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臆病な人たちの幸福論【第五部完結】
日時: 2016/03/05 21:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: AO7OXeJ5)

臆病な幽霊少女は、思い出す。
人を疑いながらも、好きだったわたしを。

泣き虫な文学少年は、後悔する。
せめて、言葉にして伝えたかった。

怠惰な女性司書は、紛らわす。
子供に甘えるなんて、どうなのよ。

憂鬱な平凡少女は、自身を罵る。
どうしようもないなあ、あたし。

——愛。
それは彼らに共通したもの。
カタチは違うけど、彼らを繋ぐ。
繋がりの中で彼らは……何を見つけるのだろうか?





 黒雪様の【あなたの小説の宣伝文、作ります!】に頼み込んで、作ってもらった素敵な紹介文です!! ありがとうございました、黒雪様!!





お知らせ!!>>485
ご報告!!>>198
5000いけました!!!>>390

【皆おいで! オリキャラ投稿だよ!! ついでにアンケートもだよ!】>>165(本気と書いてマジと読む。どうかよろしくお願いします!)



 はい、全然完結させてない八重です。
 …今回は、ちゃんと完結させるつもりでございます。…多分。
 約束守れない人って、情けない…。



 注意
・低クオリティ。何かありきたり。
・幽霊が出てきます。
・最初はとんでもなく暗いです。
・中傷など、常識やルールを守れない方はすぐにお帰りくだされ。
・恋物語です。でも、糖分は低めです。
・瀬戸君の佐賀弁が似非っぽい。
・宮沢賢治のお話がちょろちょろでます。
・批評大好物なので、バッチコイ! あ、でもあまり過激なモノは…(汗
・宣伝は常軌に外さなければおkです。ただ、宣伝だけはおやめください。お友達申請? カモンです!!w
・誤字脱字あったらすぐにコメを!!

 では、よろしくお願いします!!


この小説に欠かせない大切な方々の名前一覧!>>430



目次

登場人物>>54(ネタバレあり。本作読むのが面倒な人はここを読んで置くのがオススメ。大体の話の筋はわかるから)

〜第一部〜
臆病な幽霊少女…>>01(挿絵>>231>>02>>03>>08(挿絵>>431)(長いこと関わらなかった幽霊少女が恋慕を抱く話)
泣き虫な文学少年…>>14>>15>>16(挿絵>>549>>19(一人を望んだ文学少年が『独り』になることに恐怖を抱く話)
怠惰な女性司書…>>30>>31>>32>>33(怠惰に過ごす女性司書が一人の少年を見て我が身を振り返る話)
憂鬱な平凡少女……>>39>>40>>41>>42(日常を憂鬱に過ごしている平凡少女が弱さを知る話)

【自戒予告〜字が違うよ次回予告だよ〜】>>50(ふざけすぎた次回予告です)



〜第二部〜
間章または序章>>55>>56(幽霊少女と、『声』の話)
第一章 春を迎えた文学青年>>60>>61>>62>>63(文学青年と平凡少女が、非日常に巻き込まれる話)
第二章 困惑した文学青年>>64>>67>>68>>69(幽霊少女の真実と奇跡が、垣間見えた話)
第三章 前進する文学青年>>73>>74>>75>>76(幽霊少女の周りの環境が、だんだんと変わっていく話)

間章 >>87(閉じこもってしまった幽霊少女が、やがて狂っていく話)

第四章 平凡少女の行動>>95>>96>>97>>98(諦めかけた文学青年と、行動を起こした平凡少女の話)
第五章 揺らぐ文学青年>>105>>106>>107>>108(平凡少女と、文学青年と、臆病少女は)
第六章 踏み出す文学青年>>118>>119>>120>>121(イレギュラーが入り込む話)

間章 >>128>>129(混乱する臆病少女の前に、文学青年は)

第七章 どうすればいいのか、判らないことだらけだけど>>132>>133>>134>>135>>136(泣き虫な青年の答えに、臆病少女は)
最終章 やっと、春を迎えました>>141>>142>>143>>144(さあさあ、春と修羅が始まります)

