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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.206 )
日時: 2019/05/05 18:12
名前: 大寒波 (ID: qAj0rN00)

夏目長編(3)146.「夏目話・平安編146」
夏目の言を聞いて 妖は呑んだくれていた時分の事を思い浮かべた

同席の中級から 拗ね者呼ばわりされるほど自分が塞ぎ込み 呑んでも呑んでも酔えぬわ 胃の腑はもたれるわ 躯は冷え冷えするわで 散々だった宴が苦く甦る

自分の真意から 目を逸らすが故に思維も気分も悪い方に偏っていったのに違いなかった
その真意とは何であったのかと考える


数日間 起居を共にし話を交わした 篤実そうなこの者が 自分を謀った(たばかった)との思い込みか

或は 邸から締め出しを喰うほど本当は 自分はこの人の子に疎まれ 嫌われているかも知れぬ事を指摘され確認もせずに去った事か

追払いたいならそう言え
とでも言えば良いものを 相手の本意を確かめる事から逃げたのか


直視せずにいた真意を突き詰めてゆくと 我ながら汗顔の至りの情けなさである
しかしあのまま 強がって背を向けていれば 二度とここで夏目と言葉を交わす事も無かったのだ


この邸に戻ったのは約定を口実に 最後に一目会おうと 無理に侵入した偶然の結果であって相手の本意を確かめる意図はなかった
黒白こくびゃくを付けるのなら今であった

Re: 妖と人の子 ( No.207 )
日時: 2019/05/05 18:29
名前: 大寒波 (ID: n.VB6khs)

夏目長編(3)147.「夏目話・平安編147」
延々考えあぐねていた 白銀の妖物であったが
ひとの考えは 他者には本当の所は分からぬのだ

だから本人に訊くのが 良かろうと結論して 思索にけりを着けた


其方そなたは 私がこの邸を後にして 不在であった事を 知りながら
何故 私を邸に入れぬようにしなかったのだ 」

端的に訊いた
唐突な問いに夏目は 考え考え訊き返す


「何故不在だと判ると むら殿を締め出す事になるのでございますか 」


「私は勝負の決着を着ける迄はと言うて 其方の意に反して無理にこの邸に付いて来た その妖物が外に出て行ったら すかさず その跡を呪法で閉じる事もできよう」


妖はやはり明確に答えたが夏目の答えは更に明快であった


「ああ そうした手がございましたか それでは 今から ちょっと外へ出掛けてみてくださいませぬか」

 「 ……………。」


「……冗談にございます 何もその様に 悄然となさらなくとも 」

「ふん 見えておらぬであろうが」

 妖物がずけずけ言う

「しくしく啜り泣く声が 聞こえた様な、」

 こちらもずけずけ言う

Re: 妖と人の子 ( No.208 )
日時: 2019/05/08 10:58
名前: 大寒波 (ID: myDpNyTl)

夏目長編(3)148.「夏目話・平安編148」
誰が啜り泣いておる

妖物は 反りくり返って言うが 実際見るまでも無かった
巨大な体躯が 少々冷たくなったのである

変化は僅かだったが すぐ傍に立つ鍼医はりいには間違いようが無い


ともあれ 夏目は訊かれた事を考えた
妖は殊の外 真剣に問うている様に思われたからである


何故 邸から出た時に再び入ってこれぬ様に処置しなかったのか、とお訊ねでしたか、

白銀の妖物を見上げる様にして夏目は口を開いた
「殊更 追い払おうなどとは思いませぬが」

 「 何ゆえか 」

「別に 邪魔にもなりませぬし 害意も感じませぬ 第一決着が着いておらぬでしょう」


 「 そ、そうか 」


どうも 外した答えであったらしい
思いの外 しゅんとした様子の妖物に 無表情の夏目も当惑気味である


自分は気の利いた事を言えぬから‥


少々困った夏目は 外にも言葉を探してげんを足してみた


「ふかふかした毛並みをしておられますし」


言うに事欠いてそれか。毛がふさふさで温かければ何でも良いのか この者は

妖物は内心で言い返してみるが 大人気ないので口には出さない

Re: 妖と人の子 ( No.209 )
日時: 2019/05/17 17:49
名前: 大寒波 (ID: .H8Y6m32)

夏目長編(3)149.「夏目話・平安編149」
巨大な妖物は 天井近くにある白銀の体毛に覆われた頭を屈めて(かがめて) 真下に立つ人の子を眺めた

いつに無く 顔色の良い鍼医は 考え込む様子を見せていたが やがて顔を仰向かせて述べた

「何を差し上げても 旨いと言うて 残さず食されますし」


「……あい分かった。」
もう そう言うしかない。
一方の夏目は身体に不調がみられる眼前の妖物の診立てに苦心していた

四つよつあしの獣に よくある 肢の周辺に棘状の物が刺さっているのではと考え、肢を折畳んで伏せた妖に向かって指示を出す

「出来れば肢を伸ばして横臥おうがしてみてくだされぬか 躯に触っても良うございましょうか」

うむ、と唸って その通り横向きに寝そべった妖物は 各々の肢を鍼医が調べてゆくのを 頭だけをもたげて見ていた

夏目は 自分の躯より太い肢先の趾間(しかん/指の間)から、柱ほどの長さが有る肢の付け根迄を 四足共 何事も見落としなき様に丹念に撫で擦ってゆく 相当な労力である。


勿論 鋭い爪は引込めているが 人が異形の身体を改めるにしては無警戒かつ無遠慮な行動と思えるが 成る程 診察だからか
妖物は独りごちた

Re: 妖と人の子 ( No.210 )
日時: 2019/05/08 23:15
名前: 大寒波 (ID: RO./bkAh)

夏目長編(3)150.「夏目話・平安編150」
眼下で立働く鍼医を見下ろしながら 白銀の妖はうとうとしてしまう
瞬きを繰り返している内に 物音が遠くなっていった


視界の端から光が拡がって目の前が白むと辺りが明るくなった 自然に眼を開ける

眼を開けるだと、

驚いた白銀の妖物は 身を起こした
太陽の位置を見ると 一刻(30分)程眠っていたらしい
はっと傍らを見ると夏目が薬剤を煎じていた


しかし自分は人の子の前で眠りこけていたとは何事か 一体何を気を抜いていたのか、 唖然とする妖物に 鍼医が静かに語りかける


「身体に傷や異物はありませんでした それ故 心の作用を鎮めて身体の働きを緩やかに高める効能の軽い薬剤を いま用意しております」


人間の薬が妖物に効くのか と至極当然の事を妖物が訊いてみた


「妖物には どうか存じませぬが 狼には効き目がございました 獣の妖物の貴方でございますれば
薬剤の計量を厳に行えば効く事もありましょう」

夏目が割合 適当なことを言う。

妖物が思わず鍼医を凝視すると

少なくとも害はありませぬ、淡々と言った。


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