コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。堂々の完結! 皆様ありがとう!
日時: 2015/01/24 21:51
名前: 桐生玲 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)

 拝啓、天国のお父さんとお母さん。
 ついでに世界1周旅行へ行っている珊瑚叔母さん。
 私は元気です。とても元気です。元気を分けてあげたいぐらいに元気です。
 今日も私の前を、

 パンツが飛んでー。

 男の怒声が飛び交ってー。

 何だか炎まで飛んできてー。

 挙句の果てに今、恋人になるように強要されています。
 ……私、人生間違えましたでしょうか?

***** ***** *****

 初めまして、というのもなんですが。一応。
 桐生玲(きりゅう/あきら)という者です。まぁ、名前を変えただけですが。
 私が誰だか当てられるでしょうk((殴
 大変失礼しました。

 ちょこっと上で話の内容を書いたつもりなのですが、分かりませんよねww
 私もこれをパッと見て、何だこれって思いますもん。
 では、これに関する注意点をいくつか。行きますよ。

☆この物語は逆ハーレム要素を含みます。苦手な方はお戻りください。
☆駄作に変わりはないです。
☆恋愛50%、バトル45%、シリアス0.05%、後のは勇気と愛。
☆少しドリームっぽいです(が、そんなに気にはなりません)
☆桐生玲誰? あ、お前知ってるでも嫌いな人は出口はあちらです→
☆また、荒らしやチェーンメール、パクリを行う人も出口はあちらです→

 読みましたか? あの、いくつか多いんでゴメンなさい。
 それでは。


お客様(桐生的目線でご紹介)
由羽様『最初のお客様です。逆ハー、ハーレムおkの方ww』
野宮詩織様『2番目のお客様です。リア友であり、神作を生み出しているお方です!』
ヴィオラ様『3番目のお客様です。キャラを送って下さりました! お互い頑張りましょう!』
蓮華様『4番目のお客様です。キャラを送ってくださいました。使いやすいキャラをありがとうございます!』
秋様『銀ちゃんの推しなお客様です! あざっす!!』
翠蓮草様『先生キャラを送ってくださったお客様です。登場はもう少々お待ち下さい!!』
メデューサ様『結構オリキャラでお世話になっている方です。今回もありがとうございます!!』
ジョーカー様『前作に限らず今作も送ってくださいました!! 感謝!!』
あんず様『翔推しのお客様です。翔君は俺の嫁!!』
北大路様『神様の名前を考えてくださった人です! コメもくださいました』
マリ様『ルールを守って読んで下さった人です。さすが!!』
梨花様『企画の祭りに参加してくれてありがとうございます。コメももらいました!』
愛河姫奈様『キャラクターの質問に答えたら、来てくださった人です! 感謝です!』
暁月様『一気読みをしてくださった人です。根気ある!』
闘神のアスラ様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部も見てくださっています』
抹茶猫様『兄弟小説・下剋上☆吹奏楽部の愛読者様。あざっす!!』
藤田光規様『一気読みしてくださった人です。翔君のおし?』
在様『携帯で一気読みしてくださった人です。しにがみのデートがお気に入りだそうでw』
北斗七星様『最初は桐生玲誰と思っていらした方ですが、山下と気づいてくれて幸いです。大丈夫ですよ!』
リア様『下剋上の方も読んでくださりました。ありがとうございます!』
美桜様『この小説をお気に入りにしてくださりました。ありがとうございます!』
粉雪百合様『もう1つの小説「お前なんか大嫌い!!」から来ました方です。ありがとうございます』
miru様『空華推しの人です、ありがとうございます! 一気読みしちゃったんです!』
葵様『こちらは昴君推しですwぜひとも翔君と取り合ってくださいありがとうございます!』
kyon様『こちらも空華推しの方です。なんと、歴代小説を読んでくださった人です!』
凪紗様『黒影寮ではまったお客様です。なんとディレッサさん推しです!!』
結羽凛様『個人的に好きなキャラは翔様だそうで。少し前から見てくださっていたようですよ! Thanksです』

現在劇場版を展開中。
『劇場版。黒影量は今日もお祭り騒ぎです!〜空と海と未来の花嫁〜』
>>229 >>232 >>234 >>237 >>239 >>240 >>242 >>245 >>248 >>249 >>250 >>253 >>254 >>255 >>258 >>262 >>264 >>265 >>266 >>271 >>272