後書き>>149(とりあえず読んで欲しい)

【次回予告〜今度はまじめにやってみた〜】>>157(第三部の次回予告)




〜第三部〜
「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」>>161>>162>>163>>164(とある男子高校生の会話)
「えっと、『おぶなが』と『たかだ神殿』が『長しその戦い』で戦って……?」「『織田信長』と『武田信玄』が『長篠の戦い』で戦った、だ」>>175>>176>>177>>178>>179(とあるリア充の話)
「あ、ダメナコ先生じゃなかー!」「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」>>187>>188>>191>>192 (とある元引きこもりと不登校少女の話)

間章>>196>>197(とある不登校少女は逃走する)

「何時もより早く登校したら、校門の前にパトカーがあった」「誰に話しているの? 三也沢君」>>214>>215>>216>>217(とある文学青年が、踏み入る)
「——そこに居るのは、誰ですか?」「だあれ、君……?」>>223>>224>>225>>226(不登校少女と、やさしい想い出と苦い想い出と)
「……玲ちゃんの家は、一度離婚してるったい」>>239>>240>>241>>242(第三者が語る、不登校少女の姿)
「どうして、ないてるの?」>>252>>253>>254>>255(無表情少年と不登校少女)

間章>>258>>259(不登校少女と、不登校少女の父)

「何でこんなあつー日に走らんといけんと!?」「全くだ!」>>265>>266>>269>>270(少年少女の試行錯誤)
「い、行かせて平気なんですか!?」「平気よ」>>271>>272>>273>>274(怠惰な司書と平凡少女と臆病少女の他人事と共感と)
『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』>>281>>282>>283>>286(結局のところは)
「……で、結局どうなったんだ?」>>287>>288>>289>>290(大団円を迎えたよ)
「きっと、何とかなるよ」>>291>>292>>293>>294(第三者だった、文学青年と臆病少女の考察)



小話>>366(第三部の後日談)

後書き>>305(とりあえず読んで欲しい)
【自戒予告〜反省なんて言葉は無いんだよ〜】>>311(シリアスばっかだったから〜…)


〜第四部〜
蛍火の川、銀河に向かって【前編】>>312>>313>>314>>315
蛍火の川、銀河に向かって【中編】>>316>>317>>318>>319
蛍火の川、銀河に向かって【後編】>>323>>324>>325>>326>>327

【あの日を誇れるように ぱーとわん】>>335>>336>>337>>338
【あの日を誇れるように ぱーとつー】>>339>>340>>341>>342
【あの日を誇れるように ぱーとすりー】>>353>>354>>355>>356
【あの日を誇れるように ぱーとふぉー】>>358>>359>>360>>361>>362

「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」>>367>>368>>369>>370
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその二」>>384>>385>>386>>387
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその三」>>393>>394>>395>>396
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその四」>>402>>403>>404>>405
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」>>407>>408>>409>>410>>411

『思い出と後悔のこの町は、また今日も』>>415>>416>>417>>418>>419


【低気圧&高気圧注意報】(方言監修:ルゥ様)>>510>>513>>514>>515>>516(Battle of youth)

〜第五部〜

序章>>426(口裂け女と労働青年の邂逅)
第一章 健全なる高校男子の昼食事情>>433>>434>>435>>436(口裂け女の噂と高校生の話)
第二章 労働少年の秘事>>440>>441>>442>>443(労働少年の家と隣の口裂け女)
記憶喪失の口裂け女の話 一>>447>>448>>449
記憶喪失の口裂け女の話 二>>454>>455>>456
第三章 文学少女と文学青年>>460>>461>>466>>469(女子トイレと橘と後輩と)
口裂け女と労働青年の日々 一>>471>>474>>479>>480
第四章 それは全てを変えるような>>483>>484>>486>>493(ぐらつく足元)
口裂け少女のたまに見る夢>>496>>497


【第五部後半 予告編】>>503(こういうの結構楽しく書ける)


