コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

マーメイドウィッチ
日時: 2016/06/21 11:41
名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)

世界が止まった。



手が震える。



数拍のちに気付く。









私は大切な人に裏切られたのだと。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76



Re: マーメイドウィッチ ( No.19 )
日時: 2016/05/14 00:32
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)











男は笑った。


「今の言葉、まことか?」

「ははっ。

 左様にございまするっ」


配下の男は伏して、地に額をこすりつけて叫ぶように言った。

男の持つ扇が音を立てて閉じた。

そして、満足そうにくつくつと笑った。


「そうか。

 あの人魚姫が、人間の王子との恋をあきらめたか」


さらりと男の美しい黒髪が揺れる。

夜の闇よりも深くて美しい。

その絹糸のようなつややかさは見る者の目を奪った。


「賢き選択だ。

 所詮、異形は異形。

 人間などとは結ばれぬ定めよ」


男がさがれ、と手を振ると、配下の男は慌てて立ち上がると、

急いで部屋を後にした。

男は手の中で扇を弄びながら考える。


「物語通りだな。

 筋書き通り過ぎて、つまらない」


やがて、男の口角が上がった。

笑ったのだ。

その目が細められる。

その色は、人外の色、血のような紅だった。


「やはり、異形は、異形といるのが一番良い。

 そうであろう?

 ……人魚の末裔、フレヤ姫よ」

Re: マーメイドウィッチ ( No.20 )
日時: 2016/05/15 00:21
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)

*村を訪れた日から、チノの態度が少し変わった。

柔らかくなったというべきか。

穏やかな雰囲気をまとうようになった。

日々は穏やかに過ぎていった。

穏やかだから、フレヤはチノが剣を抜いたところを見たことがない。

チノが腰にさしている県は普通の騎士の剣のように長くない。

鋭い牙のような短剣だ。

たしか、フレヤ付きの護衛をするとなった時、騎士団の者たちと

ひと悶着あったようなのだが、フレヤの知らないところで

決闘と称して、チノの実力を測ったらしい。

しかし、その後から一切の文句が来ない。

おそらく、チノの実力は、騎士団の者たちと同等か、それ以上なのだろう。

さすがは、さすらいの一族の族長といったところか。

チノが剣を振るう日なんてずっと来なければいいと思う反面、

見てみたいような気もする。

きっとチノが剣を振るう姿は美しいだろう。

芸術的な美しさというよりも、野性的な意味での美しさだ。

見たこともないのに、きっと美しい、と言ってしまえる自分がいる。

それだけ、チノは均整の取れた引き締まった体つきをしており、

かつ、その動作の一つ一つは無駄がなくて、洗練されているわけでもないのに

どこか人を惹きつけた。


「着いたわ」


そうこうしているうちに村についた。

今日は違う村を訪れている。

この村は隣国との国境近くにある少し大きな村だ。

ここは、海からは離れているので、津波による被害は受けていない。

隣国との貿易によって栄えている村、のはずだった。

近頃では、ごろつきや盗賊などが増えてきているらしく、

治安も悪くなってきているらしい。

しかし、いくら治安が悪くとも、貧しき民もそこに住んでいる。

だからいくら治安が悪くても、行かないわけにはいかなかった。

わざわざ国境近くの遠い村を選んだのは、

妹の結婚式が明後日に迫っているからかもしれない。

現実から目を背けたくて、逃げてきたのだ。

民を救う、という大義名分を抱えて。

それを知ってか知らずしてか、チノはどこまでも静かに後ろをついてきてくれた。

Re: マーメイドウィッチ ( No.21 )
日時: 2016/05/19 19:24
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)

*治安が悪いとはいえ、この村も一応は栄えている。

それゆえ子供たちも学校に行くことができている。

だから、フレヤはこの村に来ると子供たちに勉強を教えたりはしない。

かわりに、訪れるのは、病人がいる貧しい家庭だ。

そこに、薬や、心を和ませるための小さな花束を持って行ったりする。

貧しいものには、医者にかかるどころか薬を買うのですらできない家も多い。

気休め程度にしかならないだろうが、簡単な風邪薬や痛み止めなどを置いていく。

何軒かの家を回り終わった後のことだった。

静かに後ろをついてきていたチノがふと足を止めた。

不思議に思って振り返ってみると、その表情はやや険しくなっていた。


「どうしたの?」

「……あとをつけられている気配がする」


油断なくあたりを見渡した後、チノはつかつかとこちらによって来た。


「次はそこの家だろう?

 先に入っていてくれ」

「一人は、危険だから、それは……」

「足手まといになるだけだ。

 一人のほうが気楽でいい」


そう言い残すと、足早にチノはその場を離れていった。

すぐにその姿は見えなくなってしまう。

追いかけるべきか迷ったのち、フレヤは追いかけることにした。

足手まといになるとはいえ、やはり心配だ。

そう思った瞬間、自分の考えに驚く。

一月にも満たない間でしか知り合っていなかったのに、

いつまにかその身を案じる程度には情がわいていたらしい。

気付けばフレヤは駆け出していた。

たしか、先ほどの路地を右に曲がっていたはずだ。

フレヤも同じように右に曲がった。

そこは細い路地だった。

薄暗くて少し気味が悪い。

前方に誰かいる。

チノに追いつこうと、走りかけてフレヤの足が止まった。

チノじゃない。

深くフードをかぶった男。その手には大きな袋が握られている。

頭の奥で警鐘が鳴った。

急いでもと来た道を行こうとしたら、人にぶつかりそうになった。

淡い期待をもって、その人の顔を見上げて、期待が失望に変わった。

見知らぬ髭面の男がにやりと笑う。

ずるりと手の中から籠が滑り落ちて、乾いた音を立てた。

Re: マーメイドウィッチ ( No.22 )
日時: 2016/05/21 09:17
名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: LN5K1jog)




フレヤちゃんの身に危険が…(°Δ°)
更新されるたび、毎度毎度どきどきしてしまいます。
本当に素敵な書き方と文章で…!

私に語彙力がなくて今の気持ちが伝えられないのですが、えっとですね……とっても先が楽しみです!!


怪しげな新キャラも気になります。
フレヤちゃんもチノくんも無事なのでしょうか(´・ω・`)

貴方様の小説が好きすぎて生活に支障が出そうです(
これからも頑張ってください!応援しております。

Re: マーメイドウィッチ ( No.23 )
日時: 2016/05/21 14:36
名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)

あさぎの。様!!


せ、せせ、生活に支障……!?
どどどどうしましょう!!
とりあえずウルトラアルティメットスライディング土下座!!
でも、そう言っていただけて本当にうれしいです!!
感動しました!!(;O;)


じつはこのあとの展開、どうするかまだ考えてはいません笑
どうしようかなーとか言っていたら、いつのまにかこんなにも時間がたっていました……!←


謎の新キャラはドSにするつもりなのですここだけの話(・∀・)ニヤリ
いろはうた、キャラは書きながら性格はきまっていくタイプなのですが
名前もまだ決めてない新キャラの性格だけは決めてしまいました。←
皇帝っぽい感じが出てたらいいなって思っています。
いや、願っています。
切実に……!!

コメントありがとうございます!!




Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76



この掲示板は過去ログ化されています。