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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.221 )
日時: 2019/06/08 10:44
名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)

夏目長編(3)161.「平安編161」初出19.6/4
元は女君達の部屋に飾られていたものを 仲睦まじい北の方(正室)が 夫の部屋へも分けていたのだった
目にも涼しい青紫の花をひとしきり眺めてから 主は目を落とした そして

瑠璃殿には 何として報いれば良いものであろうか、と言うた


実際 足を向けて寝られぬほどに恩義がある


しかし今は 数日間の滞在を終えて 今日帰路に就くあの鍼医を恙なく(つつがなく)この家から送り出す事が先決である


何しろ 此度の診療では 先ず賊の襲撃を受け 怪我を負い 体調を崩し酔漢に酷く絡まれた上 寝入った所で喧嘩には巻き込まれ 挙げ句の果てに 夜明け前から打明け話を 延々語り続ける羽目になった鍼医である

如何なる対価を支払ったとしても 到底見合わぬ過酷な務めであった

思い返すと身の縮む思いで太郎君が考えを廻らせる

くだんの 賓客の少将は 別段色好みとの噂は無いが 大酒呑みで酒乱と世間に聞こえている

昨夜も酷く酩酊していた それが不運にも 廊下で行き合った鍼医に べったり抱き着き あまつさえ部屋に連れ込もうとしていた所を 太郎君が引き剥がして宥めすかし 酔客を強引に客間に引き取らせた経緯があった

Re: 妖と人の子 ( No.222 )
日時: 2019/06/07 17:35
名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)

夏目長編(3)162「平安編162」初出19.6/6
あの様子では明朝には 何も 覚えておられぬであろう という位に少将は泥酔していた

それ故 賓客たる少将を送り出すのに際しては 末弟だけは鉢合わせせぬ様に取計らう心積もりでいた太郎君であったが 父から聞かされた話は 厄介事が既に持ち上がっている事に他ならなかった


夜明けを待ちかねた様に少将の供の男が この家の主たる父の所へ来て 昨夜宴席で歌舞や申楽さるがくを演じた一座の事を訊ねてきたのだ

就中なかんずく 妓女や歌舞を舞う巫者について詳しく訊いていった という


主人は 何事か失礼でもあったのかと 訊ね返したところ、

 そうでは無く 我が主が大層な執心であるので 是非とも一座の宿なりを お教え願いたい 云々という話であった。


歌舞を舞う巫者ふしゃとは 元は布教の為に諸国を巡り 男装の出で立ちで歌謡や舞を行う 特定の神社等に所属せぬかんなぎ達であるが 時代により姿を変え 後には芸能集団となってゆく

初期には子供も男子もいた 所謂いわゆる白拍子である

Re: 妖と人の子 ( No.223 )
日時: 2019/06/08 11:41
名前: 大寒波 (ID: n.VB6khs)

夏目長編(3)163.「平安編163」初出19.6/6
供の男の話を聞いたとき
宴席や催しで 妓女を見初めた富貴ふうきの者が 後日 自分の屋敷に当人を招く、という事は ごく有り触れたこと故に この家の主も 何ら疑問を持たなかった


思い起こせば 月下の佳人だとか天女だとか 大袈裟な形容を並べていた様な気もするが 如何せん深更しんこうに及んだ 宴の翌朝である


昨夜の演者に その様な水際立った美女が 居ったろうか 等と主人も眼を擦りながら ぼんやりと首を捻ったものであった


 してみるとあれは 瑠璃殿の事であったのか、

主が呻いて頭を抱えた 

昨夜の出し物には 確かに巫者の歌舞があり 男装の美姫もいたので 供の男は先ずは そちらに渡りを付けるのではなかろうかと 太郎君は思うが しかし。

いざ対面すれば別人だと 判るに決まっている

さりとて昨夜のあの者は 男だと知ったら 賓客はどう出るか皆目かいもく見当も付かぬ
場合によっては 恥を掻かされたと怒り出すやも知れぬのだ

酔漢とは いつの世も理不尽なものなのである

ともあれ供の来訪を聞いた時点で鍼医には 部屋から出ぬ様に伝えてある 総領息子は思惟を廻らせた

Re: 妖と人の子 ( No.224 )
日時: 2019/06/10 12:51
名前: 大寒波 (ID: C1Agejdf)

夏目長編(3)164.「平安編164」初出19.6/10
それにしても 少将はあれ程泥酔していたというに 昨夜の事を 一々覚えているというのは 慮外であった

思案の末に太郎君が口を開いた

「次の弟が語っておった祭事見物の話に乗ろうかと思います」

「ああ 予て(かねて)より言うておったな
車を連ねて 秋の例祭の見物に繰り出そうとか‥
うむ 祭事後には御社近くの山荘へ行くとよいか

然らば(しからば)直ぐに連絡して支度をさせよう」

人を呼び 外出と牛車の用意を指示すると 父の部屋を辞去した長男は自室へ向かう しかし廊に出た途端 先程使いに出した男が小走りで寄り来て 思い掛けぬ事を告げた


鍼医は 既に次郎君の部屋に居なかったのである


更には 少将の配下が
ここの女房や下働きの者達に『ただ今この邸には 親類や 預かりものの姫君などがおいでではないか』
等と訊ねていた という

太郎君は覚えず腕組みをして唸った

察するに 尋ね人が妓女の類では無い可能性も考慮しているらしい

朝から 随分とお忙しい事だ と少々呆れたが それはともかく不在の鍼医が案じられた


何らかの用向きがあって 部屋を後にしたに違いない

Re: 妖と人の子 ( No.225 )
日時: 2019/06/11 19:16
名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)

夏目長編(3)165「平安編165」初出19.6/10
何分 用も無く散策などに出歩くたちでは無いが 必要とあらば供も連れずに 何処へでも独りで赴く鍼医はりいなのである

しかし今はまずい。いつになく活動的な賓客達に見付からんとも限らぬ

硬い面持ちで待つ従者に心配いらぬと伝え、弟達への連絡と 鍼医をそっと探して部屋へ戻る様にとの言伝てを託すと この男とは 後でうまやで落合う事とした

その足で太郎君は牛車ぎっしゃと馬の手配の為に 車宿(くるまやどり/車庫)と廏へと向かった

通常 総領息子がそんな雑事を 自ら行う筈もないが急ぎの用向き故に 配下を通すいとまが無いのだ しかし腰の軽い長男には苦にならぬのである

網代車あじろくるまを都合三台用意し 内は畳敷の上 前後の乗降口には目隠しに簾を二重に重ねて 必要な用具を運び込む

敢えて女車は使わずに 似たような車を複数設えた

後は変事に備えて騎馬の警備を一人付添わせるが近頃 乗りそびれていた自分の乗り馬を使う様指示する

これらの差配さはいを手短に終えて廏の奥の積荷に座り やれやれと壁に身を預けると 朝から奔走していた太郎君はうとうとして眼を閉じた


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