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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.51 )
- 日時: 2018/04/01 19:45
- 名前: 大寒波 (ID: qAj0rN00)
夏目中編(2)
5.
咆哮かのような大音の一喝が轟くやいなや
銅鑼を撫で打つ様な音と 共に白煙が高く上がり その向こうに 大きな白い獣が現れた
狼や狐を思わせるしなやな体躯は 純白の毛並みに覆われ四肢には鋭い爪 顎には強力な牙を備えている 眉間と目許には朱の紋様が 隈取りの様に施され 翡翠色の眼の虹彩は金色に輝く
神獣かとみまごう 神々しい姿だが 今のこの獣の妖は剣呑な怒気をみなぎらせていた 金緑色の眼は爛々と光り 全身が陽炎で揺らいで見える程 憤怒の波動を立ち上らせている
返答次第では八つ裂きにしてくれる、と 今にも飛び掛かりそうなほど 怒り狂っているのが 対面している羽根妖には分かる
古馴染みだが 鷲羽根の妖も斑がこれ程 怒りを露にする所を見た事が無い
さしもの とぼけた羽根妖といえども表情を改め すかさずこちらも白煙と共に本来の 鷲の特徴を持つ大きな妖物の姿に変化する
そうやって対抗しなければ ごうごうと嵐の様に叩き付ける憤怒の波動で 立っている杉の樹上から 吹き飛ばされそうなのだ
これはまずいと 冷や汗をかき始めた時だった
「長広舌は終わりか」
饅頭猫の時とは まるで違う深く響く声で 斑が口を開いた
「お前や他の連中が
もし夏目と新たな約束や契約を結ぼうと思うのなら、それは私を倒し滅せぬと不可能な事だが お前達にそれができるのか
私はあれが友人帳の名の放免を全うできる様に 助力をしている
名の返還など 時間が掛かる上に消耗する作業で 夏目には一銭の得もない 一生掛かるかも知れん
途中で落命する危険も大きい
それでもやるとあれが決めている以上
私も夏目から離れん
傍らで一生涯を見届けるのだ」
「その夏目を 小賢しくも力を得る道具や 寝所の玩具の様に扱い貶める輩は生かしてはおかん 」
「夏目は友人帳の正統な持ち主であり、夏目は私のものだ」
斑は鷲羽根の妖を金緑色の光る眼で睨み据えて
お前がまだやる気なら この場で決着を着ける
一際強い怒気を発して斑は言い捨てた。
- Re: 妖と人の子 ( No.52 )
- 日時: 2018/04/03 00:11
- 名前: 太寒波 (ID: .H8Y6m32)
夏目中編(2)
6.
四肢の鋭い爪が大枝にぎりぎり食い込み木っ端が舞う
力を漲らせた斑は 目の前の羽根妖に 今この瞬間にも飛び掛かって 喉笛を喰い破ろうと巨大な躯を低く身構えている 全身から殺気が発され姿が霞んで見えるくらいである
長く生きた知恵者の 鷲羽根の妖の命も もはやこれまで と思われた時、
突然 羽根妖の、こちらも全身から立ち上らせていた激しい闘気が ふいにかき消え躯から力が抜けた
そして微笑って言う。
「そこまで思い込んでいたとはな 風来坊のお前が 人家に住み人を守護していると聞いた時には それこそデマだと思ったものだったが
斑を東奔西走させる人間とはどれ程の人物かと 会いに行ってみれば 子供ながらに なかなかのものだったしな
…あれなら生涯 最期まで共に、と誓約を交わすのも無理はない 」
とはいえだ、
夏目殿とお前が交わした事柄はあくまで[約束]に過ぎぬというのなら これは他者がつけ入る間隙があるという事だな
羽根妖は面白そうに付け加えた
「妖・人の間の契約は違えれば最初に取り決めたペナルティが発生し人側に多大な代償が課せられるが、約束だと話は変わるからな 単に破る、或いは気が変わった、で破棄が可能だしペナルティが無い。破約した者として侮蔑されるだけだ」
「お前もそれを百も承知だからこそ あの人の子を横取りされかねん時には そんな風に怒り狂って攻撃的になるのだろう? 沈着なお前がな
何といっても あの約束は彼側に相当不利だ
当の夏目殿が
《もっと良い他の妖物に守護者を変える》とでも告げれば破約できてしまう 」
口約束の辛いところだが 彼も命が懸かっている以上 より良い条件を求める権利があると思うぞ
夏目殿にとって 斑お前は 自分が最上の守護者であると断言できるか
鷲羽根の妖は問いながら 珍しく真顔で 間近の古馴染みの眼を見た。
- Re: 妖と人の子 ( No.53 )
- 日時: 2018/04/12 19:18
- 名前: 大寒波 (ID: .H8Y6m32)
夏目中編(2)
7.