口裂け女の終焉の始まり>>521>>523>>524
口裂け女 ムカシバナシ 1>>525>>526
口裂け女 ムカシバナシ 2>>527>>528>>529

第五章 瀬戸少年の意外な面について>>530>>531>>532>>536(キレる瀬戸君、笑うフウちゃん)


口裂け女のひとつの過ち>>545>>546>>547>>548
口裂け女のひとつの過ち その2>>551>>552>>553>>554


第六章 少しずつ忍び寄る>>559>>560>>561>>562(怪異と妖怪と幽霊と)
第七章 元幽霊少女と現怪異少女>>563>>564>>565>>566(諷子と千代)
口裂け女ノ邯鄲ノ夢>>567>>568>>569
第八章 間違っていること、正しいこと>>570>>571>>572
口裂け女の初めてのデート>>573>>574>>577>>578>>581
第九章 それは何も変わらず>>584>>585>>586>>591
よだかの星になった少女>>592>>593>>594

終章 泣き虫な文学少年と、憂鬱な平凡少女、臆病な元幽霊少女の>>598>>594>>604



番外編・企画・もらい物>>470(これまた多くなったので引っ越し!)


履歴>>332(多すぎてスクロールするのがめんどくなったので引越し!)
その2>>539(その2まで出来ちゃった……本当にありがとうございます!!)

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Re: 臆病な人たちの幸福論【詩をいただきました!(感涙】 ( No.284 )
日時: 2013/02/11 16:51
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: 6d0h2282)

 お久しぶりです。
 覚えていらっしゃるでしょうか? とにかくわがままな性格の藍永ですww
 相変わらず、心理描写が半端なくうウマッッッッッッ!! …と、家族におかしなものを見るような視線を送られながら、叫んでおりました。
 結構痛かったのですが、膝で丸くなっている猫ちゃんになぐさめてもらいましたのでww
 
 ケンちゃんがとんでもなく人間らしく見える……!!(いや、もともと人間ですけれど!!)
 フウちゃんがとても男らしく見える……!!(いえ、女なんですけれども!!)
 
 その二人だけでも十分素晴らしい活躍をしているというのに、玲ちゃんを救う為に行動している方はもっと大勢いらっしゃるのですね。

 上田君、橘君、武田君、芽衣子さん、雪ちゃん…etc の皆様、そしてケンちゃん、フウちゃん、玲ちゃん、あなた方の向かう先を見守らせていただきますぞww

 それでは、更新頑張って下さい!!

Re: 臆病な人たちの幸福論【詩をいただきました!(感涙】 ( No.285 )
日時: 2013/02/11 16:58
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
参照: ああハニー……セドリック生きてたのに闇堕ちィィ!!!(ウワアン!!

藍永智子様!!

お久しぶりです!! 貴女がワガママというのなら、私もとんでもないワガママな性格でしょうww あいや、私の場合は頑固か(そっちのほうが性質悪い

え、えええええ!? こここんな漢字で大丈夫ですか!? こんな諷で!? ホントに!? でもありがとうございます!!!

ケンちゃんは最初幽霊っぽくだらけていたからね——…www
フウちゃんは前の一件でかなり男前になったからね——。。。www

はい、今回私が言いたかったのは、そういうことなのですよ。
是非、見守ってやってくださいw


更新頑張ります!!!!!

Re: 臆病な人たちの幸福論【詩をいただきました!(感涙】 ( No.286 )
日時: 2013/02/11 17:01
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
参照: ああハニー……セドリック生きてたのに闇堕ちィィ!!!(ウワアン!!



