コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。堂々の完結! 皆様ありがとう!
- 日時: 2015/01/24 21:51
- 名前: 桐生玲 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)
拝啓、天国のお父さんとお母さん。
ついでに世界1周旅行へ行っている珊瑚叔母さん。
私は元気です。とても元気です。元気を分けてあげたいぐらいに元気です。
今日も私の前を、
パンツが飛んでー。
男の怒声が飛び交ってー。
何だか炎まで飛んできてー。
挙句の果てに今、恋人になるように強要されています。
……私、人生間違えましたでしょうか?
***** ***** *****
初めまして、というのもなんですが。一応。
桐生玲(きりゅう/あきら)という者です。まぁ、名前を変えただけですが。
私が誰だか当てられるでしょうk((殴
大変失礼しました。
ちょこっと上で話の内容を書いたつもりなのですが、分かりませんよねww
私もこれをパッと見て、何だこれって思いますもん。
では、これに関する注意点をいくつか。行きますよ。
☆この物語は逆ハーレム要素を含みます。苦手な方はお戻りください。
☆駄作に変わりはないです。
☆恋愛50%、バトル45%、シリアス0.05%、後のは勇気と愛。
☆少しドリームっぽいです(が、そんなに気にはなりません)
☆桐生玲誰? あ、お前知ってるでも嫌いな人は出口はあちらです→
☆また、荒らしやチェーンメール、パクリを行う人も出口はあちらです→
読みましたか? あの、いくつか多いんでゴメンなさい。
それでは。
お客様(桐生的目線でご紹介)
由羽様『最初のお客様です。逆ハー、ハーレムおkの方ww』
野宮詩織様『2番目のお客様です。リア友であり、神作を生み出しているお方です!』
ヴィオラ様『3番目のお客様です。キャラを送って下さりました! お互い頑張りましょう!』
蓮華様『4番目のお客様です。キャラを送ってくださいました。使いやすいキャラをありがとうございます!』
秋様『銀ちゃんの推しなお客様です! あざっす!!』
翠蓮草様『先生キャラを送ってくださったお客様です。登場はもう少々お待ち下さい!!』
メデューサ様『結構オリキャラでお世話になっている方です。今回もありがとうございます!!』
ジョーカー様『前作に限らず今作も送ってくださいました!! 感謝!!』
あんず様『翔推しのお客様です。翔君は俺の嫁!!』
北大路様『神様の名前を考えてくださった人です! コメもくださいました』
マリ様『ルールを守って読んで下さった人です。さすが!!』
梨花様『企画の祭りに参加してくれてありがとうございます。コメももらいました!』
愛河姫奈様『キャラクターの質問に答えたら、来てくださった人です! 感謝です!』
暁月様『一気読みをしてくださった人です。根気ある!』
闘神のアスラ様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部も見てくださっています』
抹茶猫様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部の愛読者様。あざっす!!』
藤田光規様『一気読みしてくださった人です。翔君のおし?』
在様『携帯で一気読みしてくださった人です。しにがみのデートがお気に入りだそうでw』
北斗七星様『最初は桐生玲誰と思っていらした方ですが、山下と気づいてくれて幸いです。大丈夫ですよ!』
リア様『下剋上の方も読んでくださりました。ありがとうございます!』
美桜様『この小説をお気に入りにしてくださりました。ありがとうございます!』
粉雪百合様『もう1つの小説「お前なんか大嫌い!!」から来ました方です。ありがとうございます』
miru様『空華推しの人です、ありがとうございます! 一気読みしちゃったんです!』
葵様『こちらは昴君推しですwぜひとも翔君と取り合ってくださいありがとうございます!』
kyon様『こちらも空華推しの方です。なんと、歴代小説を読んでくださった人です!』
凪紗様『黒影寮ではまったお客様です。なんとディレッサさん推しです!!』
結羽凛様『個人的に好きなキャラは翔様だそうで。少し前から見てくださっていたようですよ! Thanksです』
現在劇場版を展開中。
『劇場版。黒影量は今日もお祭り騒ぎです!〜空と海と未来の花嫁〜』
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『劇場版。駆け抜けろ! 地獄と天国と幽閉された死神〜複雑ファジー』>>290 NG>>296
目次
登場人物>>02 皆のオリキャラ大集合>>67 新キャラ>>175
プロローグ>>4
第1章『ウェルカム、黒影寮』
