コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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マーメイドウィッチ
日時: 2016/06/21 11:41
名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)

世界が止まった。



手が震える。



数拍のちに気付く。









私は大切な人に裏切られたのだと。

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Re: マーメイドウィッチ ( No.99 )
日時: 2016/07/21 00:59
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
参照: http://pixiv.me/asaginoyumemishi

城に帰ると、場内は家臣たちがあわただしくあちこちを駆け回っていた。

空気には妙な緊張感がある。

病などでは倒れなかった王が伏せっているために

家臣たちも動転しているのだろう。

ためしに、その父王の様子を聞いてみたが、

いまだ意識は取り戻していないようだ。

落馬した際に頭と腰を強く打ったためらしい。

医師の診断では、高熱とまではいかないが熱が出ているため

腰を骨折している可能性がある、とのことだ。

意識を仮に取り戻したとしても、

最悪の場合、二度と歩けなくなるらしい。

二度と歩けなくなったら、狩りにはもう行かずに

もっと国のことを考えてくれる良き王に戻ってくれるだろうか

という愚かで甘くて不敬な考えを抱きすぐに打ち消した。

あまり人目につかないように静かに自室に戻った。


「明日も、行きましょう」


同じく部屋に入ってきたチノにそう声をかける。


「王都から少し離れた町を一日にいくつか巡るわ」

「効率が悪すぎやしないか。

 近衛兵を使えばもっと」

「近衛兵を使えば、権力に物を言わせて不穏要素を潰すこととなる。

 私はそのような真似をしたくはない。

 できるだけ、血は流さずに、平和的な解決を望むわ」

「奴らはこれっぽちもそうは思っていないだろうがな」


痛烈な一言にフレヤは押し黙った。

事実、フレヤも殺されかけた。


「時間がないのはわかっている。

 いつ革命が起こって、

 より多くの血が流れるかもしれない日が迫っていることも。

 それでも、私は近衛兵を使わない」


ぎゅうっとこぶしを握り締めた。

もうこぶしは強く握っても痛まない。

それでも、民にこの手を踏みつけられたあの時は忘れてはならない。

革命軍であってもこの国の民だ。

民は、傷つけない。

傷つけさせない。

そのためならば。


「……わかった」


チノはおとなしくうなずいた。

従順な獣のごとく。

フレヤはじっとチノを見つめた。

彼と出会って二ヶ月がたった。

あと四ヶ月。

この獣のごとく美しい青年はフレヤの元を離れて

野に帰っていくだろう。

自分のあるべき場所へ。

それをフレヤには止める権利はない。

でも今は、その美しい体に鋭い牙をもって彼はそこにいる。

フレヤのそばに。

しかし、獣は今は従順なだけで、静かにフレヤを観察している。

いつか。

いつか、一瞬でも自分が自分でなくなったら

この牙が自分に向けられる気がする、と

ぼんやりとフレヤは思った。

Re: マーメイドウィッチ ( No.100 )
日時: 2016/07/22 11:46
名前: いろはうた (ID: FEOD1KUJ)




















メノウは目を細めた。

さまざまな年齢の男女とともにテーブルを囲み、

ささやかな夕食をとっていたときのことだった。

こんな下々の私たちとともにテーブルを共にしてくださるなんて、と

人々は一種の畏敬の念を込めてメノウを見つめた。

流れるような金髪は肩にそって流れ落ち、ランプの光に照らされてオレンジ色に輝いている。


「王都のおしゃべりな女たちがそう言っていたので、確かな情報筋とは言い難いのですが……」

「いいえ。

 こうして私なんかのために情報を集めてくださってありがとうございます」


そう言って、にっこりとほほ笑むと、若き青年は顔を真っ赤にした。

彼女があまりにも美しすぎて直視をするのに恥じらいすら覚えるのに、

それでも見つめずにはいられない。

この青年が言うことには、今日の昼ごろ、

やたらと見目麗しい青年がメノウのことを聞いて回って王都を歩いていたという。


「われらが革命軍に入りたいということらしいのです。

 ……浮浪者風情が、われらが誇り高き革命軍に入りたいなど……!!」


そう、中年男性が我慢ならないように拳を震わせると、

同じような空気が皆からにじみ出た。

そうだ。

我々は国を変えたいがためにここにあるというのに、

突然現れたどこの馬の骨とも知らない男が、革命軍のことを嗅ぎまわっているなどと!


