コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。堂々の完結! 皆様ありがとう!
日時: 2015/01/24 21:51
名前: 桐生玲 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)

 拝啓、天国のお父さんとお母さん。
 ついでに世界1周旅行へ行っている珊瑚叔母さん。
 私は元気です。とても元気です。元気を分けてあげたいぐらいに元気です。
 今日も私の前を、

 パンツが飛んでー。

 男の怒声が飛び交ってー。

 何だか炎まで飛んできてー。

 挙句の果てに今、恋人になるように強要されています。
 ……私、人生間違えましたでしょうか?

***** ***** *****

 初めまして、というのもなんですが。一応。
 桐生玲(きりゅう/あきら)という者です。まぁ、名前を変えただけですが。
 私が誰だか当てられるでしょうk((殴
 大変失礼しました。

 ちょこっと上で話の内容を書いたつもりなのですが、分かりませんよねww
 私もこれをパッと見て、何だこれって思いますもん。
 では、これに関する注意点をいくつか。行きますよ。

☆この物語は逆ハーレム要素を含みます。苦手な方はお戻りください。
☆駄作に変わりはないです。
☆恋愛50%、バトル45%、シリアス0.05%、後のは勇気と愛。
☆少しドリームっぽいです(が、そんなに気にはなりません)
☆桐生玲誰? あ、お前知ってるでも嫌いな人は出口はあちらです→
☆また、荒らしやチェーンメール、パクリを行う人も出口はあちらです→

 読みましたか? あの、いくつか多いんでゴメンなさい。
 それでは。


お客様(桐生的目線でご紹介)
由羽様『最初のお客様です。逆ハー、ハーレムおkの方ww』
野宮詩織様『2番目のお客様です。リア友であり、神作を生み出しているお方です!』
ヴィオラ様『3番目のお客様です。キャラを送って下さりました! お互い頑張りましょう!』
蓮華様『4番目のお客様です。キャラを送ってくださいました。使いやすいキャラをありがとうございます!』
秋様『銀ちゃんの推しなお客様です! あざっす!!』
翠蓮草様『先生キャラを送ってくださったお客様です。登場はもう少々お待ち下さい!!』
メデューサ様『結構オリキャラでお世話になっている方です。今回もありがとうございます!!』
ジョーカー様『前作に限らず今作も送ってくださいました!! 感謝!!』
あんず様『翔推しのお客様です。翔君は俺の嫁!!』
北大路様『神様の名前を考えてくださった人です! コメもくださいました』
マリ様『ルールを守って読んで下さった人です。さすが!!』
梨花様『企画の祭りに参加してくれてありがとうございます。コメももらいました!』
愛河姫奈様『キャラクターの質問に答えたら、来てくださった人です! 感謝です!』
暁月様『一気読みをしてくださった人です。根気ある!』
闘神のアスラ様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部も見てくださっています』
抹茶猫様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部の愛読者様。あざっす!!』
藤田光規様『一気読みしてくださった人です。翔君のおし?』
在様『携帯で一気読みしてくださった人です。しにがみのデートがお気に入りだそうでw』
北斗七星様『最初は桐生玲誰と思っていらした方ですが、山下と気づいてくれて幸いです。大丈夫ですよ!』
リア様『下剋上の方も読んでくださりました。ありがとうございます!』
美桜様『この小説をお気に入りにしてくださりました。ありがとうございます!』
粉雪百合様『もう1つの小説「お前なんか大嫌い!!」から来ました方です。ありがとうございます』
miru様『空華推しの人です、ありがとうございます! 一気読みしちゃったんです!』
葵様『こちらは昴君推しですwぜひとも翔君と取り合ってくださいありがとうございます!』
kyon様『こちらも空華推しの方です。なんと、歴代小説を読んでくださった人です!』
凪紗様『黒影寮ではまったお客様です。なんとディレッサさん推しです!!』
結羽凛様『個人的に好きなキャラは翔様だそうで。少し前から見てくださっていたようですよ! Thanksです』

現在劇場版を展開中。
『劇場版。黒影量は今日もお祭り騒ぎです!〜空と海と未来の花嫁〜』
>>229 >>232 >>234 >>237 >>239 >>240 >>242 >>245 >>248 >>249 >>250 >>253 >>254 >>255 >>258 >>262 >>264 >>265 >>266 >>271 >>272