>>5 >>6 >>7 >>8 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15
第2話『とある彼女は銀の鈴』
>>16 >>17 >>18 >>23 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
第3章『銀と白亜と黒影寮』
>>31 >>32 >>33 >>36
第4章『兄より吐き気』
>>39 >>42 >>45 >>47 >>50
第5章『しにがみのデート』
>>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>59 >>60
第6章『俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない』
>>71 >>72 >>77 >>81 >>83 >>86
第7章『英学園の愉快な文化祭』
>>93 >>95 >>102 >>105 >>106 >>115 >>118 >>123 >>126 >>129
第8章『神威銀の誘惑』
>>134 >>135 >>136 >>139 >>140 >>146 >>147
第9章『本当にあった黒影寮の怖い話』
>>149 >>154 >>158 >>159 >>160 >>163 >>170 >>174
第10章『突撃☆隣の中国マフィアさん!』
>>176 >>182 >>185 >>189 >>196 >>199 >>204 >>207 >>215 >>220 >>226
第11章『王良家こんぷれっくす!』
>>278 >>281 >>282 >>284 >>285 >>286 >>287 >>288 >>289 >>300 >>303 >>306 >>309
第12章『君と僕〜オリジナルと亜種〜』
>>314 >>321 >>322 >>323 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>333
第13章『黒影寮の問題児が妖精を拾ったようです』
>>337 >>345 >>346 >>349 >>352 >>353 >>355 >>356 >>360 >>361 >>364 >>365 >>366
第14章『もし黒影寮の管理人代理が町の草野球大会の広告を見たら』
>>372 >>378 >>379 >>382 >>385 >>386 >>390 >>393 >>394 >>397 >>401 >>402 >>405
第15章『皇高校ホスト部!!』
>>416 >>417 >>418 >>419 >>423 >>424 >>427 >>430 >>433 >>434
第16章『カゲロウタイムスリップ』
>>437 >>444 >>445 >>448 >>452 >>453 >>454 >>455 >>456 >>459
第17章『家出少女の死にかけ人生』
>>460 >>461 >>464 >>465 >>466 >>467 >>470 >>474 >>478 >>481
第18章『今日、私は告白します』
>>490 >>494 >>497 >>500 >>503 >>506 >>521 >>524 >>527 >>528
第19章『進撃の巨人〜ヒーローと死神がやってきた〜』
>>532 >>535 >>536 >>537 >>538 >>541 >>542 >>543
第20章『噂の空華さん!』
>>544 >>546 >>549 >>552 >>553 >>554 >>557 >>560 >>561 >>562
第21章『明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ』
>>565 >>568 >>569 >>570 >>575
エピローグ
>>576
あとがき
>>577
お知らせ☆
現在部門ごとにオリキャラ募集>>19→終了しました!!
企画開始!!
その1『もしも黒影寮の全員が○○だったら』>>82
その2『みんなで神様の名前を考えよう』>>125
その3『黒影寮フェスティバル! 参加者募集』>>263
期間限定小説
10月31日『ハロウィン』>>46
12月24日『クリスマス』>>94
12月31日『大晦日』>>109
1月1日『お正月』>>112
12月7日『寮長・翔の誕生日』>>130 >>132
2月14日『バレンタイン』>>225
2月23日『都立高校一般入試』>>238
4月1日『エイプリルフール』>>311
7月7日『七夕&銀ちゃんの誕生日』>>387
童話パロディ
『白雪姫』>>63>>68
『赤ずきん』>>87 >>92
『シンデレラ』>>274 >>277
『7匹の子ヤギ』>>409 >>412
黒影寮は今日は作者と質問日和!
