コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- マーメイドウィッチ
- 日時: 2016/06/21 11:41
- 名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)
世界が止まった。
手が震える。
数拍のちに気付く。
私は大切な人に裏切られたのだと。
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- Re: マーメイドウィッチ ( No.244 )
- 日時: 2017/03/24 16:51
- 名前: いろはうた (ID: VujPqVFA)
往復を繰り返し、二人目の気絶した近衛兵を村に連れて帰ると、
そこには、ルザが硬い表情で待っているのが見えた。
彼女も気配に鋭いらしく、すぐにこちらの存在に即座に気付いた。
彼女の背後には、真っ青な顔をしたミクリが立っていた。
おそらく、ルザにこってりと叱られた後なのだろう。
何といえばいいのかわからず、フレヤはルザの前に来ても黙っていた。
「礼を、言うわ」
渋々、嫌々、という空気でおずおずとルザが言った。
視線はこちらをとらえない。
ミクリのことを言っているのだと遅れて気づく。
少し気位の高い娘なのだろう。
それでもきちんと礼を言うくらいには折れてくれているということか。
「礼を言われることをしていないわ。
こちらこそ、巻き込んでしまってごめんなさい」
静かにそういうと、ルザは面食らったような表情を見せた。
すぐに彼女は無防備な表情を迂闊に見せてしまったことを恥じるように
ぱっと横を向いた。
獣っぽい仕草がどことなくチノを彷彿とさせる。
彼らがチノの一族であり、家族なのだと強く感じた。
いや、彼女はチノの妻となる娘だ。
婚約者として長くチノに連れ添った分、
より仕草が似るようになったのかもしれない。
ギッと胸が軋むような感覚にわずかに眉をひそめた。
心に砂を擦り付けたような痛みだった。
「でも、こいつらをなんで連れて帰ったの。
ミクリに手を出そうとした野郎だよ……!!」
夜なので一応声は抑えてはいるが、
ルザの声は抑えても上ずってしまうほどの激情を帯びていた。
それはそうだろう。
大切な家族に危害を加えられそうになった相手を、
穏やかな感情で見ることなどできない。
ふと、妹姫のヘレナのことを思い出した。
あのこは無事なのだろうか。
ステファンの妻、という役職を与えたからには
フレヤの妹だからと言ってそう簡単に殺しはしないだろう。
だが、ステファンとメノウの目的がはっきりとは読めない状態では
ヘレナの安全も保障されていない。
「あー、おれが許してやったから、大目に見てやって」
「はぁ!?」
「……そうね。
あなたからしたら、訳が分からないし、
彼らを傍に置くことも許しがたいと思う。
でも、彼らは私をもともとは守ってくれた存在。
殺すことはできない」
自分でも甘いことを言っている自覚はある。
みるみるうちに険しくなるルザの表情を見ても、
自分の意見は変わらなかった。
「あんた……何様のつもり?
あんたのわがままで皆を危険にさらすの?」
ルザの声は怒りのあまり、震え低くなっていた。
- Re: マーメイドウィッチ ( No.246 )
- 日時: 2017/03/25 10:32
- 名前: いろはうた (ID: VujPqVFA)
「私が……説得してみせる」
「説得?」
聞きなれない単語を来たかのようにルザが顔をしかめた。
この場にはあまりにも似つかわしくない単語だった。
だが、ここは退けない。
「彼らは先王の思想をそのまま受け継いでいる。
……無知なだけなの」
親の言うことをを丸呑みにする幼子と同じだ。
兵士たちが呻いた。
そろそろ目覚めるかもしれない。
「一日、いや、二日猶予をください。
それでも説得し切れなかったら、私自身が手を下す」
ルザは黙った。
眉間にしわが寄っている。
その胸のうちの葛藤が目に見えるようだった。
「フレヤは今や、ミクリを助けたやつだ。
少しくらい滞在を延長しても許されるだろう」
そういわれて初めて、今日の朝に出立する予定だったことを思い出した。
なんて図々しい。
頬がカッと熱くなる。
しかし、ルザは何も言い返さなかった。
「いくよ、ミクリ」
それだけ言うと、ルザはスタスタとその場を去っていく。
ミクリが慌ててその背中を追いかけていくのを、見送る。
どうやら、渋々ながらも了承してくれたらしい。
「う……」
兵士がまた呻いた。
フレヤは彼らのほうに向きなおった。
木の根のほうに座らされている二人の目がゆっくり開くのを
しゃがみこんで眺めていた。
徐々に焦点が合ってくると、彼らははっと目を見開いた。
「お、王女殿下……」
その表情に浮かんでいるのは、恐れと焦りだった。
視線がちらりとフレヤの背後にいるカルトをとらえる。
自然体でいるように見えて、全く隙を見せない彼にまた
恐れを抱いたようだった。
- Re: マーメイドウィッチ ( No.247 )
- 日時: 2017/03/25 16:56
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
すみません、間違えて昨日したコメントを消してしまったのでもう1度失礼します!
……前にコメントさせて頂いたのが、新年でそれ以来なかなかコメントさせて頂く機会がなかったのですが、参照5300突破されている!と一昨日くらいに気づきまして……。
まずは、5300突破おめでとうございます!!
もう本当に大好きです(o´艸`) (この作品はもちろん、いろはさんm((((ry )
これからも頑張ってください(‾^‾ゞ
前に来た時にはいなかった、カルトくんがかっこいいなぁ……(*´▽`*)←
フレヤちゃんと、カルトくん……この組み合わせも好きです(*゜▽゜)ノ
あとは、ミクリくんもいいなぁ……とか思ったり←
本当にこの「まめっち」に来ると、素敵なキャラに出会えます!笑
時間が経つのも忘れて、無我夢中で読めます笑←
最近は新コメライに作品を移動させてしまったので、そっちで活動していて……いろはさんの作品も新コメライから読ませて頂くことが多くなり今度そっちでもコメントしたいなと思っています(o´艸`)
ベスティア・ラッコントも新コメライに作成されてあったので、後日お邪魔させて頂きます!
本当に応援してます( 。•̀_•́。)
何度もすみませんでした(((;°▽°))(((;°▽°))
byてるてる522
- Re: マーメイドウィッチ ( No.248 )
- 日時: 2017/03/25 22:23
- 名前: いろはうた (ID: VujPqVFA)
てるてる522様!!
お久しぶりです!!
いやいや、こちらこそなかなかお伺いできなくて
申し訳ないです……
気づけば軽参照5000突破しているっていう……
まだ読んでくださる方たちがいるって言うのは
ありがたいですよね(TT)
そろそろ番外編一本くらい入れないと……ですよね……
いろはうたは気づいたら、主人公であるヒロインにドロ甘な
男子たちを書く傾向があるので(乙女ゲームの強い影響を受けています)
なんとかたまにはあたりのキツい野郎どもを
書いてみようと奮闘中です笑
なかなか上手くいかないけど……
ベスティア・ラッコントは、古いほうで埋もれかけているので
加筆修正を加えて、新しいほうで書き直していこうと考えています。
どうなるかなぁ……
コメントありがとうございます!!
- Re: マーメイドウィッチ ( No.249 )
- 日時: 2017/03/25 23:55
- 名前: いろはうた (ID: VujPqVFA)
フレヤはゆっくりまばたきを繰り返した。
カルトとルザには、兵士の命を守るためにああ言ったが、
正直、説得なんていうものが上手くいくとは思っていない。
「手荒な真似をしてごめんなさい」
「い、いえ……」
落ち着きなく視線をさまよわせる兵士たちから視線を外さない。
よく見たら思っていたより、若い兵士たちだった。
「あなた達、私がアルハフ族に身を寄せていること、
上の者に報告しないで黙ってはくれないかしら。
そうすれば、解放してあげる」
まどろっこしいやり方は好きじゃない。
それに、下手にこちらの思惑を隠すことは
彼らの不信につながる。
それは避けたい。
「どういう、ことですか」
「あなたたちを殺すつもりはないわ。
あなたたち自身がそうだから知っていると思うけど、
私は王宮を追われている。
私は、まだ死にたくない」
「どういう、ことですか……?