『劇場版。駆け抜けろ! 地獄と天国と幽閉された死神〜複雑ファジー』>>290 NG>>296


目次
登場人物>>02 皆のオリキャラ大集合>>67 新キャラ>>175
プロローグ>>4
第1章『ウェルカム、黒影寮』
>>5 >>6 >>7 >>8 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15
第2話『とある彼女は銀の鈴』
>>16 >>17 >>18 >>23 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
第3章『銀と白亜と黒影寮』
>>31 >>32 >>33 >>36
第4章『兄より吐き気』
>>39 >>42 >>45 >>47 >>50
第5章『しにがみのデート』
>>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>59 >>60
第6章『俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない』
>>71 >>72 >>77 >>81 >>83 >>86
第7章『英学園の愉快な文化祭』
>>93 >>95 >>102 >>105 >>106 >>115 >>118 >>123 >>126 >>129
第8章『神威銀の誘惑』
>>134 >>135 >>136 >>139 >>140 >>146 >>147
第9章『本当にあった黒影寮の怖い話』
>>149 >>154 >>158 >>159 >>160 >>163 >>170 >>174
第10章『突撃☆隣の中国マフィアさん!』
>>176 >>182 >>185 >>189 >>196 >>199 >>204 >>207 >>215 >>220 >>226
第11章『王良家こんぷれっくす!』
>>278 >>281 >>282 >>284 >>285 >>286 >>287 >>288 >>289 >>300 >>303 >>306 >>309
第12章『君と僕〜オリジナルと亜種〜』
>>314 >>321 >>322 >>323 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>333
第13章『黒影寮の問題児が妖精を拾ったようです』
>>337 >>345 >>346 >>349 >>352 >>353 >>355 >>356 >>360 >>361 >>364 >>365 >>366
第14章『もし黒影寮の管理人代理が町の草野球大会の広告を見たら』
>>372 >>378 >>379 >>382 >>385 >>386 >>390 >>393 >>394 >>397 >>401 >>402 >>405
第15章『皇高校ホスト部!!』
>>416 >>417 >>418 >>419 >>423 >>424 >>427 >>430 >>433 >>434
第16章『カゲロウタイムスリップ』
>>437 >>444 >>445 >>448 >>452 >>453 >>454 >>455 >>456 >>459
第17章『家出少女の死にかけ人生』
>>460 >>461 >>464 >>465 >>466 >>467 >>470 >>474 >>478 >>481
第18章『今日、私は告白します』
>>490 >>494 >>497 >>500 >>503 >>506 >>521 >>524 >>527 >>528
第19章『進撃の巨人〜ヒーローと死神がやってきた〜』
>>532 >>535 >>536 >>537 >>538 >>541 >>542 >>543
第20章『噂の空華さん!』
>>544 >>546 >>549 >>552 >>553 >>554 >>557 >>560 >>561 >>562
第21章『明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ』
>>565 >>568 >>569 >>570 >>575

エピローグ
>>576

あとがき
>>577

お知らせ☆

現在部門ごとにオリキャラ募集>>19→終了しました!!
企画開始!!
その1『もしも黒影寮の全員が○○だったら』>>82
その2『みんなで神様の名前を考えよう』>>125
その3『黒影寮フェスティバル! 参加者募集』>>263

期間限定小説
10月31日『ハロウィン』>>46
12月24日『クリスマス』>>94
12月31日『大晦日』>>109
1月1日『お正月』>>112
12月7日『寮長・翔の誕生日』>>130 >>132
2月14日『バレンタイン』>>225
2月23日『都立高校一般入試』>>238
4月1日『エイプリルフール』>>311
7月7日『七夕&銀ちゃんの誕生日』>>387

童話パロディ
『白雪姫』>>63>>68
『赤ずきん』>>87 >>92
『シンデレラ』>>274 >>277
『7匹の子ヤギ』>>409 >>412

黒影寮は今日は作者と質問日和!
神威銀>>124
東翔>>155
椎名昴>>188
王良空華>>241
二条蒼空>>261
堂本睦月>>354
月読怜悟>>357
祠堂悠紀>>400

