【色々】世界でひとり、恋をしよう?【短編】
作者/ささめ ◆rOs2KSq2QU

保健室の死神より藤ハデ(♀)
俺専用抱きまくら
(注意! ハデス先生の名前を逸人(いつひと)⇒逸樹(いつき)にしております)
(注意2! 終わり辺りが少し微裏です)
「…………藤くん」
「…………ん」
「…………いや、んじゃなくてね……藤くん……だから、君は何で」
――――何で、私は君に抱きしめられているのかな?
いつもの保健室の藤専用(になりつつある)ベッドの中。
保健室の先生であり派出須逸樹は、自分の生徒であるはずの藤麓介に抱きしめられながら、当たり前であり単純な疑問を口にした。
その問いに、藤は眠いのか、飄々とした態度でさらりと凄いことを口走る。
「……だってアンタ、俺よりちょっと背ぇ高いし……胸でけーし、髪ふわふわだし、柔らけーし……とにかく丁度良いんだよ……ふわぁ……眠……」
「い、いやそうでは無くて! そもそも藤くんと私は教師と生徒であってね? というか美術の授業をサボっちゃ駄目だよ、藤くん!」
「……うっせえ」
本当にうるさそうに寝返りをうつと、同時に藤は抱きまくら(代わり)にしていた逸樹の上に覆いかぶさった。逸樹はその行動に対し、急いで起き上がろうとしたが、寝ようとしたところをうるさく言われ不機嫌な藤は、それを許さない。
「……っふ、藤くん……?」
「……」
「あの……か、顔が怖いよ?」
「うるさい」
「は、いっ? で、でもでもやっぱり授業は出ないと駄――――」
……カリッ
出ないと駄目だよ藤くんと言おうとした逸樹の耳を、そんな擬音を響かせて、藤はまるで犬のように歯を立てて噛み付いた。
その瞬間、「ういっ!?」と、いつもは発しないような声を逸樹は発してしまい、顔がピンク一色となってしまう。不意打ちのせいか、薄っすらと涙が浮かぶ。変な声を出してしまった気恥ずかしさと、現状が把握できていない疑問で、脳内がぐるぐると回っていく。
「……やっぱり」
「え、やっぱりって何が藤く、んってちょ、や、ふっわ!? ……な、何で耳舐めるのちょっとはわわわわわっ! ひゃあっ、変な感じっ」
「……逸樹」
――――え? 何で名前?
そう逸樹が名を呼ばれ我に返ると、藤は自分の耳元に埋めていた顔を上げていた。どうしたのだろうと目をぱちくりさせていると、藤はやがて不機嫌そうな表情から笑顔へと変わっている。
この世の女性を虜にしそうな表情で、藤は普段は見せないような笑顔を浮かべ、一言だけはっきりと逸樹に告げた。
「俺が寝ようとしてるの邪魔するんだったら――――――いくらアンタでも、“ナニ”されても、文句言うなよ?」
「……っ!!」
藤が浮かべている笑み(実際は逸樹にとっては黒い笑みなのだが)と、藤が言った“ナニ”の意味を汲み――――――逸樹は、ひくりと口角を引きつらせる。
その間に、藤はまたもぞもぞと……今度は逸樹の白衣に手をかけつつ、荒々しく喉元を舐めあげた。藤の行動に、逸樹はただ艶を含んだ声をあげるばかり。
逸樹の白衣のボタンを全て外した時、藤は素晴らしい笑顔でまた、言った。
「……んじゃー、“寝”るか。な? ――――俺専用抱きまくらのハデス先生」
「え、抱きまくら!? って藤君どうしてそんなトコのチャック下ろして、ふわぁ、ちょっと、や、待ってええええええええ!!」
AB!より日音
アイム ホット!
「おーとーなーしぃー」
「何だよ日向」
「あーづぅーいー」
「俺だって暑い……」
汗ばんだ手の甲で額に浮かんだ汗の粒を拭う。暑い、暑い、暑い…………たった一つの単語だけが、……多分、日向も俺と同じで、それだけしか考えてないんだろうな……いや、暑い。本当に暑い。
「音無ーぃ」
「何だ? ……ってかくっ付くな! 暑いから!」
と、さっきまでべたべたと暑苦しく体を寄せてきた日向は、俺の名前を呼ぶと、途端真面目な顔になって向き合ってきた。
突然、瞳に真剣な眼差しが加わったから、目を離すわけにもいかず、俺は少し不安そうに見つめ返す。
「……な、何だよ?」
「人間、限界を過ぎると後は楽ということは知っているか? 音無」
「ん、……え? そうなのか?」
「駄目駄目だな音無……それが生前、医師を目指していたものの反応か!」
「いや、あ、……ごめん?」
「うんうん! それでだなー……」
とりあえず、一方的に(何故か)叱咤された俺は、訳も分からず謝ってみた。すると日向は、依然真剣な表情で俺の両手を真正面から握り締めると――――――
「……俺たちも、暑さが限界を超えるまで、ヤろう、今すぐ!」
間。
「っざけんなアホ日向あっ! なーにが限界だ医師だコラ! 結局は盛りに盛った万年発情期のお前の願望暴露じゃねぇかっ」
「今更分かったか! 俺がどれだけ音無を我慢していたかということにっ! ということでレッツ☆メイキングラ――――――」
「や・る・か・ば・か!!」
「ぶごふあっ!! ひ、ひでぇ音無きゅんっ私はこんなにも貴方のことを想ってるのn音無ーいいいいい!」
「わっ、ばかっ、折角『あれ、コイツちょっと良いこと言ってるな……』とか思いなおしてたのに突然押し倒すなシャツ脱がすなああああああ!」
――――――わ、ちょ、ばかああああああ!
……音無の必死の抵抗さえも、夏の暑さは有耶無耶にしたまま、じりじりと2人を照りつけた。
AB!よりオールキャラ
僕の大切な貴方へ ―直井文人―
……音無さん。
僕はこの世界に来た時から、生前からの呪縛に囚われていたんです。僕は音無さんとは別で、まるでこの世界に記憶を持ってきたと思えるぐらいに、とても鮮明な記憶が残っていますから。
――――それに、あんな記憶は、忘れたくても忘れられませんしね。
……だからこそ、この――――死.なない世界というものは、厄介でした。僕はやっと、前の世界で死.ねた筈なのに、この世界では何度死.んでも生き返るようになっていましたから。
だったら満足して消えれば良い、って話なんですけどね。――――――けど、僕は無理だったんです。
……音無さんには分かりますよね。その理由が。
――――僕は、ずっと誰かに自分の存在を認めてもらいたかった。
それが、僕がこの世界に残っていた理由だったから。だから、僕は消えることが出来なかった。
――――あの日までは。
あの――――僕が、僕自身を認めることが出来た、あの、雨の日。
愚民…………いや、音無さんがゆりと呼ぶあの女に、僕が催眠術をかけようとした、あの日。
……貴方は僕を殴った後、抱きしめてくれましたよね。それで、言ってくれましたよね。
――――――お前の人生だって、本物だったはずだろ。俺が抱いているお前は本物だって。
その言葉だけで、十分に僕は救われたんですよ、音無さん。
兄の代わりとして生きてきた僕は。
自分を自分として生きられなかった僕は。
それだけで――――――報われました、救われました、そして……生きる意味を、見つけることが出来ました。
だから僕は、貴方についていくと決めたんです。
だから僕は、貴方を信じようと決めたんです。
だから、音無さん。
――――――ありがとうございました。
これが、僕から貴方への、最大で最高の感謝の言葉です、音無さん。
(「ありがとう、ございます――――――」)

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