コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。堂々の完結! 皆様ありがとう!
日時: 2015/01/24 21:51
名前: 桐生玲 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)

 拝啓、天国のお父さんとお母さん。
 ついでに世界1周旅行へ行っている珊瑚叔母さん。
 私は元気です。とても元気です。元気を分けてあげたいぐらいに元気です。
 今日も私の前を、

 パンツが飛んでー。

 男の怒声が飛び交ってー。

 何だか炎まで飛んできてー。

 挙句の果てに今、恋人になるように強要されています。
 ……私、人生間違えましたでしょうか?

***** ***** *****

 初めまして、というのもなんですが。一応。
 桐生玲(きりゅう/あきら)という者です。まぁ、名前を変えただけですが。
 私が誰だか当てられるでしょうk((殴
 大変失礼しました。

 ちょこっと上で話の内容を書いたつもりなのですが、分かりませんよねww
 私もこれをパッと見て、何だこれって思いますもん。
 では、これに関する注意点をいくつか。行きますよ。

☆この物語は逆ハーレム要素を含みます。苦手な方はお戻りください。
☆駄作に変わりはないです。
☆恋愛50%、バトル45%、シリアス0.05%、後のは勇気と愛。
☆少しドリームっぽいです(が、そんなに気にはなりません)
☆桐生玲誰? あ、お前知ってるでも嫌いな人は出口はあちらです→
☆また、荒らしやチェーンメール、パクリを行う人も出口はあちらです→

 読みましたか? あの、いくつか多いんでゴメンなさい。
 それでは。


お客様(桐生的目線でご紹介)
由羽様『最初のお客様です。逆ハー、ハーレムおkの方ww』
野宮詩織様『2番目のお客様です。リア友であり、神作を生み出しているお方です!』
ヴィオラ様『3番目のお客様です。キャラを送って下さりました! お互い頑張りましょう!』
蓮華様『4番目のお客様です。キャラを送ってくださいました。使いやすいキャラをありがとうございます!』
秋様『銀ちゃんの推しなお客様です! あざっす!!』
翠蓮草様『先生キャラを送ってくださったお客様です。登場はもう少々お待ち下さい!!』
メデューサ様『結構オリキャラでお世話になっている方です。今回もありがとうございます!!』
ジョーカー様『前作に限らず今作も送ってくださいました!! 感謝!!』
あんず様『翔推しのお客様です。翔君は俺の嫁!!』
北大路様『神様の名前を考えてくださった人です! コメもくださいました』
マリ様『ルールを守って読んで下さった人です。さすが!!』
梨花様『企画の祭りに参加してくれてありがとうございます。コメももらいました!』
愛河姫奈様『キャラクターの質問に答えたら、来てくださった人です! 感謝です!』
暁月様『一気読みをしてくださった人です。根気ある!』
闘神のアスラ様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部も見てくださっています』
抹茶猫様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部の愛読者様。あざっす!!』
藤田光規様『一気読みしてくださった人です。翔君のおし?』
在様『携帯で一気読みしてくださった人です。しにがみのデートがお気に入りだそうでw』
北斗七星様『最初は桐生玲誰と思っていらした方ですが、山下と気づいてくれて幸いです。大丈夫ですよ!』
リア様『下剋上の方も読んでくださりました。ありがとうございます!』
美桜様『この小説をお気に入りにしてくださりました。ありがとうございます!』
粉雪百合様『もう1つの小説「お前なんか大嫌い!!」から来ました方です。ありがとうございます』
miru様『空華推しの人です、ありがとうございます! 一気読みしちゃったんです!』
葵様『こちらは昴君推しですwぜひとも翔君と取り合ってくださいありがとうございます!』
kyon様『こちらも空華推しの方です。なんと、歴代小説を読んでくださった人です!』
凪紗様『黒影寮ではまったお客様です。なんとディレッサさん推しです!!』
結羽凛様『個人的に好きなキャラは翔様だそうで。少し前から見てくださっていたようですよ! Thanksです』

現在劇場版を展開中。
『劇場版。黒影量は今日もお祭り騒ぎです!〜空と海と未来の花嫁〜』
>>229 >>232 >>234 >>237 >>239 >>240 >>242 >>245 >>248 >>249 >>250 >>253 >>254 >>255 >>258 >>262 >>264 >>265 >>266 >>271 >>272