『劇場版。駆け抜けろ! 地獄と天国と幽閉された死神〜複雑ファジー』>>290 NG>>296


目次
登場人物>>02 皆のオリキャラ大集合>>67 新キャラ>>175
プロローグ>>4
第1章『ウェルカム、黒影寮』
>>5 >>6 >>7 >>8 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15
第2話『とある彼女は銀の鈴』
>>16 >>17 >>18 >>23 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
第3章『銀と白亜と黒影寮』
>>31 >>32 >>33 >>36
第4章『兄より吐き気』
>>39 >>42 >>45 >>47 >>50
第5章『しにがみのデート』
>>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>59 >>60
第6章『俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない』
>>71 >>72 >>77 >>81 >>83 >>86
第7章『英学園の愉快な文化祭』
>>93 >>95 >>102 >>105 >>106 >>115 >>118 >>123 >>126 >>129
第8章『神威銀の誘惑』
>>134 >>135 >>136 >>139 >>140 >>146 >>147
第9章『本当にあった黒影寮の怖い話』
>>149 >>154 >>158 >>159 >>160 >>163 >>170 >>174
第10章『突撃☆隣の中国マフィアさん!』
>>176 >>182 >>185 >>189 >>196 >>199 >>204 >>207 >>215 >>220 >>226
第11章『王良家こんぷれっくす!』
>>278 >>281 >>282 >>284 >>285 >>286 >>287 >>288 >>289 >>300 >>303 >>306 >>309
第12章『君と僕〜オリジナルと亜種〜』
>>314 >>321 >>322 >>323 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>333
第13章『黒影寮の問題児が妖精を拾ったようです』
>>337 >>345 >>346 >>349 >>352 >>353 >>355 >>356 >>360 >>361 >>364 >>365 >>366
第14章『もし黒影寮の管理人代理が町の草野球大会の広告を見たら』
>>372 >>378 >>379 >>382 >>385 >>386 >>390 >>393 >>394 >>397 >>401 >>402 >>405
第15章『皇高校ホスト部!!』
>>416 >>417 >>418 >>419 >>423 >>424 >>427 >>430 >>433 >>434
第16章『カゲロウタイムスリップ』
>>437 >>444 >>445 >>448 >>452 >>453 >>454 >>455 >>456 >>459
第17章『家出少女の死にかけ人生』
>>460 >>461 >>464 >>465 >>466 >>467 >>470 >>474 >>478 >>481
第18章『今日、私は告白します』
>>490 >>494 >>497 >>500 >>503 >>506 >>521 >>524 >>527 >>528
第19章『進撃の巨人〜ヒーローと死神がやってきた〜』
>>532 >>535 >>536 >>537 >>538 >>541 >>542 >>543
第20章『噂の空華さん!』
>>544 >>546 >>549 >>552 >>553 >>554 >>557 >>560 >>561 >>562
第21章『明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ』
>>565 >>568 >>569 >>570 >>575

エピローグ
>>576

あとがき
>>577

お知らせ☆

現在部門ごとにオリキャラ募集>>19→終了しました!!
企画開始!!
その1『もしも黒影寮の全員が○○だったら』>>82
その2『みんなで神様の名前を考えよう』>>125
その3『黒影寮フェスティバル! 参加者募集』>>263

期間限定小説
10月31日『ハロウィン』>>46
12月24日『クリスマス』>>94
12月31日『大晦日』>>109
1月1日『お正月』>>112
12月7日『寮長・翔の誕生日』>>130 >>132
2月14日『バレンタイン』>>225
2月23日『都立高校一般入試』>>238
4月1日『エイプリルフール』>>311
7月7日『七夕&銀ちゃんの誕生日』>>387

童話パロディ
『白雪姫』>>63>>68
『赤ずきん』>>87 >>92
『シンデレラ』>>274 >>277
『7匹の子ヤギ』>>409 >>412

黒影寮は今日は作者と質問日和!
神威銀>>124
東翔>>155
椎名昴>>188
王良空華>>241
二条蒼空>>261
堂本睦月>>354
月読怜悟>>357
祠堂悠紀>>400

