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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.116 )
- 日時: 2018/12/06 12:40
- 名前: 大寒波 (ID: 9sihcqpn)
夏目長編(3)56.
「夏目話・平安編56」 ところが数歩も行かぬ内に酔客が手を掴んで夏目の足を止めた
「其方は人で あったのか… この家に 妙齢の姫は 居らぬはず だが、では‥芸人の舞い手 か 評判の 男装の妓女が 呼ばれている、とか…」
今度は白拍子か、と溜め息をつきつつ 酔漢の手をさらりと外して行こうとしたがそうはいかなかった
酔漢が掴んだ手を強く引いて夏目を抱き寄せ 後ろから抱きすくめて 熱い息遣いでこう囁いたからである
「舞い手の 妓女なら 今晩、頼みたい 其方は私が、購うぞ 」
この不躾者では 妓女が応じる訳が無かろうと 呆れながらも 夏目は少々困っている様子であった
芸人や歌舞の一座は国々を巡業するものがほとんどで 芸を演じ披露するだけでは生計が立たないので遊女として春をひさぐ 者が多い それでも本業は演芸であり 同衾するにも人を介して申し込むのが礼儀ではある
本人を間近に見て気に入ったからと その場で連れ込める訳ではないのだ
こうした世界に無縁の夏目が戸惑っているのは別の事情がある
この家の今夜の客は相当に官位が高く 殿上人も招かれていた筈である
自分だけの事なら いざ知らず 掛かり付けの鍼医が患家の賓客を殴り倒す訳にもいかない 何処にどんな迷惑を掛けるか知れないのである
- Re: 妖と人の子 ( No.117 )
- 日時: 2018/12/08 17:48
- 名前: 大寒波 (ID: 23qbUXXN)
夏目長編(3)57.「夏目話・平安編57」
どうしたものかと考えを廻らせながら じっとしている夏目に 酔漢は更に図に乗った
躯に回した両腕で 身動ぎもできぬ程 きつく締め付けておいて 白い首筋に顔を埋める そして口唇を 押し当ててきた
他人の屋敷で しかも室内ならまだしも廊下で この暴挙である
流石に驚いて 顔をそむけた夏目からは 白檀の香と仄かに からだの匂いがする 桜葉めいた清涼な匂いであった
「 どうだ 諾すると言うてはくれぬのか
其方は良い匂いがする‥ さぞかし今宵は 好い夢が見られるであろうぞ どうした恥ずかしいのか」
片手が 夏目の胸元を無遠慮に這い もう片方は帯下の細い腰を撫で上げている
これだけ触っておきながら まだ男だと気付かないのもおかしかろうに、と つくづく 途方に暮れた夏目が 何度目かも分からぬ溜め息を洩らして 身を捩った
僅かでも 距離を取らんが為の 無意識の動きに過ぎないが それを酔漢が勘違いしたとみえる
直接 素肌をまさぐろうと衣服の合わせ目から 手指を忍び入れてきたのだ
「 ! 」
これには 夏目も はっと息を詰めた時、
「これは少将様 この様な所でどうなされました」
場にそぐわぬ落ち着いた声が掛けられた
- Re: 妖と人の子 ( No.118 )
- 日時: 2018/12/11 11:59
- 名前: 大寒波 (ID: OnlANcr4)
夏目長編(3)58.「夏目話・平安編58」
それを言い終わらぬ内にその男が 大股で近付いてきたと思うと 夏目を抱きすくめていた酔漢を 引っ剥がして 客間へ引き摺って行った
「な なにをする ‥あの舞い姫と、一晩これから なのだ‥ 天女が‥」
「おや誰で ございますか左様な者は 見掛けておりませぬが」
会話がどんどん遠ざかってゆく
「何を言 うか、 この 手のなか に、 抱いて おった‥では ‥ないか 」
「夢でも ご覧になったのではありませんか さあ部屋にお連れ申しました どうぞお寝みください」
「こら離 せ‥ 私は、あの 舞いひ」
突然 腹にこたえる、重い鈍器でも落とした様な 大きな音がした
それっきり酔漢の声は途絶えた。
男は駆け戻って来る
「お怪我はないか 瑠璃殿 どこか酷くされてはおられぬか」
せき込む様に訊ねたのは 太郎君だった
夏目は 乱された衣服を整え 既に身繕いを終えていた 災難に遭うたばかりというのに 平静で変わりがない いつも通りの無表情だった
「お手間を取らせまして忝なく存じます お陰で助かりました」
謝儀も いつも通りで堅苦しい。
普段どおりの瑠璃殿か 未遂で何よりだった
してみると 先程の少将の無体は 余り堪えておられぬのだったか
内心で 長男は胸を撫で下ろした
- Re: 妖と人の子 ( No.119 )
- 日時: 2018/12/11 12:04
- 名前: 大寒波 (ID: RO./bkAh)
夏目長編(3)59.
「夏目話・平安編59」 自分も一緒に行って薬を置いた部屋で 手当てを受けた方が早いかと 考え直して 鍼医を追って来たらこの騒動であったのだ
こちらこそ 招待客が無礼を、と 夏目に詫びた太郎君は
「では 手当てを致しましょう」 と言って部屋に向かう夏目の 首の傷に巻かれた布が ずれ落ちているのに気がついた 先程のすったもんだによるものに違いなかった
「瑠璃殿 首の布がほどけておりますよ」
何気なく夏目の首に手を伸ばした
その途端 びくりと夏目が足を引いた 顔色が青くなっている
見ると 半身になった左肩が僅かに上がっている
太郎君に 近い方の肩であったのでそれが緊張と警戒によるものだと 武人の太郎君は見てとった
…しまった 無神経だった 話が通じぬ泥酔者から いきなり身体を触られ
無体をされたら 誰だとて恐ろしかろうし 堪えるに決まっている ましてやこの方は目が見えぬのだ
臍を噛む思いで 長男は口を開くと
「 太郎です 私ですよ
…何もしませぬ 心配なさいますな」
じっと動かずに夏目に静かに語り掛けた
ややあって 夏目は微かに躯を震わせて長い長い息を吐いた 緊張が解けたらしかった
そのまま太郎君に自ら近付くと
「失礼を致しました それでは手当てを」と促して部屋へと歩き始めたのだった。
- Re: 妖と人の子 ( No.120 )
- 日時: 2018/12/12 19:10
- 名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)
夏目長編(3)60.「夏目話・平安編60」
宴席に戻る道すがら 手当ての礼を述べた太郎君は 今夜は 次郎君の部屋に移るように夏目に言った
今夜は次男が留守にするし、自分が隣室なので と付け加えると 夏目は黙って頷いた それにしてもと、太郎君が言う
「この場に 三の弟が居なくて良かった あやつがもし居合わせていたら、」
兄は眉を顰めて言葉を飲み込んだ
二人の帰りが遅いのを 酒席で案じていた次男に 訳は後で、と 長男が方々に手配をする そして戻って来た太郎君は改めて杯を取ったが もう嘗める程度で 次郎君は場を抜ける時間が近く 気もそぞろである
一座の演目も全て終わり 賑やかな管弦は止み 夜は更けて 宴席が心地よい酔いと余韻に浸った頃
縁の一角から 柔らかな琵琶の音が流れてきた
波紋が立つ様に 微かに始まり それが徐々に強い音色へと変わりふたたび 微かな音に戻るのを繰り返す
即興の澄んだ音に 宴席の客も家人も 思わず手を止めてこの音に耳をそばだてて聞き入っていた
その琵琶が 曲を奏で始める
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