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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.111 )
- 日時: 2018/12/04 06:41
- 名前: 大寒波 (ID: cJynYhyt)
夏目長編(3)51.「夏目話・平安編51」
太郎君次郎君は 夏目より年上、三郎君(さぶろうぎみ:三男)は同年である
思慮深く温厚な太郎君には いずれは屋敷に迎えて北の方に と思う決まった女性が居る
華やかな色恋には程遠く 文のやり取りも巧みでは無いが 駆け引きしない実直な性質故に これはと思う女性には想いを返して貰えるのだった
次郎君は 少々軽いが明るい性質で 恋愛も高嶺の花に手を伸ばすが 今は順調である
三郎君は これはかつては年少ながら色恋に達者で 評判の美女には 風雅なやり取りで 口説き落としては次の相手へ という具合で行い悪しく 大人びた端正な容姿を武器に 元服前の少年時から 恋を軽んじる風であった
質の悪い色餓鬼である
それが 二、三年程前に派手だった色恋事をぴたりと止めてしまった
誰も理由を知らないが 次郎君が言うには 訳有りの女性から痛い目に遭ったのではないかと 勘繰っているそうである
そういう三兄弟であった
夕暮れを過ぎて 辺りは薄闇に沈み 心地好い風が時折吹き抜けてゆく 池の水面にはちらほら星影も映り始めた
広大な中庭に張り出す様に設えられた 広い板間の台には この家に呼ばれた芸人達が立ち 歌舞を舞う姿がみえる 篝火が方々に焚かれて 舞台は殊に明るかった
- Re: 妖と人の子 ( No.112 )
- 日時: 2018/12/04 07:57
- 名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)
夏目長編(3)52.「夏目話・平安編52」
京で評判の芸人達は 管弦に合わせて声も豊かに 朗々と謡い 舞う姿も艶やかであった
篝火に浮かび上がる 舞い手に 風に揺らぐ焔の影が時折ゆらゆらと差し その姿に幽玄な陰影を投じている
数人で滑稽な小芝居を観せる演目もあれば、 この時分に流行り始めた 男装の白拍子の舞も、 勇壮な剣舞もあり 何れも見事で観る者の目を楽しませていた
舞台を囲む様に延びる広い板間の縁に ずらりと席が設けられ 酒肴や料理が並んでいる
この家の 主の知人達を招いての宴で 子息達も夏目も席を連ねていた
白銀の巨大な妖物は 舞台に近い屋根の上に陣取り しなやかな躯を長々と伸ばして管弦の音色や謡の声を聴いている
この獣の妖に限らず 妖物や人外の者には 管弦の音色や歌曲を好むものは多いのである
次郎君は 最近の出来事を 面白おかしく語り夏目や兄に聞かせては場を盛上げている
長男も次男も 良く食べて呑んで良く笑う男達で 一緒だと場に笑いが絶えない 表情が乏しい夏目でも幾分楽しそうに見えた
賓客は主の知人達ゆえに ここの身内と鍼医が 余り騒がしくも出来ぬが 気安い同世代で 酒を汲み交わし世間話に興じるのは やはり心楽しいものとみえる。
- Re: 妖と人の子 ( No.113 )
- 日時: 2018/12/04 12:58
- 名前: 大寒波 (ID: sPN/TsSz)
夏目長編(3)53.
「夏目話・平安編53」 酒と話に興じる中、太郎君が度々 左手を押さえる仕種をするので 弟がその訳を訊ねた
言い渋る兄に 重ねて訊くと 先程持ち帰った弓の弦を外した時に 跳ねた弦で切ったと言う。
医の診察は 終えた後だったので布で覆って そのままにしていたが 酒が入って再び出血してきたらしい
布を捲って見た 次郎君が 傷の様子を語って聞かせると 夏目は太郎君の左手を取り 傷の具合を診ると 手当ての道具を取りに行く為に立ち上がった
止血が必要な傷であった
平気だからと遠慮する太郎君に これも仕事だと言い残して 夏目は客間へと向かった
夏目が使っている部屋は 母屋とは別棟で 来客用の部屋が幾つかある建物にある
勝手知ったる屋敷内の廊下を静かに歩いてゆく
先程まで近くで聴いていた笛の音と人々のざわめきを遠くに聞きながらの 心地好い酔い醒ましの散歩だった
とはいえ夏目自身も傷のある身なので 酒量を控えているのだったが
そこの角を曲がれば部屋の並びに出る という所で夏目は立ち止まった
人が居たのだ。
歩幅小さく酒の匂いを漂わせつつ 行きつ戻りつしている
- Re: 妖と人の子 ( No.114 )
- 日時: 2018/12/05 13:41
- 名前: 大寒波 (ID: enKf/rbe)
夏目長編(3)54.「夏目話・平安編54」
足音で男だと分かるが 焚き染めた香が薫っている 使用人では無さそうだった
最初は この家の女房の元に通う男か とも思ったのだが 酒臭いのと足どりからどうも宴席の客が あてがわれた客間に 戻ろうとして迷ったものと思われた
「もし、御客人でございますか どうなさいました」
夏目がそっと声を掛けた泊まり客の為に この廊下にも所々に灯りを点している筈だが 無人の場所で突然 声を掛けられれば
誰でも驚くに違いない、そう考えて 努めて穏やかな声音を出したのだが
「うわっ 」
飛び上がって こちらを振り向く気配があった
吃驚した…人が居るとは思わなんだ 俺の部屋がない…
ぶつぶつ呟きながら 千鳥足で近づいて来る
声と歩幅から若い男であると知れた
上質な衣服を着け 趣味の良い香を使っている、 なかなか整った顔立ちの 若者だが いかんせん酔い方が酷い
近寄って来た男に夏目が客間への行き方を示そうと口を開いた時だった
「 …天女、 天女が こんなところに」
夏目を凝視しながら男が言う。
聞き間違いか、と首を捻りながら 部屋はこっちだと夏目が話すのを まるで聞かずに男は なおも言い募る
- Re: 妖と人の子 ( No.115 )
- 日時: 2018/12/08 19:44
- 名前: 大寒波 (ID: qAj0rN00)
夏目長編(3)55.「夏目話・平安編55」
「天降りけん をとめごの姿、と歌われるのは 其方か… 領巾は、纏って おらぬ、のか …天の羽衣が無くば 天に、帰れぬときく が… もう、盗られたか‥」
「 ………。」
流石の 絡まれ体質の夏目といえども 聞いた事も無いような妄言である
常になく無言で棒立ちになっていると
「…羽衣は、見つけて 奪うと天女は その者の妻に、なると、きいたぞ‥」
酔客は夏目に ふらふらと抱きついて来た
領巾とは 古代のストールで 天女や飛天が纏って飛ぶ 羽衣と思われていた薄い布裂である
夏目の項や背を 撫でさすっては布裂を探す素振りの酔客は 違う、離してくれと言って引き剥がそうとする夏目を ますます強く抱きすくめていたが
突然夏目の白い首もとを両手で包むと ぼんやりと呟いた
「天女、とは…この様に美しい者なのか 此の世のものに有らざる者、か…」
夏目がぐい と何を言っても聞かぬ 頓珍漢な酔漢の若者を 力を込めて突き放し「自分は天女でも女でもございませぬ」と言うた
意外な腕力と体力は 修行僧の時分に培われたものである
漸くよろけて離れていった酔客に 人を呼んでくる と告げて夏目は背を向けた。
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