企画小説『黒影寮主催☆やりたい事は何でもやっちゃうぜふぇすてぃばる!』開催中

・メデューサ様
もしも『黒影寮の住人とその他のキャラの能力』が『ごちゃまぜ』だったら>>85
バレンタイン『お相手:蒼空』>>219
・あんず様
もしも『東翔』が『スクール水着』を着たら>>89
翔が性転換して昴と付き合うことになったらどうなるか>>367
・蓮華様(現:夕遊様)
もしも『黒影寮の全員(つかさ除)と高梨羅』が『性転換』したら>>91
もしも『黒影寮の全員+高梨羅』が『性格ごちゃまぜ』になったら>>114
バレンタイン『お相手:鈴』>>224
・マリ様
『神威鈴が銀の体を乗っ取り東翔にいたずらを仕掛けよう!』>>273
・梨花様
『神威銀を怒らせたらどうなるか?!』>>317
・北斗七星様
『銀ちゃんが幼児化したらどうなるか!!』>>510
『もしも銀ちゃんが本物のビッチだったら(VS翔)』>>513
・kyon様
『銀ちゃんに彼氏がいたら』>>516

番外編
俺は今日、恋を始めます『羅(男)×銀』>>148
翔ちゃんなう!『翔×昴×大地』>>283
どうかこの手でもう1度『蒼空&睦月』>>449
断章『下剋上☆黒影寮!!』
>>485 >>486 >>487 >>488 >>489

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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.553 )
日時: 2014/03/10 22:24
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

第20章 噂の空華さん!


「一緒にきたのはお母さんだけ?」

「うん……お父さんはお仕事に出かけちゃった。だからお母さんときたの」

「じゃあ、お母さんの特徴は分かる?」

「茶色い髪の毛で……白くて長いスカートを穿いているの。それで青い上着を着ているの」

 泣きついてきた少年——かずと君を連れて、空華さんは水族館の中をうろつきます。その扱いは手慣れたものです。
 空華さんは兄弟がたくさんいるので、小さい子供を扱うのは得意なのでしょう。実際、空華さんの兄弟に小学3年生ぐらいの子がいた気がします。
 かずと君は暴れることなく、空華さんの腕の中で大人しくしています。きちんとお母さんの特徴を言えている辺り、よく躾が行き届いた子だと思います。泣きすぎて言えない子供って多いんですよね。
 それにしても、この水族館はとても広いですね。もうずいぶんと歩いていますが、かずと君のお母さんらしき人は見当たりません。

「ごめんね銀ちゃん。歩かせちゃって」

「いいえ、平気ですよ。早く見つけてあげましょう?」

 申し訳なさそうに眉を下げる空華さんに、私は笑いかけました。だって何かを気にしているようだったから。
 私は気にしている訳じゃありません。早くその子のお母さんを見つけなきゃと思っているんです。「疲れた」とか「歩きたくない」なんてわがままを言ってはダメです。
 かずと君は泣くのを我慢しているのだから。

「……ねえ、くうかにいちゃん」

「なあに? かずと君」

「くうかにいちゃんは、このおねえちゃんと『こいびと』なの?」

 仲よしだね、とかずと君は笑いました。子供は末恐ろしいです。
 私と空華さんはビキッと停止しました。え、何をおっしゃっているのですかこの子は?
 ま、まだ付き合っていません。そりゃ水族館に入ったチケットはカップルチケットですが、それでも付き合っていません。付き合っていません、よね?

「違うよ、かずと君。お兄ちゃんが、このお姉ちゃんを好きなだけ。恋人じゃないよ」

「そうなの?」

「そうなの。ほらほらー、この中にお母さんはいるかな?」

「んーん」

 私が何かを答える前に、空華さんはかずと君の瞳を人混みへ向けさせました。かずと君が言っていたお母さんの特徴に合致する人は、未だにいません。
 だけど、私は少し気になりました。
 かずと君の質問に答える空華さんの横顔——少し悲しそうなものでした。何かを我慢しているような、苦しいような、そんな顔です。
 ————ていうか。

