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マーメイドウィッチ
日時: 2016/06/21 11:41
名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)

世界が止まった。



手が震える。



数拍のちに気付く。









私は大切な人に裏切られたのだと。

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Re: マーメイドウィッチ ( No.189 )
日時: 2016/12/22 00:33
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/

おしらせ


こんにちは皆様。
最近出番の減っているメノウですわ。

このたびマーメイドウィッチは参照4000をいつの間にか
ゆうに超えておりました。
これはひとえに、読者の皆様の応援があってこそなせること。
心よりお礼申し上げますわ。


ついでに、記念として登場人物の名前の由来を申し上げますわ。

ヒロインのフレヤは、人魚。
水と深いかかわりのある種族の末裔です。
氷のようなその美貌に潜む炎のような情熱をあらわした名前です。
彼女はフランス系民族の設定です。


チノは、モンゴル語でオオカミ、チョルノからきています。
遊牧民族の設定です。


シウは漢字で書くと秀英という名前で、ここからとっています。
皆様おさっしの通り、中国皇帝、第一皇子の設定です。


そして、わたくしの名前の由来と申しますと、
目が緑だから、という至極単純な理由で
はらわたが煮えくり返りますが、ここはぐっと抑えさせていただきます。


どうぞ、皆様、今後とも
マーメイドウィッチをよろしくお願いいたします。


Re: マーメイドウィッチ ( No.190 )
日時: 2016/12/22 15:40
名前: いろはうた (ID: dFWeZkVZ)
参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/

チノは指一本触れていない。

だというのにフレヤはそこから動けなくなってしまった。

チノの体がフレヤの華奢な体に覆いかぶさって動けないのだ。


「どいて」

「どかねぇよ。

 おまえがどこに行くのか言うまではな」


にべもなくそう言われてもフレヤは唇をかんだ。

チノの隠されている、獣の荒々しい部分が満月の力であらわになっている。

見下ろす瞳には冷たささえ宿っているように見える。

冷酷なケモノの瞳。

いっそのこと歌ってしまおうかと思った時、

ふっとシウの言葉が脳裏をよぎった。

”異形に異形の力は通じない。”

つまりフレヤの歌の力も彼に通用しないということだ。

その言葉が、事実が身に染みわたると同時に、体中から力が抜けた。

まずは小さな恐怖。

チノは自分が支配することのできない数少ない人間の一人だということ。

そして、次に来たのは大きな安堵感だった。

チノは、フレヤの歌なんかに支配されていなかったのだ。

最後の確認としてフレヤは小さく歌いだした。

子守歌。

聴いた人間は、すぐに立っていられなく程の

強烈な眠気に襲われるはずだがチノは怪訝そうな表情を浮かべているだけだった。


(本当に、効いていない)


