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- 妖と人の子
- 日時: 2019/01/03 08:23
- 名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)
[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております
現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております
失礼ながら書込みは遠慮します
- Re: 妖と人の子 ( No.61 )
- 日時: 2018/09/01 07:51
- 名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)
夏目長編(3)1.「夏目話・平安編1」
今となっては昔の事だが かつて京の都では天変地異や怪異が起こると それは人ならぬ者によって引きおこされていると信じ畏れられていた
若い男が 宵の大路を郊外に向かって歩いて行く
軽い絽の狩衣をきちんと着けて晩夏の目にも涼しい。
灯りを持った供の下男がすぐ前を歩き 若い主はその肩に左手を乗せて ゆったりと歩む
見ると 若い男はまだ少年と言うべき年格好である
二人は 郊外にある貴族の屋敷に向かっているところだった
途上 火事で空き地になったり 或いは住人が没落して空家になって久しい さびれた地域に差しかかった
暗い。
供の男は この一帯に踏み入ってからは気味悪そうに辺りを見回し、後を振返り、と落ち着きがないのだが 主の様子には変わりが無かった
明かり一つ無い広大な空屋敷の間の路を 半ばまで来た時だった
抜き身の刃物を下げ覆面を着けた男達が空家から飛び出して来て あっという間に二人を取り囲んだ 待ち伏せされたらしい
- Re: 妖と人の子 ( No.62 )
- 日時: 2018/09/01 09:39
- 名前: 大寒波 (ID: .H8Y6m32)
夏目長編(3)2.
「夏目話・平安編2」
5、6人の凶漢のうち 一際屈強な男が何事か言いながら大股で近づき刃物を主に突きつけた どうやら何かを寄越せと脅しているらしい
それを見て供の男は竦み上がって震えるばかりである
しかしどうした事か 若い主の反応は薄く 苛立った男は刃物の切っ先を主の細い首筋に当てがい 先程と同じ口上を繰り返すと暗闇の中 ぱたぱたと軽い音がした 首筋から血が滴り落ちている
若い主が流す血は 禍々しいほど赤かった
主が傷を付けられたのを見て供の男は いよいよ怖じけて逃げ腰になっている
その時上空で突然 眩い光が弾け閃光が四方に走った
尾を引きながらこちらに落ちて来る
地に轟音を立ててぶつかりあちこちに銀色の炎が上がった
あっけにとられる一行の前で銀色の炎柱が激しく渦を巻きながら収束する
銀色の炎の竜巻かと見上げていると それはみるみる白銀に輝く巨大な獣に変化して 地に降り立ち 一行を見下ろしていた
妖物は狐や狼に似た姿で白銀の体毛に覆われ 眉間と目許には隈取りの様な朱の紋様がある
先程の衝撃で飛ばされ地に伏した若い主は上体を起こして 異形を見上げていた
まだ元服して幾年も経たぬ年頃とみえる
色白く 口唇は薄桃色で 横たわった体躯は細い。
女と見紛う容貌は この怪異に臆する様子もなく 色の淡い瞳を見開いて妖物を見据えていた
- Re: 妖と人の子 ( No.63 )
- 日時: 2018/09/08 07:43
- 名前: 大寒波 (ID: OnlANcr4)
夏目長編(3)3.
「夏目話・平安編3」
しかしその視線は 妖物の顔からはやや逸れた所に向けられている
「供の者は逃げたぞ」
獣が言葉を発した どうやら人語を解する妖物らしい
頭の遥か上から 降ってきた低く深い声に 若者は ぴくりと身を揺らしたが今度は正しく妖物の顔を見た
「其方には私が見えておらんのか」
「…はい 先ほどの眩しい光を感じる位でございます」
ものを映さぬと言うが 濁りの無い淡い色の虹彩を妖が覗き込む
巨大な妖物が近寄る気配に若者が瞳を閉じた
「それでもまだ 涙は出るのでございますが」
無防備に横たわる若者をひた と見据える巨大な獣は 息がかかる程に近づいている 口許から覗く鋭い牙は 若者の腕よりも太かった
傍から見ている者があれば ちりちりと身の毛がよだつ様な光景であった
ややあって 獣が頭上の月を仰ぎ見て言った
その身でこんな夜更けに何処へ行く
静かな声に若者がゆっくりと眼を開ける
今夜は卜占の依頼を受けておりますので その方の屋敷に向かっておりました
ですが この騒ぎで供の者が逃げ出してしまった様でございます
ここからは 私独りで参ります
- Re: 妖と人の子 ( No.64 )
- 日時: 2018/09/05 08:53
- 名前: 大寒波 (ID: fut8vuFe)
夏目長編(3)4.
「夏目話・平安編4」
ゆっくりと立ち上がった若者は 右手に握っていた 軽い竹の杖で 供の男が投げ出していった、布にくるんだ荷を探し出すと がらんと音を立てて拾い上げ背に負った
そして溜め息をつく
「又逃げてしまったか
よく働いてくれた下男であったけれど… 心底 怖がらせてしまったな
物騒な世の中なことだ…」
盗賊は一人残らず消えていた
路を杖で こつんこつんと叩きながら 左右の空き家に近寄り顔を上げて 気配を探る様子である
風が吹き渡り 晩夏の絡みつくような熱を冷ましてゆく
やがて若者は荷を胸前で結び直すと 元々歩いて来た方角を 正しく向いて歩き始めた
再び頭上から声が降ってくる
「其方独りで いかにして先方に向かうつもりか」
「先方の屋敷へは何度も行った事があるので道は承知しております
私は供を連れずに出歩く事も多いのでございます」
先ほど 命の危険に晒されたばかりの若者は 今は人外の怪異と 口を利いているというのに まるで世間話でもする様である
とても常人とは思われなかった
「占卜をすると言うたが 術者か陰陽の類いか」 どうも妖物も そう感じたようである
- Re: 妖と人の子 ( No.65 )
- 日時: 2018/09/05 23:59
- 名前: 大寒波 (ID: rDOS.pEA)
夏目長編(3)5.
「夏目話・平安編5」
「いいえ 私はそうした術を行う訳ではございません
幼い頃に病で盲いてからというもの
受領であった父が八方手を尽くして
何とか身を立てられる様にと 管弦や歌舞を習い覚え、少しばかり感応力があるとみるや古い亀卜を学んでみたり、祖父が遺した漢書から 薬や医の道を求めてみたり、と
自分に出来得る事を 片端から身に付けた末に さまざまな事柄を経験いたしました
紆余曲折を経て 今は人に頼まれて 細々と占卜や鍼医の真似事や 請われれば管弦を奏しては 口を糊している次第でございます」
「ふむ その荷は楽器と見えるが何を用いるのだ」
「琵琶と龍笛をすこしばかり」
夜更けに 独り歩く盲目の若者の後ろを 大きな白銀の獣が語り掛けながら
そろりそろりとついてゆく。
おかしな光景ではあった
この奇妙な道行きが暫く続き 空き家と荒れ家が点在する寂しい区画から
あと少しで抜け出す という所まで来た時の事だった
若者がふいに後ろに向き直った
「それで 何処で私を喰うおつもりなのでございますか」
もうすぐ人の多い通りに出るのですが
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