「く、空華さん何を言っているんですかぁッ!!」

「えー? 前々から言っているはずだけどねぇ」

 あの悲しそうな表情はどこへやら、空華さんは飄々としていました。
 一体何なんですかぁ。


 だから、私は空華さんの小さな一言に気づかなかったんです。

「銀ちゃんは俺様のことなんか微塵も思っちゃいないよねぇ……」


***** ***** *****

 しばらく水族館内をうろついてみましたが、かずと君のお母さんはいませんでした。
 そうこうしているうちに、この水族館の目玉である巨大水槽まできました。ここにはジンベエザメがふわふわと泳いでいるんです、すごく大きいです。

「わぁぁぁぁ」

 かずと君は目をキラキラと輝かせて、水槽を見上げていました。水槽の上の方を、ジンベエザメが悠々と泳いでいます。気持ちよさそう。
 空華さんも「すっげー……」とポツリとつぶやいて、水槽を見上げています。いつもは大人っぽい空華さんですが、この時ばかりは人間らしく——年相応に楽しんでいるようでした。
 私もすごいなぁと思っていました。だってジンベエザメですもの。とても大きいんですよ? そして可愛いんですよ?

「写真でも撮ってみんなに送りつけたろ」

 なんて空華さんはにやりと不敵に笑み、携帯を取り出して泳いでいるジンベエザメを撮影し始めました。
 私もその隣でジンベエザメを撮影しようとしますが、なかなか上手くいきません。動いているものって撮影しにくいですね。うぅぅ、フレームアウトしてしまいます。動かないでぇ。
 その時です。
 隣の方から、パシャリとフラッシュと共に写真を撮られました。視線の先には、空華さんが携帯を構えていました。

「ごめん。だって可愛いから」

 そう言って空華さんが見せてくれたのは、私があわあわと携帯でジンベエザメを撮ろうとして四苦八苦している写真でした。

「け、消してください!!」

「やーですぅ。こんな可愛い銀ちゃんが見れたんだもの。役得役得♪」

「むぅ……空華さんなんか嫌いですぅ……!」

「機嫌直してよ、別に呪いをかけたりする訳じゃないんだからさぁ。ほら、俺様の撮ったジンベエザメの写真いる? 結構いい感じじゃない?」

 空華さんが私の携帯をスッと取って、赤外線でジンベエザメの写真を送ってくれました。
 確認してみると、わぁ、きちんとフレームに収まっています。青の世界を、ジンベエザメが自由に泳ぎ回っています。すごいです。
 思わず見入っていると、空華さんが「ククク……」と笑っていました。な、何で笑っているんですか。

「そんな目ぇキラッキラさせなくても……! そんなにひどい写真だったの?」

 エメラルドグリーンの瞳に涙を浮かべ、端正な顔つきは笑みを浮かべています。飄々としていてつかめない、それでいていつも笑顔を浮かべていた空華さんの、全開の笑顔。
 なんだか貴重な気がするので、私も撮っておくことにしました。
 携帯を構えて、パシャリと撮影。空華さんの笑顔をばっちり収めることに成功しました。

「ちょ、銀ちゃん! 消して!!」

「やーです。おあいこです」

「むぅ。俺様も銀ちゃんの写真を撮った手前言い返すことができない……」

 空華さんは苦笑いを張りつけました。
 すると、「あーっ!」とかずと君が声を上げました。

「おかあさん!!」

 え? と視線を投げますと、そこには茶色い髪で白いスカートを穿いた女性が「かずとー!!」と叫びながらきょろきょろしていました。あの人がかずと君のお母さんですね。
 かずと君の背中を、空華さんはポンと押しました。

「行ってきなさい、かずと君。お母さん、泣いてるよ?」

「うん!」

 かずと君は元気よく頷くと、お母さんの方へ駆け寄って行きました。お母さんも気づいたようで、走ってきたかずと君を抱きしめました。
 感動の再開を果たした2人は、なんとこちらへ歩いてきました。

「かずとを見つけてくれてありがとうございます……」

「あ、いいえ。平気ですよ。——かずと君、よかったですね」

「うん! くうかにいちゃん、おねえちゃん、ありがとう!!」

 かずと君は満面の笑みで、お礼を言いました。お母さんも「本当にありがとうございます……」と何度も頭を下げていました。
 空華さんはしゃがみ込んでかずと君と目線を合わせると、かずと君の頭にポンと手を乗せて乱暴に髪をかき混ぜました。

「いいか、かずと。もうお母さんの手を離したらダメだぞ。お母さんを1人にしちゃダメだぞ?」

「——うん!」

 バイバイ! とかずと君は大きく手を振って、お母さんと共に去って行きました。

「見つかってよかったね、銀ちゃん」

「そうですね」

 去っていく2人は、どの家族よりも笑顔でした。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.554 )
日時: 2014/03/17 23:36
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

第20章 噂の空華さん!