「(武田、君……?)」



 ——あれほど謝りたくて、仲直りしたかった武田君が、あたしを庇ってくれたことが、何よりも重要なことだった。
 そう、庇ってくれたのは、武田君だったのだ。パパがいった、『助けてくれる人』は、武田君だったのだ。

 どうして、ここに武田君が? とか、どうして嫌ってた武田君が庇ってくれたの? とか、驚きや恐怖、嬉しさが混ざり混ざって、更に思考回路を複雑にさせた。


「……大丈夫、ですか?」


 顔は良く見えなかったけど、少し低くなった声は焦りと恐怖が滲んでいた。
 少しだけ夢かと思ったのに、その声で夢じゃないのだと確信した。


「少しだけど、黒いモヤが見えて、咄嗟に動いたんですけど……」
「(あっ……)」


 今の彼には、あれが見えないんだ。
 そんな、見間違いかもというレベルのことで、あたしを庇ってくれた。
 怒ってるんじゃないかと。傷ついているんじゃないかと。
 その傷は、一生治らないんじゃないかと思ったのに。
 だから、今まで人と関わることが怖かったのに。


「(怒ってるんじゃ、ないの?)」



 もう、ワケが判らない。
 その傍から、さっきあたしを呼んでいたと思われる人たちが、傍に駆け寄ってきた。
 覆われていたから、顔は見えないんだけど。


「武田! 何があった……ってうわ!! 何だあの黒いモヤ!」
「気持ち悪うを通り越して、キモイったいねあれ!!」

 ——黙レェェェ!!

「わ、返事返しやがったぞあのモヤ!! 幽霊かよ!?」
「幽霊ってゆーより、怨霊じゃなか!?」


 なんて、のん気な人たちだ。あたしは呆れた。
 あれを見て、あたしは恐怖でいっぱいだったのに、全然怯えもしない。


 ——フザッ……ケルナァァァァァァァァァァ!!


 ぶちぎれたモヤが、再びあたしと武田君に狙いを定める。


「(ああ、もう……)」


 どうすればいいのかなあ、あたしは。
 何をすれば、正解なのかなあ。
 というか、何が原因で、悩んでいたんだっけ。……判んない。忘れちゃった。
 あれだけ苦しかったはずなのにな。あれだけ悲しかったハズなのにな。
 だから原因を突き止めようとして、悩んだ。でも、その結果がとっても散々。

 なんか……どうでも良くなっちゃったよ。



「(なっちゃったんだけど……なあ)」



 場違いにも、ため息をつく。

 ——知らない人が来たら。パパの声を聞いたら。
 今まで、ずっと会いたいって思っていた武田君にあったら。



「……戻りたいよね」



 声に、出していた。

 ずっとずっと、一生の友達が欲しかった。
 けれど、そんなの叶うわけがないと、諦めていた。
 ずっとずっと、家族みんなで過ごしたいと思っていた。
 けれど、それは叶っちゃいけないものだと思い込んでいた。

 でも、武田君にあって。毎日が楽しくなって。
 ずっとずっと、何時までも続いていけたら。そんな風に望んでいた。

 怖いけど、普通に学校に行けるようになりたい。
 普通に、外に出歩けるようになりたい。
 ちゃんと、ママと、お兄ちゃんと。くだらないことで、話し合いたい。
 小さなことでもいい。あの時のように、毎日幸せを見つけたい。


 そんな風に、望めたあの頃に、戻りたい。



「あたしは……」



 ううん。









「——戻るんだ!!」



 今度は、望みなんかじゃなくて。
 ちゃんと、掴み取りたい。自分が望んでいたことを。
 ……答えは何時だって、凄く単純なことだった。
 けれど、それを受け入れようとすると、自分が壊れそうで怖かった。


「(もっと早く、逃げずに受け止めれば、こんなに苦しむことは無かったのに)」


 自嘲が零れた、気がした。



 叫ぶと、モヤは吹き飛んでいった。
 それと同時に、あたしのモヤも、消えて行ったような気がした。
 晴れ晴れとしていって、あたたかいものに満たされていくような気がした。

 モヤ——ううん、山田さんのように、あたしもあんな風になっていたかもしれない。
 でも逆にいうならば、山田さんもあたしのようになれたかも知れなかった。
 かき消されていくモヤを見て、あたしはぼんやりとそんなことを思った。


 あたしが山田さんのようになれなかったのか、山田さんがあたしのようになれなかったのか。



『もう一度いうが、玲』


 その疑問に、パパが答えた。


『あのモヤと違って、お前はたった今殻を割ったんだ。なら、見渡せるはずだ。高いところから、沢山のモノを。高いところから見たら、小さなモノを見つけることは難しくなるけれど。でもそんな時は、望遠鏡を使えばいいだけのこと』


