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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.146 )
- 日時: 2019/02/10 02:11
- 名前: 大寒波 (ID: sPN/TsSz)
夏目長編(3)86.
「夏目話・平安編86」
長兄の間合に 飛込んで行った末弟は 長い弓手(ゆんで/左手)を伸ばし 素早く兄の襟を掴み 袖を握って引くと 一息に投げ飛ばそうと自分の体を入れた
すると 垂らしていた兄の腕が一閃して 掴んだ腕は事も無げに 払い除けられ 同時に強い足払いが飛んで来た 目にも止まらぬ動きであった
長身の相手には足払いが有効である 太郎君とて大男だが末弟には及ばない
格闘でも長身の方、重量の方が有利だが 組手や体術に関しては 年長の長兄に一日の長があるのだ
足払いを見事に喰らった末弟は 床に叩付けられたが 素早く転がって躯に馬乗りにされるのをかわして距離を取った
その三郎君が 手を突いて立上がったかと思うと 構える暇も無く 躯が宙を飛んでゆき 離れた床に激しくぶつかり滑っていった
兄に後ろを取られて派手に投げを喰ったのだった
何とか受身は取れたものの 長兄の連続した体技に反撃の暇が無く 既に末弟は身体中に痛手を蒙り肩で息をしている。
それでも立上がると 瞬時に身を屈めて兄の腰に 激しく組み付き 引き倒そうとぶつかって行った
疾風の様な長兄の動きをやっと止めたと思いきや 無防備の背に 兄の重い肘打ちが撃ち下ろされて 堪らず真下に体が落ち 末弟はそのまま床に這った
勝負あったのである。
- Re: 妖と人の子 ( No.147 )
- 日時: 2019/02/12 10:21
- 名前: 大寒波 (ID: cJynYhyt)
夏目長編(3)87.
「夏目話・平安編87」 これで暫くは 動けぬだろう、滴る汗を 腕で拭いながら やれやれと末弟を見下ろした太郎君であったが ところがである
震える四肢を 叱咤しながら 肘膝を床に突いて躯を起こした三男は よろよろと 再び立ち上がろうとしていた
口中を切ったらしく口の端には血泡が流れている
我が弟ながら丈夫なやつ 猪か
呆れながらも太郎君は、不躾な客にあくまでも報復を考えているに違いない末弟の執念に困じ果てていた
血族や友人間の 親しい間柄では 明朗で快活な性質を表し、一方で 色恋の相手には不実な振舞い、という相反した所のある
見掛けよりも 複雑な弟である
そして このどちらでも無い あの鍼医に末弟が何故 これ程に執着しているのかが 長兄には分からぬのだった。
その時 倒れ伏していた三郎君が性懲りもなく 部屋の戸口へ向かって動き出していた
今の今迄 這いつくばっていたとも思えぬ三男の 素早い動作に
これはいかん、 こ奴は一旦失心させて その間に策を講じなければ
長兄は反射的に 中腰の三郎君の項目がけて 手加減なく重い手刀を打ち下ろした。
- Re: 妖と人の子 ( No.148 )
- 日時: 2019/02/13 01:43
- 名前: 大寒波 (ID: FTo14qYM)
夏目長編(3)88.「夏目話・平安編88」
容赦無い打撃だったが しかし末弟を打ちのめす事は出来無かった
太郎君の 振り下ろした馬手(めて/右手)が弟を打つ寸前、横合いから突然 二人の間に飛込んで来た見知らぬ影が 肘腕を畳み固めて 渾身の手刀を受け止め逸らしたのである。
巧みな防御であったが 重い打撃を完全に逸らす事は出来ず 影は吹き飛んだが 受身を取りすかさず起き上がったかと思うと
次の瞬間には 元の所に立戻っていた
隣室に居た夏目だった
「瑠璃殿‥ 」
兄弟の間に分け入った夏目は、思いも掛けぬ人物の介入に驚く太郎君の正面に立っていた 床に伏した三郎君は自分の後ろに置いている
「 那智!」
末弟が叫んだ言葉を長兄が聞き咎め 今のは何の事だ と聞き返そうとした時、
「もう良いのではございませぬか」
夏目が静かに言うた。
それを聞き 終始無言であった三男が 咳き込む様に声を上げた
「肩を打ちつけたろう 身体に大事ないか」
叫ぶ様に言う末弟が、
鍼医に対し 常に無く気安い言葉を遣うのを初めて耳にした長兄は眼を丸くする
しかし覗き込んだ弟の眼からは 先程あった虚無が失せていた
- Re: 妖と人の子 ( No.149 )
- 日時: 2019/02/15 06:36
- 名前: 大寒波 (ID: 23qbUXXN)
夏目長編(3)89.
「夏目話・平安編89」
この二人は 以前からの知己ではと 次男は考えている節がある ましてや長男が気付かぬ筈が無い。
どうも 三年程前に知り合ったらしい事は分かったものの接点が無く調べが進まなかった事を太郎君は思い出していた
不審な事は放置せず 手を打ち先回りするのは 流石に総領息子(跡取り)なのであった
その太郎君は鍼医の出現に驚いていたが、それによって まともに口も利かぬ程混乱していた末弟が やや正気づいたのに胸を撫で下ろしていた
あの感情の無い眼付きは暗い洞穴を覗き込む様で 末弟がまるで知らぬ男に思えてならなかったのである
その鍼医は 床に座り込んだ三郎君の傷んだ身体を ざっと診ている
勿論 深刻な怪我などない筈だが 長男も少々やり過ぎたかと思わないでもなかった
それにしても夏目は 多少の護身の心得が有るにしても 武人同士の格闘の中に割って入るとは 無謀が過ぎる 盲人の身で あの打撃を よくも受け逸らせたものだと長男は首を捻っていた
夏目は仏門の修行時に 度重なる襲撃から己を守る為に 警護を担う僧から体術等の習練を受けており見掛けによらず腕が立つが それは一般的な護身術の域を出ない
本職の武官と立合えば 勝負にならないのだ
- Re: 妖と人の子 ( No.150 )
- 日時: 2019/02/22 08:28
- 名前: 大寒波 (ID: C1Agejdf)
夏目長編(3)90.
「夏目話・平安編90」
太郎君の打撃を 夏目が受け得たのは むしろ見えて無かったからとも言える
常人の目では捉えられぬ速度で振り下ろした手刀は 微かな風切り音を立て、それを聞き分けた夏目は 見当をつけて肘腕で受けられたのだった
あちこちに打ち身があるが大した事は無く、 診立てを終えた三郎君は 鍼医に小さく礼を述べると 暫く俯いていたが おもむろに立上がり
もう行く 後は頼む
長兄に告げて戸口に向かって行った
「お前 まだ懲りぬのか!」
一喝して 長男が止めに走ろうとするも その腕を夏目が掴んで止めた
はっとして たたらを踏んだ長男に 私が、と言うと音もなく三郎君に近付いて行った
「 那智、 」
「もう おやめなさい 」
夏目が抑揚の無い声で語るが 三郎君は答えず
無言でかぶりを振った
まるで幼い児が 嫌だいやだとやる様に 何度も小さく頭を振るのだ
雲突く様な大男がやると異様なのだが 当人は思い詰めている。それは他の二人にも分かっていた
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