 いやぁ、水族館を堪能させてもらいました。
 ちなみにお昼時だったので、レストランとかは混んでいると仮定して黒影寮で食べてきちゃって正解でした。水族館のレストラン、人であふれかえっていましたよ。
 さて、せっかくですので黒影寮の皆さんにお土産でも買っていきましょう。

「……なあ、銀ちゃん。これを翔にあげたらどうだろうな?」

 真剣な顔つきで空華さんが渡してきたのは、ウツボのマスコット。地味に硬いです。
 つんつんとつぶらな瞳をしたウツボのマスコットの頭をつつきながら、私は空華さんに問いかけました。

「何でウツボを?」

「いや、これであいつの薄い腹を突いたら面白いだろうな、と」

 真剣な顔で何をおっしゃっているのでしょうね、この人は!! まったくもう!!
 どんだけ翔さんに恨みを持っているんですか。体育祭の時は、協力して安心院寮を倒していたじゃないですか。私、見てましたからね。
 ていうか、

「翔さんって薄いんですか、お腹」

 確かに細身だとは思っていましたが、そんなにペラッペラでしたっけ?
 空華さんに尋ねてみれば、お腹を抱えて「ブフッ……」と笑っていました。な、何なんですかぁ!

「いや、その発想はなかったと思って……。あいつは薄い——つーより華奢だからな」

「え、あ、そっちですか。てっきりペラペラなのかと——紙の如く」

「そんな人間はこの世にいないぜ? 実際、あいつも人間じゃないけど」

 死神でも紙みたいに体がペラペラなの聞いたことない、と空華さんは真顔で否定してきました。ちょっとボケただけじゃないですか。
 まあ、でも翔さんは確かに華奢ですよね。それに女の子のような顔つきをしていますから、男の人にナンパされたことがあるって言っていたような気がします。死神なので力は結構あるのですが。
 中国拳法も大体はマスターしているようですし、それで男の人は撃退しているようです。

「ま、中身が男らしいからな。昔から統率力とかあるしー、頭もいいしー、運動神経も悪くないしー」

 あれ、だんだんと空華さんがふてくされてきたんですけど? どうしたんでしょう。

「あはは。もうだんだんと言っててつらくなってきた……マジでこのウツボ買って、蒼空と一緒に翔を狙おう。そうしよう」

「やめてあげてください。蒼空さんなら喜び勇んで翔さんに挑んでブッ飛ばされるヴィジョンが浮かびました」

 そしてあなたも吹っ飛ばされる光景が浮かびましたよ。ついでに後ろで笑っている昴さんと睦月さん。
 黒影寮って本当に愉快な人たちが多いんだなー、と改めて実感しました。
 とりあえず、皆さんのお土産はお菓子でいいでしょうか。いいですよね。おやつの時間に出してあげましょう。お菓子で嫌いなものとかなさそうですし。あ、でもリネさんとか梨央さんとかどうでしょうか。

「……『リヴァイアサン』の人たちってよく分かりませんよねぇ」

「一体何を言い出すのかと思ったら」

「いや、お菓子のお話です。あの2人、よく考えたらお菓子を食べているところを見たことないので」

 リネさんは与えれば何でも食べますよね、あの子。大丈夫でしょうか、ロリコンとかに餌付けされそうで怖いです。いや、むしろあの子がロリコンさんをボコボコにしそうですね。
 梨央さんはこの前「僕甘いのきらーい」と言って逃げました。多分無理をすれば食べられると言っていましたけど、無理をさせたくはないので。
 そのことを踏まえて空華さんに話したら、「あー、なるほどね」と頷きました。

