「(あ、そうでした。忘れてました)」


 あ、危なかった……このままだと、女装したまま女子トイレに入った変態だと思われる羽目になった。しかも噂の花子さんに。


「なんじゃ? 急にコソコソと……」
「あ、いえいえ!! こ、この人は、わたしのお友達です! 生身に戻ってからの! 名前は、ケンコちゃんっていいます!」
「(名前が適当すぎる!)」


 訝しげな顔を隠さない花子さんに、フウは逆に怪しまれそうな慌てぶりで取り繕った。すると、当たり前だが花子さんは更に顔を険しくして。


「ほー。……一目見た時には、声の低さもあって、おのこだと思ったのじゃが……」


 その一言に、ギク、とフウが分かりやすく動揺した。俺もフウほどではないが、内心では激しく動揺した。
 まさか、バレたかッ……!?









 ——だがその心配は、杞憂に終わる。





「——ま、こんなに可愛いのが、汚れたおのこなわけがないな!!」




 花子さんは、とっても清々しくいい笑顔で、こういった。
 それを聞いたとき、俺の脳内では、何かが落っこちて、地面に盛大に落ちる音がした。



「(よかったですね、ケンちゃん! どうやらばれなかったようですよ!)」


 フウが嬉しそうな顔で、ヒソヒソと俺に話しかける。
 ……バレなかったことには心底安心したが、その代わりとても大切なものを失ったような気がした。




Re: 臆病な人たちの幸福論【『第五部開幕です!』】 ( No.462 )
日時: 2013/08/23 23:36
名前: エストレア ◆rzkXXBQrso (ID: 6U1pqX0Z)


やべぇ…参照追い抜かされる…と、思ったエストです。
イニシャル(黒いひしがた以降の半角文字?)変わってるけど、本物です。

どんどん上昇してるな…。これじゃ追い抜かされるの当然か…。
面白いから、たくさんの読者様が、八重を応援してくれる。それは当たり前のことのようで、実はとてもすごいことなんだよ。
感謝を忘れずにね。

…と、なんか私には似合わないことを言いましたねw では、本編の感想を。

チャットにも書いたとおり、千代がルエに似ててしゃあない……。
たぶん、千代さんもなんでも抱え込みそうな予感…。

要さんからもらった、たくさんの優しさが泣いて満たされるのなら、泣いてもいいんじゃないか。
何かが分かるのなら……それでいい。
ゆっくりでも構わない、分かればいい。信じればいい。

要するに、相手を受け入れる。それが大切なんじゃないか。と、私は思います。

話は変わりますが、私は、自分の小説のキャラを、家族だと思ってます。
いや、たぶん、家族同然として見てるかも…。

主人公であるルエもそうですが、実は誰もが、弱いんです。
誰かに対しての、主に感情とか…そう言うのをどう伝えたらいいか分からない。
ましてや、そのまま率直でぶつけたら、相手が傷つくかもしれない。

だから、周りの人たちに合わせてるかもしれません。
「自分らしさ」をなくしたままで。かつてそうしたルエのように。

自分らしさ、それも大切ですよ。千代さん。
周りに合わせることはないからね。

……シリアスになりましたね。これも私には合わんわ;

というか、ケンちゃんwwww 女装とかナイスプレーwww
それじゃ花子さん気づかないのも当然かwwww

とりま、ガンバ!

八重も、体調に気を付けて、執筆頑張れ!

Re: 臆病な人たちの幸福論【『第五部開幕です!』】 ( No.463 )
日時: 2013/08/24 16:06
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MuUNITQw)



何時だって、感謝を忘れない人間であろうと思っていたけれど、
実はそれをさぼって、鈍感になっていたのかもしれない。
折角の機会だし、ここで叫ぼうと思う。



   コメありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! エス様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



 ……とね、むさぐるしい挨拶はおいといて。
 毎度本当にありがとうございます。ここまで続いているのは確実に、エス様のコメのお蔭であります。(感涙
 だから追い抜かれるとかそういう枯れた発言はなしです。何時だってエス様は私の先輩であり、ヒカダテは不滅のファンタジーでございます!!w

 さて、千代のことですが。
 ええ、確実に彼女はルエちゃんです。口とっても悪いけど。そこまで可愛げないけどw
 記憶喪失で、何もかも判らないこの子は、失くした記憶の中の『悲しい記憶』で、人を信じることができません(軽くネタバレ)。
 例えつらい記憶で人を信じることができなくなっても、その記憶を失っても、人は人を信じることができる、とは限らないのです。
 逆に、自分のモノだった記憶を失うのですから、自分すらも信じられなくなり、心はからからに乾いてしまうと思うのです。
 そうなったら、人はどうなってしまうのでしょう? 考えるだけで、恐ろしいです。

 そんな中で、要という存在は、とても心強い存在になるでしょう。
 この二人が、どんな物語を起こし、また、ケンちゃんたちをどう巻き込むか、どうか見守ってほしいです。


 そして、小説のキャラは家族のような存在というのは、私も同じです。
 フウちゃんもケンちゃんも、前向きになったといっても、「臆病な人」なのでございます。まだまだ、弱い人たちなのです。
 要も、完璧な人間に見えてしまうけれど、本当は、弱い子供です。
 それでも、このキャラクターたちが取り返しのつかない間違いを起こさないのは、皆から支えられているから。それを知っているから。

 オクコウ(臆病な人たちの幸福論の略)の登場人物がこんなに多いのは、それをはっきりと示すためです。


 ……だってルゥさまがケンちゃんの「魔女コス」をやっていたからぁ……w

更新頑張ります! エス様もお体に気を付けて!


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122



この掲示板は過去ログ化されています。