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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.26 )
日時: 2018/03/03 08:56
名前: 大寒波 (ID: 3f2BBQD7)

夏目長編(1)
 9.
「紅峰 どうした」

相対した斑の声に、今しがた辞去して来た 夏目の部屋でのやり取りを 思い返していた紅峰は はたと我に返った


「いいえ 何でもありませんよ それより 夏目が言うには 用心棒の猫は家人と同じ物を食べて 毎日風呂でシャンプーしてるんだって話でしたよ」


その通りだが何だ、と言う斑に ちょっと苦笑して

「いえね 一緒に暮らしてる妖を 毎日風呂に入れて洗い上げて 養い親に頼んで旨い飯を出して貰って 同じ布団で一緒に眠る。」

「これ以上 あの子供に出来る事など 現状無いでしょう
精一杯の好意なんでしょう。
斑様は大事にされてるんですね 」


目を覚ました時に せめて好物でも食べさせようと昏睡中に 七辻屋の饅頭を買っておいたが
その日は眠り続け 次の日もその次の日も ニャンコ先生は目を覚まさなかった

「って 話をした時の夏目の寄る辺なさときたら。 今にも透けていなくなってしまいそうで」

こんなにされてると 離れがたくなるのは一体どっちなのやら と呟いて
紅峰は 自称用心棒の饅頭猫を見た。

Re:妖と人の子 ( No.27 )
日時: 2018/03/03 09:04
名前: 大寒波 (ID: .H8Y6m32)

夏目長編(1)
10.
「それで斑様は あの純真無垢を どうするおつもりなんです」


紅峰は 目の前の饅頭猫みたいな依り代を持つ 大妖の斑が、夏目の用心棒として 夏目の心身の守護を全うしている事を知っている。

時に自分の体を的に
時に自分の命を懸けて


あれ程の妖がそんな犠牲を払う価値が あのガキにあるのかと さっき迄は思っていたが
これはどうやら他者が 口を挟む話では無さそうだった。


「まぁ友人帳を持ってる限り妖物との縁やいざこざは切れないでしょうし
強い妖力や容姿、清浄さといった夏目自体に惹き付けられる妖も後を断たないでしょう

どちらにしてもいさかいの種が尽きやしない」


紅峰が更に言う

「霊山なんかを通り掛かる時には 天狗に攫われない様に気をつける事ですね  夏目みたいなのを見つけたら 天狗共が目の色変えて飛んで来るでしょうよ

何しろ清浄を好む 霊力が強い者を好む 美しい若者や童子を好む連中ですからね」


「夏目は十六だ 天狗などに攫われて稚児奉公する歳ではない」
斑が口を開いた


「ですが 年相応の色気もある」

「あの素朴な乱暴者にか」

日頃の言動はさておき 夏目の容貌は、非常な美人であった祖母レイコに生き写しで かなりの美形ではあるが
しかし本人は 殊更男らしく振る舞う傾向もあり 色気など何処にあるのか。
意外そうな斑に紅峰は続けた


「斑様は 友人帳の名を返す時の夏目を 真正面から見た事が無いのでは。私は主様の一件の時 それを見た事があるんですよ」

思えば名を返す時には 斑は本来の獣姿になって夏目を背に乗せていたり 殺気立つ相手を牽制したりと 脇で散々フォローしているが、確かに 名の返還を受ける妖の位置に立って彼を見た事は無い。

Re:妖と人の子 ( No.28 )
日時: 2018/03/04 17:00
名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)

