【ホラー系おい森】絶海の孤島で       ピクミン ◆xr/5N93ZIY /作



第八話 おでかけしよう



「初めまして。マロンっていいます」
「こんにちは。私はメロンっていいます」

マロンとメロン。名前が酷似しているがあえてそこはスルーしよう。
どうやらメッセージボトルを書いた人らしい。きっと自分で作ったと
思われるメロン柄の服にメロンの網目模様の帽子をかぶっている。
髪の毛もメロン色だ。瞳はきらきらと輝いている。

「それじゃぁ、まずは私の家へどうぞ。――誰にも見つからないように、ね」
「……分かった」

本気で走った。不思議に疲れなかった。どうしてだろう……
やはり、記憶を抜き取られた際に疲れや痛みを感じなくなるのか?
だけど、このまえスズメバチに刺されたときは猛烈な痛みを感じた。
いや、そもそもあんな量の蜂に刺されたのに死なないなんて……
もしかしたら「一定の動作をすると一定の痛みだけを感じる」のかも
しれない。たとえば、「蜂の巣を落とす動作をして蜂に刺される」と
言う事をすれば「蜂が飛んできた刺さったら30%の痛みのダメージを
受ける」と言う法則が成り立つ。しかも、「おくすり」を使えば
瞬時にケガが治るのだ。しかも空中で一回転して。
そもそもおかしいじゃないか。おくすりを買うお金が無かったとき、
一日経てば傷は治っていた。
もしかしたら、僕は何者かに操作されているのかもしれない。

「おじゃましまーす」

彼女の家も小さな家だった。水色の屋根に質素な床板。そっけない
ボロボロの壁紙。ほとんど僕と同じだった。唯一違うとすれば
「バースデーケーキ」があることくらいだろうか。どうやら
誕生日おめでとうと言って住民が送ってきたらしい。そんなもの
怪しすぎて到底口には出来ないと言う。だけど、腐っているはずの
ケーキからは甘い魅惑的な香りがする。
「カントリーなテーブル」に乗っている物はほかにもある。
「ラブリーランプ」と「コーヒーメーカー」と林檎だ。
ピンク色のスタンド式のランプの隣にはコーヒーが入った
コーヒーメーカー、その下には林檎がつやつやと光っている。
イスはライムの形をしている。

「ねぇ、君の村の住民はどんなの?」
「色々いるよ。風船みたいな奴とか」

風船みたいな奴と聞いてかなり興味がわいたが、やめておいた。
その時、がさっと音がした。隠れて外を見ると赤い首に黒い甲羅。
亀のような奴がいた。そいつは突然大声を出した。

「全員しゅーごぉーう!!!」

その声がラッパのような機械で村に響き渡った。すると、なんと
家から住民達がぞろぞろと出てきた。そして、亀は「おや? あの
メロンちゃんがいないな」と言うと、ドアをノックしてきた。

「隠れて!」

メロンちゃんはそう言うと、ベッドのしたに隠れた。僕はベッドの
中に隠れた。どきどきと心臓が音を立てる。僕の背中に嫌な汗が
伝っていく。

「おぉーい! メロォンちゃあああん!」

すると、それはノックからキックへ変わっていった!
ドンドン! ドンドン! 僕は必死で布団へ隠れた。まだ亀は
ドアを激しく叩く。それはついに体当たりへと変わっていく!
音がドンドンからバキッバキッに変わっていく!!
その音は、ついにメリッメリッと折れる音に変わっていく!

「やばい……やばいぞ!!」