BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.181 )
- 日時: 2019/03/27 23:51
- 名前: 大寒波 (ID: uV1PemL6)
夏目長編(3)121.「夏目話・平安編121」
負担が軽い事を知り表情を明るくした愛宕に
先方には 自分の身内だと伝えてある と話しながら 供の男は隠しておいた青毛の馬を引出してきた
あれは目立つのでは、と案じる愛宕の心配をよそに 見事な青毛(黒色)には灰を振り被せて毛色を変え鞍は外してあった
大事な乗り馬の元気な姿に 声を詰まらせながら
「 無事だったか‥
世話を掛け申して忝ない(かたじけない)」
若者は男に頭を下げ 馬の背やたてがみをいつまでも撫で擦っていた
怪我人は麻の古着を着てゆっくりと馬の背に揺られて 山中の湯治場へと向かってゆく
憑き物でも落ちたような 柔和な顔付きをしていた
◇◇◇
太郎君(長男)の私室には 朝の陽光が射込み三人の姿を浮かび上がらせている 洗面はおろか朝餉の時間になっていた
「話は これで終いでございます」
夏目が静かに言うと 聞き入っていた太郎君は 夢から覚めた様な顔をして
ううむ と唸った
終始無言であった三郎君(三男)は俯せたまま黙って傍らの鍼医を見上げて 黒々とした瞳を瞬かせて(しばたたかせて)いる
患者がそうしている事を 盲人特有の鋭さで悟ったものか 夏目がそちらを向いて言うた
- Re: 妖と人の子 ( No.182 )
- 日時: 2019/04/03 22:28
- 名前: 大寒波 (ID: 23qbUXXN)
夏目長編(3)122.「夏目話・平安編122」
「今では家渡り(やわたり/転居)しておられるが あの方は 隠居なさった御夫君の邸に住まい 二人のお子に恵まれたそうだ
愛宕よ」
眼を見開いた 愛宕こと三郎君は 顔を紅潮させて掠れた声を絞り出した
「それではあの女の望みは叶ったのだな」顎の先からぽたぽたと涙滴が落ちる
「 そうだな 」
その言が終わらぬ内に 夏目の膝に伏してすがった三郎君から よかった、と洩れ聞こえた。
白い手が 膝に乗った震える背に下り 衣服ごしに刀創をそっとなぜた
「 痛かったか 」
夏目が優しくたずねた
声もなく恩人を見上げて 若者は何度も首を振り 微かに言う
「 こわかったのだ 」
「 …そうか 」
戦慄く(わななく)背中を 夏目は 震えが止まるまで柔らかく摩り続けた
- Re: 妖と人の子 ( No.183 )
- 日時: 2019/04/05 06:35
- 名前: 大寒波 (ID: 3f2BBQD7)
夏目長編(3)123.「夏目話・平安編123」
総領息子(跡取り)は やおら居住まいを正すと 夏目に向き直った
「嘗て(かつて)の事件の際も此の度も 愚弟を御救いくださり その上ひとかたならぬ御世話を頂き
御礼の申し様も御座いませぬ 家人と一族になりかわり 御礼申し上げます」
きちんと手を突き太郎君は頭を下げた
暫くそうした後に続ける
「瑠璃殿 昨夜から騒ぎに次ぐ騒ぎに よく眠る暇が無かった事でしょう せめて今より隣室で少し躯を休めてこられませんか
その間に宴の際の後始末と対策を打ち 今日の予定を定めておきますゆえ」
ではその様に、と夏目が 静かに立上がる
三郎君は傍らで寝息を立てている
重たい荷を やっと下ろした様な顔にみえた
複雑な顔でそれを見下ろした長兄は 先に立って御簾を上げて夏目を通すと 次男の部屋に自分も一緒に入った
見ると 寝床はそのままである 隣でのただならぬ騒ぎに眼を覚ました夏目が慌てて介入して来たと知れた
部屋の間仕切りは簾や布であるので隣で どたばた格闘していれば それは眼が覚めるだろう と太郎君は思い返す
俺と三の奴の掴み合いの騒々しさたるや 熊と猪の取っ組み合いみたいなものではないか 人の寝ている耳許で‥ 今更ながら長兄は身が縮む思いである
- Re: 妖と人の子 ( No.184 )
- 日時: 2019/04/05 18:03
- 名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)
夏目長編(3)124.「夏目話・平安編124」
内心 いたたまれぬ思いに苛まれながら 太郎君は末弟が眠る隣室から 遠く離れた一隅に 夏目を伴ってから 声をひそめて気掛かりを訊ねた
不快な事柄を持出すのは心苦しいが、と先に断りを入れる
「昨夜の少将殿は 確か例の式部大輔の… 」
「次郎君(次男)でございます」
夏目は俯き加減で答えた
「では弟は あの方を宴の客として迎える事を知って複雑な情を抱えていた所に あの振舞いを聞かされて 箍が外れたという訳か」
何とした因果か、
太郎君が 硬い表情で首を振り長い息を吐いた
夏目が細い声で続ける
「弟君の行動があれ程 極端であったのは、 数年来胸に秘めた女君への恋情と思慕とが 夫君の縁者たる少将様への攻撃性となって噴出したのでしょう
前の事件の際の苦痛や 愛惜の念が一時に甦り、偶々三年前も昨夜もその場に居合わせ 少々不都合を蒙った(こうむった)私にその強い想念を投影しての事であったと考えます」
太郎君が深く頷いた
- Re: 妖と人の子 ( No.185 )
- 日時: 2019/04/05 06:48
- 名前: 大寒波 (ID: sPN/TsSz)
夏目長編(3)125.「夏目話・平安編125」
「それ故に 胸中の重い秘密を明かし 思いの丈を吐露して 漸く(ようやく)肩の荷を降ろした弟君は こののち あの様に激昂する事は もはや無いと存じます
御兄弟が、苦衷を分かち合う事ほど弟君が心安んずることは 御座いませぬ
私に拘り(こだわり)を 持っておられる様にみえる事とて 自然に薄らいで参りましょう」
夏目が静かに言うた
最後のはどうであろう、太郎君は密かに思う
この方に対する三の弟の執着ときたら 傍目に不思議な程であったのだ
その理由が判った今では 無理もないと言うか 至極当然の事のように思える
三の弟は決して恩知らずでは無いのだ
とはいえ鍼医殿には 奴の報恩の厚い気概は 少々迷惑かと 思わないでもなかったが
さぁ もう躯を休めてくだされと 過労気味の鍼医を急き立てると 羽織っていた太郎君の上衣を 夏目が礼を述べて返そうとする
ひんやりとした 早朝の空気を嗅ぎながら太郎君は
まだ冷えますゆえ これも掛けてお寝みください
そう言い 寝床の上掛けの上に自分の大きな上衣を 重ねた
「では失敬」そうして総領息子は 此度の騒動の始末と 善後策を講じるべく 足早に次男の私室を出て行った
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52