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- マーメイドウィッチ
- 日時: 2016/06/21 11:41
- 名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)
世界が止まった。
手が震える。
数拍のちに気付く。
私は大切な人に裏切られたのだと。
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- Re: マーメイドウィッチ ( No.1 )
- 日時: 2016/04/26 22:06
- 名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
あるところに、人魚のお姫様がいました。
そのお姫様は、十五歳の誕生日に、人間の王子様に恋をしてしまいました。
人魚のお姫様は、人間になるために、自分の美しい声と引き換えに、
人魚の魔女から、人間の足を手に入れました。
しかし、それは、王子様がほかの女性と結婚すると、
人魚のお姫様は泡となって消えてしまう、という契約付きのものでした。
しかし、王子さまは、人魚のお姫様のことを妹のようにしか思っておらず、
かわりに別の女性と結婚しようとしました。
人魚のお姫様のお姉さんたちが、人魚のお姫様にナイフを渡し、
このナイフで王子様の心臓を刺せば、元の人魚に戻れる、と言いました。
しかし、人間の王子様を愛してしまった人魚のお姫様は、どうしても彼を刺すことができませんでした。
やがて、結婚式の日の朝、人魚のお姫様は泡となって消えてしまいました。
しかし、この話には続きがあったのです。
人魚のお姫様の美しい声はどうなったのでしょうか。
それは、人魚の魔女の孫娘のものとなっていました。
孫娘が、十五歳になったときのこと、彼女は浜辺で、別の国の人間の王子と出会いました。
王子は、その美しい魔性の声に魅入られて、孫娘は王子の凛々しさに魅入られて、二人は恋に落ちました。
孫娘は、祖母から人間になる薬をこっそりと盗み、人間となって、王子と結婚しました。
これは、その何百年もあとの、人魚の末裔となった者の物語。
- Re: マーメイドウィッチ ( No.2 )
- 日時: 2016/04/30 23:57
- 名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
フレヤは、氷の彫像のごとく冷たい表情を崩さず、椅子に座ったまま
玉座から離れた床で膝をつかされている男を見下ろした。
王である父が狩りの帰りに連れて帰ったという男だ。
氷姫、という呼び名が隣国にまで広がるほど、フレヤは感情をあまり表に出さない。
今もそうだ。
そのかんばせにはつゆほどの感情も宿っていない。
隣の椅子に座る妹姫であるヘレナはまぁっと手で口を覆った。
「お父様!!
あれはなんですの?」
フレヤは表情を崩さなかったが、少しだけ眉根を寄せた。
今は、妹が何を話しても癇に障る。
それには、理由がある。
それは、一ヶ月前のことだった。
フレヤには、婚約者がいた。
隣国の王子、ステファンだ。
初めてであったのは十五歳の誕生日パーティーのこと。
どこまでも真摯に彼はダンスに誘ってくれた。
最初は、緊張していたフレヤだったが、ステファンはどこまでも優しかった。
まるで夢のようなひと時だった。
フレヤは初めての恋をした。
初めて父王にわがままを言って、
婚約者はあの人でなければならないからどうにかしてくれ、と頼み込んだ。
そして、ステファンは、フレヤのものになった。
彼は美しいだけでなく聡明だった。
父を早くに亡くした彼は、若くして一国の王となった。
その仕事ぶりは素晴らしいもので、彼の国には幸せと笑顔が満ち溢れていた。
フレヤとステファンはその後も何度か逢瀬をかさねた。
彼はどこまでも紳士で、本当に優しくて、まさに理想の男性だった。
めったにフレヤに触れることもなく、紳士と淑女の適正な距離を保っていた。
しかし、夢のような日々は、一か月前につぶれてしまった。
久しぶりのステファンとの逢瀬を終えて、自室に帰ったときのことだ。
何気なく窓の外を見てみた。
ステファンと、誰かが庭でひっそりと寄り添っていた。
暗くてよく見えない。
フレヤは急いで自室を出て、城の階段をかけおり、庭の隅に隠れた。
「もう、こんなことはいけませんわ、ステファン様……!!」
妹姫のヘレナだった。
フレヤは地面にへたり込んだ。
しかし、二人はお互いのことに夢中でフレヤがそこにいることに気付かない。
「何を言っているんだ、ヘレナ!!
俺は、君を、君だけを愛しているんだ」
重いもので頭を殴られたような衝撃。
彼はいま何と言った。
こんな彼の砕けた口調は聞いたことがない。
一人称も、いつもは、俺、ではなく、私、だ。
それに、愛の言葉なんて、こんなに簡単に吐いてくれるような人ではなかった。
何度も何度もねだってようやく言ってくれる程度だったのに。
「貴女には、お姉さまがいるわ!!
もう、こんな関係、終わりにしなくては!!」
「あの人は、ただの人形のようだ。
美しいけれどそれだけだ。
それ以上、何でもない。
同じ王族として尊敬はするけど、それ以上の感情は抱いたことはないよ」
心の中で何かが次々と壊れていく音がする。
宝石のような輝く思い出たちが壊れていく。
消えていく。
「ステファン様!!」
「少し、いいかしら」
フレヤが何とか声をしぼりだすと、二人ははじかれたようにこちらを見た。
月明かりに照らされたその顔は滑稽なほど青ざめている。
いや、滑稽だ。
自然と口元に笑みが浮かぶ。
何よりも滑稽なのは、だまされ続けて、裏切られ続けてきた、己自身だ。
フレヤはゆっくりと立ち上がると、二人のほうへと歩を進めた。
「話は少し聞かせていただきました。
それで確認をしたいのです」
「フレヤ様、これは」
「ステファン様、妹に話があるので少し黙っていていただいてもいいですか」
今までにない強い口調でステファンの言葉を遮る。
彼は頬を張られたかのように目を見開いた。
本当に滑稽だ。
妹のことは、呼び捨てで呼ぶのに、
こちらには敬称をつけてよそよそしく呼ぶのだ。
四年も逢瀬を重ねたのにどうして気付かなかったのだろう。
続いておびえたようにこちらを見る妹姫に向きなおる。
「正直に答えなさい。
彼を愛しているのですか?」
「……はい、お姉さま」
ヘレナは、震えながらもはっきりと答えた。
目を見たらわかる。
本気だ。
その日のうちにフレヤとステファンの婚約は解消された。
代わりにヘレナとステファンの結婚が二ヶ月後に執り行われることとなった。
- Re: マーメイドウィッチ ( No.3 )
- 日時: 2016/04/27 20:30
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: lKhy8GBa)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi
新作ですね!!!??
ふぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!(笑)←
久し振りに小説カキコに来たら、いろはうたさんの新作を見つけたので、叫びました。
家に誰も居なくて良かった……w
今回の小説も素敵な題名で、とても惹き付けられます!!
最初から、凄く驚かされる展開が続きワクワクしてます^^
興奮ですよ(*ノωノ)←
また更新されたら飛んできます!!
頑張ってください(`・ω・´)
応援してます。
byてるてる522
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