神威銀>>124
東翔>>155
椎名昴>>188
王良空華>>241
二条蒼空>>261
堂本睦月>>354
月読怜悟>>357
祠堂悠紀>>400
企画小説『黒影寮主催☆やりたい事は何でもやっちゃうぜふぇすてぃばる!』開催中
・メデューサ様
もしも『黒影寮の住人とその他のキャラの能力』が『ごちゃまぜ』だったら>>85
バレンタイン『お相手:蒼空』>>219
・あんず様
もしも『東翔』が『スクール水着』を着たら>>89
翔が性転換して昴と付き合うことになったらどうなるか>>367
・蓮華様(現:夕遊様)
もしも『黒影寮の全員(つかさ除)と高梨羅』が『性転換』したら>>91
もしも『黒影寮の全員+高梨羅』が『性格ごちゃまぜ』になったら>>114
バレンタイン『お相手:鈴』>>224
・マリ様
『神威鈴が銀の体を乗っ取り東翔にいたずらを仕掛けよう!』>>273
・梨花様
『神威銀を怒らせたらどうなるか?!』>>317
・北斗七星様
『銀ちゃんが幼児化したらどうなるか!!』>>510
『もしも銀ちゃんが本物のビッチだったら(VS翔)』>>513
・kyon様
『銀ちゃんに彼氏がいたら』>>516
番外編
俺は今日、恋を始めます『羅(男)×銀』>>148
翔ちゃんなう!『翔×昴×大地』>>283
どうかこの手でもう1度『蒼空&睦月』>>449
断章『下剋上☆黒影寮!!』
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- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.452 )
- 日時: 2012/12/10 22:48
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Mj3lSPuT)
夜の風が、俺様の髪を揺らす。
江戸の町は今は静まり返っている。星明りしかない夜は、とても冷たく静かで——恐ろしかった。
だけど、そんな事は知らない。俺様にとっては、この夜は『仕事』だ。今宵も、仕事をこなさなくてはいけない。
そう、忍びとしての仕事————暗殺の仕事を。
「……さぁ、今日も行きますかね」
ぐい、と口元まで布を引き上げて、屋根から飛び降りる。
足音も立てずに地へ降りて、夜の江戸を駆け抜けた。
第16章 カゲロウタイムスリップ
〜昔の空華視点〜
……昼間の江戸はとても賑やかなのに対し、夜の江戸はあまりにも静かだ。いや、もう少し人通りの多いところに行けば賑やかさはあると思うが、今回の依頼は『辻斬り』を始末しろと幕府から仕っている。
ちなみに、王良家は幕府に昔から仕える御庭番だ。汚れ仕事はお手の物。誇って言える訳じゃないが。
日野宮と佐助を連れて、俺様は江戸の町を駆け回った。
うん、怪しい奴は見ないな。どうしたんだろうな。
「……いませんね、頭」
「あぁ。それに静かすぎる。……ちゃんと見張ってろ、いつ現れるか分からないぞ」
気の抜いた佐助を叱咤し、俺様は辺りに視線を巡らせた。
こんなにも静かすぎるのも異常だ。辻斬りがもう出てしまっているのか?
俺様の中にあの銀髪の少女——神威銀の姿が思い浮かんだ。いや、銀ちゃんがここにいる訳ないじゃないか。大体銀ちゃんには「任務だからついてこないでね」と言ってあるし、他の連中も置いてきた。監視もさせてあるし。だから大丈夫、だと思いたいんだけどな。
銀ちゃんは「お気をつけて」とか笑顔で言っていたけど……まさかねぇ?
その時だ。
俺様の頭に言葉が浮かんできたのだ。
「?!」
こめかみを押さえて、俺様は立ち止まる。
これは王良家の術で『相思伝達の術』という。頭に相手の思いを伝える事ができるのだ。頭の中に響いた声はこう。
————侍が神社へ強襲。取り壊そうとしているらしい。
「日野宮、佐助! 帰るぞ!!」
「どうしたんですか、お頭!!」
日野宮が叫ぶが、俺様は踵を返して江戸の空を飛んだ。
銀ちゃん……無事でいて!!
***** ***** *****〜銀視点〜
こんばんは、神威銀です。今、私はこの神社に身を隠しています。
ところで、何でしょうか。外が騒がしいのですが……何かあったのでしょうか。
「あの、外が騒がしいようですが」
「えぇ問題ありません。大丈夫ですよ」
傍にいた深緑色の着物を着た男の人に訊いてみたのですが、そんな事が返ってきました。本当に大丈夫ですかね。
ていうか、外から聞こえてくるのは悲鳴のようなものなのですが……本当に大丈夫ですか?
鈴とも連絡がつきませんし……あれから何度も鏡に話しかけたのですが、どうしてもつながらないんです。どうしてでしょう。誰にもつながらないんです。
それでも、外で誰かが傷ついている事に、私は我慢がなりませんでした。急いで部屋に戻り、三面鏡へ怒鳴ります。
「誰か、誰か答えてください! 私の、私の周りの人が大変なんです。誰か助けてください!!」
バンバンと鏡面を叩きますが、誰も応答しません。してくれません。
誰か、本当に助けてほしいのに……誰か……!!