「だったら梨央はこれでいいんじゃないかな?」

「……ジュースですか?」

 空華さんが差し出したのは、水族館の魚たちがデフォルメで書かれた缶ジュースでした。中身は一体何でしょう?
 あ、ミネストローネって書いてあります。

「あいつってトマトジュース飲んでるじゃん。トマトジュースはさすがになかったから、ミネストローネでいいかなって。これを大量に買っていけばあいつも喜ぶと思うんだ」

 そういえば、あの人ってトマトジュースを飲んでいますよねーそれはもう中毒かってぐらいに。
 トマトが好きなんですよね。トマトジュースがなければトマトっぽいものを食べればいいじゃないってんで、黒影寮のケチャップをそのまま飲んでいました。いつか塩分の取りすぎで死ぬんじゃないんでしょうか。
 それでよさそうですね。

「銀ちゃんは何か買わないの?」

「私ですか? 私は別に……必要ありません。ここに連れてきてもらっただけでも、嬉しいですから」

「……ふーん」

 なんか納得していない様子の空華さんでした。

***** ***** *****〜空華視点〜


 ハーイ、どうも。みんなのアイドル()王良空華です。
 まったく、銀ちゃんも物欲がなさ過ぎて困るよねぇ。何の為に俺様、お金持ってきたの。
 銀ちゃんは今羅ちゃんと白亜ちゃんとお兄さんの白刃さんの為のお土産を選んでいる。どうやらストラップにするようだ。その隙に、俺様はぬいぐるみのコーナーをうろついていた。
 なんか可愛いイルカのぬいぐるみと目が合ったんだけど。すげえでかい。抱き枕に最適ってぐらいに。

「……ほんとに可愛いな、これ」

 ……脈がないことは重々承知している。あぁ、そうさ。脈はないんだ。
 だけどさ、プレゼントくらい受け取ってくれるよね? 迷惑だなんて言われたら、綺華に送りつければいいんだし。あいつはああ見えて可愛いものが好きだから。


「さあ空華さん、行きましょうか! って、その袋大きいですね」

 黒影寮の奴らにもお土産は買った。ついでに銀ちゃんの友達にも。
 ぴょこぴょことやってきた銀ちゃんに、俺様は抱えていた大きな袋を押しつける。「わぷっ」と可愛い反応をしてくれた可愛い。

「あの、空華さん……?」

「可愛いから買っちゃった☆」

 えへへ、なんて笑って見せれば、銀ちゃんは何か怪しげなものでも見るかのような目で、袋を開けた。

「わ、イルカ!!」

「可愛いでしょ? あげるよ」

「え、いいですよ。高かったでしょう?」

「あのねー。忍者の任務で結構稼いでいるのよ、俺様。だからいいの。貰ってよ」

 押しつけておいてあれだけど、正直言ったら拒否されるのはかなりきつい。だから、お願いだから拒否はしないでほしい。
 心の中で祈っていたら、銀ちゃんはイルカのぬいぐるみを抱きしめて満面の笑みを浮かべてくれた。

「ありがとうございます。じゃあ、毎晩抱いて寝ますっ!!」

 ——その笑顔と言ったら。
 もう可愛いって表現は効かないぐらいに可愛い。あぁ、この子を抱きしめたい。許されるなら本当にギュッて抱きしめたい。
 無理だな、うん。

「じゃ、帰りますかお姫様。荷物は持つぜ? 何なら睦月に連絡して物質転送してもらう?」

「んー、その方がいいですかね。睦月さんも楽になるでしょうし……。あ、すみませんが空華さんにお願いしてもいいですか? 私、ちょっとトイレに行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 トイレへ駆けていく銀ちゃんの背中を見送って、俺様は携帯を取り出した。電話帳を開いて、睦月の番号を呼び出す。
 電話をかければ、暇だったのか3コール目でつながった。

「あ、もしもし睦月? 今大丈夫?」

『どないしはった? 銀ちゃんと水族館に行ってるようやんけ。羨ましい』

「チケットを妹から貰っただけだっつの。——お土産買ったから、物質転送してもらいたいんだわ。——あぁ、大丈夫。今、人のいない影に隠れたから。おう、よろしく。ハイハーイ」

 睦月は快諾してくれ、足元と手元にあった黒影寮の菓子が送られた。どんだけ買ったんだ、銀ちゃん。分からないまま俺様もお金を出したけど。
 あ、銀ちゃんはあのイルカを持って行った訳ですか。一緒ですか。
 さて、銀ちゃんを待ちますかね。

「————見つけた」

「んん?」

 ————視界がブラックアウトした。



「お待たせしました、トイレが混んでいて……あれ? 空華さん、空華さん?」

 戻ってきた時には、空華は携帯を残して消えていた。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.555 )
日時: 2014/03/22 00:10
名前: ドロボウにゃんにゃん (ID: hVaFVRO5)

夜中にこんばんは!

