【ホラー系おい森】絶海の孤島で ピクミン ◆xr/5N93ZIY /作

四匹目 謎の少女
「……おはよう」
「ああ」
一睡もしていない。眠たくて……いや、頭が痛い。どうやら深夜五時ほどで見張っていた奴は消えたようだが、それでも僕は不安で一睡もしなかった。まぁ当然か。とりあえず、朝食のオレンジをかぶりつく。六つほど食べてようやくお腹がふくれた。えふぅ。
「昨日の井戸に行こう。朝だし大丈夫なはずだ」
「りょーかーい」
実はと言うと、僕はあの井戸がとても気になっていたのだ。あんな村はずれの場所になぜあるのだ? しかも、「それ」を避けるように周りの木々が円を描くようにある。まるで……「それに近づいてはいけない」ように……。一体あれには何が……?
※
「やっぱり殺風景だな」
「そーだね」
着いた。こっそり井戸を覗いてみる。何やら不気味な風の音が反響している。時折「ぴちゃっ」と音がしている。何か居るのか……それとも……。そんな時だった。気配を感じた。臆病者の僕は人一倍敏感なので、何がいるか感覚で分かる。これは……いや、何処にいる……? レモンに耳打ちした。レモンも気づいていたようだ。
木々の間の闇から、突然それは現れた。黒い制服に白と黒の線が入ったスカート。少女だった。
「君は誰?」
「……」
髪の毛は短めで、肩に掛かるくらい。ふわりとしている。整った顔立ちだが、目は人形のように、光を失っていた。僕が話しかけても、眉一つ動かさずに気にもたれかかっている。「人間」だ。何故人間が……
「君は……」
「貴方達、この井戸には近寄らない方が良いよ」
「え?」
「後悔する事になる」
……どういう意味だ?
「手遅れにならないうちに戻った方が良いよ」
そう言うと、少女は再び闇へと歩き出す。
「君の名前は……?」
「私の名前は――」
言い終わった後、彼女は闇へと溶けるように消えた。
“私の名前はベリィ”
「ベリィ……か」

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