企画小説『黒影寮主催☆やりたい事は何でもやっちゃうぜふぇすてぃばる!』開催中

・メデューサ様
もしも『黒影寮の住人とその他のキャラの能力』が『ごちゃまぜ』だったら>>85
バレンタイン『お相手:蒼空』>>219
・あんず様
もしも『東翔』が『スクール水着』を着たら>>89
翔が性転換して昴と付き合うことになったらどうなるか>>367
・蓮華様(現:夕遊様)
もしも『黒影寮の全員(つかさ除)と高梨羅』が『性転換』したら>>91
もしも『黒影寮の全員+高梨羅』が『性格ごちゃまぜ』になったら>>114
バレンタイン『お相手:鈴』>>224
・マリ様
『神威鈴が銀の体を乗っ取り東翔にいたずらを仕掛けよう!』>>273
・梨花様
『神威銀を怒らせたらどうなるか?!』>>317
・北斗七星様
『銀ちゃんが幼児化したらどうなるか!!』>>510
『もしも銀ちゃんが本物のビッチだったら(VS翔)』>>513
・kyon様
『銀ちゃんに彼氏がいたら』>>516

番外編
俺は今日、恋を始めます『羅(男)×銀』>>148
翔ちゃんなう!『翔×昴×大地』>>283
どうかこの手でもう1度『蒼空&睦月』>>449
断章『下剋上☆黒影寮!!』
>>485 >>486 >>487 >>488 >>489

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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.462 )
日時: 2013/01/25 19:58
名前: 北大路 ◆Hy48GP/C2A (ID: cFR5yYoD)


社食、給料なし。寝床はあるのでマシ・・・?

音弥が、そしてノアが同じように行き倒れて、
同じように泊めてもらえることになって・・・ちょっと笑いました。

でも、リネちゃんは割と及川さんと近いとこで暮らすんですよね?ある意味で。
また新たなトラウマが増えないことを祈るのみ。
がんばれ、リネちゃん。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.463 )
日時: 2013/01/28 21:54
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

北大路様>>


これからリネちゃんのトラウマ祭りが開催されますw
リネちゃんには心してかかってもらう事にしましょうwww何か変な真似をしたらすぐに及川さんを呼んでバイキングへ的なww

同じようにしてノア、そして音弥が行き倒れました。
が、まぁ『リヴァイアサン』にはまだ仲間がいらっしゃいますので、そいつらも残りと絡ませていきたいなと思っています。
えーと、あと誰いたっけ? ていうのが現状ですけど……。

とにかく! 徐々に終わりに近づいて行っているようなこの小説ですが、これからも読んでくださると嬉しいです!

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.464 )
日時: 2013/02/02 21:41
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

第17章 家出少女の死にかけ人生


 〜視点なし〜


 轟白亜は皇中学高等学校のバスケ部に所属している。
 そのバスケ部の活動で、外周を走っていた時だった。校門の前で2つの人影を見る。
 1つは人間。艶やかな黒髪に端正な顔立ち、灰色の着流しを着た若い男である。
 もう1つは狐——の耳をつけた女性。こちらは男と正反対で、腰まである美しい白髪に桃色の着物を着ている。
 美男美女のカップルが行き倒れたか。白亜はそう思って、無視をする事にした。リア充に構っている暇などあるまい。あとで黒影寮の銀に報告してどうにかしてもらおう。

「……うぅ……最近の人は冷たいですね」

「……素直に助けてくださいって言えばよくないッスか? どうして言わないんスか」

 まぁどうせ言っても助けねぇけど、と白亜は心の中で思ったが口には出さなかった。
 人間の方がゆっくりと瞳を開け、立ち上がりながら着流しを払う。金色の瞳がとてもきれいだった。

「誰ッスか」

「朝霧怜央と申します。一応『リヴァイアサン』に所属していた者ですが」

 その名前を聞いた瞬間、白亜は動いていた。
 こいつは危険だ。まさか、自分を人質に銀を呼び寄せるつもりだろうか。そうなったら、彼女は絶対にやって来る。それだけは阻止しないといけない。
 スゥ、と息を吸い込み、朝霧怜央と名乗った構成員へ命令した。

「今すぐ膝をついて両手を上に上げろ!」

 今までスポーツ口調だった白亜で考えると珍しい命令口調——それこそが、白亜の力である『神の命令』の発動条件だった。
 力強く言わないと動作しないのである。白亜は、洗脳を得意とする少女だ。
 当然のように、朝霧怜央は白亜の命令通りに動いた。膝をつき、両手を頭の後ろで組む。まるで犯人でも捕まえるような雰囲気だ。

「……神威さんを呼び寄せる為に、人質として私を——」

「それは違うわ。怜央は何もしようとしていない、もちろん私も」

 命令する際の声で起きたのか、狐の耳をつけた女性が白亜へ告げる。
 白亜は眉をひそめて、怜央を見やった。
 その通りです、とでも言うかのように、怜央は頷く。——が、その首はあまり動かなかったが。命令されて体が動かないのである。

