BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.141 )
- 日時: 2020/07/28 01:47
- 名前: 大寒波 (ID: HYxGUEts)
夏目長編(3)81.「夏目話・平安編81」
初出'19.2/04
熟睡した三郎君(さぶろうぎみ/三男)は 宿直明けでも暁の前には目を覚ましていた。
欠伸をしながらあぁ 心地良く眠った、と独りごちる。その独りの筈の自室で人の規則的な寝息が聞こえていた。
訝しみながら暗い室内を見透かすと 部屋の向こうで横になっているのは すぐ上の兄である
恋人との逢瀬が首尾良くいったに違いない
顔が明るい。
それはともかく弟の部屋で寝ているのはどうした事か、泥酔だか寝惚けて自室と間違えたか、
いやそれは無かろう
兄二人の私室は この部屋同様 寝殿(主屋)に在るが反対側の棟にあり、通る廊も別なので間違いようが無い。
だいいち次兄は 上掛けの衣を被っているが この部屋の物ではない。自分で上掛けを持込んで寝ているのだ
つまり 何らかの不都合があるが故に次兄は 私室に戻れないという事になる
昨夜は宴で泊まり客が多かった 何かまずい事でもあったか。
これだけの事柄をざっと推察すると、
三郎君は兄をそのままにして 未だ暗い廊を次兄の部屋に向かって歩き出した。疑問は直ぐに晴らそうとする 行動的な性質らしい。
静かに次兄の部屋の前に着いた三郎君は 暗い室内を窺い見る為に そっと御簾を捲ってみる、そこへ
「 誰だ 」
横合いから潜めた声が鋭くかかった
隣室の太郎君(長男)が目を配っていたのである
- Re: 妖と人の子 ( No.142 )
- 日時: 2019/02/04 23:06
- 名前: 大寒波 (ID: RO./bkAh)
夏目長編(3)82.「夏目話・平安編82」
お前かと、すぐに気付いた太郎君が 弟を自室に引入れる
「帰って来ていたのか」「ああ 昨夜遅くだったよ」 屈託無く三郎君が答える
「…ここで何をしていたのだ」
末弟の様子を窺いながらさりげ無く長男が訊ねた
「次兄が俺の部屋で高鼾でな こっちの部屋に何があるのだか確かめに来たのだよ 昨夜何ぞ騒ぎでもあったのか面白そうだな」
思いの外 的を射た返答である 次男の失態に太郎君は内心溜め息を吐いた 大方 帰宅したら使う気だった客間が 全部塞がっていたのだろう
「少し行違いがあってな隣は 瑠璃殿が使っておられるのだ 此度の診察はお前で最後だ さあ起きたのなら身支度をしてくるが良いぞ」
長兄のこの言に 寝起きで のんびり弛んでいた末弟の顔が みるみる険しくなる
「すると昨夜の 行違いとやらでは 瑠璃殿も不都合を蒙った(こうむった)という事なのか」
「いや そうした訳ではないのだ お前が聞いてどうなる事でも無い 良いからもう部屋に戻れ」
風向きが怪しくなったがこれで押し切ろうと長兄は背を向けた しかし末弟はここで引下がる様な男ではなかった
「それなら昨夜 宴の世話に出た女房や下男達一人ひとりに 訊いて廻るまでだ 事訳を知る者が誰ぞ居るだろう」
そう言うと末弟は 下働きの者達の部屋に向かってすたすた歩き出した
- Re: 妖と人の子 ( No.143 )
- 日時: 2019/02/05 20:46
- 名前: 大寒波 (ID: C1Agejdf)
夏目長編(3)83.
