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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.66 )
- 日時: 2018/09/08 07:54
- 名前: 大寒波 (ID: C1Agejdf)
夏目長編(3)6.
「夏目話・平安編6」
言わずもがなの事を わざわざ言い添える、端正な白い顔は あくまで静かであった
感情の表れない小さな顔から 目を離さない妖物は 答えにもなっていない
返事をする
「…ふん 其方を見つけた時には喰う気満々だったが 今は少々胸焼け気味だ
あの盗賊共の有り様が 不快で消化不良を起こしておる」
「あぁ あれは野伏せりや山賊とは到底思えぬ者達でありましたね
近寄ると 粗末な古い衣服の下から焚き染めた香が漂って来たり、
丸腰のたった二人を相手に 前後左右に素早く散開して頭以外は誰も無駄口を利きもしない、この様な山賊など おりますまい
どこかの公卿に仕える警備の者が身をやつしていたのでございましょう」
「いやに確信めいた事を言うのだな つまり、」
不可解な襲撃は初めてでは無い という事だった
「何かを寄越せ とか喚いておったが 其方がその様な宝を懐に持ち歩いておるとも見えんが」
「全くでございます
有りもしない物を出せ渡せ、と。人の慾と願望には本当に際限が無い」
殺伐とした話をしながら 口ぶりは 厭世的でも虚無的でもなく淡々としている
言動にあまりにも起伏がないので この若者には感情がない様にさえ見える
- Re: 妖と人の子 ( No.67 )
- 日時: 2018/09/12 17:58
- 名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)
夏目長編(3)7.
「夏目話・平安編7」
「悪心は妖魔を引き寄せやすい ああした取込みの前後に 他にも妖が現れた事があっただろう
…まぁ其方には また別の理由で妖が訪れているのだが」
それでは貴方が今夜 此処へ現れたのにはどういう理由が あったのでございましょう
無表情に若者が呟く
「そら、首のそれだ 其方は妖力が非常に強い
丸ごと喰うても良し
身体に流れる血潮を啜るも良し 妖物には大変な滋養になるのだ」
あぁ、と若者が自分の衣服の胸元を手で触ると 凶漢に脅しで切り付けられた首の傷から滴った血が涼やかな狩衣を赤く染めていた
「この様では占卜どころではないな… 汚れた身で人様の屋敷に上がり込む訳にもいかない それでは今夜は誰か人を付けて貰って 自宅に帰る事にしましょう」
傷の事を忘れていたらしい かなりの出血であったが
この若者は感情が無く
もしや痛みも感じないのだろうか
獣の妖は何となく気にする様子である
はっと若者が息を詰める
白い首筋に流れる血の筋を大きな獣の赤い舌が舐めていた
- Re: 妖と人の子 ( No.68 )
- 日時: 2018/09/08 21:27
- 名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)
夏目長編(3)8.
「夏目話・平安編8」
なにを、なさるのです
小さな声で言うので 妖物が
「地に吸わせるのは 勿体無い 貴重な滋養ゆえ私が貰ってやろう」
などと 勝手な事を言っては血を流す白い首元を舐め続けている
若者は黙って好きにさせていたが やがて
もうお気が済んだでしょう …お離しください
蚊の鳴くような声で言った。
おや、と 相手の僅かな変化を見てとって 妖が舌を這わせながら目を遣るが 顔をそむけていて若者の表情が見えない。
何となく、固まりかけていた傷をそっと拡げて舌先を差し込んでみると
再び 血が どっと吹き出てきた すると
…う、
びくりと身体を揺らし 幽かな声が漏れ聞こえた。
なんだやっぱり痛いのか
意地悪く思いながらも 妖はやめない。
普段 この堂々たる獣の大妖は 力の差が明白な脆弱な相手を 時間をかけて捕食する事はない 一撃で息の根を止めてさっと一口で喰う。それは肉食獸の決まり事でもある
それがどうした事か この無表情な若者をなぶる様に血を舐め啜るのを止められない
どうしても 今この時の若者の表情が見たかった。
- Re: 妖と人の子 ( No.69 )
- 日時: 2018/09/12 18:02
- 名前: 大寒波 (ID: 8DXjmx02)
夏目長編(3)9.
「夏目話・平安編9」
それはだしぬけに起きた
鼻先に 雷光が幾筋も走り 鋭い風切り音と共に爆発的な衝撃が真正面から 妖物を襲った
巨大な獣の妖が もんどり打って 吹き飛ぶ程の威力だった
妖物はすかさず起き上がったが 毛並みのあちこちに炎が上がっているのを見るや 舌打ちしながら強く身震いして火を消す
落雷だったか、と思い 同じ所に立っていた筈の若者の方を急いで見た
途端 獣の妖は体躯に力を籠め 身を低くして構える
若者の周りには 火花が次々に爆ぜ、暗闇の中で躯が浮かび上がって見えたが 衣服に火は着かず火傷を負った様子もない
半眼の瞳には剣呑な光を浮かべていた
今しがたの雷撃は 若者が意図的に自分に向けて放ったものと妖物は理解したのだった
「大概になされよ
獲物をいたぶり弄ぶのが 貴方の様な大妖のする事なのか それとも柄が大きいだけか
事と次第によっては どちらかが滅するまでお相手致す」
- Re: 妖と人の子 ( No.70 )
- 日時: 2018/09/11 21:31
- 名前: 大寒波 (ID: k8cJIfhT)
夏目長編(3)10.
「夏目話・平安編10」
周囲には 法力僧や陰陽の道士が使役する式や 護法童子の類は見当たらず 護符も持たず 印すら結んでいない
先程の雷撃が この者に元来備わった霊力からのものだとすると 厄介ではあった
そういえば 多少の感応力があったなどと 自ら話していたではないか
自分程の大妖が滅せられるわけなど無いが しかしこの者が死に者狂いで挑んで来たら 致命的な深傷を負う可能性も有る ただでさえ死に急ぐ者は面倒なのだ
方策を考えながら再び 若者を見ると 瞼を閉じて顔は油断無くこちらに向けている 眼に姿は映さずとも 閉じた瞼の裏で敵の気配を感じ呼応している 心眼と呼ばれるものだ
眉をひそめた白い顔は むしろ静かでさえあったが 立上る生気は四方に大きく拡がり 怒気は熱風さながらに びょうびょうと吹き付けてくる 細い体躯は青白い焔に包まれているかに見える
睨み合う両者の間には
ぶつかり合う気が 辺りに飛び散り渦を巻き 重苦しい霧の様に立ち籠めていた
…完全に怒らせてしまっ たか
妖物はふと、先程考えていた事を思い出した
見たかったのは もっと 別の表情だった
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