『劇場版。駆け抜けろ! 地獄と天国と幽閉された死神〜複雑ファジー』>>290 NG>>296


目次
登場人物>>02 皆のオリキャラ大集合>>67 新キャラ>>175
プロローグ>>4
第1章『ウェルカム、黒影寮』
>>5 >>6 >>7 >>8 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15
第2話『とある彼女は銀の鈴』
>>16 >>17 >>18 >>23 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
第3章『銀と白亜と黒影寮』
>>31 >>32 >>33 >>36
第4章『兄より吐き気』
>>39 >>42 >>45 >>47 >>50
第5章『しにがみのデート』
>>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>59 >>60
第6章『俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない』
>>71 >>72 >>77 >>81 >>83 >>86
第7章『英学園の愉快な文化祭』
>>93 >>95 >>102 >>105 >>106 >>115 >>118 >>123 >>126 >>129
第8章『神威銀の誘惑』
>>134 >>135 >>136 >>139 >>140 >>146 >>147
第9章『本当にあった黒影寮の怖い話』
>>149 >>154 >>158 >>159 >>160 >>163 >>170 >>174
第10章『突撃☆隣の中国マフィアさん!』
>>176 >>182 >>185 >>189 >>196 >>199 >>204 >>207 >>215 >>220 >>226
第11章『王良家こんぷれっくす!』
>>278 >>281 >>282 >>284 >>285 >>286 >>287 >>288 >>289 >>300 >>303 >>306 >>309
第12章『君と僕〜オリジナルと亜種〜』
>>314 >>321 >>322 >>323 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>333
第13章『黒影寮の問題児が妖精を拾ったようです』
>>337 >>345 >>346 >>349 >>352 >>353 >>355 >>356 >>360 >>361 >>364 >>365 >>366
第14章『もし黒影寮の管理人代理が町の草野球大会の広告を見たら』
>>372 >>378 >>379 >>382 >>385 >>386 >>390 >>393 >>394 >>397 >>401 >>402 >>405
第15章『皇高校ホスト部!!』
>>416 >>417 >>418 >>419 >>423 >>424 >>427 >>430 >>433 >>434
第16章『カゲロウタイムスリップ』
>>437 >>444 >>445 >>448 >>452 >>453 >>454 >>455 >>456 >>459
第17章『家出少女の死にかけ人生』
>>460 >>461 >>464 >>465 >>466 >>467 >>470 >>474 >>478 >>481
第18章『今日、私は告白します』
>>490 >>494 >>497 >>500 >>503 >>506 >>521 >>524 >>527 >>528
第19章『進撃の巨人〜ヒーローと死神がやってきた〜』
>>532 >>535 >>536 >>537 >>538 >>541 >>542 >>543
第20章『噂の空華さん!』
>>544 >>546 >>549 >>552 >>553 >>554 >>557 >>560 >>561 >>562
第21章『明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ』
>>565 >>568 >>569 >>570 >>575

エピローグ
>>576

あとがき
>>577

お知らせ☆

現在部門ごとにオリキャラ募集>>19→終了しました!!
企画開始!!
その1『もしも黒影寮の全員が○○だったら』>>82
その2『みんなで神様の名前を考えよう』>>125
その3『黒影寮フェスティバル! 参加者募集』>>263

期間限定小説
10月31日『ハロウィン』>>46
12月24日『クリスマス』>>94
12月31日『大晦日』>>109
1月1日『お正月』>>112
12月7日『寮長・翔の誕生日』>>130 >>132
2月14日『バレンタイン』>>225
2月23日『都立高校一般入試』>>238
4月1日『エイプリルフール』>>311
7月7日『七夕&銀ちゃんの誕生日』>>387

童話パロディ
『白雪姫』>>63>>68
『赤ずきん』>>87 >>92
『シンデレラ』>>274 >>277
『7匹の子ヤギ』>>409 >>412

黒影寮は今日は作者と質問日和!
神威銀>>124
東翔>>155
椎名昴>>188
王良空華>>241
二条蒼空>>261
堂本睦月>>354
月読怜悟>>357
祠堂悠紀>>400