「……お宅は名前、なんて言うんスか」

「朝霧美桜。怜央を放して」

「嫌ッス。悪いけど、どうしてこんなところにいるのか理由が知りたいんス。できれば説明をよろしく」

 最後の台詞を命令口調にして、美桜へ洗脳をする。
 美桜はため息をついてから、説明し始めた。

「『リヴァイアサン』の社員食堂がつぶれたのよ。寝床はあるけど食事がないのならいる意味はないわ。私は食べなくても平気だけど……怜央は違う。怜央は人間だから、食べないと死んじゃうわ」

「その通りです。美桜の言う通りですよ」

 怜央はにこにことした笑みを絶やさずに言う。
 何だか簡単に信用して平気なのか、と思う白亜。こいつらが嘘をついているという可能性も無きにしも非ずなのだ。
 その時である。

「あれ? そこにいるのは白亜ちゃんじゃないか。どうしたの?」

 カツカツとコンクリートの地面を硬い何かで叩く音。それが足音だと分かるのに、それほど時間を要さなかった。
 白亜は誰かを確認する為に、後ろを振り向いた。
 ぬるい風になびく銀色の髪に紺色の瞳。それから後ろに従える——赤と緑のオッドアイを持つ男。草野球の大会で見た事があった。幻術師の六道音弥だ。

「白刃さん! どうして六道音弥なんか……そいつも『リヴァイアサン』ッスよ!」

「分かってるよ?」

 きょとんとした様子で返す神威銀の兄、神威白刃。

「でもね、コンクリートの地面で行き倒れていちゃなんか救いたくなるじゃない。だから救ってあげたの」

「……じゃあ、こいつらも『リヴァイアサン』を出てきたのは本当スか」

「およ、怜央と美桜じゃん。お前らも出てきたの? 結構最後まで残るかなって思っていたんだけど」

 音弥がもの珍しそうな目で見てくる。
 美桜は音弥を睨みつけた。それから耳をピコピコと震わせる。威嚇をしているのだろうか。

「うるさいわね。黙りなさいよ、消し飛ばすわよ?」

「……白刃さん。こいつら、一体どうすればいいッスか」

「従えれば? 餌付けすれば従うかもよ?」

「いや、私の家は家族がいるッス。拾ったなんて言ったら怪しまれるッス」

「んー、じゃあ僕が引き取ってもいいけど。怜央の洗脳を解いてあげて」

 白刃が引き取ってくれるのであれば安心だ。白亜は洗脳を解いてやる。
 スク、と立ち上がった怜央は、白亜と白刃へ頭を下げた。礼儀がなっている。

「それじゃ、こいつと一緒だけど勘弁してね? よろしく」

「……えー」

「美桜、文句言うんじゃありませんよ」

 なんだか家族でも見ているような気分になった白亜は、去っていく4人を見送った。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.465 )
日時: 2013/02/04 22:31
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

第17章 家出少女の死にかけ人生


 〜羅視点〜


 みんな、あたしの事を覚えているかな?
 ご存じ、物質分解を持つ高梨羅ちゃんですよ☆
 覚えていないとか言ったら、物質分解でお前をどこまで分解できるかやっちゃうよ? 多分原子レベルまでいけるかもしれない。
 さてさて、あたしの前には人が倒れている。この人は見た事があるんだよねぇ、赤い髪がとてもきれいな女の人。だけどさ、この女の人だとあたしは萌えないんだよね。
 やっぱり『黒影寮』と言ったら、あたしと神威銀ちゃんのラブラブ物語でしょ。オフィス物語が次から始まりますー☆

「……でさ、見た事あるんだけど名前が思い出せない女の人。どうして炎天下のコンクリートの上でうつ伏せで倒れれるの?」

「……だったら助けなさいよん」

「嫌だ」

 敵を助けてどうなるの。
 あぁ、思い出した。野球大会でいたな、こいつ。確か名前は咲音紅だったっけ?
 覚えてないや。まぁでも……敵だから助けなくてもいいよね。

「無視しよう。さて、黒影寮に行って銀ちゃんを愛でてこよう☆」

「ちょっとぉ! 無視するなんて酷いんじゃないのん? 人間って全員酷いのん?」

 いや、銀ちゃんみたいに優しい女の子は数多存在するよ。だけど、銀ちゃんを狙うような『リヴァイアサン』の敵を助けたところでメリットがないって言っているの。
 特にこの女は吸血鬼らしい。血を要求されたらたまったものじゃない。
 あたしの血は銀ちゃんにだけ捧げるんだ!!


