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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re:妖と人の子 ( No.36 )
- 日時: 2018/03/17 07:58
- 名前: 大寒波 (ID: RO./bkAh)
夏目長編(2)
5.
手間取る事も予想して
道沿いにある電話ボックスから自宅に電話を入れると
今夜は寒くなる予報だから暖かくして帰ってらっしゃいね と塔子さんが言い はい 気をつけますと受話器を置いた。
すでに辺りは完全に闇に沈んでいる。
思えば夜、外で単独での名前返しをするのは初めてになる
普段は自室で行うか、屋外で返す時には必ずニャンコ先生が傍に付いていたのだった
しかしこの場合は致し方ないと、夏目は 道を少し外れて人目につかない木立の裏に3匹を連れて行きながら 彼らを観察してみる。
ジャケットやコートの洋服を着ていた昼間とは違い いつの間にか和装になっていた他は みな若い男の姿のままだった。
旅をするには人に化けていた方が便利なのか と
思いながら 友人帳を開くと なるほど反応があったので 休みを挟みながら ひとりひとりに名を返してゆく。
体力をかなり消耗するので、自室で複数返還する時には一旦横になるのだが 今は草地に座って息を整えるしかない
最後のひとりに名を返し終わった時には、吐く息が白くなるほど 気温は下がり 体力を使い果たした夏目は 地面に倒れ込んでいた。
- Re: 妖と人の子 ( No.37 )
- 日時: 2018/03/17 08:07
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
夏目長編(2)
6.
複数の名の返還は 久し振りだったせいか 異常な疲労感があった
駄目だと思いながらも 気が遠くなり草地に横になった夏目の上に影が差す
「おや 気を失ったか」
「レイコの縁者で 友人帳で妖物を統べる荒くれと聞いたが他愛も無い」
初回と2番目に返還を受けた妖が夏目を覗き込んで言う
「人間は体が温かいとか聞くが本当なのか」
初回の妖が手を伸ばして夏目の腕を掴むと 温かいぞ本当だ と手を離した
「しかしこれは妖力が強大で 極めて美味な匂いがしているな 体に何処か傷があるのだろう」2番目が鼻先を近付ける
これを味わっていけば 極上の滋養になる 旅する我等には願ってもない恵みだ と2匹は意見が纏まった様子である
初回の妖が夏目のうなじを無遠慮に掴み 細い体を引き起こすと 白い首元に口唇を近づける
と、鈍くて重たい打撃音が響き すかさず砂袋でも落とすような音が続く。
初回の妖は立っていた所から相当離れた場所で
うずくまっていた
ピクリともしない。
放物線を描いて飛ぶ仲間を呆然と見ていた2番目が ハッと視線を戻すや
いなや顔の真ん中に拳がめり込み こちらも ぎゃっと叫びつつ吹き飛んだ。
「人が伸びてる間に 好き勝手を… さぁ次に拳を貰いたいのはお前か」
立ち上がった夏目が 最後に名の返還を受けた妖を睨みつける
- Re:妖と人の子 ( No.38 )
- 日時: 2018/03/17 08:13
- 名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)
夏目長編(2)
7.
背後の木にもたれて立ち身構えながら残った妖を見据える夏目に、その妖は 地に伏して動かぬ仲間を見やりながら言った
「見事ですな 夏目殿」
最後に名の返還を受けた妖が初めて口を開いた 喋るのは他の2匹だけだったので てっきり人語を話さぬ妖怪かと思っていたのだ。
「“少女と見まごう花の容に 鬼神の如き冷酷暴虐の性質にて 幾多の妖物を力で捩じ伏せ 勝手気儘に酷使する凶漢”
などと風の噂に聞いていたが 実物はモヤシで体力も無く簡単に騙される。とんだデマかと思えば その様な爆発的な力も発揮する、と」
よく分からぬ人だ と付け加えると 夏目を値踏みする様に眺める。
当の夏目は この場を切り抜ける事だけを考えていたが いかんせん体がいう事を聞かない 立っているのもやっとで今にも足から崩れ落ちそうなのだ。
暫く睨み合っていたが
そう言えば 夏目殿には守護の妖がいる筈だが あれはどうしたのだ と言うので、用事で出払っていると答えると
「なに?この危機に守護が外出とは 斑はどういうつもりだ」と妖は呆れる素振りだった。
初めて感情を見せた相手に この妖は先生を知っているのか と考えていると ずっと夏目を観察していたらしい妖が
「こんな所で倒れてたら凍死しますよ」
すぅっと近づいて来る。
はっとして 防戦しなくては、と思うも 夏目はいつの間にか 地面に肘も膝も着いて頭も上げられなくなってしまっていた
辺りは雪が降らんばかりに冷え込んでいる
気が遠くなるなかで 夏目は必死で
こんな所で勝手に命を落とせるか、ニャンコ先生に友人帳を譲らずに 死んだら約束を果たせない
先生に友人帳をちゃんと渡すんだ
先生 せんせい
とばかり考えていた。
- Re: 妖と人の子 ( No.39 )
- 日時: 2018/03/17 08:24
- 名前: 大寒波 (ID: C1Agejdf)
夏目長編(2)
8.