企画小説『黒影寮主催☆やりたい事は何でもやっちゃうぜふぇすてぃばる!』開催中

・メデューサ様
もしも『黒影寮の住人とその他のキャラの能力』が『ごちゃまぜ』だったら>>85
バレンタイン『お相手:蒼空』>>219
・あんず様
もしも『東翔』が『スクール水着』を着たら>>89
翔が性転換して昴と付き合うことになったらどうなるか>>367
・蓮華様(現:夕遊様)
もしも『黒影寮の全員(つかさ除)と高梨羅』が『性転換』したら>>91
もしも『黒影寮の全員+高梨羅』が『性格ごちゃまぜ』になったら>>114
バレンタイン『お相手:鈴』>>224
・マリ様
『神威鈴が銀の体を乗っ取り東翔にいたずらを仕掛けよう!』>>273
・梨花様
『神威銀を怒らせたらどうなるか?!』>>317
・北斗七星様
『銀ちゃんが幼児化したらどうなるか!!』>>510
『もしも銀ちゃんが本物のビッチだったら(VS翔)』>>513
・kyon様
『銀ちゃんに彼氏がいたら』>>516

番外編
俺は今日、恋を始めます『羅(男)×銀』>>148
翔ちゃんなう!『翔×昴×大地』>>283
どうかこの手でもう1度『蒼空&睦月』>>449
断章『下剋上☆黒影寮!!』
>>485 >>486 >>487 >>488 >>489

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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.568 )
日時: 2014/05/12 22:38
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

第21章 明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ



 〜視点なし〜



 最近、銀の様子がおかしい。
 何か忙しそう——いや、いつも忙しそうなのだが。ここ最近は、特に忙しそうだった。何か荷物をまとめているようだった。
 じっと銀の観察をしていた空華は、訝しげな表情を浮かべる。
 何かあれば銀の部屋に侵入すればいいのだが、あいにくそれをやるほど空華は落ちぶれてはいない。女の子の部屋に無断で入る男など男ではない、変態だ。空華は変態ではない。
 それに、いくら好きでも相手のプライベートに入ることはまだ許されない。付き合ってもいないのに。

「……むぅ」

 空華は唇を尖らせた。食堂の大テーブルで頬杖をついて、ぼんやりと虚空を見上げてみる。
 そこへふらりとやってきたのは、引きこもり予備軍の悠紀だった。ノートパソコンを持っているところを見ると、食堂で小説でも書きにきたのだろう。そろそろ新人賞の締め切りが近いとかぼやいていたような気がする。

「……何よ、アヒル口なんかしちゃって。可愛くないよ」

「男に可愛さを求めるなよ……」

 なんか拍子抜けするようなツッコミを入れられて、空華はため息をついた。
 悠紀は空華などどうでもいいようで、ノートパソコンの電源をつけると立ち上がるまでの間にラノベを開いた。こいつはどこまでラノベ脳なのだろうか。
 ていうか、銀の様子に気づいているのだろうか?

「悠紀さぁ。銀ちゃんのこと、気づいてる?」

「なんか最近様子がおかしいよね」

「気づいてんのかよ」

「当たり前でしょ。キャラをよく書くには人間観察が必要なのよ。面倒くさいけどね」

 やっと立ち上がったのか、USBをポートにブッ刺してマウスを弄る悠紀。カチカチ、というクリックの音が静かな食堂に響き渡った。
 悠紀は睦月みたいな心を読み取るような能力ではない。残念ながら、彼が持ちうるのは言葉で人を操る能力だ。
 スタタタタ、と淀みのないタイピングの音が次いで、食堂を支配した。

「何でだと思う?」

「何が」

 小説に集中しているのか、悠紀の言葉は投げやりだった。

「銀ちゃんの様子がおかしい理由」

「好きな人ができたとか?」

「いや、そういうものじゃないでしょ。何か、去っていくような気がしてならない」

 空華の予想に、ピタリと悠紀のタイピングが止まった。
 片目が隠れた悠紀の顔が、ノートパソコンのディスプレイから持ち上がった。瞳は気だるげに空華へとやられている。

「どうしてそう思うの。違うかもしれないじゃない」

「そうだけどさぁ。荷物をまとめているような気がするんだよ。掃除じゃない。絶対に掃除じゃない。ここから去ろうとしている気がしてならない」

 人知れず去っていくような、そんな気配。空華は嫌な予感がしてたまらなかった。
 銀がこの黒影寮から消えたら、一体どうなってしまうのだろうか。
 また珊瑚が帰ってきて、銀がいなかった時の生活になるのだろうか。そうなったら銀はどこへ? 従兄である白刃のもとへ行くか? それとも担任の零? いや、ありえないか。
 ならば友人のところだろうか。白亜? 羅? どこへ行く?

