【ホラー系おい森】絶海の孤島で       ピクミン ◆xr/5N93ZIY /作



十匹目 むかし・いま



「話してやろう……」



この田螺島の烏賊釣村……元々の名前は出夜離(でより)村だった。その出夜離村では、昔は「人」しか居なかった。漁に出て魚を捕り、作物を栽培し、人々は自然の恵みを感謝しながら、それを壊さないように助け合って生きていた。しかし、その穏やかな生活はある日を境に一変する。「大蛸嵐」と呼ばれる、かつて無い規模の台風がこの村を襲った。
結果として、村はほぼ全壊。運良く生き延びた者も食べ物もないままでは生きていくことは不可能だった。生き残った者達は争う事をせず、みんなで生きていく方法を考えていた。そんな時、村の長老がこう言った。
“あの伝説をやってみよう”
“あの伝説って?”
“契約……だ”
村にはある伝説があった。村に古くからある井戸のさらに上に登った所に行った幻の空間に、未来永劫豊かな作物を生む神様がいると。しかし、ただではすまされない。その幻の空間に行くことすら至難の業。さらに、ある契約を結ばなければ行かなかった。
“うむ、確かに未来永劫豊かな土地を生むことを約束しよう。しかし、この村には後に災難と呪いがつきまとう……”
餓死するよりはと、先祖はその契約をした。結果、見ての通りこの出夜離村は豊かな作物に恵まれている……。
だが。

ある日、「ニンゲン」の姿が変わってしまった。「呪い」。神様が言っていた呪いが動き出したのだ。人々はひどく混乱したが、姿形が変わるだけならあまり保証はないと割り切り、慎ましく生きていた。そんな時だった。

「第二の“厄災”」
「厄災って……?」

一ヶ月に一度、超巨大な大蛸が現れるようになった。奴はとても凶暴で、常に暴れているため、奴の身体は白色だが、常に真っ赤に染まり、奴が動けば辺りの海は真っ赤に染まる……生き延びる方法は「供物」。つまり、「血の白蛸」に一ヶ月に一度誰かを渡すのだ。そうすることで奴は静まり、海へと帰っていく……。住民が狂ったのは、このせいだ。
これが……出夜離村。



「そんな……事が……」
「まぁ奴を倒す方法が無いわけでもない」
「え?」
「烏賊釣村に名前を変えたのは……奴を呼ぶためさ」
「奴……?」





「血の白蛸と対をなす、「黒の大烏賊」