神の使徒と希望のヒカリ 作者/乃亜 ◆uz.dYBj786

モギュモギュ・・・

何かに無理矢理何かを詰み込める音が食堂に響く。

食堂の中では

詠娑、神剣、クロアの三人が

何かをしていた――――



+17夜+【大食いって意味なくね?】




「ぐふ・・・」

奇妙な声をあげたのはクロア。

顔は真っ青で次の食べ物に手を伸ばしかけては引っ込める。

そして胸のあたりをドンドンと手で叩くとホッとしたようにまた食べる。

え?

やけ食いじゃない。

実はコレ、詠娑の考えた練習法・・と言う事は知ってると思う。

「うぷっ・・・ぐふ・・・・あの――もう腹に入らな・・・」

「全部食べてくださいね♪応援してますからv」

「応援する人がイノセンス発動してんのは何でだよ。」

「え?・・・・・さぁ食べてくださいッ♪もうすぐですv」

「無視かよ。」

そんな会話を交わしていた。

すると突然、神剣の顔が真っ青になった。

「うぷっ・・・・」

「!?ど、どうしたんだ神剣さん!気持ち悪いのか!?」

「・・・・・・いや・・」

「?」

「こんなに大量の食物を食べる所を見ていると気持ち悪く・・・・お″ぇぇぇぇ・・・」

「ぎゃ――――ッ!此処では くなァ――――!!!!」

クロアは思いっきり神剣を蹴った。

神剣は無抵抗のままふわりと宙に浮くと、そのまま地に落ちた。(ぇ

・・・・・と、まぁ。

結局、全部食べれたのだが・・・

「あのさ―。」

「はい?」

「コレってたいして意味無くね?」

「はい。そうですね。」

「・・・・・(怒」

・・・・・と、詠娑の練習は終わった。


         *


「・・・・で、最後の練習だが・・」

腰に大きな絆創膏(バンソウコウ)貼った神剣があのコンクリートの部屋で話し始めた。

「コレで黒魔術が出来なかったらもう無理だ。」

「!」

クロアは驚いて詠娑を見た。

詠娑はふっと顔を逸らすとそこに座った。

「んじゃ始めるぞ・・・まずコレを飲め。」

ぽんとクロアに手のひらに渡されたのは小さな水色の飴玉のような物だった。

「コレは―・・・コムイが開発した・・・」

クロアゴクリと生唾を飲んだ。

「イノセンス、発動剤。・・・つまりコレを飲むとイノセンスが暴走しやすい。・・・・という事で、コレをお前の体内に入れる事で発動しやすくなるんだ。」

「へぇ・・・・」

クロアはその発動剤を手に乗せると、ゴクリと飲み込んだ。

体の中に熱い何かが入っていく感じがある。


――――その時だった。


「ガハ・・・・ァ・・ッ!!」

いきなりクロアの口から血が出た。

ボタボタと口から血が流れ出る。

「ぐ・・・・ぁ・・・あぁぁぁぁ!!!!!」


体中に

何かよく分からない痛みが駆けずり回る。

クロアはあまりの痛さに倒れた。

体中が震える。

「ぐぁ・・・あ・・あ・・・・」

脳の中に一つの記憶が浮かび上がった。

その記憶は―――

誰もかも

血だらけで

誰もかも

息絶えて

自分の手には

家族の首が―――――――。



「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

痛みで叫んでいるんではない。

この感情は―――

哀しみ・・・?





「し・・・・ん・・・けんさん・・こ、コレは・・・」

「・・詠娑。イノセンス発動しとくんだ。クロアは、今は黒魔術を発動させる時なんだ。もし・・詠娑が発動しなかったら・・・」

クロアが立ち上がった。

目は虚ろだが、体中から黒い物が渦巻く。

しゅ・・・

クロアが片手をあげた。

「・・・・・シぬぞ・・」

ダッ・・・

詠娑は目の前の出来事が信じられなかった。

「クロアさんが・・・・」

詠娑は震える片手をもう片方の手で押さえた。

「神剣さんに襲い掛かった―――?」