「……やだなぁ」

「……何が」

「銀ちゃんが、黒影寮からいなくなるの。このまま珊瑚ちゃんが帰ってきちゃうのかなぁ」

 あの破天荒な自由人が帰ってきたら、もう何をするのか分かったものじゃない。あれで銀と血がつながっているのが不思議だ。
 何故銀はあんなにお淑やかに大人しく育ったのだろうか。ありがとう、銀ちゃんのお母さん。
 そんな簡単に銀が去るとは思えないが、本当に嫌な予感がしてたまらないのだ。胸にぽっかりと穴が開いたような気がする。

「……あー、クソ。人の思考を読める術式でも作ろうかなぁ」

「何日かかるかね。僕は1週間」

「そこまで国語の成績悪くないやい! クソ、ちょっと文章書けるからって生意気な。だったら俺様の術式を組み立てる為の言葉を考えてくれよ!」

「『きたれ、漆黒の風』とかどうよ」

「厨2乙」

 本当に黒い風が襲いかかってきたので、手持ちの術式でぶつけて相殺した。

「おーい、食堂で喧嘩をするなよ。危ないだろー?」

「うるせえ奴らだな。静かにできないのか……」

「あー、翔と昴じゃん。この昼間から食堂にくるなんて珍しいね、いつもは僕と同じように引きこもりになってるはずなのに」

 食堂にやってきた翔と昴は、今にも戦いそうな雰囲気を醸している空華と悠紀を見てため息をつく。おい、つくなよ。
 取り出しかけていた苦無を懐にしまい、空華は椅子に座り直す。翔と昴はあえて空華の向かいに座った。悠紀は3人から離れて座り、執筆に集中している。

「食堂に黒い風が駆けて行ったんだけど、何だったの?」

「悠紀の仕業だ。俺様じゃないからね」

「だろうな。見た目よりも攻撃性を重視する空華にしては見た目を重視したなと思った。やはり違うか」

 確かに空華の持つ我流の忍術は、広範囲で攻撃したりと攻撃性が高いものが揃っている。実用性が高いともいう。
 いや、今はそんなんじゃなくて。

「翔と昴は何か知ってる? 最近、銀ちゃんの様子がおかしいんだけど」

「えー? まあ、確かに何か忙しそうにはしているなーとは思うけど」

 昴が眉をひそめた。その隣にいる翔は、同じように首を傾げている。
 闇の踊り子である昴はともかくとして、死神の翔まで知らないとは。しかも2人は寮長と副寮長である。何かあれば管理人から彼らに情報が行くはずなのに。
 銀はこの2人にもこそこそ内緒で何かをやろうとしているのだろうか。

「……訊いてみればいいだろう? その方が早い」

「だな」

 こうして、空華は銀に「何故忙しいのか」訊いてみることにした。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.569 )
日時: 2014/05/19 22:51
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

第21章 明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ



 〜視点なし〜


 適度に掃除をして、荷物をコンパクトにまとめる。
 自分で分かりやすいように。分かるように。荷ほどきした時に、手早く片付くように。
 さぁ、準備は整った。

 この場から、去りましょうか。


***** ***** *****


「あらー、王良空華じゃんー? どうしたのー?」

「……お前は一体何をしているんだ?」

 空華は眉をひそめた。
 視線の先にいるのは、かつては天敵だった少年——夢折梨央である。2階の柵にぶら下がり、さかさまの状態でトマトジュースをすすっているという所業をしている。
 こいつって馬鹿なのか。空華はそう思ったが、口には出さなかった。だって出したら終わりじゃん?

「銀ちゃんいる?」

「神威銀ー? 今日は見かけてないなー」

 部屋じゃないのー? と梨央は何でもない口調で告げる。
 部屋に突撃なんて、できたらどんなにいいことか。
 何度でも言おう。空華は男だ。年頃の高校生である。好きな女の子の部屋に行くには、まあそれなりに勇気がいる訳で。いくら好きな女の子でも、部屋はプライベートな空間だ。そこに土足で踏み込んでみろ、変態街道まっしぐらだ。
 ちょっと臆病になっている空華である。空華らしくないと言えばらしくないのだが、彼にとって神威銀は本気で好きになった女の子なのだ。

