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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.86 )
日時: 2018/09/30 00:28
名前: 大寒波 (ID: zt./Gg/M)

夏目長編(3)26.
「夏目話・平安編26」
決着を着けるのは命のやり取りで 気軽に応じる事でもなかろうに まるで自分の命を 塵芥の様に扱う

この妖物と遭遇した時、夏目は あれだけの強大な妖力を持ちながら 喰われかねない距離にまで接近を許し何ら抗わなかった


 死に急ぎではなくて   …これは死にたがりか

「…ふん 喰うのは当分先だ そんなに痩せっぽちでは喰いでがない 血も増やせ 」
相手の思う壺に 喰うてやるのも 何だか業腹で 妖はそんな事を言ってみる


 やれやれ 血を減らしたのは御自分でございましょうに

夏目の言を遮り

「とにかく職務を果たせ この家は其方そなたの 大事な仕事先なのだろう 話は後だ 」


訳知り顔の妖物の言葉に 随分と人の世に詳しい妖も居るものだと 夏目も内心で感心したが そんな事はおくびにも出さず

では 失敬、

と客間を後にした


主人に挨拶をして 本人の体の具合や 家人の体調を訊ねて 誰を診て薬を処方するかを決める

滞在の日程内で 病や 不調がある者に順次 不快や不具合の治療を施し 改善方法を教え 患者自ら日常的に行える様に導く。

Re: 妖と人の子 ( No.87 )
日時: 2018/10/06 06:58
名前: 大寒波 (ID: uzXhjanQ)

夏目長編(3)27.
「夏目話・平安編27」
病に対してできる事は少ない。

この時代は病気になると先ず 祈祷を頼むのが普通で 医の確実性はそれ以下だったとも言える。

本物の漢方薬は言うに及ばず 薬草も一般の民には手が届かない
薬の恩恵を受けられる者は限られていた

医療を司る典薬寮は 帝皇族以下宮中関係者専門の医療機関だからである
◇◇◇
夏目は幼少時は仏門に身を置いていた  学僧として修行と学究に一生を 奉じる筈だったが 訳あって得度を受けずに還俗し 僧侶にならなかった しかし仏の教えも 師の教えもその根幹を成している

一方で祖父から学び受継いだ医の知識は、漢の医書に基づき 入手困難な漢方薬を身近な薬草で代用し鍼灸と組合わせた応用的漢方で実効性が高い

何しろ 病気の身内を救う為に 優れた学者が必死で書物を読解き 片端から薬草薬剤を試して得た実践的知識である 更に当時の医療の主流の灸と鍼の技術は 祖父が漢方医と韓医の教師をつけて夏目に学ばせた 呪術的治療も多かった当時 確かな効能がある治療を施す鍼医は 貴重であった 

そして夏目は僧の修行当時、 仕えていた重病の大僧正を治癒させた神童と 世間の評判が高くなり その結果 敵が多くなったのだった ◇◇◇

Re: 妖と人の子 ( No.88 )
日時: 2019/07/14 00:42
名前: 大寒波 (ID: qAj0rN00)

夏目長編(3)28.
「夏目話・平安編28」(初出'18.10/06)
この家の主人の持病には 新たな煎じ薬を処方し、予め 症状を訊いていた北の方には 御簾越しに問診した後で 各々の不具合に 応じた療法としての養生を指し示す
宮中に出仕中の子息達は 帰宅する昼以降に診る事となった

屋根の上で 巨大な猫みたいに丸くなった妖物が 長い尻尾を ゆらゆらさせながら屋内を覗き込んだり 音も無く 部屋に入り込んでは 一連の診療を物珍しげに眺めていた

どうにも 好奇心が抑えられない様子で、人の世に詳しいのも道理である

興味津々の妖物をよそに 仕事が 一段落ついた夏目は 部屋に戻り手早く食事を済ませた所に 食後の白湯を運んで来て、 夏目の膳を見た年嵩の女房に

「薄目の粥ですのに こんなにお残しになっては お身体がもちませぬ もう少しお召し上がりください」等と子供の様な事を言われている

黙々と残りの粥を食べ始めた夏目は やはり表情が薄いが この家の者は慣れているらしく誰も気にもしない

白湯の他には 枇杷と無花果の実を細かくして盛った鉢が添えられている
何れも滋養がある果物で 傷を負い 具合を悪くした夏目に 特別に出された物だと思われた

Re: 妖と人の子 ( No.89 )
日時: 2018/10/05 12:22
名前: 大寒波 (ID: TkqspnRJ)

夏目長編(3)29.
「夏目話・平安編29」
心尽くしの果物を前に

「かたじけない 」
呟くと 女房は目元を和ませて 「お身体 お大事にしてくださいませ それでないと末の君が…」
言い終わるか終わらぬ内に ぱたぱたと軽い足音が客間に近付いて来た

「 瑠璃様、今回はどれ位居られます 」言うが早いか箸を持ったままの夏目に飛びついた。

「姫さま 挨拶も無く客間に入るとは何事でございますか」
すかさず たしなめられた姫君を 屋根の上から眺めていた妖は こりゃ違うか と思っていた

この家の主人が 単なる出入りの鍼医に過ぎぬ 夏目を まるで親戚かの様な扱いをするので、末の姫とやらの 婿がね(婿候補)にでも望んでいるのか、と 勘ぐっていたのだが

姿を見せたのは振り分け髪の幼女だった 裳を着けるどころか6、7歳と見える 婚姻にはまだ遠かろう

だっていつ迄経っても
私の番にならないし もうすぐ兄様達が 帰ってくるもの

きゃあきゃあ 口答えしながら夏目の背中に齧り付いている

客間に乱入するのは論外だが 外の人間に貴人の女性が姿を見せるのが 一応赦されるのは彼女がまだ 裳着前(未成人)だからである

Re: 妖と人の子 ( No.90 )
日時: 2018/10/10 08:02
名前: 大寒波 (ID: zt./Gg/M)

夏目長編(3)30.
「夏目話・平安編30」
とは言え出入りの者の部屋へ踏込んで お喋りに興じる事などが 深窓の令嬢にとって 一般的な行動のわけが無い この鍼医は余程 この家の主と家人の信頼を得ているものと 思われた

滞在日程を訊かれて
「今日を含めて三日間にございます」

「わぁこの度は ゆっくりなさるのね もう父上と母上の診立ては終わったのでしょ 私の番だもの すぐに部屋にいらっしゃる?」 夏目の答えに嬉しそうな声を上げたかと思うと

怪我をなさったと聞いたけど ちょっとまだお顔が青いみたい、まだ痛む? お加減は?

夏目の首にしがみついて巻かれた布を撫でながら今度は心配そうにする、 幼い姫は大層愛らしかった

ふっくらとした頬は血色良く 大きな眼は利発そうに黒々と輝き 切下げの前髪が動きにつれて さらさらと揺れている


夏目と並ぶと あたかも絵巻物から 抜け出て来た様に秀麗かつ華やかである

しかしそれは 兄と妹の様な慈みと親愛で 当然ながら男女の情とは違うのだった


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