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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.41 )
- 日時: 2018/03/17 08:37
- 名前: 大寒波 (ID: zt./Gg/M)
夏目長編(2)
10.
「お陰で助かった‥ ありがとう」
背を向けた妖に 青白い顔で礼を言うと 夏目は塀に手をついて歩き始めた
背後で羽音がして妖の気配が遠ざかってゆく。
いつもなら5分程度の距離を 30分かけて家に辿り着いた夏目は 玄関先で力尽き 再び気を失った。
がんがんに 暖められた自室で 布団に寝かされた夏目が目を開けると 塔子が不安げに 額のタオルを取換えるところだった
「貴志くん 良かった… 気分は?熱が高いの 朝になったら病院に行きましょうね」
塔子が ほっとした様子で表情を和ませて夫の滋を呼びに行くと すぐに滋が枕元に座って 養い子の顔を覗き込んだ。
心配が面に表れた硬い顔を緩めると
ゆっくり眠りなさい
腹は減ってないか、と穏やかに訊ねる
いえ 心配 かけて、すみません
掠れ声でそれだけを伝えた
夏目の声を聞いて 少し安心した顔になった塔子を見て 二人を酷く心配させてしまった
と心苦しく思いながら目を伏せると時計が目に入った
ふらふらで玄関に入った時から小1時間が経ち
0時を廻っている。
時計を見た事に気づいた塔子が ニャンコちゃん
遅いわね と話し掛ける
「夕食の後に 一度帰っていたけど 貴志くんが帰って来る かなり前にそわそわしてまた外に行ったの」
ニャンゴローは入れ違いになったかな と滋が言い すぐに戻ってくるよ と付け加えた。
- Re: 妖と人の子 ( No.42 )
- 日時: 2018/03/17 08:43
- 名前: 大寒波 (ID: enKf/rbe)
夏目長編(2)
11.
ストーブで暖まった大きな古い家は あちこちから家鳴りがする その音で夏目は目を覚ました
傍らの時計は2時を指し 先程まで 塔子が使っていた座布団には ぶさいくな猫が座っている。
ほっとして 掠れ声で
先生おかえり と呟くと
お前こそ 遅いお帰りだ と妙な顔で饅頭猫が言う
塔子さんは、と聞くと
今は階下で 1時間毎に
様子を見に来ていると 教えてくれた。
「ところでお前 何があった 妖の匂いがべったりだぞ あてられたんじゃなさそうだが 体力が0ではないか まさかこの寒空に外で名前を返したのか 」
「う‥ん」あの羽根妖達の事をどう話したものか考えていると 用心棒猫が枕元に来て丸くなった 寝る時の定位置なのだ
そちらに顔を向けると 猫のつるんとした体が常になく毛羽立ち 小さな枯れ草まで付いている ので あれ 毛繕いを欠かさない先生が、とよく見ると背中の膏薬が剥がれていた。
先生 傷薬取れてる 驚いて起き上がろうとする夏目が肘を突いてもがく
「阿呆う 起きるな 熱が40℃超えてたんだ 今は薬で下げてるだけだ 安静にしてろ」饅頭猫が布団の上に飛び乗って押さえ付ける
でも傷が見えてる、と じたばたする夏目に
後から塔子に手当てして貰うから問題ないと言うと漸く静かになった
「あのな せんせい 葉屑が付いてるぞ 帰宅後にまた外に行ったってきいたんだ もしかして俺を探しに行ったのか」
阿呆う 呑み直しに行っただけだ
饅頭猫がそっぽを向く
心配かけてごめんな
ふっと微笑って 今日の妖達との経緯を 休み休み
かいつまんで話した夏目は 羽の妖の特徴を訊かれて
"大きな鷲の羽を生やして両耳に小さな金の環を付けてた" と答えると
あいつか、と饅頭猫が渋い顔をする。
やっぱり知り合いか、とぼんやり言う夏目が震えているのを見た猫が
どうした と慌てると
こんなに部屋暖まってるのに寒いなぁ‥と呟く。
塔子を呼んで来る、と飛び出す猫に
「待ってくれ せんせい 塔子さんには言わないでくれ 俺に付きっきりなんだ 1時間はやすんでもらわないと」掠れ声で頼み込む
- Re: 妖と人の子 ( No.43 )
- 日時: 2018/03/17 08:47
- 名前: 大寒波 (ID: TkqspnRJ)
夏目長編(2)
12.
