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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.156 )
日時: 2019/03/06 07:47
名前: 大寒波 (ID: 23qbUXXN)

夏目長編(3)96.
「夏目話・平安編96」
不明であった接点は どうやら分かった様だが、
大怪我を負い そこを救われたのなら 周囲に話せば良いものを 黙して隠し通し わざわざ互いに知らぬ振りまでしていたのは、それと言えぬ 深い仔細があったとしか思えない


事ここに到っては 今迄のように 太郎君も見て見ぬ振りは出来ぬのだった


思案に暮れる太郎君の 懐中の手は いつの間にか温もっている
その手の持ち主の白い顔には 牡丹色の血の気が差していた
身体全体が温まったものと見えて生気を感じる


それを見て長男も安堵したが夏目の躯が 異様に冷えていたのは首の怪我に因るものかと はたと思った
医の手伝いをした女房から 首の切傷はかなり出血があったらしいと聞いていたのである
それを思い出して 眉を顰めた時 小さな声が聞こえた

「御陰様で身体が大変に温もりました 忝なく(かたじけなく)存じます」

「良かった 先ほどは 今にも お倒れになるかと思う様な顔色でしたぞ」

ふ と笑って懐から出した両手をそっと離す
氷も同然だった手は とても温かで 表情の乏しい鍼医の顔も 今は和らいで見えるのだった

Re: 妖と人の子 ( No.157 )
日時: 2019/03/08 06:05
名前: 大寒波 (ID: 9sihcqpn)

夏目長編(3)97.「夏目話・平安編97」
床に臥せた三郎君に 再び的鍼ていしんを施す鍼医の手指には赤味が差している
施術を終えた夏目は、 身体が温かいと 手指が柔軟かつ的確に働き 治療が手早く済む事を 痛感していた 病者に冷たい思いをさせる事もないのだった

三郎君を 上掛けでくるんで はりを置いた夏目に 太郎君(たろうきみ/長男)が近寄る

「愚弟が大層ご面倒を お掛けしました」真摯な声でそう言うと 鍼医に自分の上衣を着せ掛けた

  あたたかかった。

やはり俯き加減で夏目が 小声で礼を言う こういう風に扱われるのは昔 兄や姉にして貰った時以来だろうか と遠く思った



寝床の傍らに腰を下ろした長兄は今しがた見た弟の身体の幾つもの青痣を思い返していた 格闘中には 手酷く投げても打ちつけても呻き声一つ洩らさなかった

お互い 真剣に立合っていたが末弟はどこか本気では無かったものと 思われる
それを看破かんぱできずに 手加減も無く叩きのめした上 失心させる為 とどめと打ちすえようとするとは、

  …鬼かおれは

弁の立つ次弟なら 太刀を取らせる事もなく 無傷で末弟を宥められたのでは と長兄は悔いているのであった

Re: 妖と人の子 ( No.158 )
日時: 2019/03/06 07:53
名前: 大寒波 (ID: cJynYhyt)

夏目長編(3)98.「夏目話・平安編98」しかし
物思いを断ち切って 夏目の前に座り直すと 頭を下げて言う

「これの大怪我を 御救い頂きましたこと 先ずは御礼申します」
先程の打ち身の手当の礼では無さそうだった

誰も知らぬし他言もしない刃傷沙汰の顛末てんまつであったが 太郎君は推量の上 夏目が関わっていた との結論に至ったらしい 切れ者の長男らしいことである

沈黙した夏目に太郎君が続ける

「何事か 深い由あってのことと理解しております
しかし 此度の騒動とあっては もはや私にも事訳ことわけが分からぬ事には 善後策を講じようがありませぬ

このままでは 末の弟の無体を抑えて護ってやる事もできぬのです
どうか経緯いきさつをお教えくださらんでしょうか」

朴訥ぼくとつな説得だが理に適っている

もとより夏目も 黙っていて済むとは考えていない 息をひとつ長く吐いて言うた

「仰ること尤も(もっとも)にございます しかし三郎君との約束が 御座います故 了承を得る間しばしお待ちください」

臥した三郎君の首筋に ふたたび銀の的鍼を施すと ぴくりともしなかった末弟が 幾らも経たずに身動ぐ(みじろぐ)のが見てとれた

Re: 妖と人の子 ( No.159 )
日時: 2019/07/29 18:22
名前: 大寒波 (ID: k8cJIfhT)

夏目長編(3)99.
「夏目話・平安編99」初出'19.3/6
的鍼の跡を摩る揉撚じゅうねんを行いながら夏目が 気分はどうかと声を掛けると ややあって三郎君が瞼を開いた

あの切迫した様子は 消え去り 首を摩る(さする)手指をそろそろと眼で追う
躯に不具合あるかと 訊かれて小さく首を振り 嗄れしゃがれごえで 何事かを囁く
幾度かのやり取りの後に 俯せた三郎君が眼だけで鍼医を見上げて 頼む と小さく呟いた

長兄は黙ってこの様子を見ていたが 夏目が向き直ると 双方ともに居住まいを正した

「長い話でございます故 かい摘まんで話を致しましょう
三年程前の事になりましょうか、私が師の用向きで 或る寺へ使いに出た時の事で ございました」
夏目が語り始める

◇◇◇

師の信書と届け物を携え夏目は山道を歩いていた
当方の寺は 失礼無き様に上位の僧を行かせる筈であったが 先方から夏目をと指定があった

評判の医僧の小坊主 とやらを見物しようという事らしい それゆえ医の用具と薬剤も一通り備えている

Re: 妖と人の子 ( No.160 )
日時: 2019/03/07 11:05
名前: 大寒波 (ID: qAj0rN00)

夏目長編(3)100.「夏目話・平安編100」
途上の 崖沿いの険しい路も 目端の利く供の者と越えて目指す那智山 正歴寺のある何鹿いかるがに入った
先には門前町もんぜんまちがあるがこの辺りはまだ寂しく 山道と同じく人を見掛けなかった

路を歩いていると おや繋がれて無い馬がいる、と供の者が言う

◇◇◇
ここまで一息に語った夏目が白湯を飲み 間を取ると「何鹿には 母方の親類がおります 吾らも子供の時分には よく行き来しておりました」
何気なく太郎君が言う
それに夏目は深く頷いた
◇◇◇
馬方も乗手も見当たらぬ空馬からうまだと 供が言うが まあ持主は近くに居るのだろう 等と話して歩を進める内に 馬の方が近寄って来たが 体躯の優れた青毛の若駒だと 供が驚いている 非常な良馬であった ひと財産である

しかし夏目の顔は硬い
近くに来た馬から 強い血臭がしていたのだ

鞍が置かれた馬の背は はたして血で染まっていた 青毛(黒馬)故に血痕が見えにくいのだ 供の者が馬には傷が無いと言うので 不在の乗手が災難に遭ったのは 間違い無さそうであった

主従で額を寄せて話し合う間に 馬が離れてゆくので後を追うと また小走りで離れて行き やがて路から離れた丘陵に出た


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