「日出さん、日暮さん! ディレッサさん! ヴァルティアさん! クロエルさん! ソードさん! 天音さん、天谷さん、天地君、天羽さん!! アカツキさん!! 返事を、返事をしてください!!」
「どうしたの? 銀ちゃん」
すっと、私の隣に誰かが降り立ちました。
黒い三つ編みに茶色の長そでシャツ、そしてオーバーオールに窓の形を模したバッチをしている少女です。あぁ、知っています。唯一鏡の中にいない神様——トビラさんです。
トビラさんはきょとんとした様子で首を傾げて、
「どうしたの? 何で、そんなに必死に鏡の中に話しかけているの?」
「トビラさん……あの、何でこんなところに。誰も、私の話を聞いてくれなかったのに……」
「私は夢を司る神様だよ? 現実には行けないけど、夢なら私のテリトリーだから」
フフン、と自慢げに胸を張るトビラさん。あぁ、この人がいてくれてよかったです。
私はトビラさんの手を取って、頼みました。
「お願いです、助けてください。王良家の人が、外で何かをやっているんです……!」
「ふーん……まぁいいよ。頑張ってみるよ」
にっこりとした笑みを浮かべると、何か日記みたいなものを持って外へふらふら出ていきました。男の人達の横を通り過ぎていきました。気づかれないんですか。
空華さん……どうか無事でいてください。
私は心の中で祈っていました。
「……銀ちゃんー、終わったよ?」
「え?」
トビラさんがそう言ったので、私はふとトビラさんの横から外をのぞきました。
神社の境内には、刀を持った男の人がたくさん転がっていました。幸いなのは、全員血が出ていない事です。王良家の人達は1人もいません。というか境内の横でぽかんと立ち尽くしていました。
「……あの、トビラさん?」
「大丈夫だよ。だって仲間はよけたから」
「だから、あの、どうして全滅を? 少し捕まえるだけで、動きを止めるだけでいいと思うんですけど」
「大丈夫だよぉ」
ケタケタと笑っていますが、本当に大丈夫ですかね。
「……銀ちゃん? これは一体どういう事かな?」
その時、私は見てしまいました。
あの、空華さんが不思議そうな表情で、首を傾げていました。
「これは一体——何?」
それから状況を説明するのに、30分を要しました。
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.453 )
- 日時: 2012/12/17 23:25
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Mj3lSPuT)
ピッとまた心臓の音を奏でる。
陽光を受けて眠り続ける少女は、とても美しいものだった。一言では表現できないぐらいに、その少女は美しい。
銀色の髪はつやつやと輝き、白い肌はきめ細かい。これで目覚めてくれれば、もう願いは叶うのに。
(神様、お願いします……)
少女の手を握り、少年は思う。
(俺様は、どうなってもいいから……この子を、助けてください)
第16章 カゲロウタイムスリップ
いやぁ、事情を説明するのに30分を要してしまいました。
あれですね。容易に神様を償還するんじゃありませんね。ていうか神様って言ってもトビラさんぐらいしか応答してくれなかったんですけどww
笑い事じゃありません。どうするんですか。無一文じゃないですか。神様出せないって私『銀の鈴』ですよね? その設定どうするんですか。どこに行ったんですか。
「なんかさぁ……銀ちゃん黒いオーラがとんでもなく噴出しているんだけど、どうしたの一体?」
空華さんが笑いながら言いますが、私にとってはそれどころじゃないんです。
どうしましょう。これでは帰れないじゃないですか。一体どうやったら帰れるんですか。
うーん……とうなる声が突如聞こえ、私の考え事は中断しました。空華さんが何やら難しい顔をしています。
「銀ちゃん」
「あ、ハイ」
何か迷惑でもかけてしまいましたか? 空華さんの事ですから、きっと悩んでいるのも自分のせいだと思い込んでいるでしょう。
「お祭り、行かない?」
ずるりと滑り落ちそうになりました。
このシリアスムード全開の時に「お祭り行かない?」ってどんなナンパですか。現代の空華さんでもやりませんよ、そんな事。
へらりと空華さんは私が知っている空華さんのように、飄々と笑って見せました。あぁ、止めてください。その笑顔は、彼の事を思い出してしまいます。
「今月は葉月——そして15日! 盛大な祭りが開催されるんですよ。それに俺様達も模擬店などを出そうかどうか悩んでいてね。売り子として手伝ってくれないかな?」
「え、売り子——ですか? 何を売るんですか?」
「うん。風鈴でもってね」
ほら、と空華さんが指をさした方向にあったのは、なんかガラス球を大量に生産している王良家の皆さんでした。……何しているんですか。
ガラス球を膨らましている人。それに絵を描いている人。軒下につるしている人と作業している人は様々です。
なんだか懐かしいですね。蒼空さん達と一緒に風鈴を売った事を覚えています。戦争組さんでしたっけ? あの人達はとても賑やかでした。
「……ハイ。売り子、お手伝いします」
「そういうと思ってね、着物も新調してきたよ。日野宮ー、着させて!」
「承知しました」
「きゃぁ?! 日野宮さんどこからやってきて——ちょ、ちょっと待ってください。いきなり引っ張らないでください! 助けて、助けてトビラさーん!!」
「無理かな。だって私も銀ちゃんの着物姿見たいしー」
薄情者! と心の中で叫びつつ、私は日野宮さんに引きずられていきました。
うぅ、わざわざ引きずらなくてもいいじゃないですかぁ……。
***** ***** *****〜?視点〜
その日はとても暑かったのは覚えている。
ただ人ごみの中を歩きに歩いて、誰かを探していたような気がした。いや、実際には探していた。
絹糸のように柔らかな銀色の髪。きめが細かい白い肌。整った顔立ちには常に笑顔を浮かべ、鈴を転がすような声で俺の名前を呼ぶ。
そんなお前を、愛していた。
だけど、
お前は死んでしまった。
「もう、空華さん!! サボらないでください!」
「サボってないよー、ただかわいい女の子がたくさんいるから観察を」
「日野宮さーん、空華さんが視姦していまーす」
「お頭、殺されたくなければ頭の上で手を組んで土下座してください」
「Σ」
何故だろう。俺はこの声を知っている。
鈴を転がすような美しい声。俺の心を満たしていく、彼女の声を。
ふと視線を上げると、そこにいたのは————まさしく彼女だった。
絹糸のような銀色の髪を持ち、きめの細かい白い肌。整った顔立ちには常に笑顔を浮かべ、鈴を転がすような声を夕暮れ時の空へ響かせる。
「見つけた」
***** ***** *****〜銀視点〜
風鈴屋は大盛況です。描かれている絵がきれいだとか何だとか。嬉しい限りですけど、私は売り子と言っても呼び込みしかやってませんよ?