「みなさん、どうかお心を鎮めてください」


メノウの穏やかな声に皆はわれに返った。

彼女は怒っていなかった。

どこか悲しそうに眉をひそめているだけだった。


「も、申し訳ありませんメノウ様」


中年の女性があわててそう言うのをやんわりと制す。

人々の心はひどく痛んだ。

メノウ様のお心を傷つけてしまったのだと。


「たとえ遊牧民でもこの国を変えたいと考えているのならば、私は手を差し伸べます

 どんな姿かたちであれ、その人はこの国の民なのですから。

 だから、どうか、みなさん、そのようなことをいうのはおやめになって」


人々の口から知らず知らずのうちに感嘆のため息が漏れていた。

なんて心の優しい娘なのだろう。

見ず知らずの男がこうして罵倒されるだけであわれに思い

かばってやっているのだ。

この慈悲深き心。

やはり彼女こそがこの国の頂点にふさわしい。

少女は微笑んだ。

真っ赤なランプの光が、メノウの瞳に映って、紅く踊った。
























Re: マーメイドウィッチ ( No.101 )
日時: 2016/07/22 19:49
名前: 詩織 (ID: I4ogAiKW)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=39374

>> いろはうたさん

こんばんは!詩織です。
ピクシブのほうも拝見させていただきました〜。

すごい!
すっきりした読みやすい文章なのに、きちんと表現されてるから情景がすんなり浮かびます。

私はついごちゃごちゃと文章詰め込みすぎちゃうのが今の課題なので、感嘆のため息がでちゃいました。すてきだなぁ〜。
和風なストーリーもとってもいいですね。

そしてこの人魚姫のストーリーも。一話目の時点で引き込まれました。

なんだろう、言葉選びがすごくお上手なんだろうな〜いいな〜。
絵もすごく綺麗でした!
私は絵はまっっったく描けないので尊敬します。

小説に挿絵ついたらすっごい楽しいだろうに、羨ましいです。

楽しみにしてますのでこれからもがんばって下さいね。

Re: マーメイドウィッチ ( No.102 )
日時: 2016/07/23 16:07
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)
参照: http://pixiv.me/asaginoyumemishi

詩織様!!


はじめまして!!
久しぶりの新規のお客様、
とっても嬉しいです(´;ω;`)ウゥゥ


わ、和風……
頑張って洋風にしようとしているのですが、
やはり和風な感じになってますか……
いろはうたの文章力のなさがにじみ出てますね……(しょんぼり


ピクシブまで見てくださったんですね!!
感謝感激!!
詩織様は、絵を描かないのでしょうか……?
もし描くのなら、見てみたいです〜



コメントありがとうございます!!

Re: マーメイドウィッチ ( No.103 )
日時: 2016/07/23 19:36
名前: 詩織 (ID: D//NP8nL)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

>>いろはうたさん

はわわ。すみません〜いろはうたさんの文章力はすごいです!
私の書き方がダメダメでしたっ。

ピクシブの「浅葱の夢見し」を読んで、
巫女さんや神社や忍びがでてきてとってもかっこいいし、
ストーリーも新鮮でいいなと思って。
和風もいいな〜と書いてしまいました(^^;)

カエデちゃんが可愛くて。

もちろんマーメイドウィッチのほうも楽しませていただいてますよ!!

いろんな世界観が書けてすごいな〜と思ってます。


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