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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.186 )
日時: 2019/04/05 18:08
名前: 大寒波 (ID: zt./Gg/M)

夏目長編(3)126.「夏目話・平安編126」
この朝より数刻前の深更(真夜中)に時は遡る

明るい月に 自らの影を浮かび上がらせた 巨大な白銀の獣の妖は 宙を跳び夜空を駆け続けていた

管弦を聴き 数日間を過ごした邸からは 遥かに遠ざかっている
もう戻るつもりも無い


一心不乱に 夜空を駆けてゆく妖は 狼や狐に似た姿で 銀白色の艶やかな体毛に覆われ 長い尾を靡かせている 眼の周りに赤い隈取りと 眉間に紋様があるしなやかな体躯の 優美な獣だが 今はほぼ瞼を伏せて物思わしげに見えた


先程は何となく 大洋に出てみた 水切り石の様に海面を跳ね飛んでは 上がる飛沫しぶきや海の匂い 水滴の清涼さを楽しんだ

空腹を覚えて 水鳥の様に躯を畳み海中に飛込むと そこで大きな鰐(わに/鮫)を見つけた ぱくりとひと呑みにして腹を満たす
精気に満ちた滋養の有る食物である

そのまま海の中から水面を見上げると まるい月がゆらゆらと波打っていた

あの月を さっきは別の所で見たと ふと妖物は思う

部屋の外に張出した縁を月光がくっきりと 照らし出し その上を自分が歩いて行くと 青醒めた人の子が居た

Re: 妖と人の子 ( No.187 )
日時: 2019/04/08 17:05
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

夏目長編(3)127.「夏目話・平安編127」
息を凝らし身を固くした 彼奴あやつは 近寄る者が自分だと知った途端 力を抜いたのが ありありとみえた

思えば可笑しな話だ 夜半やって来たのが 妖物と分かって 心底安んずるとは、
そこまで考えてから 彼奴の事など何故思い出す、と妖は考えを打消した


海中から飛び出し 浜に降り立つと 身震い一つで水気を払う 新鮮な魚から精気を得て 空腹も満たされ申し分ない体調である大きくて肉も脂も みっしり詰まった旨い魚だった

‥掌に載せて彼奴が差し出した果実は 小さく少量だったが 酷く美味だった 白い花に盛られた果物の様で 気後れするほど清くみえた

何時の間にか またあの者のことを 思い出していた事に気付き 首を振って打ち消す


そうだ自分は山のものだ いつに無く 海辺などにいるからおかしな思惟しいに陥るのだ と白銀の妖は考え 最近まで根城にしていた山へ向かって 宙を跳び空を駆け出した

程なく 見知った山に着きすぐに 馴染みの妖達の月見の宴に乱入して 美酒を呷る

「これはまだら様 良き月夜でございますな」皆に挨拶を受けても ああ、だの うむ、だのと碌に返事もせずに たらふく呑んだが 酔いはちっとも回らなかった

Re: 妖と人の子 ( No.188 )
日時: 2019/04/07 08:40
名前: 大寒波 (ID: JYq9u7Yl)

夏目長編(3)128.「夏目話・平安編128」
「斑様は 良い呑みっ振りだな まあ何とも不景気な顔つきだが」
「全くまったく 何を悄気しょげておられるのやら」
顔馴染みの中級妖の 一つ目と牛頭ごずが ひそひそ話をしているのが聞こえる

「あれ程に大いなる体躯と 高まった妖力の威容を誇っていながら 一体何をいじけておられるのか」

誰がいじけておるか、と白銀の妖が思うも 聞き流す
更に宴が進むと方々で 酔払いの様々な戯言たわごとが聞こえ始めた

『術者と契約を交わし 使役されたあの妖は 約定の牛三頭を反故ほごにされてな 怒って七代先の子孫にまで取憑くとせんしたそうよ』

『おお 人のやりそうな事だ』

『他の話もあるぞ 或る妖が 川で助けてやった人の家を百年後に訪ねるとな孫の者が その妖を大いに歓待したそうだ 先祖から恩ある妖怪が来たら もてなす様に言い伝えられていたそうな』

『つまりは 約定を破るも恩に報いるも 結局はその者次第か』
『ふむ 人も妖同様に気紛れなものよ』

いやはや全く 人とは分からぬものよ 付きおうたりせず喰うのが良かろうな

呑んだくれる白銀の妖は周りの話を 聞くとも無く聞いていた

Re: 妖と人の子 ( No.189 )
日時: 2019/04/08 19:42
名前: 大寒波 (ID: rDOS.pEA)

夏目長編(3)129.「夏目話・平安編129」
そんな約定などは その場限りの口約束だろうに

それを破られたの 何だので恨み言とは。 妖と人など騙し騙され 互いに出し抜き合うものだ 守れ守れと見苦しいことよ


他人事丸出しで ぶつぶつ呟いていた白銀の妖は はっとした 思い出した事があった


“ 今は忙しいが近い内に 決着をつける事に致しましょう ”

 あの言は約定だ。

中途のままの 揉め事の決着を 近々につけると彼奴あやつは確かに 申し合わせ(取決め,約束事)を
この私にしたではないか

己の口で 確かに約定した事を 桑門(仏僧)ともあろう者が 相手を追払って得手勝手に反故にするとは何事か

ひとこと文句でも 言うてやらんと納まらぬわ


ついさっき 約定は破られるものだ とか呟いた舌の根も乾かぬ内に 当の妖が約束を根拠に 鬼の首でも取った様に 人を問い質そうというのである

己の事は棚に上げつつ 理論武装した白銀の妖は 杯を放り出した


一つ目と牛頭は 宴席の真中に もうもうと上がった土煙を 何事かと驚き振り返ったが そこで呑んだくれていた大妖は 影も形も無かった

Re: 妖と人の子 ( No.190 )
日時: 2019/04/08 20:06
名前: 大寒波 (ID: uzXhjanQ)

夏目長編(3)130.「夏目話・平安編130」
土煙を巻き上げる程 慌てて夜空に飛び出した妖は 目にも留まらぬ速さで 宙を駆けて行く そしてあっと言う間に 出て来た邸の上空に着いた

そして馬の妖の三篠みすずが言った事は本当だと知る

邸を上から見下ろしても 他の人家の様に 屋根や庭が明瞭には見えない

分厚く氷結した池の底を覗き込んでいるが如く、白色に滲み(にじみ)曇った半透明の膜の様なものが邸全体を厚く覆っていたからである

振古(しんこ/太古)の魔除けとはこれか、白銀の妖は唸った

これでは どこに何者がいるのか分からない それどころか建物の形さえ 判然としなかった

来客の為に夜間ながらも 裏門は半開きであったがそこへ飛び跳ねながら 路に小鬼が現れ 門から中を覗き込んでいる

それが頭を差入れた途端 ばね仕掛けみたいに 弧を描いて派手に弾け飛んだ
妖の体が 空中でみるみる縮み薄くなってゆくのが上空からは良く見えた

地に落ちた時には 豆粒位の体となって 逃げて行った もはや二度と妖物の形を取れぬ程に力を失っていた
  「 ………。」

白銀の大妖といえども 見た事も無い魔除けである
自分なら これ位の威力でも滅したり死にはしない ‥まともに喰らえば
まあ、山の洞かなんかで数年は 眠り続ける必要はあるかも知れんが。


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