 パパの声が、少しずつ、少しずつ消えていく。


          『この世界は、嫌なことだらけだ。悲しい事だらけだ。でもだからこそ、お前なら、小さな幸せを見つけることが、出来るはずだろう?』





            けれど、ちゃんと届いたよ


(そうだね、パパ)
(見渡せば、沢山のモノがあるね。沢山、助けてくれる人たちが居るね)

(悲しくても、孤独に感じることなんて、一つもないね)

Re: 臆病な人たちの幸福論【『結局、答えは』更新!】 ( No.287 )
日時: 2013/02/13 15:53
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)

 樹海にたどり着いて、上田の妹を見つけるために捜し歩いていると、引きずるような音が聞こえたので、瀬戸と一緒に慌てて来て見た。
 すると、恐らく上田の妹であろう少女と、それを庇う武田と——凄く気持ち悪いモヤが、くっついていた。
 尋常離れしている光景(といっても、ここ最近こんな感じ)に、慌てふためく俺と瀬戸。しかし、上田の妹が精一杯叫ぶことで、そのモヤは消えていった。

 これが、三也沢健治から見て整理した状況報告だ。以上。





               「……で、結局どうなったんだ?」





 以上——で済ますことはやっぱり出来ず、俺は起き上がった武田と、上田の妹に聞いてみた。
 そこに、こっそり瀬戸が耳打ちする。


「みやっち……まずは、『無事か!?』って聞かんといけんじゃなか?」


 そういやそうだ。


「あ、無事か?」
「あ、はい。僕は無事です」
「あ、あたしも……」


 よし、無事だそうだ。


「で、一体何があったんだ?」
「……あ、えっと……」
「みやっち!」


 瀬戸がまたもや俺を嗜める。


「今まで、玲ちゃんは失踪してたんよ!? しかも、何かキモイ怨霊っぽいのに付き纏われてたし! あんな怖い目におうて、すぐに心の整理がつくハズなか!」
「あ」


 ……そういえば、そうであった。
 コミュニケーションが下手だと、そこまで気が回らない。


「すまん……」
「あ、いえ! 気にしてないんで!!」


 俺が謝ると、上田の妹は手を振った。


「確かに怖かったけど……今はそういう意味じゃなくて、何か物事が急に動き出したような感じだから、言葉に表せられないっていうか……どう説明すれば良いのか、判らないっていうか……ごめんなさい」
「いや、いいんだけど……」


 どうして家を飛び出したんだ?
 何があった?
 何が、どうなっていた?

 聞きたいことは、いくらでもあった。
 でも、今は。どれも相応しい言葉ではないな、と思い直した。
 当事者じゃない俺は、真っ先に聞ける立場でもない。そうなろうとも思わない。
 好奇心で聞くなら、後でもいいと思った。


「……ちょっと、俺らは連絡してくるよ。お前が見つかったって。瀬戸、ついてきてくれるか?」
「あ、うん」


 立膝をして、よっこらせ、と立ち上がる俺は、幾分か精神がオッサンっぽくなっているかもしれない。まあ、それはどうでもいいんだが。


「それじゃ武田、上田妹を任せるぞ」
「え……あ、いや、はい」


 武田は幾分困惑していたが、ぶっちゃけ返事をしてなくても俺らはそのまま立ち去るつもりだった。
 俺と瀬戸は目配せして、さっさと樹海から出た。


                      ◆


 あんなに会いたかった、武田君に会うことが出来た。
 だから、今ここで、ちゃんと武田君に話すべきだろう。
 多分、あの人たちは気を回して、わざわざあたしたちを二人っきりにしてくれたんだし。
 謝罪のこと、今までのこと、これからのことを。
 ……なんだけど。


「……」
「……えっと」


 ちょっと待って。本当に、何があったっけ。
 色んなことがあったような気がするから、ちょっと頭の中を整理させてみる。
 えっと……まず、山田さんが、自殺を図って? たまたま麦藁帽子が、山田さんの遺体の近くに飛ばされて? で、約束破ったあたしが彼と鉢合わせして……。

