コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- マーメイドウィッチ
- 日時: 2016/06/21 11:41
- 名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)
世界が止まった。
手が震える。
数拍のちに気付く。
私は大切な人に裏切られたのだと。
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- Re: マーメイドウィッチ ( No.214 )
- 日時: 2017/01/28 00:32
- 名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/
派手な水音は一瞬で掻き消えた。
体に衝撃が走るとともに、ごぽぽと耳元で泡のはじける音が聞こえた。
深く深く海に沈んでいく。
フレヤははっと目を見開いた。
とっさに息は止めていた。
だが、いつまでたっても苦しくならない。
息をいくら吐いても、肺がちぎれてしまいそうな苦しさはなかった。
固く抱きしめてくれていた腕がずるりと離れるのを感じた。
チノの目は固く閉ざされていた。
意識がない。
あわてて彼の頬に手を当てると、ほのかなぬくもりと鼓動が感じられた。
気絶しているだけだ。
落下の際の衝撃をほとんどひとりで受けたためだろう。
唇から泡が漏れた。
フレヤは人魚の血を引いているからきっと水の中でも苦しくないのだろう。
だがチノは違う。
急いで空気を吸わせないと死んでしまう。
しかし、水面に浮きあがったら、まだ生きていることがばれてしまう。
この高さから落ちたのだ。
相手は、フレヤたちの生死もよくわからないはず。
しかし、先ほどからのメノウとステファンを見る限り、
そう簡単にあきらめてはこないだろう。
フレヤは一瞬ためらったのちに、そっとチノの唇に自分のものを触れさせた。
その気道にまでいきわたるように、強く息を吹き込む。
合わせた唇の隙間からごぽりと泡がこぼれた。
これでなんとかもつと考えるしかない。
チノの腕をしっかりとつかむと、フレヤは泳ぎだした。
あてもなく暗い海中をさまよう。
おどろくほど手足は自由に動き、思うがままに進めた。
これが人魚の力なのだろうかと半分驚きながらも波をかき分けて進む。
チノの唇からまたごぽりと泡がこぼれた。
限界だろう。
一度水面に上がって空気を吸わせなければ。
強く水を蹴って、光り輝く水面に向かって泳ぐ。
まるで物語の人魚姫のようだとフレヤは苦く笑った。
王子を助けて、恋をして、最後は哀れな末路を迎える人魚姫。
なんだか、自分と重なるところが多いような気がする。
自嘲気味に笑うと、フレヤは水面から顔をわずかに出して、周囲を確認した。
落ちた崖は見当たらなかった。
驚くほど遠くまでこの短時間の間に来たことを知る。
チノの体を水面上まで何とか持ち上げる。
彼の唇は紫色に変わっていた。
そうか。
自分の体質が異常だから気づかなかったが、
ある一定時間寒い海にいると体が冷え切ってしまう。
その可能性を一切考慮しなかった己の浅慮さが悔やまれる。
フレヤは唇をかみしめながら、
少し離れたところにある陸を目指して泳ぎだした。
- Re: マーメイドウィッチ ( No.215 )
- 日時: 2017/01/31 14:16
- 名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/
しばらくするとじゃりっとした感触を足裏に感じた。
浅瀬になってきた。
腕にいるチノを引きずるようにして砂浜まで連れていく。
やっとのことで波の来ないところまで引きずると、そっと砂浜に
チノの体を横たえた。
体がだるく、ひどく重い。
この倦怠感は何からくるものなのだろう。
チノの唇は完全に血の気をなくしていた。
体が冷たくなる。
焦りが胸を突く。
どうすればいいのだろう。
チノの体を温めなければならない。
水を飲んだかもしれないから吐かせないと。
でも、どうやって?
火を起こしたことなどない。
水の吐かせ方など知らない。
自分の無知をいやというほど思い知る。
いや、まずは、考える前に動かないと。
そう思い、フレヤはとりあえずチノの服を少しはだけさせることにした。
ボタンが窮屈そうだったからだ。
だが、徐々にその手はのろのろとしたものになっていった。
ボタンを解く手が震える。
こんな時だというのに、
しっかりとした筋肉に覆われた胸板だとか腹筋だとかに目がいく。
ひどくうろたえてしまう。
強くチノが男なのだと意識してしまう。
ぼぼぼぼぼぼっと音がしそうなほどフレヤは赤くなった。
顔が熱い。
こんな、こんな感情は知らない。
怖気づく自分を叱咤して、次はそろそろと掌をチノの胸にはわせた。
水は鼻から飲んだ場合、呼吸器官に入っているかもしれないから
肺を押せばいいのだと思う。
だが、肺がどこにあるのかはわからない。
手あたり次第に胸を押したが、固い筋肉に覆われていて
あまり手ごたえがない気がした。
掌がじんじんする。
体が熱かった。
海風が髪を揺らす。
肌寒さを感じて、フレヤはくしゃみをした。
するとそれに誘発されたかのように、チノがせき込みだした。
あわてて、彼の体のあちこちをさすって
水を吐き出しやすいようにする。
「ふ、れや……?」
かすれた声だった。
緑色の瞳が何度か瞬きを繰り返しこちらを見た。
「……ここは?」
「わからない。
私が泳いで連れてきたところ」
フレヤは安堵のため息をはいた。
次の瞬間もう一度くしゃみをしてしまった。
チノはずぶぬれのフレヤを見ると、しばしためらった後に
自分のシャツを脱ぎ、フレヤの体に着せた。
「ち、チノ!!」
「濡れていて、気持ち悪いと思うが我慢しろ」
いや、違う。
そうじゃない。
チノが上半身裸なのが問題なのだ。
風邪をひいてしまうし、目のやり場に困るのだ。
「あ、あの!!