「でもー、最近なんか変だよねー?」

「……お前も気づいていたのか」

「当たり前でしょー? っとい」

 ぶらぶらと揺れていた梨央だが、反動をつけて空中で1回転して、空華の目の前に着地を果たす。未来人さすが。

「こっちは狙撃手だよー? 人の行動パターンを観察して、ベストタイミングで撃たなきゃ殺せないのー」

「あーそうでしたねー」

「……超棒読み。失礼じゃないー?」

 じゅううううう、とトマトジュースのパックを一気に吸い上げて、梨央は眉根を寄せた。ちょっと気に食わなかったようだ。
 別に棒読みで言った訳じゃない……、と胸中で思ったが、口には出さなかった。ここで口に出して、口論になると面倒だ。喧嘩なら負けないが、口喧嘩は言い負かすことなんてできない。だって国語が弱いから。

「部屋行きなよー。知りたいならー」

「……それができたら苦労はしないっての……」

「あららー? 恋になると奥手になるってマジかー。女ったらしだったのが成長したねー?」

 聞いたよー、とにやにやと梨央が笑う。
 そんな彼のにやついた顔へ向かって苦無を1本投げつけて、空華は銀の部屋へ向かう覚悟を決めた。
 少しだけ騒がしくなる心臓を押さえて、落ち着かせるように深呼吸をする。銀の部屋へ向かう足取りは、ちょっとだけ重い。
 いいや、ここで迷うな。空華はブンブンと頭を振って迷いを消し飛ばし、銀の部屋を目指すのだった。

***** ***** *****

 銀の部屋の前に立つ。
 ネームプレートが掲げられた彼女の部屋。中に人の気配はない。銀がいる様子はない。
 買い物だろうか、と思うが、念の為に空華はノックしてみる。

「銀ちゃーん?」

 コンコン、と軽いノック音が廊下に響き渡った。だがしかし、彼女の部屋からは声がない。銀の可愛らしい声が、聞こえてこない。
 出かけている、という可能性も考えられる。だが、もしかしたら。
 久々に神威銀を付け狙う能力者が現れたか? 銀はさらわれた?
 その可能性を考えたら、体温が一気に下がっていくような気がした。ドアノブを掴んで、銀の部屋を開ける。

「銀ちゃん!」

 ————空華は息を呑んだ。呑むしかできなかった。
 何故なら、そこにはすでに何も残されていなかった。
 女の子らしい家具も、ベッドも、洋服も、銀の制服も、鈴と会話する為に置かれていた姿見も、空華が買った大きなイルカのぬいぐるみでさえも。きれいさっぱりなくなっていた。
 空華の『嫌な予感』が、的中してしまった。

「……お前らっっ!!!!」

 空華は叫んだ。
 黒影寮に響き渡るように、全てに聞こえるように、叫んだ。

「どうした、空華!?」

「な、何があったの?」

 近くにいただろう寮長の翔と副寮長の昴が、空華の声を聞いて飛んでくる。そして銀の部屋の有様を見て、同じように息を呑んだ。
 まさか、そんな。

「……いや、諦めるのは早いぞ」

「——だよなぁ」

 逃げた姫君を探し出せ。
 能力者の集団が、瞳を輝かせる。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.570 )
日時: 2014/06/02 23:11
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

第21章 明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ



 〜視点なし〜



 タン、と地面を蹴る。
 冷たい風が頬を撫でた。短い黒髪が風に撫でられて、揺れる。
 次のビルの屋上にたどり着き、再びコンクリートを蹴る。空を舞う。着地。その繰り返し。足音を立てずに駆けるその姿は、まるで忍者のようだ。
 
「……銀ちゃん、どこにいるの……」

 空華はポツリと漏らす。
 頭を占めるのは、あの銀髪の少女のこと。あの少女が離れて行ってしまうのではないか、という不安。
 手放すのは嫌だ。いや、手に入れてないけれども。可能性がなくたって、目の前から遠くへ行ってしまうのは嫌だった。
 自然と駆ける足に力がこもる。おかげでビシッ! と足元のコンクリートのひびが入った。気のせいにしておこう。あとで誰かが直してくれる。
 すると、空華のジーンズのポケットが震えた。携帯に着信があったようだ。走りながら『通話ボタン』をタップすれば、聞こえてきたのはあの俺様寮長の声。