すると何を思ったのか、チノが親指でやや強めにフレヤの唇をおさえた。

驚いてフレヤは歌うのをやめた。

あたりに落ちる静寂。

虫の声しか聞こえない。

愛馬のシルバノがぶるると首を振る。

全身の感覚が嫌でも唇に集中してしまう。


「変な歌でも歌って、おれをどうこうしてしまおうと思ってんじゃねぇだろうな」


あらっぽい口調とは裏腹に指は驚くほどやさしかった。

あたたかくて、かさついた感触が唇をわずかに撫でて、かっと首筋が熱くなった。

何だろう。

むずむずする。

この場から逃げ出してしまいそうなのに、ずっとこうしていたい気もする。

さら、とチノの長い前髪が額に触れた。


「で、どこに行く」


チノはしつこかった。

チノの顔を睨もうとしたら、驚くほど近くに緑の瞳があって

あわてて視線をチノのブーツの先に戻した。

そろりと手を伸ばしてシルビノの手綱を握ろうとしたら、

めざとく見つけられて、がっと手をつかまれた。

強く手を引かれて、つんのめりそうになると、

チノの固いからだが受け止めてくれた。

したたかに額をチノの胸に打ち付け、わずかに顔をしかめながらも顔を上げる。

握られたままの手は、なぜかチノの顔の近くに引き寄せられた。


「まだ、言わねぇのかよ」


かぷっと。

ひとさしゆびを甘噛みされた。


「……っ!?」


全身の毛が逆立った気がした。

あわてて指を引き抜こうとしたが、強い力で握られてびくともしない。

やわらかくて湿ったものが指先に触れた。

人差し指の先を、チノの桃色の舌が優しくなめたところだった。


「っち……!?」

「さっさと言えよ。

 それなら、これくらいで勘弁してやる」


この腰を打ち抜くような色気の声はなんなのだ。

聴いたことがない。

やたらと色気をたっぷり含んだ流し目をよこされ

フレヤはぽたぽたぽたぽたぽたぽたと背中から汗が流れ落ちていくのを感じた。

フレヤが動揺しているのを見て、チノはかすかに笑った。


「ち、チノには関係ない……!!」


チノが歌に支配されていないのだとしたら、

余計今からどこに行くのか伝えるわけにはいかなかった。

優しい彼はきっとついてきてしまうだろうから。


「……強情な奴だな」


一気に温度をなくした声に、フレヤは体を震わせた。

それでも言うわけにはいかなかった。

手首にやわくチノの唇と吐息が触れる。

ふっとあたりが暗くなった。

チノの表情が見えなくなる。

空を見上げると、月が陰ったところだった。

ぱっと手首をつかんでいた手が離れてフレヤはその場にへたり込んだ。

助かった。

チノを見ると愕然とした表情で自分の掌を見つめているところだった。


「……チノ」


チノは声もなくこちらを見つめた。

すっと彼の手が下ろされた。


「……行くのだろう、ステファン王のもとへ」


力ない声だったが、フレヤを打ち抜くには十分だった。

なぜそれを、彼は知っているのだろう。


「少し考えたらわかる。

 ……おまえが考えなしに父王を殺し、

 メノウに王座を渡すはずがない。

 ステファン王に助けを求めるのだろう」


チノの言っていることはおおかた合っていた。

なんて鋭い人だろう。

ここまでばれてしまっているのでは、いまここで突き放しても

きっと馬で追ってくるのだろう。

長い沈黙が落ちた。


「……ついてきてくれるの……?」


かすかなつぶやきが漏れた。

風に掻き消えてしまいそうな小さな声だった。


「今までも、これからも」


夜風が髪を揺らす。

迷いのない返事に、フレヤは目を閉じて、すぐに開いた。


「行きましょう」

「ああ」

Re: マーメイドウィッチ ( No.191 )
日時: 2016/12/22 23:13
名前: 立山桜 (ID: ???)  

携帯を解約することになってしまいました。いつ帰ってこれるかわかりません。今までありがとうございました。いろはうたさんは文章力がすごいから小説家になれると思います!話せるひはいつになるかわからないけれど応援してるから!またね!

Re: マーメイドウィッチ ( No.192 )
日時: 2016/12/25 16:09
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/

桜ちゃん!!


そうなのね……!!
とても寂しいけどいろはうた、待ってます!!

しばらくは細々と書いていると思うので
またケータイが使えるようになったら
いつでも遊びに来てね!!


今までありがとう!!

Re: マーメイドウィッチ ( No.193 )
日時: 2016/12/26 01:45
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/

雨が降っていた。

灰色に塗りつぶされたような夜空から、しとしとと

空の涙が降り注ぐ。

柔らかくけぶるような水煙が土のにおいをより濃くしている。

フレヤはフードの下から赤い瞳で空を見上げた。

どんよりとした空の下には、ステファンの城が見える。

馬を急いで走らせれば数刻で着く近さにあるステファンの国。

ちらりと空に視線をやると、わずかに白んできたところだった。

もう朝が近づいてきている。

空が暁色に染まる前に、フレヤはさっと馬から降りた。

続けてチノも馬から降りる。


「この時間なら、ステファン様は、朝の湯あみをされるはず」


フレヤは雨に濡れた額を手の甲でぬぐった。

愛馬のシルビノがぶるると首を振って水滴をとばしたからだ。


「まさか、浴場に行くつもりか」

「……ことを穏便に済ませたいの。

 兵に見つからないようにするには、もうこうするしかない」


フレヤたちが向かっていたのは、ステファンの国だった。

ステファンに「お願い」をしに行くためだ。

フレヤは強い決意のこもった瞳で城の城壁を見上げた。

この城には何度か訪れた。

浴場の位置も大体は把握している。

あとは、行動を起こすだけだった。

フレヤはぎゅっとフードをかぶりなおすと、

シルビノの手綱を木につないでおいでから、さっと鼻の頭を撫でた。

次の瞬間には、彼女は大きく一歩前に踏み出していた。


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