隣にいる空華さんをちらりと見やると、しょんぼりとした表情で座り込んでいました。絣の入った紺色の着流しを着ています。エメラルドグリーンの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいました。
「……そんなに女の子が好きですか」
「何だよ。男の子ですからね、俺様は。これでも19歳だよ?」
唇をとがらせて抗議の声を上げてきますが、私は無視をしました。19歳だからってどうという事は————
「え、19歳? ナインティーン?」
「ないんてぃいんって何? とにかく俺様は19歳だよ。若くして頭領なんてのになっちゃってるけどね」
なんて言って笑う空華さんは、まさしく私の知っている17歳の空華さんです。
あぁ、周りに黒影寮の皆さんがいてくれたら、お話ができるのに。なんて。
私らしくないです。今は、今は売り子の仕事に集中するんです!
「空華さん、演奏者の能力を持っていますか?」
「ぷ、演奏者? いやぁ、うん。よく知っているねそんなの。確か、管楽で人を惑わせる奴だったと思うんだけど……どしたの?」
「笛吹けますよね? それだったら演奏してください、即興で何でもいいんで!」
えー、とか言いましたが、空華さんは器用に術で笛を出しました。漆器で作られた黒い笛です。薄い唇に笛を当て、きれいな音を奏で始めました。
それに合わせて、私は歌います。
君が見た。この空のどこかに響き渡る。我が歌声は——波のよう。
ゆらりゆらりと舞い上がれ。恋を綴ったこの歌よ。
戦場へ行く兵士の君へ。平和を願って帰っておくれ。
夢を目指す少年の君へ。どうかその夢を叶えておくれ。
大切な人よ。どうかどうか、ご無事で。私はあなたの幸せを願います。
「……上手いね、歌」
歌い終わったあとに、感想を言ってくれる人がいました。お客さんでしょうか、いらっしゃいませと反射的に告げます。
が、その時。私は見てしまいました。
黒いコートに黒い髪。女の子のような顔立ち。ニット帽はかぶっていませんが、代わりに炎のような赤い髪紐で高々と髪を結いあげています。
東翔。
黒影寮の、寮長さんですが……。
一体、どうして?
