【ホラー系おい森】絶海の孤島で       ピクミン ◆xr/5N93ZIY /作



第十一話 脱獄者



「……ぐ……」

まだ身体の自由がきかない。……え……と……昨日……僕は……
空を見ていて……UFOを見て……それから……なんか……
シュゴシュゴシュゴって変な音がして……それから……?
駄目だ。覚えていない。ただ、あの妙な音が足下でしたのは
覚えている。それから、何か針が刺さってくるような……

「……考えても無駄、だね。まずは家に入ろう」

まだ手足が痺れる。もう朝の五時だった。質素な緑色のベッドを
葉っぱから戻し、部屋の右上側に置いた。
そして、そのベッドの左側にシックなテーブルを置いた。イスが
無くてもベッドで代用してみた。テーブルにはつやつやとした
林檎を置き、コーヒーメーカーも一緒に置いてみた。
カップはマスターから一つ引っ越し記念として貰ってある。
テーブルの南、つまり部屋の中央にはダンボールとロウソクがある。
元々あったものだ。そして、不気味だがヨノワールに貰った葉っぱを
戻してみた。出てきたのは携帯コンロ。
これで肉や魚は焼けそうだ。良い物を貰った。
そして、収穫した中から使えそうな葉っぱ類を出してみた。
一枚目はクーラーバッグ。魚を釣って持ち運べる。
二枚目はキッチンのシンク。
三枚目はガスレンジ。
四枚目は冷蔵庫。
五枚目はミキサー。
六枚目は電子レンジ。
七枚目は冷蔵庫。
八枚目はトースター。
九枚目は目覚まし時計。
十枚目はティーセット。
十一枚目は暖炉。
十二枚目は電子レンジ。
十三枚目は全自動洗濯機。

「……ふぅ。これだけあればなんとかなるな」

まずクーラーバッグはベッドに立てかけておく。
冷蔵庫は一番左上の隅に置いておく。
その右側にはキッチンのシンク。
テーブルにミキサー、トースター。そして、緑のテーブルを
シックなテーブルの左に置き、電子レンジとティーセットを置いた。
洗濯機は一番左下の隅に置き、暖炉は部屋の北側のベッドの近くに。
目覚まし時計は窓に立てかけておいた。

「暖炉が暖かい……さて、早いし寝よう……」

僕は、心地よい眠りについた。

それから……二時間ほど経っただろうか。目覚まし時計の
けたたましい音で目が覚めた。

「え? ……あっ、そうか。部屋に家具を」

眠さを押さえながら、トーストを食べる。トースターの中には
パンは入れてない。このトーストは、やはりおかしいのだろう。
香ばしいトーストの味を楽しみながら、コーヒーメーカーに
手を伸ばす。いくら出しても減らないこのコーヒーメーカー。
やっぱりおかしい。異常だ。とにかく、コーヒーの香りを楽しみ、
ごくりと飲み干した。目が覚めた。そして、林檎を手に取り、
キッチンのシンク……略してシンクの引き出しをあけ、
包丁を手に取った。林檎の皮を丁寧に剥いて二つにカットする。
爽やかな甘みと酸味が口の中に広がった。

「さて、今日も頑張るかぁ!!」

まず日課の木を揺らす。ボウリングリターンが出てきた。
だがこんな物はいらない。後で売って金にしよう。
そして、とにかく果物を揺らして取る。林檎、梨、チェリー、桃。
甘い香りを楽しみながら、家に戻って冷蔵庫に入れる。

「ん? みんな集まってどうしたんだ……まさか!!」

僕の脳裏にメロンが甦る。メロンはあの集会に呼び出され、
捕まった。今はどうなったんだろう。
僕も気づかれず行こう……見つかった!!

「うっ!」

ぶつかったのはウィンディ。食われる!!

「集会らしい。行くぞ」

僕は四足歩行の犬にくわえられ、役場の前に下ろされた。
もう……駄目だ!!

「えー、大変皆様にご迷惑なのですが……そのぉ、うちの……
サソリが逃げ出してしまいまして……行方不明なのです」
「何だって!!」

冗談じゃねーよ、とみんなが口々に愚痴をこぼす。僕はこの隙に
逃げようとした、が。ウィンディが後ろにいるので無駄だ。

「えー、奴は動くとシュゴシュゴと大きな音を立てるので、
その音がしたら一番に逃げ出して報告、または網で捕獲して
頂けると幸いです」

大きな犬の骨を被った動物は、そう言うと、あの博物館とやらに
戻っていった。自分は探さないのか。

「そうか、昨日の音は……」

やばい。

つまり、だ。

僕は昨日家の前で気を失った。

妙な音はサソリだった。

……つまり……

「サソリが僕の家の近くにいる!!」

さっと血の気がひいた。