BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.106 )
- 日時: 2018/11/23 09:00
- 名前: 大寒波 (ID: FTo14qYM)
夏目長編(3)46.「夏目話・平安編46」
夏目は人を呼び何事かを告げると すぐ戻って来たその者から 受取った物を次郎君に渡した
一枝の紫色の花だった
「涼やかで気品がありますね 瑠璃殿、この花は」
「紫苑にございます」
紫苑の根は古来よりの薬草で 此度も新物を この家に運んで来ている
地上部位の花は 観賞用に好まれているので
昨夜突然 医の仕事に変更する事となった この家の主人の依頼に伴い、今朝 急遽自宅から 届けさせた他の薬類の荷と一緒に 花も束で運んで来ていたのである
北の方と末の姫の部屋に既に飾られていた所から 一本持ってきて貰ったのだった
名前の通り鮮やかな青紫色の小ぶりの花を 沢山つけた紫苑は 気品があり冷涼且つ清楚な印象がある
暑い暑い京の夏を過ぎた時期にはとても好ましく映るのだ
女性に贈る 初秋の文に添えるのに相応しい草花である
これは、好いな
次郎君は 文を紫苑に結び直しながら舌を巻いた
紫苑の長い茎は真直ぐで硬く文を結び易く
花は丈夫で振っても落ちない こうした使い方に適している植物なのだった
- Re: 妖と人の子 ( No.107 )
- 日時: 2018/11/26 10:09
- 名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)
夏目長編(3)47.
「夏目話・平安編47」
我が作ながら 見違える様に 風雅な便りとなった花に結んだ文を手に、使いに渡す為に 部屋を出て行く次郎君の後ろ姿に 夏目が声を掛けた
「ああ その花の異名は」
うん、と振向いた次郎君に告げた
「十五夜草だそうでございます」
ぱあっと輝くように顔を綻ばせた恋する男は
さすがは瑠璃殿
と言い残して廊下を駆けて行った
躍りだしそうに弾んだ足音を聞きながら 夏目は板間の縁に出た
陽が暮れかかり 中庭も建物も夕陽の色に息苦しく染まっている
一部始終を屋根の上から眺めていた白銀の妖が 軒先から垂らした長い尾の先をふさふさと揺らしながら言った
「其方はいいのか 観月と絡めた名の花を贈るなどいかにも女が喜びそうではないか」
「私は今は 決まったひとが居らぬので無用な事にございます」
「今は、とはなんだ」
「時折 占卜や医の用で 宮中に参じる時に声を掛けてくださるひとなどが稀にいらっしゃるという事です」
「成るほど 内裏では色恋が華やかだと言うな それで一夜の恋という訳か」
「僧になり損ねた桑門(出家)風の男が珍しいのでしょう」
- Re: 妖と人の子 ( No.108 )
- 日時: 2018/12/03 06:52
- 名前: 大寒波 (ID: sPN/TsSz)
夏目長編(3)48.「夏目話・平安編48」
それだけが理由なワケがないだろう、と妖は思いつつもあの次男坊が わざわざこの鍼医に 恋文の指南を仰いだ訳が 腑に落ちた
和歌や文の教師の作風だと年嵩な分 古色蒼然たる印象になるのだろう こうした事には生きた流行がありそれを押さえていないと女性から相手にされないのだ
手本にするなら 若くて引く手あまたの現役が良いに決まっている。
「人を生かす医を生業として、歌と文とで色恋の仲立ちか。 随分と極端な事だな」
妖がからかう
「治療で病人を此の世に引戻すのも、若人達の後押しで 次の世代へ繋ぐ助けとなるのも 衆生に尽くす出家の本分であり 同じことではないかと」
にこりともせずに夏目が答えた
とは言え自分は還俗した身にございますが
と付け加える
まるで この世は自分とは何の関係も無く 関心も無い とでも言っている様に聞こえた
- Re: 妖と人の子 ( No.109 )
- 日時: 2018/12/04 06:38
- 名前: 大寒波 (ID: RO./bkAh)
夏目長編(3)49.「夏目話・平安編49」
そんなことを口にしながら しかし先ほど 次男坊の小躍りする様な足音と後ろ姿を どこか羨むような 淋しいような様子で見送っていたのは こちらの気のせいとも思われなかったが。
…此奴が仏門の修行を辞めて俗世に戻るには どんな事情があったのか、と 表情の読めない白い横顔を見ながら 妖は思いを巡らせた
太郎君(長男)の帰宅の連絡があった
夏目が次郎君の部屋で
診察の仕度をしていると そこへ大股でやってきた太郎君が声を掛けて入って来た
「陽が傾くのが 早くなって来ましたね 今夜は宴ですからおおいに呑みましょう 楽しみだ」
御勤めお世話様でございました と夏目が労って
では早速、 と長男次男二人に 近頃の体調を訊ねて問診を始めた
二人共に体調に問題無く 同僚や周囲の人々にも最近病に罹った人は居ないという事であったので診察は早々に終えた
この家の病に関する怖れと危惧は過剰にも見えるが これはひとえに 末娘を流行り病から守るという 一点にある
二年前には死に直面した 幼い子を 何が何でも健やかに成長させたいと 家人の誰もが願っているからであった
- Re: 妖と人の子 ( No.110 )
- 日時: 2018/12/02 13:49
- 名前: 大寒波 (ID: .H8Y6m32)
夏目長編(3)50.
「夏目話・平安編50」 それは二年前の流行以前に 京で猛威を振るった流行り病の時に 大君(長女)と中の君(次女)の二人の娘を喪った苦難の出来事に因っている
その時にも 評判の良い鍼医を幾人も呼び 祈祷に高位の僧や陰陽師も道士(道教の聖職者)も頼み出来るだけの手を尽くしても救えなかった 重い病に罹ってからでは 手の施しようが無いのだ
その悔恨が 現在の予めの備えに繋がっているのだった
太郎君と次郎君は共に偉丈夫(体格の立派な男)で頑健な質である
三郎君は中でも一番大柄で頑丈、如何にも武官という感じだが 三人共顔立ちが整っている
宮中に仕えるにあたっては ある程度の容姿も要求される素質ではある。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52