節々がギシギシいう程
強張り冷え切っていた
身体が暖かくなった
頭上では 風を切る音がして 夏目は目を開けた。
身体は和服の男の胸にきつく抱えられている。ぼんやり視線を下にやると
自分の爪先の はるか下に林や人家の灯りが見えている 夜空を飛んでいたのだ。
うわぁと叫ぶと 起きましたか と先ほどの妖の声と羽音が聞こえてきた
気を失ったあの後 最後に残った妖に 空を飛んで運ばれているらしかった
夏目が何処へ行くつもりだと慌てて訊くと
勿論貴方の家ですよ と言う。
驚いて 降ろしてくれと鋭く言うと 今自力で動けぬ貴方が道端で どうするのだと取り合わない
「ニャンコ先生とあんた訳ありなんだろう 確執がある相手をわざわざ案内して連れてくものか」
別に案内は必要ない
と 事も無げに言う妖に、俺の自宅を知ってるのかと夏目が更に警戒すると
「いや生徒手帳の住所を見ただけ」ときた。
「……。」
この妖は、人間の事を知らず触った事も無いあの2匹の妖とは 全然違うのは夏目にも分かった
体温を知らずに 凍死の概念が解るわけが無い
知識量と経験値が違うのだ。 そういう所は先生やヒノエに近い
そもそも仲間2匹と決定的に違って体が温かいのだ 別の種族だろう
力強い羽根は鷲の翼みたいに立派だった
ふとあの2匹が気になり「仲間達はどうした」
「暫くはあのまま地の力を吸って力の回復に務めますがね すぐの旅や移動は無理でしょう」
そうか、手酷くやり過ぎたかな と夏目がつぶやくと
「何をそんな甘い事を やられたらやり返すのは当然だろうに」
まぁ危うく喰われそうにはなったが実際には無事だった事だし と言うと
「ふむ、あの2匹は夏目殿を頭からむしゃむしゃ喰おうとした訳じゃないですよ」とまた判らぬ事を言う。
- Re: 妖と人の子 ( No.40 )
- 日時: 2018/03/17 08:29
- 名前: 大寒波 (ID: cJynYhyt)
夏目長編(2)
9.
良い滋養だとか 味わってから旅を続けるとか2匹は言ってたぞ まぁ喰われそうになるのは日常だけど と夏目が呟くと
「食事として喰う摂食行動と、霊力を取込み地力を強める為に喰う行動は別物で 後者は他者と交わる事で行う性交ですよ」 妖が言う
え、そうなのか と驚くと
「昔 人身御供に供されたのは美しい娘や若者、霊力のある人間等だったが それらと交わると神々や妖物の力が格段に高まるんです
むしゃむしゃ喰うより ずっと効率が良い
貴方も異類婚のお伽噺を聞いた事はあるでしょう 」
「うん沢山あるし どこの地方の昔話にも必ずあるテーマだよな
…そういうのって 霊力の源として 人を手元に置いて暮らす内に、神様や
妖物の側にも 情が湧いたりしたんだろうか‥」
「そりゃあ 当然あったでしょうな」
声に翳りが滲んだ夏目を 妖がおや と覗き込む
「神話とかだと 人身御供や贄を 何回も繰返し要求するパターンが多いけど あれはもしかして、」
考え込みながらまた訊ねる
「贄や人身御供を立てる間隔は 実際には数十年単位でないと、毎年なんか出してたら郷や集落がすぐ絶えてしまう
異類側が 新たな御供を求めるのは、贄に来ていた人間の寿命が尽きたからでしょう
生涯というか 生きる時間が違いすぎる」
そうか…
夏目がぽつんとつぶやいた。
何か急に いとけない子供めいた夏目を強く抱きかかえ直すと 妖は羽ばたく速度を速めた。 具合が一層悪くなった様だった
世慣れた妖が 住所から大体のあたりをつけて藤原家近くまで来た所で
黙り込んでいた夏目が ここで降ろしてくれと言う
もはや数㍍歩くのも無理にしか思えぬので
人に見られぬ様に玄関先に降ろしてやると 妖が提案しても
悪いがここで、の一点張りだった
無視して飛び続けると 「ここ迄 送ってくれて 有難う、助かったよ、 だけど あんたは、ニャンコ先生と 険悪、なんだろう‥ 先生と、鉢合わせて悶着に なって欲しくないんだ どうしても。頼む‥」
藤原家の数軒手前の木立の陰に 無言で降り立った妖は 抱えていた夏目を地面にそっと降ろした
その顔色の蒼白さに 一瞬眉をひそめて それでは、と背を向けた
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