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.454 )
- 日時: 2012/12/24 23:11
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Mj3lSPuT)
第16章 カゲロウタイムスリップ
そこにはまぎれもなく、私の知っている翔さんの姿がありました。
黒影寮の寮長で、いつも凛としていて、でも女の子が嫌いで、すごく強くて、頭がよくて、俺様でわがままな死神さんが。
そこでふと思い出しました。翔さんはずっとずぅっとこの姿で生きているんでした。年齢はおよそ1700歳——まぁ1700年前に生まれたという訳ですけど。
……でも、ここで巡り合えたのはどうしてでしょうか、まったく嬉しくないんです。
翔さんに会えたのは嬉しい出来事ですけど、なんというか、違う気がするんです。翔さんではない。翔さんだけど、翔さんじゃないような気がしてならないんです。
「お客さん? 風鈴なら1個1両だけど、どう?」
空華さんが営業スマイルで対応します。
翔さん(そう呼んでもいいのか分かりませんのでとりあえず翔さんと呼びます)は空華さんの方を向きますと、ふっと口元に笑みを浮かべました。
「じゃあ、その青い奴」
青い水玉模様の風鈴を1つ買って、翔さんは去っていきました。
雑踏の中に、涼やかな風鈴の音が響き渡ります。その音が、私の鼓膜を支配していきました。それはもう、恐ろしいぐらいに。
私はとても苦しく感じました。
あの人は翔さん? それとも他の誰か? いえ……確かに翔さんです。
でも、私の知っている姿をした、私の知らない翔さんです。
私が知っているのは、昴さんと出会って俺様ツンデレわがままな死神さんの翔さんです。
***** ***** *****〜空華視点〜
祭りはたけなわ、そろそろ客も引き始めてきた。祭りは明日もあるし、風鈴は明日のストックもある。
だけど、俺様の心の『疼き』みたいなものは取れなかった。拭いきれなかった。
風鈴を買いに来た、まるで娘のような姿を持つあの少年——確か、名前は東翔という名前だったような気がする。
この江戸の時代に、珍しい名前だ。いや、俺様の王良空華も結構珍しい名前だとは思うけど、それと同じように珍しい気がした。珍しい気がしてならなかった。
「……頭、今のは」
日野宮が心配そうな目で、俺様を見てくる。
俺様は着物の懐からキセルを取り出して、術で火を落とす。それからスッとする煙を吸い込んで、それを吐き出した。紫煙が夜空に上っていく。
「……あぁ、確かにあいつだったよ。間違いない、俺様が接客したんだもん」
そうだ。確かに聞いた事がある。俺様のようなものの間では共通の話題。
——世界をも滅ぼす炎の死神。ファイヤー・サーリット。世界の半分を一瞬で焦土と化し、海を蒸発させ、空を消し飛ばす。もちろん、人間はいない。
神も悪魔も人間も、そして同族すらも殺す事ができる地獄業火の使い手。
……聞いた事はあったが、見た事は初めてだった。確かに、怒らせなきゃなんともないと思うけど。
いや、あれは何かを求めているような目だった。あるいは、『長年思った人でも見つけた』とでも言うような——
「そうか」
俺様はようやく理解した。
奴の狙いは神威銀——つまり、銀ちゃんか。
「……そうか。そーうか。ハハ、ハハハハ! これは面白い事になってきたな、アハハハハ!」
不自然な笑い声を上げてしまったから、日野宮他多数の仲間は不思議そうにこちらを見てきた。
自己解決。そして理解。
何だ。簡単な話じゃないか。あの死神は神威銀に恋をしている、というかした。
だがな東翔。それは無理な話じゃないか? 彼女を妻として迎え入れる事は、決してできないと思うがな。おそらく——未来でも。
死神が結婚するなんて事はトンと聞かない。せいぜい同族と子を残す為に結婚するぐらいだ。未来の子ではあるとしても人間である。脆弱な体である人間に恋をして、どうしようもない喪失感に悩まされるのはむしろお前だ。
「……これは、さっさと未来に返してあげなきゃいけないかなぁ」
煙を吐き出しながら、俺様は買い出しに出かけたお姫様の帰りを待った。
お供として佐助を連れて行かせたし、もし佐助が不埒な事をしようとしても、俺様がきっちり監視している。そういう術をあらかじめかけておいたからな。
お姫様は帰りたいと思う? 思わない?
「……頭。銀様を、返したいと思うんですか?」
「どうしてそう思う?」
「頭は嘘つきです。返したくないと思っていても、返さなきゃというぐらいに嘘つきです。もっと、自分に素直になってみたらどうですか?」
馬鹿な。
俺様は忍びだぜ? 気持ちを偽って当然の人種だ。いや、職種? とにかくそんなようなもん。
だけど、何でだろうね。そうしなきゃいけないんじゃないの? と心の中で誰かが言っていた。
これは未来の俺様かな。きっとそうかな。そうだったら、楽しいのにな。
「……どうだろうね、俺様の気持ちは」
返したいと言ったけど、返したくない。
でも、返さなきゃいけない。
銀ちゃんはここで生きるべき人間じゃないんだ。これ以上、銀ちゃんを悲しませちゃいけないんだ。
でも、でも今は。
——どうか、このままでいさせてください。
もう少しだけ、時間をください。
この時ばかりは、神様に祈りをささげる。
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.455 )
- 日時: 2012/12/29 22:49
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Mj3lSPuT)
第16章 カゲロウタイムスリップ
お祭り2日目です。今日も張り切って風鈴を売りますよ!
