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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.211 )
日時: 2019/05/10 21:23
名前: 大寒波 (ID: enKf/rbe)

夏目長編(3)151.「夏目話・平安編151」
ああ むら殿は狼の妖ではないのでございますな

鍼医が呟くのを 白銀の妖物が聞き咎めて
何故判る と訊き返した

あしゆびの間に 水掻きが無く 後ろ肢も五趾(ごし/五本指)では無い故に」


妖物は 肯定も否定もしなかった

返答が無いのを 気にも留めず 鍼医は湯気を立てる薬の様子を確かめている
妖物が寝入っていた間にも肢に刺さった異物がないか改め続けていたものと思われた


「やけに狼に詳しい様だな」興味を引かれた妖物が訊く

「昔 一時期だけ接した事がございました」

「ほお 野の狼をか」

「山で修行中 水辺に跛行(はこう/足を引き摺る)する狼が 単独で現れた事があったのです」


狼は群れ動物である 一頭で出現したとは どうした事かと 妖物は興味を掻き立てられた様子だったが 意外にも 夏目の口が重そうであったのでそれ以上は訊ねなかった


その獣の妖物の様子を そっと窺って、先程 寝入ってからは この妖も身体 心神共に やや鎮静したかと 鍼医が内心で一息ついていた

Re: 妖と人の子 ( No.212 )
日時: 2019/05/11 08:01
名前: 大寒波 (ID: sPN/TsSz)

夏目長編(3)152.「夏目話・平安編152」
この分別臭く 老成した妖物の身の事とも思えぬ、

体温の低下や 気分の極端な浮き沈み等が
先程までは傍目はためにも 甚だしかったが為に

外出した際に 何事かあったらしい事は 夏目にも見当が付いていた


横笛を傍らで 奏した時ほどの卓効たっこうでは無いが 肢裏を揉み解して弛緩させる事にも 獣には鎮静の効能があるのか 等と鍼医は 分析に余念がない。

煎じ上がった薬を火から降ろして 鍼医は妖物の方を振り返った

「薬湯には七葉胆(甘茶蔓)を加えて少し味を整えております 良かったらお飲みになりますか」

立働く夏目を黙って見ていた白銀の妖物は
うむ と頷いた

仰向いた鍼医は静かに語る

「後でまた 横笛(龍笛)を奏するいとまがあると良いのですが。管弦は間近に聴く程 良いなどと申しますゆえ」

 うむ、妖物は同じ返事を寄越しながら

“ 後でまた ”か、それも悪くない などと考えていたが ふと、唐突に浮かんだ疑問を 例によってそのまま口に出した

「先程の横笛は 北の方との約定として奏したのだと言うたであろう」

 いかにも と夏目が頷いた

Re: 妖と人の子 ( No.213 )
日時: 2019/05/12 12:43
名前: 大寒波 (ID: FTo14qYM)

夏目長編(3)153.「夏目話・平安編153」
「この家の正室を相手に 同室にて奏せぬのは 外聞を慮っての事と理解する

しかし管弦は間近に聴く方が良いというなら 正室の部屋から もっと近い部屋に行き そこの縁台なりで聴かせる事も出来たろう

病弱なる北の方(正室)に管弦を聴かす折角の機会というに
この部屋で 奏して良かったのか」

白銀の妖物は問うた
揶揄する気振りもない 真摯しんしな顔付きであった

「ああそうした手立てがございましたか では次はその様に致しましょう」

鍼医は頷きながら答えると 薬湯を清潔な角樽に
注ぎ入れ計量し白湯で薄める 茶碗等には入り切らぬのである

手際の良い作業を覗き込みつつ妖物は夏目の返答に首を捻る 先程似たような言を聞いたが あの時は諧謔かいぎゃくの意のみで 今のはどこか温言かに感じたが。 ………。

   「 ! 」

突然驚きの声を発した巨大な妖が 夏目の正面で
刮目かつもくして問うた

「ここでわざわざ横笛を奏したのは私の為か」


  直球である

答えにくい事この上ない。

案の定 夏目は俯き加減で いえ その様な
とか何とか 口籠っている

Re: 妖と人の子 ( No.214 )
日時: 2019/05/15 22:34
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

夏目長編(3)154.「夏目話・平安編154」

やはり思い過ごしであったかと 妖物は直ぐさま口を結ぶと 眼を伏せて瞬きを繰り返した

薬湯から湯気が上がり 部屋には特有の匂いが漂う


黙りこくっているのは 鍼医も同じだが その人間はやがて調剤の手を止めて溜め息を吐くと 口早に告げた


「…如何にも その通りにございます 余りに身体心神に 常に無い不具合がみえました故 先ずは緊張を和らげるべく管弦を奏してみた次第でございました」


その言が 終わるか終わらぬかの内に 室内に突風でも起きたかと感ずる様な空気の波が どうと押寄せた

夏目が はっと振り返ると白銀の妖物が 巨大な躯から ごうごうと吹きつける様な熱を発していた

離れていても分かる体温に鍼医は 一瞬眼を見開いたが すぐに平素の無表情に戻り 道具を置いて妖物の許へ近づいた

天井から見下ろす妖の真下に立つ

「もう薬湯の用は無いかと存じます 復調なさって何よりでございました」
顔を仰向けて 夏目が言うた

Re: 妖と人の子 ( No.215 )
日時: 2019/05/17 15:27
名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)

夏目長編(3)155.「夏目話・平安編155」
常態の 燃える様な躯の熱を発した妖物は 天井に支え(つかえ)そうに 巨大な体躯を伸ばし鼻先を ふんと反らした

「ふむ その様な珍しげなもの 飲んでやらぬ事も無い」
反りくり返って言う
すっかり元通りである

その温かな躯から 再び立上る匂いがあった
通常の妖物とは また違う匂いである

「酒と海の匂いが 濃く致します」

まるで素戔鳴尊スサノオノミコトの様でございますな  夏目が呟く

ふん あの様な理不尽な狼藉などするものか 妖物が言う

「海上の月影を蹴散らしながら数十里ほど 海原を跳んでは駆けてゆき
月見の宴に加わっては 美酒をたらふく呑んだのだ」

悪酔いした事には 口をつぐむ。

「成る程 風雅な酒宴でございますな
私はもしや むら殿は何者かとの交戦後 直ぐ(すぐ)であったのではないか と思うておりましたが」

   ‥何故か
 妖物が慎重に訊く

「戦から帰還した僧兵の中には 今方いまがたの不調であったむら殿と
似通った様相を呈する人が居たのでございます」鍼医が答えた


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