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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.81 )
日時: 2018/09/26 18:56
名前: 大寒波 (ID: uzXhjanQ)

夏目長編(3)21.
「夏目話・平安編21」

やがて強張った舌が緩み口中が潤ってくると 濡れた口唇と 水が溢れた首元を布できちんと 拭われた後に ふたたび口許に茶碗をあてがわれて 今度は水を飲む事ができた

見知らぬ手は夏目が欲するだけ水を飲ませてくれた。


激しい渇きを脱したばかりの朦朧とした夏目が 黄玉トパーズめいた眼で 助けの者を見上げて呟く

  はは上 もう おやすみ ください… こんな、刻まで かたじけ ない…

そのまま 青白い瞼を閉じて深い眠りに引き込まれていった


水を飲み 多少の人心地がついたとみえて 夏目は一刻ほど身じろぎもせずに眠り その間 見知らぬ手が すぐに乾いて熱くなる額の布を幾度も替えたのだった


明け方も近くなった頃
病人の熱がやや下がり汗も引き始めた

この様子に よしよしと
一息ついて 御簾越しに外の様子を窺っていた 助けの者の額に 白いものがかざされた
はっとして見ると 夏目が眼を瞑ったまま しなやかな腕を上掛けから差し伸べている


「女房殿 ここどうされた 怪我でも したのですか
傷の様な…ものがある」

Re: 妖と人の子 ( No.82 )
日時: 2018/09/26 21:45
名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)

夏目長編(3)22.
「夏目話・平安編22」 瞼を閉じて言うのも不思議だが 盲いた夏目が駆使しているのは 眼の視覚ではない
自らの 霊力を用いる心眼ゆえに 瞑目した方が鮮明に視えるのだ

それは非常に正確で
現に助けの者の額には朱色の複雑な紋様があった

これはしかし 怪我や傷では無いのを どう伝えたものか と助けの者が
考えあぐねていると
やおら 夏目が起き出す様子をみせた

「顔に傷が 残ってはいけない 痕が残らぬ様に膏薬を出そう」
言いながら肘を突いて ふらふらと起き上がろうとするのに驚いた助けの者が 床に押し戻そうとすると 病人の身で更に力を入れて起き上がろうとする。


ぽん ぽん、ぽん ぽん。
少し逡巡した後 見知らぬ手は 夏目の肩口や腕を
ゆっくりと拍子を取って柔らかく叩き、小振りの頭をそっと撫でた


宥める様に、それには及ばない、と言う様な仕種であった。

この 幼な子にする様な仕種に虚を突かれた如くに 素直に躯を戻して上掛けを掛けて貰い おとなしくなった

黙って 助けの者を見上げる夏目は 相変わらず表情が無かったが いとけなく少年めいて見えた

Re: 妖と人の子 ( No.83 )
日時: 2018/09/27 13:59
名前: 大寒波 (ID: n.VB6khs)

夏目長編(3)23.
「夏目話・平安編23」
東の空は濃い紫と橙色の帯が現れ夜明けが近い事を気付かせる

みやこの朝は早い。 もうすぐこの家中の者が朝の支度に現れるだろう

一晩中 病人を看ていた見知らぬ者は、すっかり熱が下がり汗も引き 楽になったとおぼしい夏目の方を見やると
滑らかな額に手を置いた

もう大丈夫であろうと 腰を上げた時、その手を取られ振り向くと 夏目が両手で 静かに助けの者の手を握っていた 
それを押し戴く様にして

  夜通し世話を掛けて  しまいました
  かたじけない
 お陰で よくなりました
 また改めて礼を…

熱の名残の掠れた声で
それだけを話すと そっと手を離した


夜が明ける前に客間を出て行った 見知らぬ助けの者を、夏目はその後 いくら探しても 見つける事はできなかった

Re: 妖と人の子 ( No.84 )
日時: 2018/10/01 02:15
名前: 大寒波 (ID: OnlANcr4)

夏目長編(3)24.
「夏目話・平安編24」

朝の洗面用具を持って来た この家の顔馴染みの女房に 開口一番訊いてみたが 夏目が体調を崩した事さえ 誰も知らなかった


下働きの者が 起きて来るとくりやの水瓶が 空となり 客間には熱冷ましの絞った布が 沢山残されていた 看病した者が 誰か居た筈だが家人は皆 自分ではないと口を揃える


夏目は 屋敷内のほうぼうの裏方に足を運び 直接人相を挙げて尋ねたのだが 女房達はもちろん 下働きの下男下女も 庭詰めの警備の者達も 誰一人あの助けの者を知らなかった。


とても無口で 或いは口が利けないのかも知れない 丁子の香を纏い 長身で色白く 額には傷か花鈿かでんがある、優美で親切な者だった


この屋敷の使用人で この様に目立つ者は すぐに見つかるもの と考えていた夏目には 思いも掛けないことで 幾ばくかの喪失感をもたらす不可解な出来事ではあった


名すら聞きそびれていた事を思う


世の中というものは 出逢いも別れも 親密さも疎遠になるのも 生き死にでさえも 一度の岐路で道が
別れて行く まさに一期一会なのだった

Re: 妖と人の子 ( No.85 )
日時: 2018/09/28 23:46
名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)

夏目長編(3)25.
「夏目話・平安編25」
僧房に身を置いていた自分が 事もあろうにこれを忘れ 明日会って礼を述べよう などと思っていたとは、不徳の至りとしか言いようがない

晩夏の夜の夢か幻の様に忽然と消えた者に 思いを残し

お師様に叱られるな…

夏目は嘆息した。



胸に苦いものを抱えていたが ここは仕事先であり いつまでも拘ってはいられない
幸いにも 昨夜変更となった依頼は こなせるだけの体力が戻っていた

賊に襲われたとはいえ 占卜の依頼は 自己都合で取止めにして貰ったのだ これ以上迷惑も掛けられない

医の仕事だ 集中しなくては…

気持ちを切換えて
鍼医はりいの身支度をしていると 白銀の獣の妖が音もなく近づき それを覚った夏目が向き直った

相手が音を立てていないというのに まるで目が見えているかの様に
正確な位置に顔を向けている 相当な能力者だと察せられた。


「あぁ決着が着くまでは 付いてくると言っておら れましたね 今は忙しいので無理ですが 近い内に済ませる事に致しましょう」

事も無げに夏目が言った


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