それで悪化したら二人がもっと心配するだろうが と諭しても 言う事を聞かない
「大丈夫 だから、俺が
さむさに 強いのは、 知ってるだろう すぐに、よくなるから‥ だいじょうぶ、」
二人に言わないでくれ
頼むからと うわ言みたいに繰り返して震える子供を 顔をしかめて見ていた 用心棒の猫が ちっと舌打ちする
すると 太鼓を撫で打つ様な音が響き 白煙がうず高く上がって饅頭猫の姿が隠れたかと思うと 煙の向こうに大きな白い獣が 現れた。
足を折って伏せていながら 部屋の大半に身体が及ぶほど 巨大な妖だった。
狐や狼に似た姿で ぴんと尖った耳に 長い豊かな尻尾を持ち 純白の艶やかな長毛で全身を覆われ 足には鋭い爪が生えている
その真っ白な獣が部屋の主に音もなく近づき 縮こまる子供を 布団ごと前肢と尻尾で抱え寄せて丸くなる
そのまま静かに伏せると 震える頭をそっと 長い毛並みでくるんだ。
程なく 震えが治まった
夏目が目を開けると 周り全てが 白いふかふかの豪奢な毛並みで覆われていた
すごいあったかいなぁ… 天国みたいだ
思わずため息みたいに洩らすと
馬鹿もの 現世だ と声が響いた
せんせい、そのすがた、 ひさしぶりだな つやつやで 温かくて、 光ってて いい匂い
やっぱり、天国かな…
青白い顔で嬉しそうに
微笑うと 夏目は目を閉じ 今度は深くふかく眠った。
- Re: 妖と人の子 ( No.44 )
- 日時: 2018/03/17 09:02
- 名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)
夏目長編(2)
13.
「ご馳走さまでした」 「おじゃましましたー」
藤原家から2人の高校生が出てきた
今日は随分 顔色が良くなってたな
おお明日には学校行けそうで良かったよかった
振り返ると2階の窓に夏目が立って見送っている
二人して近くに駆け寄り 庭から もう布団に戻れ、何か羽織れ、とジェスチャーする。 最初はその意味が判らずに 首を傾げていた夏目も やがて理解し 微笑って手を振り窓から離れた。
ほっとしながら門をくぐる二人が ぶさいくな飼い猫とすれ違う
猫は勝手口から家に入っていった
夏目が深夜に倒れて 寝込んだ日から2日が経っていた
二階の部屋では 布団に入って体を起こした夏目が ノートを開いている所だった
「先生早かったな」
「野暮用だからな」
仲の良いクラスメイトが学校を休んだ夏目を 期末前だからと心配してノートを持って来てくれたのだと笑う
面映ゆそうな微笑だった
有りがたいなぁ‥ どんな礼をしたら良いんだろ 赤みの差した顔で夏目がぼうっと呟く
「昼飯でも奢るんだな
あとは心から感謝の意を述べる事だ 分かる相手にはそれで伝わる」
うん そうだな
破顔する子供に もう寝ろ 明日は登校するんだろうと促して 猫は階下に降りていった
台所では塔子が夕食の支度に忙しかったが 猫の姿を見掛けると
ニャンコちゃん これ見て、と髪を見せる そこには磁器で出来た薄紅色の髪留めが付けられていた 花模様と小さな梟を図式化した趣味の良いデザインで塔子に似合っている
「さっき貴志くんが この間出掛けた時の お土産をくれたの 滋さんには梟のペーパーウェイトでね お揃いですって」大層嬉しそうに笑った。
なご— と猫みたいに鳴いた用心棒猫が2階に戻ると 夏目は布団に横になり 目を開けていた
塔子が喜んでたぞ と教えると うん、と嬉しそうにする。
「梟は長寿と家内安全、 そして家の守り神としての縁起物なんだ だから二人にと思って 」
成る程そういう事かと納得していると 先生、俺のウェストバッグを取ってくれないかと横になった夏目が頼む
- Re: 妖と人の子 ( No.45 )
- 日時: 2018/03/17 09:22
- 名前: 大寒波 (ID: myDpNyTl)
夏目長編(2)
14.
バッグをかき回して紙包みを引っ張り出した夏目が、これ先生にみやげだ と差し出す
「私にか」
妙な顔をして 饅頭猫が受け取り、箸も使える器用な前肢で包装紙を開けると ネットに入った沢山のチョコレートだった
銀紙に包まれたチョコレートは雀の形をしている
「先生は雀が好きだろ 雀は豊穣の象徴なんだってさ この先もニャンコ先生が 食べ物に困らない様にな」
ぱりぱりと銀紙を剥くとチョコを 口に入れた饅頭猫はうまい と呟いた。
「先生 一昨日はありがとう 眠るなんて 到底出来やしないほど 寒気が酷かったのに、信じられない位に身体が温まった 助かったよ」
「何のことだ」
先生の毛皮の襟巻きだよ と夏目が笑う
ミンクも銀狐もチンチラも束になっても敵わないくらい温かかったぞ
流石は高級妖さまだよな などと言う。
「…縁起でも無い事を言うな」
夏目が更に笑いころげる
ふと、お前 自分には何か買ってきたのか、と饅頭猫が訊くと
「ああ目当ての参考書をばっちり買えたよ」
「そういう実用的な物以外でだ」
参考書を買いに行った先で 他に何が要るんだ?
と訝しがる子供を じっと見た用心棒の猫は
「口開けてみろ」
言うが早いか 素直に口を開けた夏目の口に チョコレートの雀を放り込んだ。
「わっ 先生良いのか 自分の分が減るぞ 喰い意地張ってる癖に…旨いな」
「口の減らんガキめ、半分こだ、半分こ」
半分こって何だよ?
いつもの威勢を少し取り戻した子供と 猫のふりをした用心棒の掛け合いは、塔子が夕食のお粥を
持って部屋へ来るまで途切れることはなかった。
◇夏目長編(2)END◇
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