 一方の黒影寮、神威銀は。

「へぷちっ」

「夏風邪ですか? 薬を用意します」

「大丈夫です。それよりリネさん、何で野菜を切ってくださいってお願いしたのに刀を取り出すんですか?」

「——え、ダメなんですか?」

 リネと共に料理をしていた。
 リネは野菜を切る為に、錬成した日本刀で切ろうとしていた。何をしている。


 銀ちゃんなう! 銀ちゃんなう! だよもう。あたしの体は銀ちゃんを求めているんだよ。もしくは鈴様でも構わないよ。
 銀ちゃんも鈴様もあたしのものだ。誰にも渡す訳がない!!
 と言う訳で、お前ら『リヴァイアサン』にも渡す気はないので!!

「無視しよう。さて行こう」

「だから待ちなさいよん! 紅の雨(ブラッディ・レイン)!!」

 突如として立ち上がった咲音紅が、血の雨を投げつけてきた。ていうか危ないな。
 あたしはとっさに分子レベルまで分解した。元に戻すか分子レベルに分解するかのどちらかになるからな。あたしの場合は。

「……銀ちゃんを狙う輩でしょ? そんな奴を助けたところで、あたしのメリットにならないでしょ」

「馬鹿そうな感じなのに、案外スパッと言ってくれるじゃないのん」

「……馬鹿そうって何……ッ!!」

 ギリッ。唇をかむ。
 馬鹿扱いされていた事がむかつく。何コイツ、マジで殺す絶対に殺す何があっても絶対に殺す!!
 と言う訳で、咲音紅へ向けて物質分解をしてやろうかと思った瞬間——

「空気砲(エアリアル・ショット)!!」

 空気の大砲? というか銃弾みたいなものがあたしのもとへ飛んできた。
 腕にジャストヒットして、軌道が逸れる。空に浮いていた雲が物質分解された。あぁぁぁ、計算が狂った。
 空気を操る能力者は、この白雪町に1人しかいない。少なくともあたしが知っている中では!!

「イケメン! 何してる!」

 イケメン大嫌いなあたしは、男子の事を総称してイケメンと呼んでいる。え? 何か文句があるの?
 あぁ、確かこいつは渋谷零だったっけ? 英学園の特別クラス担任。空気使い。面倒くさい。
 さらにその後ろには、『リヴァイアサン』の演奏者、ノア・ウミザキがいた。え、懐柔でもしたの?

「養う事になったんだよ。おい、高梨羅。何で町中で能力を使おうとしている。馬鹿か」

「馬鹿じゃねーよ、お前だよ。何で敵を従えてんだよ」

「養う事になった。お前もか? 今『リヴァイアサン』は食糧難らしいから、食料を提供してやれば従うぞ?」

 餌付けかよ、汚ぇ。
 だけど、咲音紅が頷いたところを見ると、どうやら本当に食糧難らしい。
 フン、あほらし。あたしがそんな善人に見えるかな?

「おい、空気のイケメン。こいつはお前が養え」

「ハァ? 普通にけなされた俺にこいつを養えって? まーいいけど」

 いいのかよ、というツッコミは心の中でしておいた。
 こうして、咲音紅は渋谷零のもとへお世話になる事になったのだ。あたしは知らない。もう知らない。イケメンがどうなろうと、『リヴァイアサン』がどうなろうと知ったこっちゃない。
 今あたしが問題にしているのはそう、銀ちゃんに対する渇望だけだ!!

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.466 )
日時: 2013/02/11 22:46
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

第17章 家出少女の死にかけ人生


 さて、リネさんとお料理をしていましたが、なんとリネさんは「お野菜を切ってください」とお願いしたはずなのに、何故か日本刀で斬ろうとする始末です。
 一体どういう了見をしているんですか?
 まぁ、今まで戦ってきたから仕方がないんですけど、それでも日本刀でおいしく食べられる人参を切ろうとしますか。ここはどこの戦場ですか。

「……むぅ、包丁を使うのは難しいですね」

 などと唇を尖らせ、それでも器用に人参を輪切りにしていくリネさん。大きさがバラバラなのは目立ちますが、そこは教えれば何とかなるでしょう。
 それにしても、

「……何で皆さんで観察しているんですかっ!」

「「「「「危険だから」」」」」

 そうです、リネさんは私の力を狙ってやってきた秘密結社『リヴァイアサン』の1人です。いつ化けの皮がはがれるか分からないという事で、皆さんでリネさんを監視する事になったのです。
 私はこんなリネさんを見てしまっているので、もう狙われないと思っているんですけど……。
 特に翔さんとか空華さんとか、リネさんを射殺すのではないかと思うぐらいの鋭い眼光を携えて観察をしています。蒼空さんなんかアンパン食べてます。どこの探偵ですか?

