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妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波 (ID: yEPZlZK/)

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス№61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

Re: 妖と人の子 ( No.96 )
日時: 2018/11/06 09:52
名前: 大寒波 (ID: Qj5Aheed)

夏目長編(3)36.「夏目話・平安編36」
「手を煩わせてしまってかたじけない 見事な手当てをなさるのだな」

「…主が 次からは必ず車(牛車)を迎えに行かせると申しておりました」
夏目の謝意の言葉に 女房が口早に言った 少し顔が赤いかも知れない、と思いながら。

すぐに戻ってきた末の姫に 夏目は礼を述べて受取った布を丁寧にたたむと懐にしまう

「ねぇ瑠璃様の るりは 薬師瑠璃光如来(薬師如来)という仏様の瑠璃なんでしょう 三郎(三男)の兄様が言ってました」末の姫が訊くと

「私をそう呼んだ方は それを念頭に置いておられたのでしょう」夏目が答える

「じゃあ名乗る時のなつめが本名なのですか」
「私が生まれた家には 棗の木が 沢山植えられていて季節には食べ切れぬ程の実が生ったものでございました それ故に家は棗屋敷、祖父は棗の殿 兄達は棗の君などと呼ばれていたので 私もそれに倣っております」

屋根の上で伸びをしながら聞いていた白銀の体毛を風に靡かせた妖物は 成るほど そういう事かと ひとりで得心している

「ふぅんでも るりという名は瑠璃様にとても お似合いよねって いつも女房達や兄様と言ってるんです」 末の姫が夏目の背中にしがみつきながら話す

Re: 妖と人の子 ( No.97 )
日時: 2018/11/06 09:42
名前: 大寒波 (ID: 9sihcqpn)

夏目長編(3)37.
「夏目話・平安編37」 末の姫が そう言えば、と話を継ぐ

「次郎(次男)の兄様が 文を送り続けていた方と相愛になれて 足繁く通い出したのだけど 評判の美女なんですって」

次男の兄の色恋の話に 興味しんしんの様子で やはり幼くとも女の子である
次郎君の長年の想いが叶って良うございました と夏目が応えると

「どんな方なのかしら
後宮の女御にょうご方よりも綺麗な人だとかで 次郎兄様はのぼせ上がってるんです」
「次郎の君がそれ程迄に お想いになるのなら 内面がとても佳く出来た御方なのでしょう」夏目が言うと

「ええぇ 中身や教養も大事だけど男の方々はやっぱり外見が一番なのでしょう」末の姫が口を尖らせて身も蓋もない事を言う
「さぁ…本当の美とは 外面に表れぬ形の無いものとも申します   少なくとも盲いた私には 人の美醜は余り関係がございませんが」

女房が末の姫に向かって さっと眉をひそめてみせると、あっ という顔をした幼い姫がすかさず
ごめんなさい と無作法を詫びた。

夏目は 少し首を傾げて
「何も詫びる事など無いのですよ」と ゆっくり頷いて見せた 
すると柔らかな雰囲気が漂い それに幼い子は安心した様に笑って 兄の噂話を面白おかしく続けるのだった

Re: 妖と人の子 ( No.98 )
日時: 2018/10/31 16:26
名前: 大寒波 (ID: JYq9u7Yl)

夏目長編(3)38.
「夏目話・平安編38」 末の姫のお喋りが一段落した所で 女房が切り出した
「姫様の診察も終わりましたゆえ 瑠璃様はお部屋にお戻りになって少し御休みください」

えぇーつまらない、とすかさず幼い姫が口答えして 夏目の背によじ登る様におぶさる まるで兄妹の様な仲睦まじい様子であったが女房は

「お怪我をなさって今朝方まで高熱がおありだったのですよ」静かに言う
はじかれた様に夏目を見上げると 穏やかに姫君に向けられたのは 朝から働き詰めの蒼白な顔だった
さっと 表情を引締めた末の姫は 一つ頷いて
すぐにお部屋に戻りましょうと 小さな声で言うと 今まで甘えていた鍼医から自ら離れた。

「それではお言葉に甘えて子息方がお帰りになる迄 客間に戻らせて頂きます」

末の姫の部屋を出た夏目は 姫君に手を取られて客間に戻ると 用意された床にそのまま横になる
昨晩同様 上衣の狩衣を脱ぐ暇もなく瞼を閉じてしまった

屋根の上から 広い板間の縁に降りて客間の御簾を器用に潜った巨大な白銀の獣の妖が部屋に入ってゆく 午後になって吹き始めた風が 真白な体毛をさらさらと揺らしていた

Re: 妖と人の子 ( No.99 )
日時: 2018/11/10 02:57
名前: 大寒波 (ID: OnlANcr4)

夏目長編(3)39.「夏目話・平安編39」
巨大な体躯にも拘わらず白銀の妖は 音もなく夏目に近付いてゆき 倒れ込む様に横になったまま 身動ぎもしない若者の傍まで行くと そろりと顔を覗き込んだ

結髪からほつれた髪が横向きの額や頬に溢れて影を落としている
白い顔はますます血の気を失い ぎくりとする程 儚く見えた


妖が巨大な鼻先を夏目の手と首元に近付けると 熱は無い代わりに手足は酷く冷たかった

 ちっ 舌打ちした妖は 寝床の足下に畳まれたままの上掛けをくわえて 夏目の身体にそっと掛けると 踵を返して 御簾を潜り部屋を出てゆく。すると、


「風避けが居なくなっては都合が悪い 暫くここにいらっしゃいませぬか」

「…狸寝入りか」

「急に傍らが温かくなって目が醒めたのでございました」

先程の夏目の手足の氷の様な冷たさを思い出した妖は 寝床の脇に戻って来て そのまま蹲った

晩夏の午後は 真夏に比べると随分過ごしやすくなった 陽が傾く頃には風が吹き通り日陰では肌寒さを感じる


「あの時の御礼を まだ申しておりませんでした」目を瞑った夏目がぽつんと言った

Re: 妖と人の子 ( No.100 )
日時: 2018/11/04 10:18
名前: 大寒波 (ID: zt./Gg/M)

夏目長編(3)40.
「夏目話・平安編40」 昨夜 往来での揉め事の最中に この妖の登場によって 結果的に盗賊から逃れられた事を言っているらしい。

「別に 何となく路に降りてみただけの事だ」

「そうでございましたか ところで昨夜は割れ鐘でも落ちてきたみたいな大音響に稲光と旋風が一時に巻き起こり凄まじい騒ぎとなりましたが

先ほど屋根から降りて来られた時には小鳥でも舞い降りたかの様な静けさだったような気が」
夏目がとぼけた事を言う

「…往来で 徒党を組んだ追剥ぎが若い娘を刃物で脅している様に見えて不快であった」
 小さな声で妖が呟く

「それで どんがらがっしゃんと登場なさったわけでこざいましたか」

「……。」

「ともあれ私には有難い 事にございました
 助かりました」


「…もう寝ろ」

そっぽを向いて妖が言う
夏目は傍らの巨大な妖に向けていた顔を仰向けて眼を瞑った


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