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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.121 )
日時: 2018/12/17 08:37
名前: 大寒波 (ID: FTo14qYM)

夏目長編(3)61.「夏目話・平安編61」
冬の海の波濤を思わせる琵琶らしい 激しく強い旋律に圧倒され それが繊細で優美な調に変じる

一度聞けば忘れられなくなるような楽曲と音色であった

席から頭をもたげて音を追う者もいれば 目を閉じて調に浸かる者もいた

御簾の隙間から宴と舞台の様子を 垣間見ていた女君と女房達の部屋からは 溜め息が溢れている


奏者は夏目であった
先程の騒動によって人目に立ちたく無いのは やまやまだったが 今夜の琵琶は聞かせる人がいる


部屋から出ずに 御簾の内から 外や宴席や男君達の姿を垣間見るのが この時代の女性のしきたりであるが この家の 体の弱い北の方は 管弦を大層好む質なので 演奏を前日から約束していたのだった


家に 滞在しているのだから いつでも部屋へ行って演奏すれば良さそうなものだが それでは奥方は若い楽師を呼んで昼間から遊興三昧している等と 噂が立ちかねない
人の口が主な情報伝達手段ゆえに 根も葉もない話が流布しやすい
迂闊な事は出来ないのだった

奏者は 縁と御簾の間に立てた几帳(布の間仕切り)の陰に居て余人には見えない
そして演奏を終えると そのまま御簾の内から部屋へと入っていき宴から消えていった

Re: 妖と人の子 ( No.122 )
日時: 2018/12/17 18:21
名前: 大寒波 (ID: RO./bkAh)

夏目長編(3)62.
「夏目話・平安編62」
牛車に 乗り込む為の作業を次郎君は待っている
広い敷地の厩(うまや/馬小屋)近くで裏口に近いので 夜更けにも続く宴席のざわめきは 風に乗って微かに聞こえるだけだった
「 …瑠璃殿、か 」

そこで次郎君は いる筈がない人物を見付けた
意外も意外で近寄って声を掛けると 裏口近くに佇んでいた鍼医は

三郎君の帰りが遅いので少し気掛かりで、と小さく答えた

「いくら朝霧でも 乗り手が 居眠りで転げ落ちるのは防げぬでしょう」

「そんなに 案ずる事はありませんよ あやつは丈夫だし」
軽く言ってみるが しかし
あれ、俺は弟の駿馬とは言うたが 名は出しただろうかと 次男は内心首を捻った 弟の愛馬は確かに朝霧と号している

この方と末の弟に関しては こうした事が前にも有った気がする

鍼医として 治療の為に初めて来訪した 二年前よりも もしかして以前からの 知合い同士ではないだろうか
次男はそう考えていたが 双方が黙っている以上 追求はしないつもりである


考え込んでいると 裏口の門番の声がして慌ただしくなった

そちらを見ると 人馬が門扉を潜るところだった 背丈が高く 鍛えた躯は厚みがある若い男である  大男ばかりの兄弟の中でも 一番の偉丈夫の三郎君が帰って来たのだった

Re: 妖と人の子 ( No.123 )
日時: 2019/02/03 00:28
名前: 大寒波 (ID: TkqspnRJ)

夏目長編(3)63.「夏目話・平安編63」  手綱を取って歩いて来る三郎君は 何故か汗だくであったが 所在無げに佇んでいた鍼医を見付けて 小走りになると

「瑠璃殿 お久し振りです 宴の琵琶には 間に合わなかったようだ 惜しい事をしました」と白い歯を見せた 

若輩の末弟ながら 筋骨隆々なので 口の悪い次男からはマシラ(猿)や狒々(大猿の姿の妖怪)等と呼ばれている
大汗をかいているが それが似合う 整った容貌の美丈夫である
「遅くまでの御勤め お世話様でございました …御無事で何よりです」
挨拶をして屋敷に戻ろうとする夏目の横から 次郎君が顔を出して

お前 なにを汗だくなんだ 妙に遅かったし、
と不思議そうに訊ねると

「飛ばしてたんだがなぁ 途中で何故か 朝霧が足を止めて梃子でも動かなくなってな 不審に思って降りて 様子を見てみようとしたら 鞍がぐるっと回るじゃないか 驚いて鞍下を調べたら腹帯(鞍を固定する馬具/ガース)が 千切れ掛けてたのだよ」

「何ぃ、この阿呆!お前馬装の点検もせずに乗って来たのか」

先程まで 平気だ平気だと笑っていた兄が 驚いて叱り飛ばした

Re: 妖と人の子 ( No.124 )
日時: 2018/12/20 00:59
名前: 大寒波 (ID: 3f2BBQD7)

夏目長編(3)64.「夏目話・平安編64」 腹帯の点検は重要で 緩んだだけで 落馬の原因となり ましてや切れれば一命に関わる

「いやぁ助かった 流石に俺の愛馬だよ」
などと暢気に笑いながら頭を掻いている末の弟に
まったくだ、そのまま走ってたら 今頃は大路の何処かに 首が折れて転がっていた所ではないか と次郎君は呆れた
「それで 仕方ないから馬と一緒に走って帰って来たわけか…」
溜め息をつくと 今夜は馬に上等な飼い葉をやれよ と言い残して 自分の牛車へと向かった
夏目は とうにこの場から去っていた

それにしても と次郎君は唸った
普段と違う危険が有ったのを あの人は感じていた訳か 占卜(せんぼく/占い)を行う人には こうした虫の知らせが有るものなのか、と
あの 一見素っ気ない鍼医の不思議を思った

「おや 瑠璃殿はもう部屋にお帰りになったのか
今夜はもう 話も酒も無理かな  しかしなぜ今時分 こんな所に来ておられたのだろうな」
水を飲む馬のたてがみを撫でながら 三郎君が言うた

 「 ………。」
お前が大怪我して道端に転がってるかも知れんと危惧してたからに 決まっておろうが この狒々め

という事は敢えて教えずに黙っておくことにして 次兄は車に乗り込んだ

そして目指す愛しい姫君の事だけを考える事にしたのだった

Re: 妖と人の子 ( No.125 )
日時: 2018/12/20 23:02
名前: 大寒波 (ID: sPN/TsSz)

夏目長編(3)65.
「夏目話・平安編65」
厩番は居ても 自分の乗り馬は 自ら世話をする事が多い三男が 忠実な愛馬に新鮮な飼い葉を与えて 欠伸をしながら 首筋を擦っていた頃、

出掛けた次郎君の 自室に移った夏目は 手際よく届けられていた 私物の荷から 楽器を取出して布で拭いながら ぼんやりと考え事をする風であった

既に白い寝間着に着替えて 肩から上衣を羽織っている

もう真夜中になっていた
部屋の前は 庭に面した広い縁で それを傾いた月が皓皓と照らしている
その月明かりに大きな影がさした

巨大な影は 縁に降り立ち かたんことんと音を立てて 次郎君の部屋の御簾の前まで来て止まった


御簾の内では 夏目が音の方を向いて 立ち上がっていた 顔色が蒼白である

「もう管弦は終いか」
それをよそに 低くて深い声が のんびりした事を言うた

身体が強張る程 緊張していた夏目が 目に見えて力を抜くと 詰めていた息をそっと吐いた


「深更には 琵琶は傍迷惑でございましょう 龍笛は夜には吹かぬものでございます」

「ほう 理由はなんだ」

「さぁ‥ 一説には鬼を呼ぶとか 妖を呼ぶとか申します」

吹き出すような音がして
それでは琵琶でうっかり寄って来てしまった妖物は 立つ瀬が無いではないかと 声が続けた


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