コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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マーメイドウィッチ
日時: 2016/06/21 11:41
名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)

世界が止まった。



手が震える。



数拍のちに気付く。









私は大切な人に裏切られたのだと。

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Re: マーメイドウィッチ ( No.265 )
日時: 2017/04/20 23:30
名前: 珠紀 (ID: 8c89ALUL)

こんばんは。
珠紀です。


更新されるたびに見に来ています。

やっぱり、いろはうたさんの書かれる作品はきちんと構成がなされていて読みやすいです。

言葉や名前、ストーリー等印象に残りやすく、スラスラ読めます。
素晴らしいです。

どうしてそんなにも文才に溢れているのでしょうか??


更新されるたびに楽しみに読みに来ます。
頑張ってください。


_珠紀

Re: マーメイドウィッチ ( No.266 )
日時: 2017/04/21 21:03
名前: いろはうた (ID: VujPqVFA)

珠紀ちゃん!!


きゃぁぁぁぁぁっ!!
ききききき来てくれたのですね!!
めちゃくちゃ嬉しいです!!


いやいやいやいやいやいやいや
何をおっしゃるか……
最近、自分の文章力と言うか物語構成力と言うか
そういうものの欠乏に気付いて、
うわぁ……ってなっている日々です……
むしろ珠紀ちゃんの物語を崇め奉りたいです。
もはや参考にさせてもらうことすら恐れ多い……


フレヤさんは、毎度のごとくボロ雑巾のような扱いを受けているけど
決して折れないので(折れたらそこで物語が終わる……)
地道に見てあげてくれたら嬉しいです(^^)


コメントありがとう!!

Re: マーメイドウィッチ ( No.267 )
日時: 2017/04/21 21:04
名前: いろはうた (ID: VujPqVFA)

「そなたはどうする?

 その様子だと、国外に逃げるつもりだろう?

 ともに来ぬか?」


フレヤは目を伏せた。

シウの手を取ってしまいたい。

そうすれば、彼はフレヤを同族として全力で

メノウとステファンの手から守るだろう。

しかし、妹は?

アルハフ族は?

この国の民は?

奥歯をかみしめた。

シウの手を取るにはあまりにもこの国に未練があった。


「この国の民が気になるのか?」


心を読まれたように言い当てられ、フレヤははっとして顔を上げた。

シウの表情は凪いでいた。

怒るでもなくただフレヤを見ている。

フレヤは観念してうなずいてみた。

嘘をついても仕方がない。

いざこうして、国を出るとなると、心残りが驚くほどあった。


「汝はどこまでも王族なのだな」


若干あきれたようにシウに言われて、返す言葉もなかった。

革命を起こされたのだ。

半分民に裏切られたような形で城を追われたというのに

今でも民の行く末が気になる。

革命が終わった後、民がどうなるのかはわからない。

メノウとステファンが必ずしも良い統治者となるとは限らない。


「汝なら良き女王となったであろうな」

「私は……」

「かまわぬ。

 別に急ぎでない」

「もし、民と妹の安全を確認できた際には、

 まだ私を受け入れて……」

「あたりまえだ。

 我は、汝を女王にと望んでいるのだから」


あまりにも平坦な響きだったので、

あやうく普通に受け流しそうになった。

彼は今何と言った。


「何ですって……!?」

「我が王となり、汝が女王となる。

 汝ほど女王にふさわしいものはおらぬ」

「わ、私は、もう女王だなんて……」

「この我が認めたというのに、拒むというのか」


いちいち言い方が偉そうだったが

今はそれどころではなかった。

女王?

自分は、そんな器ではないと痛感している日々を過ごしているというのに

シウは何を言っているのか。

しかし、やはりその真紅の瞳は嘘や冗談を言っている様子ではなかった。


「まぁ、別に我一人が王となってもよいのだが、

 民を守り導くものは多いに越したことはない」


まだしばらくはこの国にいるから考えてみてくれ、と言われて

フレヤにはうなずく以外の動作ができなかった。

Re: マーメイドウィッチ ( No.268 )
日時: 2017/04/22 21:28
名前: いろはうた (ID: VujPqVFA)

