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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.46 )
- 日時: 2018/03/17 11:26
- 名前: 大寒波 (ID: 23qbUXXN)
夏目長編(2)
[レス番№32〜№45]
END
- Re: 妖と人の子 ( No.47 )
- 日時: 2018/03/20 12:57
- 名前: 大寒波 (ID: myDpNyTl)
夏目中編(2)
1.
ニャンコ先生こと斑は急いでいた 丸々と太った短足の猫で太鼓腹は地面をかすりそうである その短い足に鞭打って目的地へ走り続ける
昼を過ぎてから 冷え込みが緩み あちこちの塀や屋根瓦には 丸く膨らんだ小鳥が並んで ピチチピチチと囀り暖かな陽射しを浴びている
いつもなら追い掛けずにはいられぬ 心惹かれる光景だが 今はそれどころでは無い
ハフハフ 息を切らしながら駅への道を辿ってゆく
急ぐのは時間の制約があるからで 気ままな猫らしくも無い事だった
とはいえこの饅頭猫は只の猫ではなく、招き猫を依り代として姿を借りている妖怪なのだ。
その妖を飼い猫として一緒に暮らしている夏目貴志が 面倒事に巻き込まれたのが二日前の事で、饅頭猫はその現場に向かっている最中だった
急ぐというなら獣姿になればひとっ飛びなのだが 捜索中の相手からも丸見えになる ここは猫姿が最適だった
連中がまだ居れば良いが 、と呟いたところに
夏目の話で聞いていた 寂しい道外れの木立が見えてきて あれか、と辺りを見渡しながら 匂いと気配を探る
木立の裏の地面には 入り交じった足跡と 何かが転がったみたいな長い筋が2本付いていて 確かにここだった事が分かる
流石にもう 回復の為に地に這いつくばってはいないが まだ遠くには行ってないかもしれない。
妖物が宿りそうな樹々や 古い祠の心当たりがある方角に 饅頭猫は走っていった
木立から 少し行った森の中ほどに立つ洞のある大樹には 妖物達が見当たらなかったので この森を抜けた先にある無人の古びた祠に向かう
勾配のきつい森中の小道を登って 森の反対側に出ると 少し開けた所に小川だが清流がある 上流へ遡ってゆくと古い祠が建っているのだった
上流に向かって猫がとたとた走っていた時だった
突然 辺りが暗くなった
山特有の天気で 突然曇ったのかと 天を仰ぐと
人の形の大きな影が地上の猫を覆う様に飛んでいる。
いたな、と立ち止まると 頭上の人影も ばりばりばりと風を切る大きな音を 立てて 川の反対側の杉の大木に降り立った。
- Re: 妖と人の子 ( No.48 )
- 日時: 2018/03/23 15:36
- 名前: 大寒波 (ID: uzXhjanQ)
夏目中編(2)
2.
高い木の上から猫を見下ろしていた鷲羽根の妖が
これはまた珍妙な、白い仔豚の妖物か?と呟いて「こんな所で 何を探し廻っている 私に用か」
「そうだ まだ逃げ出してなかったか」
仔豚と言われた饅頭猫は喧嘩腰になっている
「おお? その声は斑か 何だ その貯金箱みたいな格好は」
「霊験あらたかな招き猫だ ひとの事は放っておけ」
完全に腹を立てた猫は 相手がいる大木に 短い手足で素早く駆け上り 妖の眼前まで来た もはや一戦交えるも辞さない構えである
一方 改めて間近で招き猫に相対した羽根の妖は
片眉を上げて まじまじと相手を眺めている
そして合点がいったという様に 長い溜め息をついた
ひたと目を据えた饅頭猫は 相手の様子が不審そうだったが 当の妖は意外な事を言い出した
「…そういう事か お前傷を負っているな かなりの深傷とみえる 矢傷か」
どうやら妖は 饅頭猫の貯金箱的外見に気を取られていた訳ではなく 背中に貼られた膏薬に 考えを廻らせていた様だった
「それがなんだ」
言下に猫が言う
久し振りだというのに そう噛み付くな と
妖が苦笑する
「雑談などする気分ではない 先に手出しをしたのはそっちだ」
「夏目殿はどうしてる」
あの夜から高熱で未だに床を離れられん と猫が答えると、それまで明朗だった妖の表情が曇った
「ふむ 人の子は弱い 無理をさせた」
「あの夜は初雪になった 吹きさらしで妖力を放出して 体力も使い切ったら当然の事だ」
「そういう危機に備えての守護ではないのか 用心棒は何処をほっつき歩いていた」
お前の知った事ではない
猫は姿勢を低くして大枝の上で四肢に力を込めた
「待て こちらはやり合うつもりは無い
お前、 硫黄の臭いがするな 酒宴と言って湯治に行っていたのか」
「鼻の利く奴だ」苦々しく応えながら 猫は警戒を緩めない
「それならそうと 本当の事を言ってやれば良いだろう 肝心の時に何故用心棒が居ないと聞かれて あの子供は言葉に詰まっていたぞ」
- Re: 妖と人の子 ( No.49 )
- 日時: 2018/03/26 08:52
- 名前: 大寒波 (ID: zt./Gg/M)
夏目中編(2)
3.