 ……一体何処から話せばいいのかな?
 本気で頭がこんがらがってきた。


「(——あ、そうだ!! 謝らなくちゃ!!)」


 それが第一目的だったはず!
 そうだ、そういやまだちゃんと武田君に謝っていなかった!!
 そう思い、改めてあたしは正座して、彼に謝ろうとしたその時だった。


「……三浦さん」
「え!? あ、はい!」


 彼が先に、声を掛けてきた。
 まさか彼が声を掛けてくれるとは思わなかったので、あたしは驚く。
 彼は、やっぱり無表情のまま、あたしにこういった。


「ちょっと……ついてきてくれませんか?」








 武田君の意図がわからないまま、あたしはついてくる。
 何をいわれるんだろう。何処へ行くんだろう。
 判らない。恐怖と不安に負けそうで、あたしはそれを振り払うように、足元にあった枯葉に力強く踏み出す。ガサ、という音が聴こえる度に、大丈夫、大丈夫と自我を強く保つことが出来た。
 歩くこと数分。暗い樹海から抜け出すと、太陽の光が目に焼きついた。
 眩しくて、思わず目を閉じる。中々焼き付けて離れない残像をどうにか取り除いて、ゆっくりと目を開けたあたしは、声を上げた。


「あ……」


 辿りついたのは樹海の傍にある大きな木。そう。ここで、あたしたちは会った。


「変わってないでしょう?」
「……うん」


 武田君の言葉に、あたしは同意する。


「もう……二年も経つんだね」
「そうですね」


 あたしが感慨深くいうと、武田君はやっぱり、淡々とした口調でいった。
 それっきりで、会話は途切れてしまう。


「(武田君の気持ちは、声や表情では少し判りにくい)」


 怒っているかもしれない。あたしはそう思った。
 ……今いえば、武田君は怒るだろうか。

 でも。


「……約束、破ってごめんなさい」


 いわなくてはいけないと、思うから。


「どんなにいっても、言い訳になっちゃうよね。だから、弁解はしないよ。でもあたしは、赦されるまで謝らなくちゃならないと思うから。だから……」


 ごめんなさい、ごめんなさいと。
 何の解決にもなっていないかもしれない。いいながら、あたしは思った。
 だってこれじゃ、何処に反省点を置いているのか、相手に伝わらないだろう。
 でも、不器用なあたしじゃ、これ以上のことは思い浮かばないんだ。
 ごめんなさいと、いい続けるしか。
 それを責められる覚悟で、いい続けるしか。


「……もし、赦してくれるなら」


 武田君の表情は、良く判らない。
 でも、謝ることと同時に、あたしは伝えたいことがあった。

Re: 臆病な人たちの幸福論【『結局、答えは』更新!】 ( No.288 )
日時: 2013/02/13 16:08
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)



 あたしには、壁がある。
 その原因は、自分にあることぐらい、判っている。
 でも、それを自分の責任として背負うことほど、あたしは強くなくて。
 でも、誰かのせいにするのも怖くて。
 辛くて悲しくて、寂しくて弱かった。


 こんなあたしの願いを、聞いてくれませんか?
 とんでもないワガママなあたしですが、聞いてくれませんか?



「もう一度……友達になってくれる?」



 今すぐに、あたしは、あたしの欠点を直すことは出来ないと思うの。
 約束破ったり、謝罪する時も笑ってしまうかも。そんなこと、きっとまた、同じことしちゃうかも。二度目はないっていい聞かせても、してしまうかも。
 今、完璧な人の和の中に入れば、あたしはきっと不純物になってしまうと思うの。
 だから今まで、人と接することが、怖かった。

