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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.191 )
日時: 2019/04/10 12:58
名前: 大寒波 (ID: TkqspnRJ)

夏目長編(3)131.「夏目話・平安編131」
白銀の妖は 人と行動を共にした事は曾て(かつて)無かった あの鍼医はりいが初めてである

成り行きではあったが 勝負を決する迄は 付いて行くと言うと あの者は承知したのだ 溜め息混じりではあったが。

そうして 招じられた為に強固な守護と 魔除けを施した邸でも あの者に続いて門を潜り 自在に動けていたのだった

いま 外から門外漢として邸を見るに 強攻で押入って掠り傷で済む護りとは到底思われなかった。


今しがたも 門からそろりと忍び込もうとした 中級程度の妖物などは 勿論
弾かれ転がり出て来たが ちと恐い。
躯の色が変わっていたのである

三篠が言った通り 今では見掛けぬ振古のまじないだけあって作用が見当もつかない
無気味であった

成程 災を避け厄神やくじんから邸を守護し家中の者達を厚く護るには 非常に有効な呪法といえた

しかし こんな場所の様子をあの沼護りの三篠は 外部からどうやって つぶさに見聞き出来たのかと 白銀の妖は ふと疑問を感じ首を捻る やがて 池の水脈から 遣いの蛙でも放ったかと気がついた

Re: 妖と人の子 ( No.192 )
日時: 2019/04/10 18:28
名前: 大寒波 (ID: FTo14qYM)

夏目長編(3)132.「夏目話・平安編132」
馬の妖が自分で告げたのだ 謎の異形は 庭の池の水を引いている川の水脈伝いで 邸内の女の童を視て狙いを定めている、
とかいう話だった 似た様な手立てを用いているのだろう

その異形の事は すっかり忘れていた 女の童の事も同様だったが 異形や人外にとっては さぞかし美味な喰い物だろうと白銀の妖は思い返す


思い立って すっ飛んでは来たが 門内に立入るだけでも困難である ましてや邸内で話をする暇など ある訳が無い


あの者の前に降り立てるのも一瞬だけで 文句を並べ立てるどころか 一言も発する事も出来ず 白いつむじ風となって 残像の尾を引き摺りながら 無言で吹っ飛ばされてゆく。


あの妖、何しに来たのかと 彼奴はきっと首を捻るに違いない


‥みっともない事 この上無いではないか!


さしもの大妖も 頭を抱えて邸への突入を躊躇う(ためらう)様子である 侵入を図った妖物らが 瞬時に散々な目に遭っているのも少々堪える

白銀の妖には珍しく 逡巡している間に とうに夜は明け陽が昇っている


思索に思索を重ねた妖物は考え疲れていた

Re: 妖と人の子 ( No.193 )
日時: 2019/04/13 09:29
名前: 大寒波 (ID: zt./Gg/M)

夏目長編(3)133.「夏目話・平安編133」
もう昨夜の様に いっそこのまま邸を去ろうかとも思ったがそれ程 怖じけた事が出来るか と考え直す

疲れるあまりに 白銀の妖は いつもの気位が鳴りを潜めて もはや夏目に文句を垂れる気は失せていた
いや彼奴の行いに 詰られ(なじられ) 非難される所など 最初から一つも無かった 自分が あの者に会う為に託つけた(かこつけた)口実であったのだ


そこまで考えた時に
行い という語に何か引っ掛かりを覚えた そうしたことばで 肝腎なことを聞いた様な気がするのだ

彼奴が話した事 だった気がするが…

白銀の妖は懸命に記憶の底を浚う やがて


“ よく知らぬ者と言われるが 行いは存じております ”

  そう言った。

何処の誰だか 知らずともその行いで その者を信用し得る、 と話したのだった
その者とは 私の事らしかった

振る舞いだけをみて 初対面の妖物に信を置く者が、騙し討ちも同然に 出掛けた後の戸口に 密かに錠を下ろして 閉め出す様な真似をするものなのか どうか

少なくとも彼奴の行いはそんな風では無かった様に思う

いや自分がそう思いたいだけかも知れなかった

Re: 妖と人の子 ( No.194 )
日時: 2019/04/13 11:09
名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)

夏目長編(3)134.「夏目話・平安編134」
人が何を どう考えているかなど実際には 他者には分からぬのだ

人外の妖や精霊とて 同じことだ 他者を欺きもすれば信義を通す事もある
そうした人外の考えは 同じ妖でも全く分からない ただ想像するだけである

他者の言動の真意は 想像で補うしかない  そういう事なのだろう 想像を廻らせるのは自由なのだ

他者の振舞いを こちらがどう解釈するかは自由であるのなら

“ 行いだけは知っている”と言うた彼奴の あの言を真に受ける事とて こちらの自由なのだ


実を言えば あの時自分は嬉しく思うた

例え 今では邸の呪法を強めていて 自分は立入れぬのかも知れんが それはもう問題では無い。

あの時の 自分の心持ちは 誰にも取上げる事は出来ない 訳知り顔の馬の妖でも。

自分だけが心中に持っていればよいのだ

白銀の妖は頭をもたげて氷が張った様に ぼやけた邸を見た 久方振りに 晴々とした顔付きをしていた
やおら身を翻して飛ぶと遥か上空まで駆け上がる

侵入後は邸から一瞬で 弾かれ吹飛ばされ 躯が縮み妖力の大半を失おうが 口を利く暇も無かろうが みっとも無かろうが 構うものか


最後なら ひと目近くで夏目を見たかった


精々派手に吹っ飛んでやれ

白銀の妖は 眼下の邸目掛けて 勢いよく飛び込んで行った

Re: 妖と人の子 ( No.195 )
日時: 2019/04/14 21:16
名前: 大寒波 (ID: enKf/rbe)

夏目長編(3)135.「夏目話・平安編135」
朝の微かな風が 部屋を時折吹き渡り 几帳を揺らしてゆく

身仕度も朝餉あさげも済ませた夏目は 顔色が良い 仮眠は短かったが 躯が温かいお陰であろうか
床に端然と座る鍼医は 朝陽を浴び 胸前で手を合わせ経をあげている 視力を失った視界には 眩しい陽光は滲んだ淡い光となって感じられている

昨日の騒動が 信じ難い程静かな朝であった

その部屋の外に張り出した広い縁から かたんことんと微かに音が響く
夏目はすぐに覚った様だが誦経ずきょうを続けた

物音は 躊躇いがちに御簾を潜って室内に入り そこで止まる その者は 朝陽を浴びた夏目の横顔を 黙って見ていた

「お出掛けでございましたか」

合掌の手を下ろした夏目は背後の者に声を掛ける
御簾の前では巨大な白銀の獣が蹲って(うずくまって)いた
堂々たる大妖は問われて答えようとする様子だったが 何も言わない

珍しく無言の妖物の許へ夏目が立ち上がって 近寄ると 巨大な躯からいつもと異なる匂いを微かに発していた

その躯は未だに 緊張で硬く強張っていた


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