ていうか作者は風鈴売るぐらいしかもう思いつかないんですね、想像力が貧困とでも言いましょうか。
さて、私は声を張り上げて風鈴を宣伝していきます。
——また、翔さんが現れてくれると嬉しいな、とは思っていません。だって、あれは翔さんじゃない。翔さんだけど、翔さんじゃないんです。
「……こんばんは」
「あ、いらっしゃいませ……」
私の声は自然と小さくなっていったような気がします。
目の前に、翔さんが立っていました。昨日と同じ黒いコートを着て、両手をポケットに入れて微笑を浮かべています。翔さんが笑う事なんて珍しい事です。
思わず視線をそらしそうになりましたが、それでも翔さんはお客さんです。
「いらっしゃいませ。どの風鈴を——」
「今日は風鈴じゃない。話がしたい——貴様とな」
ドキリ、と心臓がはねました。
翔さんは、私とお話がしたいと言いました。私が知っている俺様な翔さんなら、きっとこういうでしょうね。
——銀。テメェに話があるからちょっと来い。
そして、黒影寮さんからブーイングが起こるんです。それに翔さんはうるせぇ黙れとかわめき散らしているんです。
それから翔さんと空華さんの大喧嘩。最近多いんです。でも、それが何だか日常茶飯事になって来たなとか思っている私がいるんですが。
——何銀ちゃんに色目を使ってんの? え、死神の術ですか。そんなら俺様も使うわボケ!
——誰が色仕掛けなんかしたか。俺は単に話があると言っただけだぞ? 何を過剰に考えている。この変態脳みそが。
昴さんが仲裁して、喧嘩は終わるんです。
ですが、今は黒影寮の皆さんもいません。いつもの喧嘩が聞けると思ったら大間違いです。
その時です。
「あんたさ、一体何? うちの売り子に手を出さないでくれるかな?」
奥で風鈴の在庫を確認していた空華さんが、私の事を抱き寄せてきました。うぇぇ?!
翔さんはむっと唇をとがらせて、空華さんを睨みつけます。視線は語っています、「何様のつもりだ」と。
いえいえ、あなたは死神様です。そうです神様なんです。ですが初代王良空華さんは死神を操り調教する死神操術という術を持っています。それで操られたら大変です。
「……貴様は一体何だ。そいつと話がしたいと言ったのはワシだぞ。死にたいならば容赦はしないが」
翔さんはそう言いますと、いきなり空中から赤い鎌を引っ張り出しました。愛用の炎の鎌ですか!
空華さんは笑って話を流すと、私の腕を引っ張り抱きかかえました。そして日野宮さんに怒鳴り声で指示をします。
「風鈴を頼んだ! 俺様は銀ちゃんを連れて少し逃げるから!」
「御意に」
日野宮さんはいたって冷静な声で返答しますと、風鈴に集中しました。
空華さんは私を抱いたまま、夜空へと飛び立ちます。冷たい風が頬を撫で、空華さんは木に着地。着物だというのにもかかわらず、身軽に動きます。でも、表情はどこか苦しそうでした。
……一体何が? 空華さんは一体何を考えているんですか?
「ごめんね、銀ちゃん。……君を、未来へと返してあげるよ」
「——え」
一瞬息が止まりそうになりました。
未来に返す、という単語を聞いたからではありません。空華さんが、そのエメラルドグリーン色の隻眼から涙を流していたんです。
雑木林の中で足を止め、空華さんは私を地面に下ろしました。それでも、透明な涙は空華さんの頬から消えません。とめどなくあふれていきます。
「どうして、泣いているんですか?」
私は思わず訊いてしまいました。訊かずにはいられませんでした。
空華さんはかすれた声で、
「……この数日間、銀ちゃんと過ごせて本当に楽しかったんだ。修行だって見るのも嫌だったろうに、君はぼろぼろになった体を治して温かいご飯を作ってくれた。少しでも人間になれたような気がして——いつしか君を好きになっていた」
まさにそれは告白です。かすれた声で言うものですから、私は固まってしまいました。
空華さん、泣かないでください。あなたに涙は似合いません。笑ってください。
未来では、とっても女の子が大好きなんですよ? 初対面では部屋に女の子を連れ込んでいましたけど、今ではとんと見かけません。それどころか、私に猛アタックして翔さんにぶっ飛ばされるという日々を送っています。
「……だけど、もうお別れ。俺様、実はちょっと嫉妬深くてね。あんな女顔の死神に銀ちゃんを渡すぐらいならいっそ未来に反してしまおうと思った訳だよ」
「そんな……私、せっかく皆さんと仲よくなれたような気がして、いたのに」
自然と私ももらい泣きです。ぽろぽろと涙が流れていきます。こらえていたものが全て決壊して、落ちていくような感覚です。
2人で泣いていると、そこへ闖入者。翔さんです。
「逃げるな。その娘をよこせ」
「——やーなこった」
グイッ、と空華さんは涙をぬぐい、一瞬で涙を止めました。何の術を使ったのか分かりませんが、それでもすごかったです。