 ……でももう、このままでは居たくない。



「あたしがヘマしたら、遠慮なく怒っていいから。バカにしたっていいから。……元々からバカだけど。とにかく、手荒でいいから。……もう一度、友達になってくれる?」



 初めて、喧嘩した相手だからこそ。
 初めて、仲直りをしたいと思った友人だからこそ。
 初めて、大切な友人なんだと、実感されられたキミだからこそ。

 ……ああもう、歯がゆいなあ。
 形容できないこの気持ちを、どうやったら伝えることが出来るの?
 大切な友人に伝えなきゃ、意味がないのに。



「……顔、上げてくださいよ」



 抑揚の無い武田君の言葉が、頭上に振った。
 怒ってるかな。赦してくれないかな。
 そう不安と恐怖を持ちながら、恐る恐る、顔を上げる。

 ——けれど、見たのは武田君の驚いた表情だった。


「(……?)」


 珍しく、ハッキリとした表情を見せた武田君。
 いや、それよりも。どうして彼は驚いているのだろう?
「どうしたの?」そう聞く前に、彼があたしに聞いてきた。


「何で……何で、泣いているんですか?」


 ——え?
 武田君の言葉に、今度はあたしが驚いた。
 頬を撫でてみると、確かに液体が頬を伝っていた。


「あ、あれ?」


 ゴシゴシ、とあたしはそれを拭う。
 けれど、涙は全然止まらない。
 ああ、そうか。あたし怖くて、泣いちゃったんだ。
 カッコ悪いな。こんな時に、何で泣くの?

 武田君は、戸惑っていた。その様子に、凄く申し訳なくて。
 ごめんなさい、と謝る前に、ポン、と頭に手が乗った。
 ポン、ポン、と、その手はテンポ良く離れたり、置かれたりする。

 ——武田君に慰められているのだと理解するのに、そう時間はかからなかった。

 ああ、何か悔しいなあ。
 泣き虫なあたしを、バカにしているみたいで。
 絶対、今まで友人関係が続いていたら、「バカみたいに泣くんですね。そろそろミイラになっちゃうんじゃないですか?」っていうに決まってる。
 でも、嬉しいなあ。そんな風に思う自分にも、悔しさを感じるよ。
 悔しいけど、嬉しくて。
 涙は、止めようとする度にあふれ出していった。







「……バカみたいに泣くんですね。そろそろミイラになっちゃうんじゃないですか?」


 暫くして泣き止んだあたしに、予想通りの言葉を武田君はいった。
 ……うん、悔しいのにやっぱ嬉しい。あの頃に戻ったみたいで。
 エヘヘ、と思わず笑うと、フイ、と武田君は顔を背けた。


「あ……ごめん!」


 そうだった。ホントは謝罪しなければならない立場だったのに、思わず笑ってしまった。ああもう、あたしってば進歩ない。
 慌てて謝ると、「そういうわけじゃないです」といい返された。でも、顔は中々こっちに向いてくれない。


 ——……気分、悪くしちゃったかも。
 そう思って、もう一度謝ろうとした時だった。


「……本当に、覚えていませんか?」
「え?」
「二年前じゃなくて、もっと昔。僕たちが、五歳くらいだった時のこと。僕があの木のくぼみの中で泣いているとき、キミはピンク色の傘を差して、僕に話しかけてくれました。


 そういって、武田君はくぼみを指差した。


「(え? あたし、二年前よりも前に会ってる……け)」


『どうして、ないてるの?』


 脳裏に、幼い頃の自分の声が木霊した。


『ねえ、ナマエなんていうの?』
『あ、そっか、『ひとのナマエきくなら、まずじぶんから』だね!』


 少しずつ、ぼんやりとした記憶が、鮮明になっていく。
 と思ったら、急に早く流れて——。







『また今度会おうね!』


 ——記憶が、早送りしたビデオのように、流れ込んできた。



「(そうだ……あたし、会ってた! この木の下で……武田君と、会っていた!!)」



 思い出した。あの時のこと。まだ、自身のことを、『玲』と呼んでいた頃。
 ママと一緒に行く予定だったピクニックにいけなかったこと。
 暇だったから、傘を差して一人でここを歩いていたこと。
 そしたら、一人の男の子が泣いていたこと。気になって、声を掛けたこと。

 あの男の子が——武田君だったんだ!!


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