【ホラー系おい森】絶海の孤島で       ピクミン ◆xr/5N93ZIY /作



第十九話 引っ越し



――朝から雨が降っている。箱庭村の住民、ユンゲラーはただ怯えていた。黄色い身体に、両肩は茶色、キツネの顔に人の身体を足したような
どうぶつだ。ボリュームある太い尻尾をばたばたさせ、キツネらしく長いヒゲをなでた。――次は自分が殺される。本能でそう感じていた。家の至る所に結界を作る札を貼り、家のドアや窓は完全に閉鎖させた。この箱庭村にはあるルールがある。「二度」呪いにかかったどうぶつは消されるのだ。ユンゲラー、いや、本当の名前はバナナ。元々はマロンのような人間だった。しかし、彼と同じく脱出しようとし、ついにどうやってこの村から出れるかを突き止めたのだ。だが、後一歩で……捕まってしまった。そして、呪いによってユンゲラーになってしまったのだ。
昔、箱庭村ではダムを作ろうとしたが、何度も失敗した。そして、橋のように「人柱」としてある女が十人ほど殺された。だが、効果はなく、
それどころか何度も事故が発生し、ダムは中止されたのだ。ユンゲラーが行ったその場所は、ちょうどその女が殺された場所。うっかり供養していた御仏を壊してしまったのだ。今は午後十一時。ちょうどマロンが寝た時間だ。

空気が変わった。

窓が閉めてあるはずなのに開いてある。生温い風が家の中に吹き込まれる。札は急に力をなくしたように床にぱらりと落ちる。ユンゲラーの背筋が寒くなる。ゾッとするような音が辺りに響き渡る。

――ぴちゃっ、ぴちゃっ。雨でぬれた地面を誰かがあるいている。いや、きっとマロンとか言う新しい人間の住民が調べているんだ。ユンゲラーはそう自分に言い聞かせた。ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ。まだ音は続く。おかしい。ぴちゃっ、ぴちゃっではなく、足音が二人に増えている。今度は三人、今度は四人。どんどん増えていく。それは、ユンゲラーの家へ近づいてくる。ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ。すぐそこで足音が聞こえる。そして……変わった。
がりがり、がりがり。家のドアをひっかいている、そして、足音が
窓側までくる。ユンゲラーは悲鳴を上げ、窓から脱出した。すぐ後ろで
何かに触れた。パニックになって走りだす。住民のドアをノックするが、誰も出てこない。そうだ、あの人間の家に行こう。きっと開けてくれる。振り向いたら終わりだ。ユンゲラーは走り続けた。だが、全然景色は変わらない。小さな森なのに、一キロはありそうな気がする。せいぜい二十五メートルほどの小さな森なのに。雨音と共に足音が近づいてくる。ユンゲラーは走りまくり、ついに森を突破した。そして、ついに
もう大丈夫だろうと……後ろを振り向いた。

ユンゲラーは絶望した。五人やそこらではない。三十人ほどの髪の長い女が追ってくる。恐怖で思うように足が動かない。女はすぐそこだ。ユンゲラーは恐怖に満ちた悲鳴を上げた。




『ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ』