【色々】世界でひとり、恋をしよう?【短編】
作者/ささめ ◆rOs2KSq2QU

混沌的記憶
「へらへらしてりゃ、世の中はたいてい騙せるんだよ」
言葉通り、口元に微笑を称えたまま、兄は言った。小さい私には、その言葉の意味も真意もよく分からなかったから、ついつい聞き返してしまったことを、今の私は覚えている。
「でも……おもしろくなかったら、わらえませんよ。にいさん」
「だーかーらぁ、兄さんじゃなくておにぃって呼びなよ伊織! こっちはいおたんって呼んでんのにさー不公平だぞ!」
「わたし、やくそくごとはたちあいにんのもと……ときめてますから、にいさん」
「ちぇー、絶対その壁を破ってやるからなぁ」
当時、両親の離婚後、かなりやさぐれていた(幼いながらも)私。そんな私に、しょうがないよと、伏見潤……要するに兄さんは、度々私にこっそり会いにきていた。これはその時の話だった気がする。
「…………まぁ、何でへらへらしときゃ良いかってゆーとー」
ふて腐れたような態度をとりつつも、私は頭をわしゃわしゃと撫でられる。……ん? 今思い出した。この時2人でいたのは、母の兄である竜崎の叔父さんの家の縁側。そして、服装は余所行き――――――あぁ、そうだ。
(これは、叔父に引き取られた時の記憶だ)
ん、あれ、声が出ない?
不思議に思い、下げていた視線を兄さんへと向ける。兄さんはいつもの笑みをみせて、幼い私の頭を撫でていた。
(ふーむー? ……何で、この記憶なんだろう……)
そこで、閃いた。
(あぁ、わかった)
(私が突然、笑うことが出来なくなったからだ)
■混沌的記憶
――――彼の言葉は、今でも私の笑顔に響くのです。
質問以前の基本確認は大切に
「あああああああああああ」
苦しいんだけど、どうすれば良いですかぁ。
何気なく呟いた言葉に、彼女は眉一つ動かさずに、はっきりとした声色で告げた。
「私を諦めたら楽になるわよ、貴方」
あぁ、やっぱり?
期待通りの返事だったから、冷や汗と涙で汚れた顔をあげて、嘲笑を浮かべてみた。
「だから、それが無理なんですよぉ」
■質問以前の基本確認は大切に
鳥篭から外を見る小鳥s
惜しみなく愛して欲しいのです、と私は貴方に迫ったのです。貴方が私を愛してくれるのなら、私はどのような恥も屈辱とは感じません。貴方が私に接吻をしてくれるのなら、私はいくらこの体を血に染まり上げようとも、痛みを辛いと考えません。衣を脱ぎ捨て、白くきめ細かい私の素肌を、御覧に見せましょう。
「でもね、」
押し倒された貴方は、空っぽの瞳で私を見上げました。貴方は私に衣服を乱されようと、唇に触れられようとも、うんともすんとも言わず、ただその行為を感慨深げに見ていました。
「それだけじゃあ、たりないのよ」
その一言だけで、私は貴方のおっしゃりたいことを理解したのです。嗚呼、貴方はいつでも私の鳥篭に入ろうとはしないのですね。
■鳥篭から外を見る小鳥
(捕まえきれないのがもどかしいのです)
愛おしいほど、間抜けな男
――――俺は叶ちゃんが好きだよ、だけど叶ちゃんは俺じゃないあの子を追ってるから。
「あんな風に、自分の恋から引くなんて、」
――――だから、俺は叶ちゃんに告白もしないし、アピールもしないよ。
「私には想像できないなぁ、」
――――だって、俺がこの想いを黙っていればさぁ、
「……ほんと、」
――――皆、幸せになれるじゃん?
■愛おしいほど、間抜けな男
君の答えは、合っているようで間違えている。
そのことに、何で気が付かないかなぁ?
遠く、遠く、まだ遠く
「浮気してない?」
「してないよ」
「ほんと?」
「あたりまえーっ」
「じゃぁ良いや」
「え、もっと追求しないの?」
「何じゃー追求しなくちゃならんほど女子高生の深みに嵌っていると!? 男の裸エプロンは嫌だと!?」
「なぜ女子高生限定だし、てか裸エプロンしてくれたことねーよ」
「んー……ぴちぴちの方が良い?」
「どこが?」
「太ももとか」
「…………君の方がぴちぴちだから安心してよ」
「どこが?」
「愛の営みの際の感度の良さとか」
「訴えるぞ」
■遠く、遠く、まだ遠く
遠い恋ってもんも、悪くないじゃない。

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