【ホラー系おい森】絶海の孤島で ピクミン ◆xr/5N93ZIY /作

第十六話 密室のストレス
「……くそ、くそ、くそ!」
……まずい。この空間に閉じこめられた。ドアは固く閉じられ、
窓は固まっているように動かない。少しの隙間だけだ。この隙間の
おかげで空気の入れ換えが出来るので多少は持つが、そろそろ
頭が動かなくなってきた。今はもう夜だろう。くそ……
人間は適度な刺激がないと壊れてしまう――とある本に書いてあった。
「あぁあぁぁぁぁぁぁぁああぁああ!!」
とりあえず、大声を出してストレスを発散させる。このままだと
先に僕が壊れてしまう。どうにかして脱出できない物だろうか?
その時……ついに僕は、不可解な物に気が付いた。
「――!!」
ザッ。「それ」は逃げていった。
「ずっと……見ていたのか」
僕はさっきからの視線に気が付いた。さっきから誰かに見られている
気がすると思っていたが、そいつはずっと僕を暗闇から見ていた。
僕が見つけた物。それは、暗闇で爛々と光る二つの目玉。
あの隙間から僕を見ていたのだ。だが、どうやって……?
隙間の一番上に目玉はあった。そこからのぞけるのはそうとう
背が高い奴……あるいは空を飛べる奴。……ヨノワール!
いや、あいつは目玉は一つしかない。
「いや、待てよ……?」
あの目玉は、「逆さま」だったのかもしれない。つまり、
何かが壁に張り付いて、逆立ちするように僕を上から「覗いていた」。
「――」
それを理解した瞬間だった。僕の頭に恐怖が走る。あんな物が
覗いていたのか。ヤモリのように壁に張り付くどうぶつ。僕が
見ている中ではそんなどうぶつはいない。
……どうやら、住民の中にはいないようだ。もしかしたら、本当に
バケモノなのかもしれない。
「くそ、……くそぉ!」
僕は苛立って斧で壁を叩いた。
ミシッ。
「――え?」
これは……。何度試した中でも、此処だけはやっていない。
この壁は脆い(脆い)。つまり、今からでも脱出出来る!
「ていっ、やぁっ!」
ガツン、ガツン! 何度も叩いているうちに……ついに、壁が
壊れた! 僕は新鮮な空気を胸一杯に吸い込んだ。
「……ん? これは……」
最後に、昔の地図のような物を見つけた。ぼろぼろで殆ど見えない。
ん? ……これは! 僕はすごい物を見つけた!
昔と今の箱庭村。ほとんど変わっていないが、唯一変わっている
部分がある!
「滝の奥に……神社?」
滝の奥に鳥居が書いてある。あの鳥居の形は……僕が見た物だ!
つまり、滝の奥に行けば帰れる……? 僕に希望があふれ出る。
裏面には、こんな事が書いてあった。
“タツ………シ…………滝……れ……、……が……る”
タツシ? 聞いたこともない。とにかく、これは重要な物のようだ。
僕はそれを手に取ると、一目散に家へと帰った。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク