たか☆たか★パニック~ひと塾の経験~
作者/ゆかむらさき

3> 裏ストーリー(高樹純平くん 主人公)
「やさしくしないで!!」
今度こそ彼女の肩に手を乗せようとしたら大きな声で思いっきり弾き返された。
「男なんて大ッ嫌い!! 健も! 高樹くんも! みんな大ッ嫌いッッ!!」
そう言いながら由季ちゃんは――――僕の胸に飛び込んできた。
窓の外で一発ずつ上がるイタズラな花火が、僕が必死で眠らそうとしている欲望を覚まそうとする。
震えている由季ちゃんの背中に手を回し、僕は彼女のくちびるを奪った。
「ねぇ、由季ちゃん……
この浴衣…… 自分で着たの……?」
由季ちゃんの浴衣の掛衿を掴んでいる僕の手も震えている。
「――ごめん。
これじゃ僕も健と同じだね……。 今、“チャンス”だって思ってる……
“やられたなら やりかえせばいいじゃないか”って……
由季ちゃんが“いや”なら、僕すぐにやめるから……」
☆ ★ ☆
僕は気まぐれで由季ちゃんを抱いた。
嫉妬でも愛情でもない。 ただの“興味本位”で。
彼女には悪いけれど、アレはひと夏の過ちだと思っている。
僕にとっては生まれて初めての盛大な“花火大会”が終わり、頬をピンクに染めて涙の跡を消した彼女はたった今家へと戻っていった。 彼女は今、何を思っているのだろう。 “何処へ”戻っていくのだろう…… きっと彼女の“心の宿り場”健の元に再び戻っていくのだろう。 僕とは一切合財何もなかったのだと、そんな風に。
――――そう。 父さんの知り合いのおじさんの話……あの時は半信半疑でまともに聞いていなかった占いの結果を今頃になって思い出した。
「近いうちに恋に落ちるでしょう。
落ちる……というか溺れる、と言った方がいいですね。
純平くんの方から夢中になってしまうくらい、あなたの心を惑わす女性が現れます。
――――しかし、その恋の前にはとても大きな障害の壁が立ちはだかっています。 覚悟をしておいてください。
欲望にまかせて突っ走らないように……」
《おわり》

小説大会受賞作品
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