「一刻も早く万全の体調に戻して強大な妖力を回復する為の算段という訳か」
まぁそれも当然だがな と羽根の妖はつまらなそうに呟く。
「私とお前に確執があるのを すぐに気付いたあの子供は 自宅まで飛んで送る、という私に 近所で降ろしてくれと言い張って聞かなかった
お前が在宅だと悶着が起こるかもしれん と言ってな どうあっても鉢合わせになるのを避けるつもりらしかった 」
その時には養い親の家の玄関先で万が一にも騒ぎなど起こされては困るという事かと考えたが
妖は言葉を一旦切った
「降ろさずにいると 林の繁みの上でじたばたして飛び降りようとした」
驚いて死にたいのか と言うと、あの子供は 少し前には 羽根妖に空から落とされたり 拉致された二階の窓から飛び降りたりもしたと言うではないか
「事実だ」憮然として饅頭猫が答える
一体何の為の守護なのだ
妖は溜め息をついた。
「仕方なく 降ろした近所から 僅かな距離を半時間掛けてよろけ歩いてゆく夏目殿を 上空から見ていると、あの人の子に興味を覚えてな
引き返して攫って行こうかとも思ったものだ」
「……… 」
そう睨むな と笑って妖が続ける
「ああ迄して 私とお前が顔を合わさぬ様に立ち回るのにも好奇心が湧く
ここを離れる前にまた会いに行って 突ついてやろうと心算していた所にだ、当のお前が 現れたという訳だ 」
- Re: 妖と人の子 ( No.50 )
- 日時: 2018/04/02 23:49
- 名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)
夏目中編(2)
4.
羽根妖は語り続ける
近頃の巷の流説にある、数多の妖を支配し酷使するという夏目レイコの顔を持つ極悪非道の凶漢と 、
それに従い空を翔び地を駆け 妖も人も蹴散らし喰らう凄惨な獣などという 可笑しな誤解よりも 実際のお前達はもっと面白い。
お前が夏目殿の守護を請けたのは 彼の死後に友人帳を譲渡する約束を したからだと聞くが、だからといって1日でも早く手に入れる為に 彼の危機を看過でもしているのか
「あの子供の周りには余りにも危険が多い 妖にしろ人間にしても。
お前が彼をまともに守るつもりが無いなら
“自分が代わって守護を行う”
“斑はたまたま一番先に夏目から約束を取り付けただけで儲けものだ”
と 言い出す妖物が出ているらしいが 当然だろう」
連中にしてみれば友人帳の譲渡の保証と、自らの妖力の増大が見込める夏目を一緒に手に入れる好機だからな
現任者が務めを放棄しているのなら黙っていないだろう
ずっと黙っていた饅頭猫が口を開いた
「自らの妖力の増大が見込める、とは何の話だ」
「共寝してその妖力を吸収するのに決まってるだろう」
「なに?未熟なガキを組み敷き陵辱して力を得るだと。守ってやる代わりに女郎扱いするつもりか」
妖が平然と応える
未熟なと言うが 正体を無くした彼を抱きかかえた時 目を瞑っているとまるで美しい娘にしか見えん 体躯はそれでも少年らしく引き締まり 薄く筋肉ものっているが 抱えた腰などは腕が廻る程に細い。
妖や人の欲望をかき立てるには充分ではないか
第一 彼は生殖年齢に達している お前が夏目を未熟だと思いたいだけではないのか 彼は子供ではないぞ
飛び降りようとして暴れた時に きつく抱き締めると身体の匂いが えもいわれぬ良い匂いになった
あれは人間が相手を欲する匂いだ
あの人の子は 稀に見る清澄さと強力な力を持ち 色香も備えている
お前が 夏目殿を真剣に守護しないのならば 私が守ってやってもよいぞ
『 だまれ 』
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