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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.126 )
- 日時: 2018/12/21 19:55
- 名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)
夏目長編(3)66.「夏目話・平安編66」 御簾を器用に潜り 部屋に入ってきた妖は 緊張を緩めた夏目に言うた
「酒癖の悪い酔漢だとでも思うたか」
「……覗き見でございますか」 夏目が溜め息をついた
「ひとの面前で てんで勝手に繰り広げた痴情沙汰など覗いてはおらぬ」
妖が つんと頭を反らす
巨大な妖は 狐や狼に似た獣の姿をしている 艶々した白銀の体毛に覆われ 尾はふさふさと長い 眉間には紋様、眼の周りには赤い隈取りがある 堂々たる大妖である
「むら殿、」 黙り込んでいた夏目が 口を開き 傍らに置いていた紙包みを取り上げた
「宴席で残してしまった物なのですが 良かったら喰うて貰えませぬか」
開いた紙包みを見ると
干し鮑や鮎に 焼いたうずら、山鳥などで なかなかに豪勢である
「まぁ喰うてやらんでもない」 そう呟いて妖は 夏目が手にした食物を ひと欠片口にしてみる
「旨いな」 昼間と同じ事を言って 妖は慎重に食べ出した
差し出した食物を 黙々と食べる巨大な妖に 夏目はじっと視線を向けていた
- Re: 妖と人の子 ( No.127 )
- 日時: 2018/12/24 00:41
- 名前: 大寒波 (ID: 23qbUXXN)
夏目長編(3)67.「夏目話・平安編67」
光を映さぬとは思えぬ
黄玉 にも似た色の淡い瞳に 御簾越しの月光が差込んで 更に色を無くしている
料理をもぐもぐ 平らげつつ 妖はその光景を横目で眺めていた
透明な瞳を半ば伏せて 立つ夏目は 到底人の子とは思えなかった むしろ妖や精霊の類いに近く見える 月の影響もあろうか、と御簾越しの明るい月に目をやる
そんな事を つらつら考えながら 美味な食物を味わっていた妖は 立尽くしていた夏目が そろそろと上げた手に 気付いていなかった
「 うお 」
妖が突然声を発し 咥えていた食物を取落とした
他に気を取られていたら顔に何か触ったのだった 咄嗟に目の前の夏目を見ると 戸惑った様に妖を見上げていた
何の事はない、夏目が 妖の鼻筋を空いた手で 撫でただけの事であったが
相手の驚き様に 虚を突かれた様子である
「失敬致しました 断りも無く躯に触れるなど 不躾でございました」
いつも通りに堅苦しく詫びると 浮かんでいた表情も 立ちどころに消えてしまった
今 私を 撫でたように感じたが…
この者が 私に触るのは初めてのことではないか、と思い返して 妖はますます動揺した
- Re: 妖と人の子 ( No.128 )
- 日時: 2018/12/25 20:00
- 名前: 大寒波 (ID: n.VB6khs)
夏目長編(3)68.
「夏目話・平安編68」 「いま私を撫でたか そなた」
動転している為に 考え事が人の幼児みたいに そのまま口をついて出た
「食物を 無心に食しておられるのが、 …猫の仔かの様に思われて 少し触ってみたくなり申しました」
小さく答えると 夏目は一礼して 素早く御簾を潜って 部屋から出て行こうとしたが しかし夏目の足は廊下の床に届かなかった
白銀の獣の妖が 夏目の躯を かぷ、と横咥えにして室内に 軽々と引戻したからだった
喰われる
とは感じなかった
牙を立てぬ様に そうっと咥えられているのが 分かったからである それこそ猫の仔みたいに
巨大な妖は 夏目をすぐに離して意外な事を言うた
「ふむ 触りたければ触るがよい」
艶々した体毛に覆われた頭を反らせて続ける
「本来 この上級にして高位なる大妖の私に 触れるなど 人風情には叶わぬ事だが 今日は特に許す」
要するに 撫でろ と言っているのだが 何処までも偉そうである
「いえ 結構でございます 単なる恣意(思い付き)にございますので」
しかも 言下に断られた。
「…良いからやれ」
- Re: 妖と人の子 ( No.129 )
- 日時: 2019/01/08 22:44
- 名前: 大寒波 (ID: 3f2BBQD7)
夏目長編(3)69.「夏目話・平安編69」
反りくり返って そんな事を言う妖物は ふん、と反らした鼻先が 天井につかえていて 体躯は座っていながら 部屋の半分以上を占める程で真に大きい
側から見る者があれば こんな巨大なものを どうやって 人が撫でさすれというのかと 呆れそうな巨体である
仕方なく、という様子で では身を屈めてくださらぬか
夏目が言うと 遥か上の妖の顔が そろそろと降りてきた気配があり 少し逡巡してから 首筋らしき辺りに腕を延ばすと 獣の妖の毛並みに 白い手が埋もれた
「…兔の妖なのでしょうか」
「 違うわ 」
誰が兎だと思いながら 首元や鼻筋を撫でられて 妖は大きな眼を細めている
兎かと思うほど 艶々した毛足の長い体毛を 夏目は自分の手指で梳いては 摩る事で 相手の姿形を丁寧に確かめている
話す事柄から 何となく山犬の様な妖物なのではと考えていたのだが
触ってみると 狼や山犬の様な強い(こわい)毛並みとは違う 繊細で柔らかな体毛に覆われた躯を持つしなやかな獣であった
夏目が 腕を一杯に伸ばしても 足を畳んで伏せた背に届かぬ程の大きさで 長いふさふさした尾を持ち 頭部には突き出した鼻筋に大きな口と 尖った立ち耳があり 杏仁型の眼はひたと閉じられている
- Re: 妖と人の子 ( No.130 )
- 日時: 2019/01/08 22:48
- 名前: 大寒波 (ID: JYq9u7Yl)
夏目長編(3)70.「夏目話・平安編70」
大きな眼の周りを 慎重になぞると くすぐったそうに妖は瞬きをしたが 風を感じる程に 睫毛が長い
随分 優美な妖物なのだな
夏目が内心で思う
近付くと 丁子を思わせる典雅な匂いがする
獣の妖物なのに 不思議であるし どこか嗅いだ覚えがある様にも思えた
「躯からよい匂いがする 霊香と呼ばれるものでございましょうか」
顔を寄せて大きな耳の上をさらさら撫でながら 夏目が呟くと 妖物が身動ぎをした
大きな動物に特有の 身体から放射する体温が、
晩夏の夜風で 少し冷えた夏目の躯を温めた為に 働き詰めの鍼医は 白銀の毛並みに凭れて うとうとし始めている
「‥よく知らぬ者に こんなに近付いたり 今みたいなことを 口にしたりするのか 其方は」
今みたいな事とは何か と夏目が小さく問うと
「良い匂いがするなどと口走るのは 相手を口説く時の決まり文句だろう」
何故か怒った様に妖物が言う
「 左様でございましょうか‥ それなら先程の酔客が突然勘違いしたのも 私が何か誤解させましたか…
我々男は常々 女性相手に一方的な思い込みから あの様な 気味が悪い思いをさせているのかも 知れませぬな‥」
切れ切れに言う夏目の瞼は 既に半分閉じている
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