チノが風邪をひいてしま……」
「おまえの、その、恰好が、あれだから」
めずらしくチノがしどろもどろになっている。
彼は視線を横に向けて決してこちらを見なかった。
いぶかしく思って自分の姿を見ると、乗馬服は濡れていて
肌にはりつき、体のラインと肌の色がくっきりとわかるほどになっていた。
- Re: マーメイドウィッチ ( No.216 )
- 日時: 2017/02/03 23:43
- 名前: 珠紀 (ID: 1QppuERs)
こんばんは(*´︶`*)
ご無沙汰しております。
最後ここで書いていたのは2015年ですから2年ぶりでしょうか?
覚えてないですよね( ˘ω˘ ; )
最後は覇蘢という名で書いていたのですが、途中で卒業させていただいた者です(())
ここに書いている時は、すごく仲良くさせてもらっていて今でも嬉しい思い出です。
最近、リアルも落ち着いてきたので書きたいなと思って、のぞいてみたらいろはうたさんがいて嬉しくなりました!
珠紀の知っている方々が少なくなっていて時代の流れを感じましました←ぇ
コメディライト(新)というものができたのですね!
本当に、いろはうたさんの小説は乙女ゲームのドキドキ感満載で感動しますね。
乙女ゲームについてお話したのも懐かしい。。
いろはうたさんのこの作品は、こちらを主に見にくればいいという感じかな?(;•̀ω•́)
また、たのしみに更新を待っております。ではまた。
珠紀。
- Re: マーメイドウィッチ ( No.217 )
- 日時: 2017/02/04 12:23
- 名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/
珠紀ちゃん!!
きゃぁああああああああああああああああああああああああっっ
ききききききききてくれたあああああああああああああああっっ
エアーズロックにのぼって、世界の中心で愛を叫びたいレベルの喜び!!
もちろん!!
覚えて!!
おりますとも!!!!!!!!!!
もし忘れたら、いろはうたのカキコ生活は死んだに等しいのです!!
現在進行形で、乙女ゲームは、だいだいだいだいだいだいすきです!!
しかし、悲しいかな、最近はあまり新作が出ていないみたいですねぇ
いろはうた的には、ちょっと前のだけど、レンドフルールとかが
美しすぎて鼻血吹き倒しましたし、
剣が君とか、スチルが好みすぎてゴリラのような雄たけびを上げましたし
近年でダントツに萌えたのはニルアドミラリの天秤ですねぇ……
あぁ、好き……(´・ω・`)
わかりますわかります
一年開けて帰ってきたら、新しい作者さんだらけだし、
知り合いはおろか、いろはうたのことを知っている人自体が少ないし、
みたいな状態で、死ぬほど寂しかったです……
一応、全く同じものをコメライの新のほうにもあげていますが
こっちのほうがメインになるかなぁ……
キャラクター的に、どうしても、浅葱のときのようなドロ甘には
なれないというか、微糖というか
微糖のくせに一部砂糖の分量間違えているというか
まぁそんな小説になっています笑
よかったらまた遊びに来てねぇー!!
コメントありがとう!!
- Re: マーメイドウィッチ ( No.218 )
- 日時: 2017/02/09 23:43
- 名前: いろはうた (ID: Rj4O5uNk)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n1515cf/
フレヤは無表情だった。
一切表情を変えなかった。
しかし、彼女と付き合いが少し長い者であったら、
彼女が恥ずかしさのあまり死んでしまいそうであることに気付けただろう。
チノは特に様子が変わらないようだった。
さっと立ち上がると、何事もなかったかのように周囲を見渡している。
その横顔が恨めしく思えるほど、彼は冷静そのものだった。
自分だけが動揺しているみたいで悔しくなる。
「……あそこに行こう」
チノが視線で示した先には、
岩壁にできた小さな洞窟のようなくぼみがあった。
フレヤはおとなしくチノに従った。
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