【ホラー系おい森】絶海の孤島で       ピクミン ◆xr/5N93ZIY /作



第十二話 遅かった手紙、早かった別れ



「……」

あれから二時間後。僕はジグザグマの配達も終わり、ある程度の
道具も買い、ただじっくりと釣りをしていた。家からクーラー
バッグを持ってきたが、なかなか釣れないので無駄のようだ。
そもそも僕の家は近くなのであまり意味はない。せいぜい金にする
ためにジグザグマに売りに行く程度だ。白と青のクーラーバッグを
尻目に、僕はぼんやりと黄色い玉状のルアーを眺めていた。

そもそも、する事は沢山あるのだが、家の近くにはあのサソリが
いるとの事じゃないか。安心して眠ることは出来ない。
……いや、待てよ。何で僕は死んでないんだ? サソリの毒は
サソリ自身すらくらえば死ぬほどの毒だ。血清も持っていない僕は
なぜこうやってのうのうと生きている?

「おっ、来た来た!!」

ちゃぷん。ルアーが沈んでぐぃっと引かれる。僕はその隙を逃がさず
一気に釣り上げた! 釣れたのは鮮やかな紅い色の魚、タイ。
さっそくクーラーバッグへ入れる。そして今度は海から川へ移動し、
ルアーを投げる。村の一番北の真ん中にある滝は、そこから左下へと
曲線をかきながら川となり、そして海へと混じるのだ。

「……おっいきなり!!」

入れて三分ほどで魚が食いついた。釣れたのは高そうな魚、ニジマス。

「さて、そろそろ晩ご飯はそろったな。後は果物くらいで……」

そう呟きながら(つぶやきながら)僕は村の右斜め下へと歩く。
途中で美しい紫色の犬とも猫ともつかない動物を見た。確か
名前は……エーフィ。軽い挨拶を交わして家へと入る。
もうサソリを警戒しなくて良いだろう。だってどうせ死なない。

「おっと、梨をもう一つ取ってこよう」

僕は家を出た。すると、さっきには無かった音が聞こえてくる。
――ピコーン、ピコーン。点滅するような音だ。
実際、その通りだった。家の前にあるポストには青いランプが出て、
点滅していた。確かこれは手紙が来たときに点滅するものだ。

「どれどれ、差出人は……!!」

――メロン。確かにそう書いてある。簡単に間違えるほど僕の目は
節穴ではないつもりだ。それには、綺麗な文字でこう書いてあった。



【――初めまして、いいえ、久しぶり、なのかしら? メロンです。
貴方と会えたなら私の事を知っているはずです。
……もう、私は居ないかもしれませんが。私は、この水槽村の事を
色々と調べてみました。そして、ついに分かった事があります。
一つ目、住民は一定の行動におけるダメージしか受け付けない。
斧で攻撃してもゴムのようにはじき飛ばされます。でも、網で
叩くと怯み、三回目で怒りだします。護身ならば斧より虫網の方が
良いでしょう。スコップならばある程度は見えない壁を作れます。
しかし、住民はいつかは穴を埋めて突破、または家の中に入ると
瞬間移動してしまいます。落とし穴の種を栽培して増やすのが
一番効果的でしょう。
二つ目、この村は「引っ越し」する事があります。その名の通り
住民が引っ越し してしまいます。ですが、そのやり方は異常です。
私もリスクがありながらずっと監視していたのですが、気が付くと
家の前で倒れていました。そして、監視していた家は跡形もなく
無くなり、一つの看板だけが立ちます。
私の予想では、きっと住民は「消されている」のだと思います。
住民全員が私の的ですが、さらに上がいるのかもしれません。

住民は、よほどの事がないかぎりは自分からは攻撃して来ません。
ただし、その「よほど」があった時は……言わなくても分かるでしょ?

これを読み終わったとき、私はきっとその「よほど」をして
しまっているので、きっと消えているでしょう……
貴方に、私の希望を託します。

私の分まで生きて下さいね。メロン】

「う……うぅ……」

再び涙が溢れてきた。メロン。君は最後まで僕のことを……
泣きながらその手紙を大事に取っておく。役場で保存出来るらしいが
此処は全てが敵だ。情報を渡すことは出来ない。

「メロン……僕は、生きるよ!!」

僕は滝の前でそう誓った。


――心なしか、滝の奥から物音が聞こえた気がした。