夏目長編(1)
 11.
「名を返す時には 夏目は大きな妖力を使って術を行う

そういう時には人としての性質を離れて 精霊や天人なんかに近付くんでしょう

それだからか 普段の顔付きが消え 婀娜っぽい容貌に変わる 

目の前で みるみる妖艶な変貌を遂げた人の子が その後 名を返還する妖に何をするのか」

紅峰は一旦言葉を切った

友人帳に綴じられた 妖の名を記した紙は 破ればその身が裂け 火に投じればその身が灰になるという いわば名を書いた妖の体そのものなのだ


名を返すには 書かせた当人である 故夏目レイコの息と唾液を必要とするが それを血族である孫の夏目貴志が代わって行っている


名を書いた紙を口に咥え その妖をイメージしながら ふっと息をはき
名を紙から妖の元に飛ばし送り返す こうして名の返還を続けている


「そういう事か」
その特徴を考えていた斑は顔をしかめた
思い当たる事があったのだ。


「そうです 妖は自分の体を目の前で 夏目の口唇に咥えられて 唾液で濡れたところで体を噛まれるわけです

浮世離れした 美しい人の子が 蠱惑的な目で自分を見て 名を呼び息を吹きかける


体を噛まれながら 吐息と共に名が 妖の体に入り込んでくる

どんな悦楽 快美でしょうかね」


紅峰が言い募る

「名の返還の直後に 無節操に夏目を喰おうとしたり脅したり、という妖物もたぶん居たでしょう
でもそれは義理に背いたり 騙したりという訳でも無くて

あの一瞬に 夏目に惚れて、自分のものにする為に喰っちまおうとした浅慮 の連中だと思いますね 」

Re:妖と人の子 ( No.29 )
日時: 2018/03/04 17:10
名前: 大寒波 (ID: 9sihcqpn)

夏目長編(1)
 12.
斑は 夏目から名の返還を受けた直後の 妖の恍惚の顔を、命も同然の名を取り戻した安堵の表情と 解釈していた
そこに別の理由があるとは思ってもみなかったのだ


「面倒なことだな 勝手にやっていれば良い」
饅頭猫がうんざりした様にため息をつく

「おや その割には随分不愉快そうなお顔じゃないですか」

「余計な事を言うな 喰うぞ」饅頭猫が凄むと 紅峰が微笑って続ける


「私達妖も 天狗連中の事は言えない
強い妖力の人間や清い人間、そして美しい人間には惹き付けられずにはいられないんですから

如何にいがみ合っていようと そうした資質の人間と妖は惹かれ合ってきた」

「現にこの辺りにも あの純真無垢を飼って 我がものにしようと企む妖が後を絶たない


そういう横入り者に夏目を盗られない様に 用心棒業に精を出すべきでしょうね」

「あれは私のものだ 私の非常食を他の者に渡す気はない」

「まぁ斑様が本気なんだったら守り抜くことは可能でしょう
それじゃ私はこれで」
帰ろうとする紅峰に 饅頭猫が言った


「お前はどうなんだ
人間嫌いのお前が あんなに もの優しく人の子に話しかけ相槌を打っては 穏やかに宥めるのを初めて聞いたぞ」


「聞こえてたんですか 地獄耳ですね 」

「当たり前だ あの家は私の結界内だぞ」

「……油断させて喰うためですよ 斑様と同じでね それでは」

紅峰は虚を突かれて 一瞬 はっとした様子だったが すぐに笑んで別れの挨拶をして歩き出し 少し行ったところで ふと思い出したように振り返って言った


斑様 ひとつの菓子を半分こ、は あれは良いもんでしたねぇ…

Re:妖と人の子 ( No.30 )
日時: 2018/03/03 09:18
名前: 大寒波 (ID: uzXhjanQ)

夏目長編(1)
 13.
主のリオウと仲間がいる山に帰って行く 女妖の後ろ姿を暫く見ていた 饅頭猫は、背を向けると藤原家へ向かった。

外での立ち話が長引き 既に深夜になっている

紅峰は山へ戻って来いとは もう一言も言わなかった




「ニャンコ先生 腹が減ったのか 黙り込んで」

腕に抱えたニャンコ先生こと斑に 夏目が声を掛けていた
先日訪ねて来た紅峰と交わした話を思い返して考え込んでいた斑は はたと我に返った。


授業を終えた夏目と一緒に家に向かう帰り道で すでに陽が落ち夕闇が迫っていて 晩秋の風はすっかり冷たかった


下校中に 気紛れみたいに迎えに来た 自称用心棒の猫の背中に貼った膏薬をそっと指先で撫でつけながら
それなら七辻屋で温かい蒸かし饅頭でも食べていこうか

と夏目が言うのを、その冷え切った指先を黙って見ていた饅頭猫は

「いや、さくさく家に帰って塔子の夕飯を食べるぞ」

「うわ珍しいな 食いしん坊の先生が。でも塔子さんの旨いご飯だもんな そうだな 急ごうか 」


腕に抱えた暖かい饅頭猫に笑いかけて 夏目と飼い猫は 家人の待つ暖かい家へと足を速めた。

◇夏目長編(1) END◇


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