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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.136 )
- 日時: 2019/01/31 09:10
- 名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)
夏目長編(3)76.「夏目話・平安編76」
謀を企む 馬の妖の話を 鵜呑みにも出来ないが 一応は斑も頷かざるを得ぬ返答であった
しかしそれを尻目に
「それにしても あの顔はどこかで見たような、」 三篠は首を捻っている様子である
ともあれこの馬は 今すぐに あれをどうこうする意図は薄いかと斑は判じて 少々警戒を緩めた
「お前は あの人の子を囲い込むつもりか 喰えば好い滋養になるからな」
問われて まぁ飼うてみるのも悪くないか などと斑が適当に寄越した返事に 三篠が苦笑いする
「飼い犬みたいに あの者に 撫で摩られておったのはお前であろうが」
「私の美麗な毛並を 触ってみたいと申すゆえ 我慢して撫でさせてやったまでだ」
澄まして言うが 大分脚色がある
「何を言うか うっとりと撫でられておったくせに」 三篠がせせら笑った
…いつから見ていた、というよりは 見られてない事の方が少なそうである
覗き屋め と悪態を つきながら 一方で斑には疑問があった
あの人の子に纏わる 一連の事柄を一から十まで 傍観していた この馬の妖が、今頃になって何故 接触して来たのかが不可解だったのだ
- Re: 妖と人の子 ( No.137 )
- 日時: 2019/01/26 10:05
- 名前: 大寒波 (ID: myDpNyTl)
夏目長編(3)77.
「夏目話・平安編77」 「それで今頃になって のこのこ顔を出したのは 何用あっての事だ」
持って回った物言いに 厭きた斑が直截的に訊く
「他意はない まぁ管弦を聴きがてら ついでにお前を 冷やかしに来ただけだな」
古馴染みの妖からするとその言葉は 素直には信じ難かったが しかし底意も感じられなかった
疑りつつも それならもう行く と踵を返そうとした斑の耳に、 喰えない馬の妖が ぼそと呟くのが聞こえた
「そうやって寄って来ているのは私だけでは無いらしいがな」
これは 聞き捨てならなかった 他の異形の影があるという事だからである
「近くに 妖物がいたのか」斑が呻いた
この自分が それに気が付かなかったとは。
「あの屋敷には強力な守護と魔避けがあると言うたであろうが 屋敷内に居ると 川の底から水越しに 外を見ようとするが如くに 目も耳も利きにくい。そんな屋内に 抵抗なく入れたのは お前が招かれたからだ」
三篠の言に 白銀の妖は そう言えばと気が付いた
- Re: 妖と人の子 ( No.138 )
- 日時: 2019/01/28 12:12
- 名前: 大寒波 (ID: uzXhjanQ)
夏目長編(3)78.
「夏目話・平安編78」 夏目と初めて会い 大いに揉めた後に 勝負の途中であるから 暫くは付いて行く、と斑が言い 夏目はそれを承知したのだった
それは禍つ神や悪霊悪鬼等の侵入を阻む 霊的守護の堅固な家屋にも 付いて入る事を許されたという事に他ならない
「お前の存在はすぐに感じ取れたがな 三篠」
「私は姿を隠す必要など無いからな」
確かに こやつの気配は明瞭で 隠れる気が無さそうだったと思い出し 斑は肝心な事を尋ねた
「隠れて にじり寄る妖物とは一体何だ」
「あの屋敷には 幼い童が居るな それを狙う水妖の類いだろう 庭の池は 近くの川から 水を引いているからな その水脈を伝って獲物を視て 物色しておるのさ 結構大物だぞ」
すると 屋敷内に入り込んでいるわけではないのか と斑が訊くと
当たり前だろう と呆れた様な返事が返って来た
外敵に対する護りを固めた住居に 人外の妖物が侵入するのは 至難の業である
大抵の妖は玄関先で弾き飛ばされるか 躯が四散してしまう
ましてや彼処は 古い呪法が施されており どんな作用があるかも 判然としない 無気味であった
- Re: 妖と人の子 ( No.139 )
- 日時: 2019/01/31 09:16
- 名前: 大寒波 (ID: uzXhjanQ)
夏目長編(3)79.「夏目話・平安編79」
それ故に 護りを施した住居に 異形の者が侵入する為には 住人自らに戸を開けさせる必要がある
丁度 山姥が瓜子姫を謀り(たばかり) 戸を開かせた譚に描かれている様に
しかし あの屋敷の守護は門戸を開かせた位では 突破はできない 謎の妖が外部から 獲物を窺うしかない訳である
その獲物が童だと 聞いた途端 興味を失った様子で「成るほど 分かった」
そう言って 飛び立つべく四肢に力を入れた 白銀の妖は、地を蹴る寸前に 耳を疑う様な話を聞いた
「あの屋敷に 入れなかった時は 山での酒宴に来ると良い ただ酒にありつけるぞ」
「入れないとは、 …どういう意味だ」寝耳に水の斑が鋭く問う
「そりゃあ 呼ばれもせぬのに 無理に付いて来た迷惑な妖が うっかり屋敷を離れて行ったら これ幸いと もう入って来れぬ様に呪法を強めて 出た跡を閉じてしまうだろうな」
三篠が平然と答えた
- Re: 妖と人の子 ( No.140 )
- 日時: 2019/02/04 07:57
- 名前: 大寒波 (ID: 9sihcqpn)
夏目長編(3)80.
「夏目話・平安編80」
「あの者が 突然現れた素性も分からぬ人外を疎み 追い払おうとするのは 当然の事だ
晩夏というのに あれは陽が落ち 風が吹くと震え出すだろう 人は血を失うと身体が 酷く冷えるものなのだ」
斑が僅かに身動ぎする
だが何も言わなかった
「必要も無く 啜り貪った血は そんなに美味であったか 我を忘れる程に 獲物を弄ぶなどお前には珍しい」
三篠は珍しく真顔で いつものからかう口吻でも無かったが
斑はもはや 一言も発しなかった
面白半分でも無ければ 血潮を欲したわけでも無い
自分の身命を守る事を放棄して 危険に身を曝していた、死に急ぐ人の子が 表情も感情も持たぬかの様に見えたのが 何やら歯痒くて仕方がなかった せめて痛みだけでも感じさせてくれる、などと むきになってしまったのだ
あの時の経緯を敢えて説明すると これだけの事ではあったが
さりとて こんな微妙で入り組んだ心情を 他者に語って共感や理解を求めるなどは無意味な事だと 分かっていた
押し黙ったまま 白銀の妖は 数日過ごした屋敷とは反対の方向へ 宙を駆けてゆき 姿を消した
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