ご自分の罪から逃れ……」
「フレヤは別に罪を犯したわけではない」
背後からの声にフレヤは目を見開いた。
じゃりっと砂を踏む音が聞こえた。
ああ、この闇に溶けるような気配。
カルトがあきれたようにぼやく。
「おまえ、寝てろってあれだけ言ってたのに……」
「そうよ、チノ。
まだ起きていい体調じゃないわ」
「熱ならもう下がった」
このそっけない返答にわずかに笑みがこぼれる。
チノだ。
彼が傍にいるだけで、知らない間にきつく結ばれていた緊張の糸が
ゆっくりほどけていくのを感じた。
「おまえは……」
兵たちもチノの顔に見覚えがあるらしい。
チノは、その驚きに染まったまなざしを浴びながらフレヤの隣に立った。
「フレヤは、陥れられた。
メノウとステファン王に。
実質的に手を下したのは奴らだ」
兵たちの顔が驚愕に染まる。
やはり、フレヤが王殺しの罪を追ったまま逃げたと
彼らがもっともらしく広めているに違いない。
きゅっと手を握った。
「馬鹿な!!
そこのけだものの蛮族にそそのかされたとメノウ様がたしかに!!」
「黙りなさい」
あまりに不快な言葉に思わずきつく冷たい口調で遮ってしまう。
とたんに兵たちは口をつぐんだ。
命じることに慣れた言葉に、命じられることになれた兵。
当然のようにあたりに沈黙が落ちる。
予想外だった。
フレヤ自身の気が触れて王を殺したという筋書きだけでなく
チノのせいでフレヤが王を殺した、という筋書きになっているらしい。
フレヤはきつく奥歯を嚙み締めた。
巧妙に考えられた策略だ。
これならだれも疑わない。
この国の民は、王の思想によって、異民族であるアルハフ族に
良い印象を持っていない。
その嫌悪感を上手に使った筋書だった。
メノウの、ステファンの冷酷なまでの意図を感じた。
「……メノウ様とステファン王は、あなた様を連れ戻すのは
罪を悔い改めてほしいからだとおしゃっています。
決して命を奪うような真似は」
「……いいえ、私、殺されかけたのよ」
平坦な声に兵たちはまたも言葉を失った。
フレヤの瞳は凪いでいた。
諦観ともまた違うその色に彼らは戸惑った。
決して、そそのかされ発狂したあげく父王を殺した王女とは思えなかった。
あまりにも自分たちが信じていた話とは、
今、聞いた話はかけ離れていた。
兵たちの目が迷うようにわずかに揺れた。
「貴女たち、近衛兵よね?
何小隊出しているの?」
「……4……小隊にございます」
迷いながら告げられた言葉に頭を殴られたような衝撃を感じた。
4小隊というと、王宮の8割がたの戦力に値する。
信じられない。
元王女一人をとらえるために、王宮の警備を手薄にしてまで
小隊を出しているということか。
それだけ、メノウとステファンは本気で、そして何が何でも
フレヤを捕えたいと考えているということだ。
「小隊を離れているということは、手分けして探しているのね。
いつまた集合するか、王宮に帰るのかしら」
「……本日を含め、三日の猶予を」
どこかあきらめたように兵は言った。
フレヤは、瞳を伏せた。
「あなたたちは、なぜ、アルハフ族を忌み嫌うの?」
「それは!!
あさましきケダモノの血が混じった異形の蛮族で……!!」
「私だって、人魚の血を引いているわ。
彼らと同じで、私もあなたたちとは見目も異なる。
それなら、私たち王族も蛮族となるのかしら?」
「そ、それは……」
兵たちが言葉を濁した。
この国の民として生まれたころから叩き込まれた
アルハフ族は蛮族という考えを遠回しにだが
否定されていることに戸惑いを覚えているようだった。
「なら、この二日間、アルハフ族のもとに身を置きなさい。
そのうえで、あなたたちを解放するわ。
そのかわり、ここの一族の人たちに危害を加えた場合は、
この私自らあなたたちに手を下すことを忘れないで」
フレヤはそれだけ言い残すと立ち上がった。
言うことは言った。
あとは彼ら次第だ。
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