部屋に戻り、カルトと対峙する。

部屋にある二つのベッドをちらり見つめた。

簡素な造りの、悪く言えば粗末なベッド。

しかし、フレヤにとっては久しぶりのベッド。


「座れば」


あごでベッドで示され、フレヤはおずおずと座った。

やはり、男性と部屋に二人きりという状況はあまり慣れない。

チノとの二人きりは慣れたが、カルトはあってからまだ日も浅かった。

しかし、彼はフレヤに危害を加えるような真似をしない気がした。


「で、さっきの酒場で情報は?」


カルトは、もう片方のベッドに腰かけながら言った。

フレヤは首を振った。

何も情報は集められなかった。

カルトの顔を見る限り、何か情報をつかんだのだろう。

大したことだ。


「早く教えて」

「まだ何も言っていないんだけど」

「その顔は何か知っている顔でしょう」


だから焦らすなとカルトを半眼になってにらむ。

でもやはり彼はいつもと変わらぬ人を食ったような笑みを浮かべていた。


「これ聞いたら、お優しい王女サマは、また迷うことになりそうだけど」


フレヤは眉をひそめた。

この言い方だとあまりよい情報ではなさそうだ。


「カルト」


思わず声に焦れた色がにじんでしまう。

チノによく似た緑の瞳がこちらを見る。


「王宮が沈黙してるんだと」

「え……?」


予想外の言葉にフレヤは目を見開いた。

握りしめた掌に汗がにじむ。


「革命が起きてもう一週間以上経つのに、何も行動を起こさないことを

 みんな不安がってる」


それだけ、というとカルトは口を閉ざした。

たしかにそれだけといったらそれだけだ。

フレヤは顎に手を当てて考え込んだ。

だが、彼らは革命軍だ。

革命を成し遂げたなら、不安がる民をまとめるのためにも

何かしら大きく声明などを発表したりしないだろうか。

そうしたほうがのちのちも統治をしやすいし、

自分たちは前の政権とは違うのだと示すことができる。


「不自然ね」

「あんたに追手をかけているっていうのもあるだろうけど、

 たしかに何もしなさすぎだな」


カルトはくしゃりと自分の髪の毛をかき回した。

沈黙が落ちる。

途端にめまいのような強烈な眠気が襲った。

当然と言えば当然だ。

山や川を何時間もかけて超えてきたのだ。

強く瞬きをして、ぼやけた視界を何とかしようとする。

カルトが自分の額に巻いてある色鮮やかな飾り布を突然外しだした。


「今日はもう寝よう」


咄嗟に何か言い返そうとしたが、

フレヤを気遣っての発言だと悟り言葉を失う。

大人しく靴を脱ぎ、足の裏が真っ赤に腫れていることに気付いて

わずかに顔をゆがめる。

どうりで痛むわけだ。

じんじんと熱を孕んでじくじくと痛む。

まるで自分の胸の痛みのようだった。

目を閉じるだけで鮮やかにその姿を思い出せる。

チノ。

もう会ってはいけないのに、あなたにとても会いたい。

Re: マーメイドウィッチ ( No.269 )
日時: 2017/04/23 22:02
名前: いろはうた (ID: Sm0HUDdw)

次の日の朝、フレヤはシウの部屋のドアの前に立って、逡巡していた。

ドアをノックしたいのに、手がなかなか動かない。

意を決して、手首に力を込めたとき、ドアの向こうから、

入れ、と声がかかった。

シウには、フレヤが外に立っていることなどお見通しだったのだ。

わずかに気まずそうな雰囲気を漂わせながら、フレヤはドアを開けた。

部屋の中には身支度を整えたシウが立っていた。


「それで?

 心は決まったのか?」

「正直に言うと、まだ少し迷っている」

「別に返事は今でなくともよい」

「……いいえ。

 今言わせてもらうわ。

 どうせ今言わなくてもずっと迷い続けるから」


カルトがドアを閉めるのを横目で確認してから、

シウのほうに向きなおる。

彼は、じっとこちらのの言葉を待っていた。

意を決して、息を吐く。


「あなたの作る国に、行かせてほしい」


シウは特に表情を変えなかったが、口角がわずかに上がった。

薄い唇が弧を描くのを見ながら、でも、とフレヤは言葉をつづけた。


「行く前にやりたいことがいくつかあるの」

「ほう?」


シウは肩眉を上げた。

無言で続きを促され、フレヤは重たい唇を開いた。


「まず、この国の行く末をもう少し見届けたい。

 まだ、安心できない」


メノウたちがきちんとこの国を治めていけるとわかったなら

もうほとんどこの国に未練はない。

民が幸せなら、それでいい。


「王座に未練は?

 王権を取り戻さなくていいのか?」

「そんな気は一切ないわ。

 身分とかそういうものには興味はない」


シウはしばらく黙ってフレヤを見ていた。

何かを試すようなまなざしはしばらくすると消えた。


「あと、私の妹の無事を確かめたい。

 ……私の最後の家族だから」

「ヘレナ王妃か?」

「ええ、そうよ」


昨日の酒場では、妹に関する情報は何も得られなかった。

それは、妹の身に何もないという意味なのか

それとも、妹に関する情報が止められているのか。

彼女の身にはまだ利用価値がいくらでもある。

賢いステファンのことだ。

殺しなどはしないだろうが、幽閉などは考えられる。


「勝手なのはわかっている。

 逃げ場のない私に、道を示してくれたことにも感謝している。

 でも、この二つは確認できないと、あなたの所には行けない」


まくし立てるよう言って、はっとして口をと閉ざす。

だが、嘘は何一つ言っていなかった。

こちらの腹の内は全て明かしたつもりだ。


「別に構わぬ」


フレヤははっとして顔を上げた。

まさかこんなにあっさりと認めてもらえるとは予想だにしなかった。

嘘みたいだ。

もっと、真っ向から拒否されてしまうと覚悟していた分、

少し拍子抜けしてしまう。


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