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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.76 )
日時: 2020/07/30 03:45
名前: 大寒波 (ID: HdGR7EBh)


夏目長編(3)16.「夏目話・平安編16」
初出'18.9/21


 琵琶の音が止んで程なく 白湯を運んできた女房は、すぐに人を連れに奥殿へ戻って行った  夏目がどう声を掛けても目を覚まさなかったからである。奥の畳に運んで衣を掛けた夏目を残し 灯りを消した部屋は静寂に包まれる。

やがて邸内からも灯りが消えて 静まり返った邸を濃い闇が覆った。



 対の屋の部屋べやには池や月を眺めるのに好い、庭に張り出した簀子縁すのこえんが設えられている。
 その広い縁に白銀の長毛を靡かせた獣の妖が 音もなく降り立った。静かに部屋の中へと入って行く。

部屋の空間の 半分位を占める巨大な獣である



 奥の寝床には夏目が寝かされていたが 目を覚ます様子は無い。


 鋭い爪が生えた柱ほどもある妖の肢が寝床の上掛けの衣を踏みそうな位に近付いても身動ぎ一つせず 起きる気配も無かった。
 
そろそろと歩を進めた獣が ついに横臥した夏目の肩口を真上から覗き込むと、横を向いた小さな顔が見えた。


白い。
さっきにも増して病的に白く血の気が無い。


 まさか息をしていないのではないかと 妖物は驚いて 顔を夏目の口許に近寄せて 呼気を確かめてみると 薄い目蓋をぴったり閉じた青白い顔から それでも ひっそりと吐息のそよぎが感じられた。

Re: 妖と人の子 ( No.77 )
日時: 2018/09/21 01:40
名前: 大寒波 (ID: k8cJIfhT)

夏目長編(3)17.
「夏目話・平安編17」
妖物は狐や狼に似た姿で 巨大な体躯は白銀のつややかな毛並みで覆われ 尾はふさふさと長い。眉間には紋様があり 目の周りには隈取りの様な朱の線が引かれて彩りを添えている

緑色とも金色ともつかぬ 杏仁形の大きな眼は 妖とも思えぬ神秘を湛えている 優美な獣であった

人の生態に詳しいとみえて 夏目の呼吸があるのを確かめてから その胸元にふかふかした耳を 近付けて音を聞く様子である
ここが規則的に拍子を刻む事こそが 命が有ることだと知っているのだった

音は有るにはあったが 上下する筈の胸がほとんど動いていない
…生きている様に見えない。


再び 焦っているのかと思わせる、そわそわした様子の妖が 横向きの夏目の躯を そっと仰向けにしてみると 下になっていた方の躯はやや汗ばんでいた

む、もしやこやつ具合が 悪いのか

そこに初めて思い至ったらしい妖物が 鋭い爪をしまい込んだ前肢の指の 柔らかな裏側を 夏目の首筋に ちょんと当ててみると酷く熱かった
平静な顔をしながら高熱を出しているのだった

Re: 妖と人の子 ( No.78 )
日時: 2018/09/21 01:43
名前: 大寒波 (ID: rDOS.pEA)

夏目長編(3)18.
「夏目話・平安編18」  玄関先で夏目が辞去の意を伝えても ここの主側が承服せず 目的を変更してまでも 仕事の日程の遂行を求めた時、 屋根の上で座り込んだ妖物は 涼みがてら高みの見物をしていた

その時には 随分と傲岸で 狭量な主人だと呆れたのだったが あれはもしや 夏目が酷く消耗していたのを見かねて 深夜に休む間も無く 再び徒歩で帰宅する事になるのを強引に阻んだのだったか
主人は親類縁者か何かか

思い返しながら 室内を見回すと 湯呑と水差し、干した塩漬けの梅を載せた盆が置いてあり 脇には 就寝前の洗面をしそこなった夏目の為に 盥と水が入った角樽が置かれていた

気の利いた女房であったらしい ともかく人を呼んで夏目を看せなければならない そこで妖物は はたと考え込む様子になった


…下働きの者の真夜中の寝所に 巨大な四つ足の妖がスタスタやって来て『おい、客の面倒をみろ』

…阿鼻叫喚の騒ぎになるであろうな


ぴくりともしない夏目を 見下ろして 巨大な獣は
再びそわそわする様子であった

Re: 妖と人の子 ( No.79 )
日時: 2018/09/23 02:09
名前: 大寒波 (ID: RO./bkAh)

夏目長編(3)19.
「夏目話・平安編19」
  喉がからからだった
それで目が覚めたらしい
 秋も近いというのに
今日は暑かったから…


普段はかかない汗をかき衣類がじっとりと湿っているのにも気がついたが 自分が連れていた供の者は逃げ出してしまった
それは珍しい事でもないが。

仕事先の家中で 夜中に人を呼びつけるのも 気が引ける
確かここの客間は 夜には いつも水差しを置いてあったのを 夏目は思い出して身を起こす。 
起こそう、としたのだが

…躯は動かなかった。

仕方なく人を呼ぼうとするが 口中が渇いて舌が張りつき物がうまく言えない  そして躯が妙に熱かった。 

思い返せば 徒歩で来る途中で 立ち回りが2回あり この屋敷に辿り着いてからも浄めに忙しく 食事も白湯も摂らずに眠ってしまったのだった

水を飲みたい、

そう思いながら夏目は ふたたび意識を手放した。


躯が熱くて堪らない。
次に目が覚めた時には
口中は いよいよ渇ききって呻き声も出なかった ついでに躯も動かない 瞼を開けるのも億劫だった

これは困った…
朝 人が来る時まで保つ だろうか 自分は、


他人事の様に ぼんやり考えていた夏目の口許に 突然 硬い物があてがわれた

Re: 妖と人の子 ( No.80 )
日時: 2018/09/25 07:59
名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)

夏目長編(3)20.
「夏目話・平安編20」
ざらりとした素焼きの茶碗の感触に  
 
   水だ…

仰臥した者が器から直接水を飲むのは難しい

夏目の 渇いて張り合わさった口唇の上を、一口も飲めずに溢れた水が 虚しく首元を濡らした。


ああ惜しい、せめて首だけでも起こせればと 軋む躯に力を入れた時
熱の高い 夏目の躯を起こして そのまま その躯にもたれさせる助けがあった

夏目の細い躯を 後ろから支えた見知らぬ者が 前に廻した指を水に浸し、固く合わさった口唇を丁寧になぞりながら湿らせてゆく

無造作に茶碗を傾けた先ほどとは 別人の様な細心の手つきである

そうして 水分を含んで漸く 剥がれる様にうすく開いた口に指を差込み
硬直した小さな舌を探り そっと水で湿らせると
されるがままだった夏目がびくり と身をすくませた

指で舌を掴まれたのに 驚いたらしいが 見知らぬ指は構わずに 水を含ませ続ける

悪意はないらしい、と判じた夏目は力を抜いたが どうにも苦しく 堪らず
 は、と息を洩らす

すると指は止まって 上から顔を覗き込む気配がある その微かな動きで 見知らぬ者から 芳しい丁子香の匂いが薫った

酷く懐かしい匂いだった


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