すると、私の足元に何やら魔法陣みたいなものが現れました。何でしょう。紫色の線が私を包み込んでいきます。
視界が紫色に染まっていく中で見たものは、唖然としたまま立ち尽くしている翔さんと、微笑を浮かべたまま再び涙を流している空華さんの姿でした。
「銀ちゃん、最初で最後のお願い——聞いてくれる?」
消えゆく中で、空華さんは言いました。満面の笑みで。
「笑って」
最後、私は上手く笑えたかどうか分かりません。それでも、笑おうと懸命に頑張りました。
いつしか私の意識は、遠くへと飛んでいきました。
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.456 )
- 日時: 2012/12/31 22:21
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Mj3lSPuT)
浮遊感。
浮遊感。
浮遊感、そして感覚が戻ってきます。
重い瞼を開けてみますと、そこに広がっていたのは白い天井でした。あぁ、病院の天井ですね。分かります。
となると、私は病院のベッドに寝ているという事ですよね。耳元でピッピッという音が聞こえますので、多分寝ていたんですね病院で。
「ぎ、んちゃん?」
唖然としたような声が聞こえてきました。だるい体を何とか起こして声の方を確認してみますと、そこには空華さんが立っていました。
エメラルドグリーンの瞳を目いっぱい開いて、私を見ていました。何か私の顔についているのでしょうか?
「……起きたんだ……よかった……!」
私は——平成に戻って来たようです。
第16章 カゲロウタイムスリップ
空華さんはその場に崩れ落ちました。ドアに背を預けて、ずるずると床に座り込んでしまいます。
私はしばらく空華さんを見ながら放心状態です。何でしょう、何ででしょう……。すごく、悲しい気持ちが、心の中にあるんです。冷たいものが、私の心をむしばんでいるんです。
「……よかった、よかったよ……このまま銀ちゃんが、目覚めないならどうしようかと……!」
「……空華さん……翔さんは? みなさんはどこに——」
珍しくエメラルドグリーンの瞳から涙をぽろぽろと流しながら、空華さんが答えを返してきました。
「……翔はこの辺りで銀ちゃんの魂を見つけようとしばらく必死になって探していたから、寝てる。昴達も。怜悟と睦月は黒影寮で待機。白刃さんが泣き崩れたから、それを慰めるのに」
みなさんにご迷惑をおかけしたようです。今度お礼をしなくては。
でも、私の心の疼きは取れませんでした。そうです、きっと……きっと、あの人のせいで。
「空華さん……」
「なぁに、銀ちゃん」
「すみません……少し、傍に来てもらっても、いいですか?」
床に座っているところ悪いんですけど、と付け足してから、空華さんに隣に来てもらいました。
見れば見るほど、あの人にそっくりです。
江戸時代、神社でカモフラージュの為に潜んで暮らしていた王良家の当主様。王良空華さん。初代の、空華さん。
19歳で、飄々としていて、でも私の事を思ってくれて。とっても、とっても嬉しかったんです。今の空華さんとは違った空華さんを見れたような気がして、新鮮でした。
でも、だから——あんな別れ方はしたくなかったんです。
「……、え」
私の耳元で、空華さんの声が聞こえてきました。
もちろん、それは私が空華さんを抱きしめたからです。空華さんに抱きかかえられた時と同じように、心臓の音が伝わってきます。少しだけ早い鼓動を、刻んでいます。
「え、と銀ちゃん? どうしたの一体?」
「……ごめ、なさい……」
「……泣いてる?」
自然と、この体温を感じていると、私は何故か涙が出てきてしまいました。
何ででしょう? でも、分かる事は……空華さんが生きていてくれて、本当によかったという事です。
「私、江戸時代にタイムスリップしてて……空華さんにお世話になったんですけど……『笑って』って……最後のお願いで、笑ってってお願いされても……あんな別れ方、で、笑える訳ないじゃないですかぁ……」
もう嗚咽で何を言っているのか分からなくなってきていますが、もうどうでもいいです。
空華さんが、いてくれるだけで私はいいです。
しばらく空華さんを抱いたまま泣いていると、空華さんが私を優しく抱きしめてくれました。
「泣いていいよ。思い切り泣きな……俺様が全部受け止めてあげる」
「……ハイ」
ありがとうございます、と言って私は空華さんの胸に顔をうずめました。
どうか、どうか神様。
空華さんを、みなさんを私の前から消さないでください。
もう、誰かを失いたくないんです。
たとえそれが、昔の人であったとしても……もう失いたくないんです。
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