怒りで目を光らせ羽根妖とぎりぎり睨み合う
そして暫しの後に斑は躯の緊張を解いた
発していた殺気が蒸気の様に霧散してゆく
一触即発の闘い寸前だった体勢をも改め 大杉の枝上に留まり直す獣を見て 羽根妖はやれやれと内心 嘆息した
自分は旅の途上で連れもある こんな所でうっかり落命するわけにはいかないのだ
怒気と殺気を収めても 相手から目を離さなかった 斑が口を開いた
「つまりお前は より良い条件を出して夏目と交渉する気か」
「そうだな それに交渉を行うのはどの妖にも許されるぞ 夏目殿が承知すれば成立するんだからな
お前が違約条項を含めて彼と紙面なり血判なりで契約しておかなかったのが幸いする訳だ」
これを聞いた斑は顔を曇らせたが こう言った
「例え他者とあれが新たに守護の約定をし直すとしても 私は夏目の助力を続ける
生涯を見届けると私が約束したのだ それは決して無効にはならん
それに、横槍が入るにしてもだ 私は今でも夏目と契約を交わす気は無い 。そんな条件やペナルティで縛り付けても あれは手に入らん 契約など それだけの事だ」
ふうむ‥
羽根妖は唸って 相手を見た 穏やかな目つきになっていた
夏目殿は今はどうしている と静かに訊ねる
「自宅で伏せて学校の友人の見舞いを受けている 子供らが集う場所には凶暴な妖物は出現し難いからな その隙に出て来たのだ」
- Re: 妖と人の子 ( No.54 )
- 日時: 2018/04/07 18:13
- 名前: 大寒波 (ID: .H8Y6m32)
夏目中編(2)
8.
そうか、と呟き頭をもたげた羽根妖は語り出す
「では話はこれで最後だ 早く帰らねばならんだろうからな
あの夜 夏目殿が弱った身で無茶をしてまで お前と私が鉢合わせせぬ様に 必死になるのが 私にはどうにも解せなくてな
養い親の家先での騒動を危惧しての事かと思ったが 常人には見えん我々の格闘は 暴風やつむじ風としか認識されん 気に病むほどの事でもなかろう
それが 終いには頼むから降ろしてくれ、先生と顔を合わさずに帰ってくれと蒼白な顔で 頼み込む始末だ そう言われては逆らえん。
不承不承言う通りにしたのだったが 今日お前に会って初めて得心がいった
お前負傷していたのか
そういう事だったのだな‥
回復しているとはいえ、未だ薬など貼り付け 深傷を負った躯で、訳ありの妖物に引き会わせて万が一やり合う事にでもなったら お前といえども更に大怪我をするのではないかと 夏目殿は案じたのだろう」
だから何がなんでも私を連れて帰りたくなかったのだ
「お前を守る為だ。」
不思議な目の色で斑を見ながら 羽根妖は締め括った
斑は最後のひと言にはっと顔を上げてそのまま押し黙った
ふたりの間を初冬の冷えた風が吹き抜け 杉の葉が揺れさざめく音がする いつの間にか陽が傾いていた
「‥この私がお前との格闘で遅れを取るのではないかと案じただと 杞憂だ 心配性め」
漸く絞り出した 斑の憎まれ口も迫力がない。
「今のお前を見たら彼も少しは安心するだろうがな 病み上がりだというのに怒髪天を衝き 妖気で体躯が膨れ上がり 怒りの波動で地が揺るがんばかりだ
最後に会った時とは比較にならん程 お前の妖力は高まり体躯も更に大きくなっている
こんな威容を見せつけられては 数多の妖が
“友人帳を手に入れ夏目を侍らせれば あの様に力漲る大物の妖となる”と 目の色を変えて友人帳を奪いに来るのも当然だろうよ」
フンと鼻を鳴らし
もう行く と羽根妖に告げると 斑は前肢を踏み出した
- Re: 妖と人の子 ( No.55 )
- 日時: 2018/04/13 00:19
- 名前: 大寒波 (ID: cJynYhyt)
夏目中編(2)
9.
連れが回復しだい この土地を離れるが その前に夏目殿に契約の勧誘に行くぞ
別れ際に羽根妖は付け加える
「そういや 連れが彼を喰おうとして返り討ちに遭った時に 喰うという事を 頭からバリバリ喰う事としか思ってなかった様子だったのでな 異類間での性交渉の事を教えると酷く驚いていた」
「それをあいつに言ったのか」斑が舌打ちする
「教えると何かまずい事でもあったか 警戒されたり嫌悪されたりするのが まさか怖いのか」
羽根妖が面白そうな顔になる
「彼は驚きはしたが 嫌悪や拒否反応は無く、気掛かりは別の事だったぞ
人身御供に立った贄に対して 御供を取った神や妖が情を移したりする事はあったのかどうか だったな」
「………。」
「ほだされてなぁ 気に入った次第だ」
古馴染みを一瞥すると 白い獣は大杉から宙へ 巨体と思えぬしなやかな身ごなしで跳び ひと翔けふた翔けすると あっという間に消え去る
その優美な後ろ姿を見送って 鷲羽根の妖も大杉を揺らして飛び立った。
往きは太った猫姿で懸命に地面を走っていた斑は 帰りは空を飛び 瞬く間に 藤原家上空に着くと大福猫になって地に降り門を入って行くとタイミング良く高校生二人が帰る所にゆき会う
やれやれ見舞い客が帰る前に帰り着いたかと、寝込んだ夏目を独りにせずにすんだ事に 胸を撫で下ろしながら大福猫は勝手口を入っていった。
話通り 羽根妖が藤原家を訪ねて来たのは1週間後で 最初に会った日と同様に若い男の姿だった
外で話そうと 夏目をお茶に誘い にらむ饅頭猫を笑っていなしている
身支度をしながら夏目が連れの二匹の調子を訊ね
すっかり元通りで明日一緒にここを発つ
妖がそう話して安心させると 意外そうに斑が口を挟む
「その二匹とは お前が長年住んでいた奥山の滝壺のあれか 故郷を出て旅に出たのか」
そちらも知合いらしい
「滝は細り消え失せた 滝壺の 世間知らずな魚の妖物であった二匹は 新たな住処を探すというのでな 私の道連れにしたのだ」
世の中や他の妖、人の世界の事を教育中で 手が掛かるが なかなか面白いものだぞ と羽根妖が楽しげに語った。
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