「……観察しているぐらいなら手伝ってくださいよ。修行代わりにもなりますよ?」

「怜悟」

「了解」

 翔さんの短い命令をくみ取ったのか、怜悟さんが立ち上がり、私の手から包丁を奪って大根の桂剥きに挑戦。見事な桂剥きを披露してくださいました。
 って、何で皆さんはやんないんですか! やってくださいよ!!

「もう! 怜悟さんだけにやらせないでください! 暇なら洗濯物を取り込む係と、掃除をする係で分かれてください!」

「何で? 俺らにはリネを見張っているという崇高な使命が……」

「ご飯抜きにしますからねっ!」

 そんな魔法の言葉を唱えると、あら不思議です。皆さんが行動をしてくださいました。
 怜悟さんは静かに「……任された」などとつぶやいています。あぁ、まだ疑っていたんですね。
 その間に私は今日のお夕食である、ナスとトマトのミートソースを作る事にしましょう。
 え、何で大根と人参が出てきたのか? それはスープの材料です。ミートソースにはいれません。

***** ***** *****〜空華視点〜

 残暑がまだ残るこの季節。清々しいぐらいに晴れ渡った空に、俺様達の洗濯物がはためいている。
 ちなみに、洗濯物班のメンバーは、俺様と翔と昴と睦月だった。ほかのメンバーは掃除班へ回ってもらった。
 なんだかほかほかの温かい洗濯物を取り込みつつ、俺様はため息をつく。
 銀ちゃんのお人よしにはもう敬意を払いたいよ。かつての仲間をああやって黒影寮に招き入れちゃうんだぜ? そりゃ錬金術師だし、いざとなったら銀ちゃんを守ってくれる1番近しい存在になれる。
 だけど、ねぇ? 敵だよ? もともと敵だったんだよ? 迎え入れる?

「……ホンマ、銀ちゃんは何を考えているか分からへん」

「あ、睦月も思った?」

「思わずにはいられへんがな! お人よしにも程があるやろ。奴さんは敵だったんやで?!」

「睦月の気持ちも分からないではないがな」

 タオルを死神の力で畳みつつ、翔は息をつく。

「……黒影寮にとって、女という存在は貴重だ。女はつかさしかいないが、つかさはいつ暴走して銀に飛びつくか分からない。リネの場合だと自制も効くだろうし……」

「……だよねぇ」

 なんというか、リネがいたらいたで銀ちゃんもより安心できるような気がした。
 銀ちゃんは女の子ゆえ、俺様達がこの先出てくる強敵に立ち向かわなければならない。お風呂とかそういうところは、銀ちゃんは守れないのだ。いざとなったら鈴がいるが、頼りない。
 そこで殺人人形と恐れられているリネがいてくれれば、銀ちゃんを守ってもらえるだろうという魂胆だ。
 このまま招き入れてもいいかもしれないが、どうしても不安要素は残る。翔の実家で、リネの力は確認済みだ。

「このまま信じられないからね」

 昴も踊り子の力を使って、パタパタとはためいているTシャツを取り込んだ。銀ちゃんの着ている服には一切手をつけない。編他じゃないんだから。
 最後に銀ちゃんの服と下着は、睦月の瞬間移動と念動力で動かす事にする。それでOKという事だ。

「……いや、まぁ、でもね」

「信用はできないよなぁ」

「……だよなぁ」

「……ホンマになぁ」

 うあぁぁぁ……さすがにさ、ここまで女の子を疑いたくないよ。銀ちゃんだって気に入っているし!
 でも、疑わずにはいられないじゃないか。だって、敵だから。もともと敵だから!!
 どうすればいいんだよ……。


「何を悩んでいるのか分からないけどさぁ」


 その時、声がした。
 同時に、俺様の頬をかすめて弾丸が飛んでくる。穿った地面が凍った。
 この力……まさか、夢折梨央!

「正解。僕ですよ、夢折梨央ー」

 にっこりと笑いながら、木陰で巨大なライフルを抱えた空色の狙撃手がそこにいた。


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