「夏目話・平安編83」 これには太郎君が慌てた
昨夜 宴席を中座して傷の手当てに母屋に向かった太郎君の許に、客の世話をしていた下男が 賓客の暴挙を報せに飛んで来たのだ それで離れの客間に走った太郎君が 鍼医の窮状を救えたのである
あの下男の働きが 無ければ どんな事態になっていたか分からぬのに その男に詰問などさせる訳に いかない
まったく‥ 首を振った太郎君は 廊下で末弟に追い付き腕を取ると
話してやるから部屋へ戻れ、と連れて行った。
外はまだ暗い 小さな灯りだけの室内で 兄は小声で話を聞かせた
元より 長い話では無いので 昨夜の騒ぎの顛末を語り終えるのに 幾らも刻は掛からなかった
その間三郎君は終始 無言であった
それを 意外に思いながらも 此度は取乱す事も無く何よりだった、と長男は胸を撫で下ろす
「これで得心したか 宿直ご苦労だったな さあもう部屋に戻って 洗面など済ませ来るがよいぞ」
穏やかに労い(ねぎらい)の声を掛けた兄が 目をやった先には凍りつく様な光景があった
黙りこくった三郎君が 武官たる長兄の部屋の奥に大股で歩み寄ると 掛けてあった太刀を取上げたのである
- Re: 妖と人の子 ( No.144 )
- 日時: 2019/06/18 08:19
- 名前: 大寒波 (ID: TkqspnRJ)
夏目長編(3)84.「平安編84」初出'19.2/09
お前 如何するつもりか
近付きながら声を掛けて 間近に 末弟の顔を見た太郎君は 自分も素早く太刀を取り上げた
普段は明朗闊達な末弟の 殺伐たる表情を見たからである
「あの客を殺すか そうなればお前は死罪で 父上も連座で入獄となる 我々も職を解かれ離散となろう それでもか」
三郎君に反応は無い
眼を半ば伏せ 足元を凝視している 明らかに様子がおかしい
自らの思考に囚われている様子であった
微かに動く口許は 連れて行かせぬ、と言うたように聞こえた
状況にそぐわぬ 末弟の言に 長兄は眉をひそめたが話し続ける
「離散となれば末の姫は母上と共に祖父様の里へ寄寓する他ない そうなれば医はおろか薬も入手できなくなる 末の姫は瞬く間に 病を得て死ぬだろう」
三郎君が びくりと身を震わせて のろのろと顔を上げる 兄が見た事もない虚無の眼をしていた
それでも重ねて長兄は言う
「客を害する事は 患家に累が及ばぬ様に 辛抱して堪えてくだされた瑠璃殿を軽んじ貶めることでしかないのだ それが分からぬか」
長兄が言い終わらぬ内に 弾かれた様に身を起こした末弟は手にした太刀の柄を掴み身構えた
- Re: 妖と人の子 ( No.145 )
- 日時: 2019/02/09 07:54
- 名前: 大寒波 (ID: k8cJIfhT)
夏目長編(3)85.「夏目話・平安編85」
刃物での現実の斬合いは、剣劇の様に 数合斬り結び ギリギリと鍔ぜり合いをして 突き放した相手を袈裟懸けに 鮮やかに斬り倒す、などとは行かない
実際には一瞬でも速く相手の身体に刃物が届いた方が勝つのである
それで戦闘不能となるのだ
突きを多用し 技量以前に背が高い方、腕が長い方が絶対的に有利となる。
勝敗は短時間で決し 刀創を負った敗者は 大抵死亡する
睨み合う兄弟が手にしているのは そういう凶器であった
すわ 刀剣の立ち会いか、
太郎君は慄然として冷や汗をかいたが 自失の体の末弟といえども 兄弟に刃を向ける事は やはり出来ぬものと見えて 抜刀する様子はなかった
それを見て取った 太郎君は心底安堵の思いであったが 一息つく暇も無い
弟が 部屋から飛び出そうとしていた 兄を振り切り 件の客の所へ行くつもりなのだろう しかし 出口の御簾の前に回り込んだ太郎君が立ち塞がった
正面の兄を見た末弟の顔が歪む
その場に太刀を投げ捨て 長兄へ向かって一気に間合いを詰めて行った
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52