深夜だけど、、、


pixivの絵見ました!

銀ちゃんも鈴くんもそんなイメージだったのですね。

カワイイ!

実は私もpixivで書いてます。

自信無いからマイピクのみで、、、

自分の書いた物を読み直すたび

なんじゃこりゃ!と思ってます。

私、才能無いのかな、、、、、、(泣)

ほな、さいなら〜!(←なんで関西弁?

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.556 )
日時: 2014/03/24 21:41
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

ドロボウにゃんにゃん様>>


こんばんは、山下愁です。
pixivをやっているとは……ハッ!! まさか!! もちろんマイピクさせていただきました。
そして絵も拝見させていただきましたよ。すごく上手でした、私よりも数倍上手いんじゃないでしょうか……(汗
私は文章もろくに書けないクソ野郎です……こんな駄文を書いていてすみません……。

pixivの方では二次小説ばかり書いています。
特に進撃の巨人が好きです。ハイ、腐っています。性根も腐りきっていますwww
だが後悔はしていない(キリッ

就職して現在研修中ですが、こちらの小説は続けていくつもりです。応援よろしくお願いします。

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.557 )
日時: 2014/03/24 22:29
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

第20章 噂の空華さん!



 〜空華視点〜


 目を覚ましたその先は、どこかのスタッフルームのような場所だった。ていうか暗い。そして埃臭い。
 いや、スタッフルームというより倉庫? 何で俺様、こんなところに連れてこられたんだろう。
 銀ちゃんを待っていて、睦月に物質転送を頼んで、それで……そこからの記憶がまるっと抜けている。嘘だろ。忍びの名折れだ。

「ふわ!?」

 よいしょ、と立ち上がろうとしたんだが、立ち上がれなかった。
 両腕と両足に、何やら札のようなものが張りつけられている。これは封じ羽(フウジバネ)!? 体を拘束する術式か。高等呪術だぞ、俺様はもちろん使えるけど多分天華が得意な術だと思う。
 何でこんな術がかけられているんだ。クソ、両手両足が使えなければこの術式を解くことができない!!

「ようやく見つけたわ」

「……誰よ、アンタ」

 ボウ、と暗がりから誰かが姿を現した。
 貞子のような女の子だ。前髪がかなり長くて顔は分かりにくいけど、何やら嬉しそう。白いワンピースに茶色い革の肩掛け鞄。そして手にはぐしゃぐしゃに握られた札。
 こういう呪術を使う奴は決まっている。巫女だ。陰陽師でもこの術は使えるけど、あの『リヴァイアサン』の性悪陰陽師が使えるか分からない。あの九尾が強いからな。朝霧美桜だっけ。
 女の子はクスクスと笑みをこぼして、俺様に近づいた。やめろー、近づくなー。

「黒影寮の王良空華でしょ……? 王良家当主。我流忍術使い……フフ」

「……どこでそんな情報を仕入れたの。俺様、一般人の依頼は受け付けていないんだけど?」

 基本的に、俺様が受ける仕事はお掃除だ。悪い人——主に政治家とか暴力団組織とか、そういうのを相手にして戦っていたりする。
 依頼人はそりゃ一般人もいたりするけど、大体は社長とか偉い人。ご主人様はどこにでもいるお。

「……私ね。貴方が好きなの……だぁいすき」

「うへ」

 こりゃ驚いた。熱烈な告白か。
 そりゃあ、まあ、うん。俺様だって女の子と遊んでいた時もあるよ。女の子大好き。
 でも、今は銀ちゃん1筋なの。銀ちゃんを思い続けていたいから、最近女の子とも遊ばなくなったよ。偉くね? とか言わないけど。それが当たり前なんだ。そりゃ最初はゲームしようぜとか思っていたけどさ。
 貞子ちゃん(仮)は、俺様の頬をそっと撫でる。ひぇぇぇ、何この子。めちゃくちゃ手が冷たい。