『空華、今どこだ』

「ビルをたどって上から銀ちゃんを探しているところ。全然見つからないよ」

 何で黒影寮って人探し系の能力者がいないの、と空華は通話相手——翔に愚痴った。
 正直言うと、そうである。
 黒影寮には残念なことに、人を探すことに特化した能力者がいないのである。そういう能力者はごくまれだ。戦いにも使えないということで、マイナーなのである。
 では翔は? と疑問に思うだろう。だが、不可能なのだ。
 翔はあくまでその人が住んでいる住所を知るだけであり、現在地を知るには難しいのである。それに、銀は歩き回っているようなので現在地がころころ変わる為に把握ができないとか。

『こっちも総動員で探しているんだがな……! クソ、寮長である俺に相談なしに、一体どこへ行こうって言うんだ』

「昴も知らないって?」

『それどころか、他の連中全員知らないようだ。リネは見つからないし』

 チッと電話越しに舌打ちをしてくる翔。
 タン、と再びコンクリートを蹴って、今度は鉄塔のてっぺんで立ち止まる。ぐるりと辺りを見回してみるが、銀髪は見当たらない。

「————!」

 その時だ。
 見つけた。
 揺れる銀色の髪。あの身長の高さ。駅に向かって歩くその少女。
 ——間違いなく神威銀だ。

「————いた」

『どこだ!?』

「白雪駅だ! 電車に乗ろうとしている!!」

『了解した、すぐにそっちへ向かわせる! 銀を止めておけ!』

 ブツッと通話が切れるより先に、空華は鉄塔から飛び降りていた。
 こんな高さから飛び降りるよりも、銀が目の前からいなくなってしまうのが怖い。
 まだ、「好きだ」って言ってないのに。本気で「好きだ」って、銀に伝えていないのに。このままどこかへ行ってしまうのは、嫌だ。
 突如として空から降ってきた空華に周りの人々は驚いたが、構っていられなかった。改札を通り抜けようとする少女の背中へ、彼女の名を叩きつける。


「——銀ちゃんッッッ!!!」


 雑踏の中でも、空華の声は響き渡った。
 ピタリと足を止めた銀は、緩やかに空華の方へ振り向く。そしてカクン、と首を傾げた。

「空華さん……?」

 弾かれたように空華は動いていた。立ち止まった人たちをよけて、銀の前にたどり着いた。
 不思議そうに己を見上げてくる漆黒の瞳に安心した。そして愛おしさがあふれてくる。
 ——だから自然と、銀の小さな体を抱きしめていた。

「ちょ!? ぅぇ!? 空華さん!?」

 銀は焦って空華を引き離そうとするが、空華はそれ以上の力で銀を抱きしめる。まるで離さないと言わんばかりに。
 どれだけ力を入れたら、彼女は壊れてしまうのだろうか。そんなことを考える余裕は、今の空華になかった。

「……行かないで」

 細々と紡ぎ出された空華の声。
 焦っていた銀が、「……え?」とつぶやく。

「……俺様のことは嫌いでいいから、どう思っていたっていいから。
 お願いだから、目の前から消えないで。遠くに行こうとしないで……」

「えっと、空華さん……?」

 今まで女の子と遊んでばかりだったが、人を本気で好きになった。好きになることなんてなかったのに。
 それほど、銀は魅力的な女だったのだ。



「——銀ちゃんが好きなんだ」



 消えてしまいそうなぐらいに小さな、空華の告白。
 遠くで耳鳴りのように、雑踏が響いている。
 長い長い沈黙のあと、銀は一言。




「えっと、私は黒影寮からいなくなりませんよ?」




 ————んん?

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.571 )
日時: 2014/06/09 14:04
名前: ドロボウにゃんにゃん (ID: K3f42Yhd)

わお!

まさかの空華くんの
いや、黒影寮全員の勘違い?

でも、部屋がカラッポで本人も居なかったら、
家出か引越しの二択ですよね。

「いなくならない」

里帰りとかですかね?
続きが楽しみですぅ。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.572 )
日時: 2014/06/09 22:52
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

ドロボウにゃんにゃん様>>


もうすぐ終わりそうなこれです。
こんばんわっしょい、山下愁です。さっそく返信をしたいと思います!!


さて、この後の展開に期待!
果たして銀ちゃんがいなくならない理由とは一体——です。
部屋が空っぽになってりゃ、誰だって「いなくなる」って思うでしょうよ。それにこそこそ何かやってんですからwwwww

長らく続いた黒影寮ですが、このお話が終われば最終回です。
長く続いたな、よく飽きなかったな……頑張ったと思います。
最後まで突っ走りたいと思いますので、どうか最後まで見ていてください! お願いします!!(土下座ッッ!


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