「貴方のことをずっと考えていたの。どんな顔で笑うんだろうって、どんなことを話すんだろうって。そうしていたら、貴方は他の女と一緒に歩いていたわ。……ちょっと許せない」

 ヤバイヤバイ、この子本当にやばい。俺様の中で警笛が鳴る。頭は冷静だ。落ち着け。
 瞳を閉じて、深呼吸。よし、準備万端だ。

「————空よ」

「ダメ」

 貞子ちゃんは、俺様の口にも封じ羽をやってきやがった。これではしゃべれないじゃないか。
 にやにやと俺様を見下ろす貞子ちゃんは、「大人しくしててね」と言った。何をする気だよ。

「……あの目障りな女、殺すから」

 その瞬間だった。
 バァン!! とドアが開かれて、また別の女の子が転がり込んできた。
 銀色の髪に黒い瞳。見慣れた緋色の扇を持って、胸元に下がるのは小さな鏡。——銀ちゃんだった。

「空華さん、助けにきました!!」


***** ***** *****〜銀視点〜


 時は数分前にさかのぼり、視点も変わります。私です、神威銀です。
 空華さんが携帯を置いてどこかへ消えてしまいました。携帯を携帯しないなんて、空華さんらしくないです。ありえません。
 うーん、空華さんもトイレでしょうか。いや、そうだとしてもおかしいです。携帯がここにあるんですよ。誰かにさらわれたような感じです。
 ——え、あの空華さんがさらわれた?
 空華さんは飄々としていてつかめないけれど、我流忍者ですよ。つまり忍者ですよ。気配で察知して、捕まったりしないはずです。それがどうして捕まるんですか。

「……でも、空華さん……」

 すると、私の携帯電話に着信がありました。非通知です。
 私は迷わず通話ボタンを押しました。

『どしたの、銀』

「鈴。どうしましょう、空華さんがいなくなってしまいました」

 ちらりと姿見の方を見ると、私の格好が男になっています。携帯を片手に、心配そうな顔を浮かべていました。

『……探そうか?』

「ハイ。とりあえず、ディレッサさんをお願いできますか?」

『分かった』

 そして、おーい及川さん出番ですよおーい、なんてどこかに呼びかけると、鏡の中からだらしないパジャマの格好をした男の人——ディレッサさんが欠伸をしながら現れました。寝ていたんでしょうね。
 本来なら肉体変化の能力を持つ蓮さんがちょうどいいでしょう。あとは死神の翔さんとか。ですが、今は2人ともここにはいません。わざわざ黒影寮から呼ぶのも迷惑です。
 そこでディレッサさんの能力を食べる能力に、追跡してもらおうと思います! なんてナイスアイディア!!

「かったるーい」

「そんなことを言わないでくださいよ。頑張ってください」

 ディレッサさんは「めんどくさ……」なんて言っていましたが、渋々追跡を開始してくれました。
 ちょこちょこと人混みをよけて、向かった先はスタッフルーム。えぇ、何でこんなところまで? ていうか、このスタッフルーム、何か古くありませんか?

「これ、結構酸っぱいなぁ。酢昆布っぽい」

 嫌いじゃねえけどな、とディレッサさんは薄い唇を舌で舐めました。
 あれ、何でこのスタッフルームのドア、簡単に開くんですか。今まで施錠されていませんでしたか?

「これ、今まで呪術で施錠させていたんだよ。向こうの倉庫のドアは、元から施錠されていない」

 ディレッサさんって案外優しいんですねぇ。
 私はきちんとお礼を言って、倉庫へと駆け寄りました。


「————あの目障りな女、殺すから」


 あ、やっぱり空華さんが危ないですね。
 少しはしたないと思いますが、私はドアを蹴破りました。
 そこにいたのは、両手両足を札のようなもので拘束されて、なおかつ口も札で塞がれている空華さんと——あれ、貞子さん?
 ともかく、貞子さんに空華さんを渡す訳にはいきません!

「空華さん、助けにきました!」

 さぁ、反撃開始です。


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